なんか恒例になっていたので弦巻マキ編も。
マキさんもずん子さん同様初期想定では練り込まれていなかった人物です。ゆかりさんの幼馴染ということだけは決めてましたかね。
何から書きましょうか。だいぶ手加減して作ってしまったので描きたいものがあまり伝わらなかったかもしれません。
ゆかりさんの自分があやふやな感じとかマキさんの全く話が通じない感じとか鮮明に描き過ぎると美少女の絵面でも中和しきれなくなる恐れがありました。
副題は悩みましたが「昏迷と蒙昧の少女」にしました。とにかく色々なことがよくわかっていないってことです。
仕組みが理解できない、世界の解像度が低い、正しい物の見方を知らない、とか表現してました。小さい頃の私は。
なかなか上手い例えが思いつきませんが、例えば通販サイトで相場より3割ほど安い商品を見つけたとします。
そういう時、普通はなぜこんなに安いのか、この値段で販売者に利益が出るのか、偽物が送りつけられるんじゃないかとか色々考えるはずです。
販売者名とか口コミとか調べて、このお店はメーカー直販店で今は在庫整理セール中だからこんなに安いんだとか、調べても中華系の販売店で怪しい噂しか出て来ないぞとか、そういうのがあって買うか決めるはずです。
でもマキさんみたいな人は「安い」「お得」しか考えられない。
自分にとってそれがどういう意味を持つか以外に思考を巡らすことができない。普通に考えれば売る側買う側双方に十分な利益が無ければおかしいのに、「この値段でこの商品が手に入る」という一個のことだけに囚われてしまう。
そういう感じのアレです。
物語の方に移りましょう。
宮舞モカが違和感を覚えた部分。簡単に言ってしまえばこいつ親友とか言ってる癖に何も知らねぇなってことですが。
「あまりクラスに馴染めてなかったみたい。」「お母さんと毎日喧嘩するようになったみたい。」
ゆかりさんはマキさんに自身が抱えている問題について少なからず打ち明けているわけです。
いやもっと突っ込めよとね。なんでへぇそうなんだで済ませているのか。どういう問題なのか、原因は何なのか、解決するためにどんな行動がとれるのかってね。
そういうのが出てこないことに、にも関わらず親友と呼んでいることに、今現在もその問題が解消されてるのかどうかもわからないのにまた仲良くなってもらおうとしてることに。
モカは「根本的な認識のずれ」を感じたわけです。
マキさんサイドの心理描写は作れませんでした。こういう人はたぶん直感しか存在しておらず、普段動画で出てるような長々としたモノローグは存在しないと思ったからです。
神の視点からマキさんの心理を決定するなら、マキさんがゆかりさんを親友と呼んだのは長く一緒にいたからです。
教室と家でのことは知らないが放課後や休日はよく一緒にいた、そして少なくともマキさんはその時間は楽しかった。だから二人は仲良しだったのです。
ゆかりさんが離れていった理由についてマキさんは「母親との関係で辛いときに避けていたから恨んでいる」と考えました。
これはマキさんが明確に聞かないようにしていたのがゆかりさんとその母親の話だったため、そこに原因があると判断したためです。
モカはここでもゆかりがマキを恨んでいるという所に引っかかります。
家庭に問題があったとてその話を聞いてくれない友人に対して恨みを持つでしょうか。多少苛立ちや諦めを抱いて話さないようになったとしても、それは恨んでいるからというよりは余裕がないからではないか。
ゆかりと仲直りしたいなら、考えるべきはマキとゆかりの関係改善ではなくゆかりとゆかり母の関係改善である。
ということが頭をよぎりつつも、そういうことが頭をよぎらないマキへの何だこいつという感情が頭を占めて結局何も言いませんでした。
モカは歪んだ部分が無いゆかりさんって感じで割と聡明な人物です。少なくともゆかりさんが何か問題を抱えている、その問題を解決することで仲直りしようみたいな論理展開はできます。
マキさんはゆかりさんと仲が悪くなっちゃった、また仲良くなりたい、ぐらいで止まってしまうため絶望的に話が噛み合いません。
…絶望的に話が噛み合わない感じは描写しませんでしたね。あの「でもでもだって」で全てを跳ね返してくるのはとてもキャラにはやらせられない。
マキさんの父親サイドの話をしましょう。
マキさん父はマキとゆかりの関係が歪なものだったと知っており、モカに二人の仲を取り持たないよう頼みます。物語的には答え合わせしてくれるキーパーソンですね。
マキさん父と幼マキさんのやり取りくらいは入れても良かったかもしれませんね。
「ゆかりちゃんは何が好きなんだい?」
「ゆかりんはあまーいカフェオレが好きだよ!」
「…ゆかりちゃんに聞きたいんだけど。」
「ゆかりんそうだよね!」
「はい。」
「…。」
とか。
「ゆかりちゃんはこのままじゃいけないんじゃないかな?」
「なんで?」
「いつもマキやお母さんに何でも決めてもらってるだろう?このままじゃ将来困るんじゃないかな?」
「大丈夫だよ!私ずっとゆかりんのお世話するもん!」
「…マキ、ずっと一緒には居られないんだよ。ゆかりちゃんにはゆかりちゃんの人生があるんだ。」
「そんなことないよ!私ずっと一緒にいるもん!」
「クラス替えだってあるし別の学校に進むことだってあるかもしれないだろう?」
「そんなの知らないよ!」
「ゆかりちゃんはマキ以外の子とお話しできてるのかな?マキがいないところで他の子と上手くやって行けるか心配だよ。」
「大丈夫だよ!ゆかりんはかわいいから!」
「…。」
みたいな。
子どものやることなら微笑ましいで済むけれど、年を取っていくにつれて笑えないものになっていくのを予見させるやり方なら描写しても良かったかもしれませんね。今更ですが。
おまけとしてマキさん母のこともちょこっとだけ描写しました。
喫茶店を経営したり家庭を育んだりしていく中で、マキさん母の問題意識、課題解決能力の低さが足を引っ張っていたりだとか。
病気になったとき自身の体より日々の生活や労働を優先して、結果的に死んでいなくなるという一番ダメなパターンになったりだとか。
そんなストーリーが弦巻家にはあったんじゃないかとか想像されたらよかったです。
問題を認識する思考力、問題を解決しようとする行動力に関しては今後別の動画でテーマにしようと思います。
マキさんに対してだからテメェは馬鹿なんだよと真っ向から言えるあかりちゃんと、マキさんと同じくらい能天気に見えて実はリアリストな小春六花が絡めば、もう少し物語として発展させられそうな気がします。今のままだとマキさんがだいぶ不憫ですからね。
ゆかりさんはマキさんを恨んでるということはもちろん無く、モカが想像したように話が通じなくて見限ったということもありませんでした。
自分の母親やマキさんみたいな人間っていう広いくくりで嫌いになったからってのが答えです。補遺01参照。
マキさんは結局高校1年の期間でゆかりさんに有効なアプローチをかけることはできていません。たぶんなんで仲直りできたのかもわかってませんね。
関係が改善されてからもゆかりさんがマキさんに向ける感情は好意ってより善意なので、かつての関係を取り戻すっていうマキさんの願いは叶ってないでしょう。
今のゆかりさんが何かあったとき真っ先に頼るのは茜で、マキさんにアドバイスやサポートを求めることは無いです。意識してないでしょうがこいつは役に立たないと学習してしまってるのかもしれませんね。
マキさんにも何かしら成長を感じさせるエピソードを作りたいような、でもこういう人間であるという特性はどうやっても書き換えられないような、悩ましいところです。
あまり長々書いても振り返りという表題からは逸れますし、そろそろ終わります。
次は紲星あかり編、当初考えてた補遺としては最後です。基本的にはそこでおしまいと見ていいでしょうね。きりたん編はおまけですので。
これまた副題が難しい。「純真」と「無垢」の少女とかが語呂としてはいいんですが、あかりちゃんとは合わないんですよね。
あかりちゃんは現実を正しく捉え、それに折り合いをつけられるドライでロジカルな人物ですので。
…そんな風には見えない?そう言われるとそう。
まぁとりあえず作ればわかる見ればわかるの精神でやっていきましょう。それではまた来年。とか言いつつ年末にまた何か書くかもですが。
長文駄文失礼しました。