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2024年9月9日月曜日

貧富のカクサちゃん

昔考えてたネタ。

ボイロではなくオリキャラの奴。たぶん使う機会はない。


カクサちゃん

主人公。現代の不平等に憤る中流家庭の女の子。

中学生に上がり、才能や家庭の違いを理由とした攻撃的な言動が増えた。

クラスではみんなに疎まれている。

両親は共働きで所得は平均的。虐待やネグレクトもない。


ウワズミちゃん

カクサちゃんの友達。上流家庭の女の子。

カクサちゃんから日常的に嫌味を言われながらも一緒に居続けている。

クラスでは優等生的ポジション。

両親の社会ステータスは高く何不自由ない生活を送る。


ヨドミちゃん

カクサちゃんの友達。下流家庭の女の子。

カクサちゃんからシンパシーを向けられているが返してはいない。

クラスではあまり目立たない。

片親で貧乏な生活をしており、幼い妹たちの面倒を見ている。


ナナヒカリちゃん

クラスメート。上流家庭の女の子。

非常に裕福な家柄であることを鼻にかけており、カクサちゃんから目の敵にされている。

クラスでは鼻つまみ者だがカクサちゃん程ではない。

両親や兄姉のことしか誇れることが無いのがコンプレックス。


ユガミちゃん

転校生。下流家庭の女の子。

虐待されて育ち、両親が窃盗と傷害で逮捕されたことで施設に入る。

施設や前の学校で問題を起こし、カクサちゃん達の学校に転校してくる。

カクサちゃんのことを気に入り、共に周囲に嫌がらせをするようになる。


クラスメートたち

ほぼ名無しのモブ。

思ったことをすぐ口に出してしまうウラオモテちゃん、相手の言葉を繰り返すコダマちゃん、負け惜しみばかり言っているトーボエちゃんなどがいる。



第一話「カクサちゃん」

カクサちゃん、ウワズミちゃん、ヨドミちゃんの三人組の日常。

カクサちゃんはウワズミちゃんに嫉妬と怨嗟の言葉を吐き、ヨドミちゃんに同情と共感の眼差しを向ける。

二人はそんなカクサちゃんを疎んじながらも、小学校からの友達なこともあり仲良くしていた。

カクサちゃんは自身の不遇を嘆き、社会の不平等を呪っていた。自分は貧乏な家の子で、頭も顔も運動神経も悪いと。

そんな彼女に対するクラスのみんなからの視線はとても冷ややかだった。

ウワズミちゃんの家は確かに裕福だが、ヨドミちゃんの家の貧しさと比べたらカクサちゃんの家も十分裕福だった。

ウワズミちゃんは確かに才能に恵まれているが、ヨドミちゃんの駄目っぷりに比べたらカクサちゃんも十分恵まれていた。

カクサちゃんはどう考えても普通だった。

明らかに劣っているヨドミちゃんが文句一つ言わない横で、よくウワズミちゃんに嫌味が言えるものだとカクサちゃんはひどく嫌われていた。

ウワズミちゃん、ヨドミちゃんも口にこそ出さないものの、カクサちゃんへの評価は一緒だった。

自分を客観視できない世間知らずのガキ。

カクサちゃんはそんな周囲の評価を感じ取り、ますます怨嗟の炎を燃やすのだった。

カクサちゃんは一人呟く。

全員死ね。



第二話「ナナヒカリちゃん」

自分より優れたものを一つでも見つけたら親の仇のように突っかかっていくカクサちゃん。

クラスで最も標的にされていたのはウワズミちゃん、次いでナナヒカリちゃんだった。

ナナヒカリちゃんは自分の家柄や能力をひけらかすタイプで、逆にカクサちゃんに喧嘩を売ることも多かった。

その性格のせいでまあまあ嫌われているナナヒカリちゃんは、自分に絡んでくれるカクサちゃんを憎からず思っていた。

しかしカクサちゃんが喧嘩するほど仲がいい程度の距離感を保つはずもなく、ナナヒカリちゃんへの人格攻撃は苛烈を極めていく。

自身とナナヒカリちゃんの比較ではなく、ウワズミちゃんとナナヒカリちゃんの比較という方向に活路を見出したカクサちゃんは的確にナナヒカリちゃんを追い詰めていく。

旧華族のお父様がいるはずなのにウワズミちゃんの方が気品があるのはなんで?

元女優のお母様がいるはずなのにウワズミちゃんの方が綺麗なのはなんで?

東大生のお兄様がいるはずなのにウワズミちゃんの方が賢いのはなんで?

モデルのお姉様がいるはずなのにウワズミちゃんの方がお洒落なのはなんで?

たくさんの凄い人達があなたのために尽くしてくれているはずなのにあなたがウワズミちゃんより劣ってるのはなんで?

追い込まれたナナヒカリちゃんはウワズミちゃんに勝負を挑む。その際、ウワズミちゃんを罵倒したことでクラスの反感を買う。

礼儀作法、顔とスタイル、テストの点数、ファッションセンス、そしてクラスでの人気。

ナナヒカリちゃんは5本勝負で全敗した。

消沈するナナヒカリちゃんを嘲笑するカクサちゃんとクラスメート達。そんな彼女たちにウワズミちゃんは怒りを露わにする。

今回は私が勝ったけれどナナヒカリちゃんはお洒落で綺麗だし、気品があって賢い。何より頑張り屋だと。

自分は戦おうとはせずに負けた人を笑うのは卑怯者のやることだと責められ、クラスメート達は恥ずかしくなる。カクサちゃんは腹を立てる。

ウワズミちゃんはナナヒカリちゃんに手を差し伸べ、これからも切磋琢磨し合おうと声をかける。

ナナヒカリちゃんはその手を払いのけた。

胸に浮かぶのはカクサちゃんが毎日のように言っていた言葉。格差の上層にいる人間には下層にいる人間のことなんかわからない。

ナナヒカリちゃんは涙を流しながら言った。

全員死ね。



第三話「ユガミちゃん」

カクサちゃん達のクラスに転校生のユガミちゃんがやって来る。

ユガミちゃんは明るく活発な様子で周囲との仲を深めていった。

カクサちゃんは相変わらず手当たり次第に嫌味ったらしく恨み言をぶつけていたが、ユガミちゃんはそんなカクサちゃんを何故か気に入ったようで彼女を追い回すようになる。

両親が居らず、施設で暮らしていることをカクサちゃんに明かすユガミちゃん。

だから優しくしてくれとでも言うのかとカクサちゃんは嫌悪感を返す。

不幸な環境にもめげずに逞しく生きる。そんな心の強さは不愉快なだけだった。

ユガミちゃんは不敵に笑っていた。今にわかると。


ユガミちゃんが来てからクラスの雰囲気はちょっとずつ悪くなっていった。

教室の至る所で口喧嘩や小競り合いが起こり、陰口や陰湿な嫌がらせが増えていく。

カクサちゃん、ウワズミちゃん、ヨドミちゃんの3人は誰かが不満の種をばらまいて対立を煽っていることに気づく。

時期的に考えてユガミちゃんが犯人だと推測したウワズミちゃんは、偽の情報を流してユガミちゃんの尻尾を掴むことに成功する。

クラスメート達の前で化けの皮を剝がされたユガミちゃん。浮かべた不敵な笑みは数日前にカクサちゃんが見たものと同じだった。

それで?とユガミちゃんが問いかける。反省するとまではいかなくとも多少は泣くなり怒るなりすると思っていたウワズミちゃんは困惑する。

まともに生きて来れなかったから、まともに生きてられる人間が憎くて憎くてしょうがない。お前たちに嫌がらせをすることだけが生きがいなんだ。

あまりにも真っすぐな悪意に誰も言い返せなかった。

ユガミちゃんがカクサちゃんに笑いかける。カクサちゃんは笑い返した。


ユガミちゃんはカクサちゃんに語る。学校は「キレた奴が負けゲーム」なんだと。

どれだけ理不尽な行いをしようと、冷静さを失って取り乱してる奴が悪者にされる。だからどうやって怒らせるかが腕の見せ所だ。

ユガミちゃんとカクサちゃんは心からの相棒だった。

幸せそうな人が許せないユガミちゃん。優れている人が許せないカクサちゃん。

似通ったルーツを持つ二人は同じ境地に達していた。

ユガミちゃんの行動力とカクサちゃんの思考力が合わさり、嫌がらせのレベルはクラスメートの許容範囲を遥かに超えていった。

ナナヒカリちゃんにしたような精神攻撃で追い詰め、取り乱して暴力を振るおうものなら即座に被害者に転じる。

親に虐待されて育ったせいで心が歪んでしまった。ユガミちゃんが持っていた盾は強力だった。

皆を嫌い、皆に嫌われ、信用と信頼を磨り潰しながら破滅へと突き進む日々。それでも二人は笑っていた。

最低でも最悪でも、心から誰かと笑い合える時間はかけがえのないものだった。


ユガミちゃんが次のターゲットにヨドミちゃんを選ぶ。

ヨドミちゃんは母子家庭で幼い妹たちの面倒を見ながら暮らしている。本当は不満も憤懣も溜まっているはず。楽にしてやろうと。

カクサちゃんにとってヨドミちゃんは憎悪の対象ではなく、友人としての引け目もあったが、結局流されるままにユガミちゃんに付き合う。

ヨドミちゃんに狙いを定めてネチネチと心の弱い部分を探す二人。

ヨドミちゃんは勉強も運動もできず見た目もパッとしないが、それは環境のせいだ。

家事に追われて自分の時間を取れず、寝不足で授業も眠ってしまうからテストの点も先生の評価も低い。

十分な食事と休養を取っていないから体育でも満足に動けず、背も低く手足も細い。

慢性的な疲労により落ち窪んだ目元と不規則な食生活による肌荒れが彼女の印象を暗く醜くしている。

それは誰のせいだ?お前の母親のせいだ。

無知で無能なお前の母親が馬鹿な男とくっつき何も考えずに4人もガキを生んだからだ。

お前ら姉妹って何人父親が同じなんだ?金蔓にもできない男を引っかけて何がしたかったんだ?遊びか?

お前に親代わりをやらせて今も別の男に股開いてるんだろうなぁ?どうする?もう1人妹が増えても育てられるか?

自分のことはどれだけ馬鹿にされても気丈にしていたヨドミちゃんも、母親のことを馬鹿にされると辛そうに目を伏せていた。


意外としぶといヨドミちゃんを潰すため、カクサちゃんとユガミちゃんはヨドミちゃんの妹に接触する。

まだ小学生の彼女を二人で囲み、母親への嫌悪感と姉への罪悪感を植え付ける。

彼女の目に消えない暗がりが出来たことを確認すると、二人は満足げに笑い合う。仕込んだ爆弾が爆発する瞬間を想像すると心が躍った。

次の日の朝、学校に来るなりヨドミちゃんはカクサちゃんとユガミちゃんに殴りかかった。

ユガミちゃんは内心ほくそ笑みながら、カクサちゃんは本心から被害者気分で先生に状況を説明する。

普段無気力で無関心なヨドミちゃんの初めて見る激高した様子にクラスメートは胸を打たれる。

どんな理由があっても暴力は許されない。まずは話し合うことが大切だ。二人も反省しているようだし仲直りを…

ヨドミちゃんは他のクラスメートたちと違って止まることは無かった。

殴ったから私が悪いのか。家族を傷つけられて怒るのがいけないことなのか。

絶対に許しちゃいけないことがある。謝ったからで済ませていいことじゃない。

殺してやる。

カクサちゃんは生まれて初めて殺意を向けられたことに衝撃を受ける。

彼女は家庭環境がアレだから精神が不安定なんでしょうとユガミちゃんが悲しげに呟き、ヨドミちゃんは先生たちに連れて行かれる。

しかしヨドミちゃんが残した芽はクラスメートたちの中で育まれ、ユガミちゃんとカクサちゃんを排斥しようという動きは高まっていた。


ユガミちゃんは子どもじみた嫌がらせ程度ではビクともしなかったが、カクサちゃんはヨドミちゃんの一件以降怯えを見せるようになっていた。

感受性の高いカクサちゃんは嫌悪が憎悪へ、やがては殺意へと移り変わっていく気配を感じ取っていた。

これ以上は我々の身が危険だと暫く大人しくしているようにユガミちゃんに言い含める。彼女は聞く耳を持たなかった。

ユガミちゃんは話の分からない馬鹿ではない。ひとえにそれは精神性の違いだった。

正気の底にあるカクサちゃんと狂気の蓋を開いたユガミちゃん。

自らへの罵倒も侮辱も暴力も死さえも娯楽の延長線上でしかない。カクサちゃんは初めてユガミちゃんのことを怖いと思った。

ユガミちゃんと手を切り、クラスメートに謝るカクサちゃん。当然許されることは無く、ユガミちゃんを潰せと要求される。

カクサちゃんを嫌いになり切れないウワズミちゃん、あくまで主犯はユガミちゃんと見なしているヨドミちゃんはカクサちゃんと再び三人組を結成する。

持たざる者故の無敵の精神性を持つユガミちゃん。弱点など無いように思われていたが、ウワズミちゃんとヨドミちゃんは唯一の弱点に気づいていた。

カクサちゃんである。ユガミちゃんがただ一つ執着し、心を許した相手。


ユガミちゃんを吊るし上げるためのクラス会が開かれる。

ユガミちゃんは四面楚歌の状況にも動じず平然としていた。

自分を裏切ったにも関わらず、カクサちゃんにだけは悪意を向けず仲間に戻るよう笑いかける。

お前みたいなクズでも友達は大切なんだと思うと反吐が出るとヨドミちゃんが悪態をつく。

望みは薄かったが、カクサちゃんの説得ならばユガミちゃんが応じるのではないかと期待されていた。

どうして私にこだわるのかとカクサちゃんはユガミちゃんに問いかける。私はあなたとは違うと。

カクサちゃんの独白は自分のアイデンティティを捨てるものだった。

本当はわかっていたんだ。自分が普通の人間だって。

家も普通だし顔も頭も普通。不幸じゃないし劣ってもない。

ただ何となく気に入らないものを攻撃する理由が欲しかっただけだ。

ユガミちゃんは私も同じだと笑う。

親に虐待されたとか施設育ちとかそんなことはもう関係ないんだ。

悲惨な環境で心が壊れてしまったのか生まれつき頭がおかしかったのか。

どっちだっていい。私はただ人を苦しめたいだけなんだ。

カクサちゃんとユガミちゃんは見つめ合う。

人を拒み、貶め、嘲り、踏みにじって生きる。その先にある未来。

きっとこれが最後のチャンスだと謝るように促すカクサちゃん。

ユガミちゃんは迷いのない目で答えた。

全員死ね。



第四話「ウワズミちゃん」

ユガミちゃんはあの日以降姿を消した。

まだ中学生の少女が行方不明になったというのに、大人たちの対応は投げやりで警察も探しているのかどうか。

嫌われ者の行く道なんてこんなものだとカクサちゃんは思う。

いなくなって清々したのか、あるいはもう口にも出したくないのかクラスではユガミちゃんの話題が上がることは無い。

それでもカクサちゃんは時々思い出す。いつか二人で笑い合った帰り道を。

ユガミちゃんは親友だったのだ。


本当にカクサちゃんのおかげかは定かでないが、ユガミちゃんを追い出したことでカクサちゃんは一応クラスで許される。

しかしヨドミちゃんはもうカクサちゃんとは関わりたくないようで、結局カクサちゃんと口を利いてくれるのはウワズミちゃんだけになった。

ユガミちゃんとカクサちゃんへの反抗としての嫌がらせは、そのままカクサちゃんへのいじめへと発展していった。

あれだけのことをやったんだからいじめられても仕方がない。むしろ当然だというのがクラスの総意だった。

ウワズミちゃんも心の底では同意見だったが、カクサちゃんを庇わずにはいられなかった。

昔のカクサちゃんだったらやられっぱなしじゃなかった。もっとやり返していた。

もう仕返しとか関係なくてただ人を虐めるのが楽しいだけじゃないか。それでよくユガミちゃんのことを非難できたものだな。

まったく自分の行いを省みる知能も無いってのは幸せなもんだ。

カクサちゃんの口から昔のような悪口が飛び出ることは無かった。


心ここにあらずと言った様子の彼女に苛立っている自分を不思議に思うウワズミちゃん。

クラスメート達からはもうカクサちゃんの味方をするのを止めるように忠告される。

なんであんな奴の友達でいるのかと問われ、記憶を辿る。

カクサちゃんは今みたいに格差に憤るようになる前から怒りっぽかった。

親にも先生にもクラスメートにもいつも怒っていた。でもそれは単に機嫌が悪いとかじゃなくて、カクサちゃんとしてはどうしても腹立たしいものがあったのだ

例えば今目の前にいる、カクサちゃんを積極的に虐めているクラスメート3人組。自分もいじめられたくなかったらいじめに加担しろと言ってくる彼女たち。

この子たちは確か小学校にいた時も同じことを言った。私は敵にも味方にもなりたくなくて曖昧に笑って流してたけど、カクサちゃんは食ってかかった。

カクサちゃんは善悪とか損得で動かない。気に入るか気に入らないかで動く。

ウワズミちゃんは自分の本心に気づく。

カクサちゃんの攻撃的な言動でイラっとすることも多かったが、胸がスッとすることも多かった。

カクサちゃんに共感していたのだ。自分は善良な人間の振りでカクサちゃんを通して気に入らない奴に不満をぶつけていた。

なんだ私もクズなんじゃん。ウワズミちゃんの口元に笑みが零れる。

そのまま心からの笑顔でクラスメート達に告げた。こんな時なんて言えばいいかもう知っていた。

全員死ね。



第五話「ヨドミちゃん」

ユガミちゃんの一件以降、ヨドミちゃんはカクサちゃんを無視していた。

カクサちゃんはまだ境界で揺れ動く子供で、ユガミちゃん程どうしようもない相手ではないとわかっていたけれど、だからと言って笑って許せるほど大人ではなかった。

あれからちょっとずつ歯車が狂ってきていた。

母親を馬鹿で迷惑な人間だと見下す気持ち、幼い妹たちの面倒を見るのを煩わしく思う気持ち。それらがユガミちゃんによって呼び覚まされていた。

同じくユガミちゃん達の手で目覚めさせられた一番年の近い妹は母への不満や姉への謝罪を繰り返すようになり、家の雰囲気は悪くなっていった。

長女であるヨドミちゃんが炊事洗濯と赤ん坊の四女の世話を、次女が家事手伝いと三女の遊び相手を。そうやってヨドミちゃんの家は成り立っていた。

ほとんど母親が帰って来なくても何とかなっていたのは長女の献身と次女の助力があったからである。それに綻びが生じ始めていた。


カクサちゃんと一緒にウワズミちゃんも切ってしまったことでヨドミちゃんは一人ぼっちになっていた。

日に日にやつれていくヨドミちゃんを見兼ねてナナヒカリちゃんは彼女に接近していく。

純粋な善意だったが、追い詰められたヨドミちゃんにとっては癇に障るものだった。

ヨドミちゃんはナナヒカリちゃんが嫌いだった。金持ちの家に生まれて家族仲も良くて何の苦労もなく…

そんな感情は絶対に表に出さないと決めていたのに、精神が不安定になったことで押し込めなくなってきていた。

自分が消えていくような感覚だった。

貧しくても家族5人で楽しく暮らしているつもりだった。学校では駄目駄目でも家庭では大きな役割を果たしていることが誇りだった。

母のことも恨んでなんかいなかった。ちょっと考えが足りないところもあるけれど、自分たちを養ってくれているし愛してくれていると。

時々スイッチが切れたように何も手につかない時間ができた。家事が滞り、母親が彼女を叱った。

初めて彼女は親に逆らった。本来家のことをやるのは親の務めだ、やってくれることを当たり前だと思うなと。

母親は驚き、泣いて謝った。そんな姿を見ると罪悪感が湧いて、自分を嫌いになった。

一番年の近い妹がその下の妹にユガミちゃん達に言われたようなことを伝えようとしていた。必死に止めたが、なぜ止めるのかという問いには答えることはできなかった。

学校にいても赤ん坊の泣き声が聞こえる気がした。授業はますます手がつかなくなってこのままだと行ける高校が無いと言われた。

辛くて苦しくてもう限界だと思った時、頭の中で何かがちぎれる感覚がした。


朝目覚めると、思考のノイズは消えていた。

いつものように朝食とお弁当を用意し、二人を送り出した。学校に行く途中で一人を保育所に預けた。

教室ではナナヒカリちゃんが遠慮がちに話しかけてきた。心配してくれてありがとうと笑うと、嬉しそうに笑い返してきた。

視界の端でウワズミちゃんとカクサちゃんを捉える。なんだかこれで元通りだなと思った。

その日は珍しく一度も眠らずに授業を聞けた。

家に帰ったら一番年の近い妹に大事な話をした。

お母さんに優しくすること、私は大好きな家族のためならいくらでも頑張れるから大丈夫だということ。

妹はヨドミちゃんに抱き締められながら泣いた。ヨドミちゃんも少し泣いた。

これでいいのだ。

誰かが背負わなければいけないなら、他の誰にも背負わせたくはない。

ヨドミちゃんは心の中で決して口にはしない言葉を呟いた。

全員死ね。



2024年8月13日火曜日

霊感少女雪ちゃん

出番がない人たちを出しつつサクッと見れるホラーシリーズ。


①霊感少女雪ちゃん

ある日の通学路、雨晴はうは友達の雪ちゃんが物陰を覗き込んでるのを見つける。

はうに声をかけられると雪は大したことじゃないと笑った。

はうは不安だった。雪には霊感があるようで幽霊の姿が見えるのだ。

その日の放課後、ふらふらと通学路を外れる雪。

追いかけると、今にも用水路に落ちようとしている雪の姿があった。

はうは雪を正気に戻そうと無理矢理引っ張る。困惑した様子の雪の手には小さなお守りが握られていた。

今朝の場所へと帰る二人。物陰で泣いていた子供の霊はお守りを受け取ると嬉しそうに笑って消えた。

たとえ幽霊だからと言って困ってる人を放っときたくない。ちゃんと満足できるまで付き合うからね。

雪はそう言って笑った。

つられて笑うはうの姿はうっすらと透けていて、他の人たちには見えないのだった。


②今日はもう来ない

春日部つむぎは学校の屋上から飛び降りようとしている少女を腕を掴んで食い止める。

必死に説得するつむぎにその少女、冥鳴ひまりは事情を語る。

曰く、彼女は死ぬと時間が巻き戻る体質であると。

到底信じられないつむぎ。錯乱していると考え無理矢理彼女を拘束する。

騒ぎに気づいた先生が駆けつけてくる。遠くからサイレンの音が聞こえてくる。

押さえつけられながらもひまりは、必死に死のうとしていた。

その日、少女が一人屋上から飛び降りて死んだ。


③なすりつけパーリナイ

ある夜、結月ゆかりは電話の音で目を覚ます。

相手は友人の茜だった。苛立ちながらも事情を聞く。

震え声の彼女は肝試しに行った恐怖体験を語る。

廃墟で幽霊を見かけ逃げ出した。見間違いだと信じ込もうとしてたが、家に帰って眠ろうとしたら布団の中からあいつが…

固唾を飲んで聞き入るゆかり。それでどうしたのかと尋ねる。

茜は答える。

「ゆかりの所に行ってください…」

そう言ったと。

「はぁ?!」

驚愕するゆかり。

玄関の戸が激しく叩かれ始める。

電話口の茜に罵声を浴びせ、ドアの向こうの存在に茜の所に行くように要求する。

負けじとゆかりの所に行くようにと騒ぐ茜。

ゆかりも堪忍袋の緒が切れる。

ドアを開け放ち、ちょっと待ってろと言い放つと隣に住んでいる茜の部屋のドアを叩き始める。

互いに相手の所に行くようにと言い合いを続ける二人とそれを見つめる黒い影。

騒がしい夜はまだ始まったばかりだ。



最後のはホラーじゃないね。

まぁでも私ホラーシリーズにはほっこり回とかギャグ回が挟まってた方が好きだから良し!!

シチュエーションは思いついたが内容はまだなのが何個か。

「独り言」

深夜のバス、自分以外の乗客は一人。彼女の独り言が嫌でも耳に入ってくる。

うんざりしていた主人公だったが独り言の内容が自分の身近なことを話してるのに気づいて…

「同窓会」

同窓会で久々に再会した5人。小さい頃にいじめてた相手を最近見たという話になる。

それから一人また一人と殺されていく中、主人公はいじめられっ子と再会を果たすが…

「ノツゴ」

ある日、駅のホームで誤って突き落とされ事故に遭う主人公。

目覚めるとホーム下のスペースに蹲っており、隣には見知らぬ男がいた。

男は自分たちは「ノツゴ」になったと語る…


みたいな感じ。

メモ書き程度ですがミステリの舞台として立て籠もり事件の現場。

犯人と一対一でも、犯人の目を盗みながらの多人数でも面白そう。

肝心の中身が何もできてないので何ともですが。

ホラーシリーズのネタもたくさん用意できたので安泰ですね。後はブログに転がってる「直葬」辺りも使えそう。

てところで長文駄文失礼しました。


2024年7月29日月曜日

祟り、願い、救い

前回の三種の神器に加え幾つか思いついたのでメモ。

在庫が増えてホクホクである。


①藁小屋と狼

ゼミの研究の一環でとある漁村を訪れた結月ゆかり。

村長の老婆と孫娘のミナトに勧められ、古い祠を訪れる。

興味本位で祠に触れたところ、老朽化が進んでいたのか倒壊。

村長に「あの祠を壊したんか!」される。


村の外れにある小屋に閉じ込められ、一夜を明かすことになる。

ミナトから鍵を手渡され、何があっても朝まで扉を開けてはいけないと言われる。

開けなければ大丈夫という言葉に不安げなゆかり。

一人になった後、小屋の中を調べると血痕が見つかる。


翌朝、村長とミナトが小屋を訪れる。

表情の暗いミナトを村長は叱咤する。

1年に一度は人を捧げないと村の誰かが襲われることになる。

余所者を犠牲にするのは仕方のないことだと。

鍵の壊された扉を開けると、中には誰もいない。

今までにないパターンに動揺しながらも、別の場所に連れて行かれただけかもしれないと互いに言い聞かせる。

ミナトが何かに気づき、小屋の中へと足を踏み入れる。

切り離されたノートの紙片、そこには一言…

「やっぱり帰ります」

背後で獣じみた唸り声と老婆の悲鳴が聞こえた。


逃げたのはまずかったかなぁと悩みながら歩くゆかり。

だってあんな扉と鍵で何かの侵入を防げるようには思えないし、それを抜きにしても居座ってたら祠の修繕費とか請求されるかもしれないし。

まぁなんとかなるだろと自分を納得させる。

帰ったらお祓いに行こうと心に決めるのだった。


ミナトは鍵のかからない扉を必死に押さえつける。

向こうからは祖母の絶叫と助けを呼ぶ声が響き渡る。

絶対に開けてはならない。一人食べれば終わるはずだから。

開けなければ大丈夫…開けなければ大丈夫…



②三顧の願い

路上で弾き語りをする弦巻マキ。

「いい歌ですね。」

視線を挙げると着物姿の少女が立っていた。

マキは久々に褒められたことにはにかむ。

少女は少し考えた後、歌のお礼に3つ願いを叶えてあげると言う。

冗談を言っていると思ったマキは、何の気なしにプロになりたいと答える。


それから暫くして偶然プロデューサーの目に留まったマキは、ミュージシャンとしてデビューすることになる。

人気が出始めサイン会を開くようになった頃、あの少女が再び現れる。

願いが叶ったのが彼女のおかげかはわからないが、感謝を伝えるマキ。

それを見て満足そうな笑みを浮かべた少女は、次の願いを尋ねる。

マキは躊躇いながらも、半分愚痴交じりにプライベートの悩みを口にする。

自分の活動を親に認めてもらえていないこと、好きな人に興味を持ってもらえていないこと。

少女は頷いた。


数年が経ち、マキの人生は順風満帆そのものだった。

ミュージシャンとしての人気は確立され、親や恋人にも応援してもらえるようになった。

しかし長年のオーバーワークが祟ってか、喉を痛め歌声を出せなくなってしまう。

思い悩む彼女の前に三度あの少女が現れる。

困ってると思って助けに来たと笑う少女。これが最後の願いになる。

考え込むマキに少女は明るく語る。病気を治してほしいじゃなくて、一生健康な体にしてほしいと願えばいい。そしたら死ぬまで安泰な生活だと。

少女の健気な様子にマキは笑みをこぼす。

「それもいいかもしれないけど…やっぱり…」

マキはしゃがれた声で呟いた。

「夢から覚ましてほしい。」


「…いいのですか?」

少女は戸惑いと悲哀の表情を浮かべる。

マキは穏やかに笑うだけだった。

気づくと二人が最初に出会ったあの場所に戻っていた。

ギターを抱きながら路傍に立ち尽くすマキ。

彼女を見ているのは少女だけだった。

誰も足を止めることも目をやることすら無い。

「わかってた…」

マキが絞り出すように呟く。

「私を認めてくれないってことくらい…私を好きになってくれないってことくらい初めからわかってた…!」

「それでも…!」

涙を流すマキの瞳は強く輝いていた。

「明日も歌うから…また聞きに来て。」

少女は4つ目の願いを叶えると約束した。



③傘差し様

学童の建物の向かい。古めかしい木塀の続く路地には傘を差した女の幽霊が出るという。

背の高いその女性は傘を忘れた子どもの前に現れると、傘を差して家まで送ってくれるのだ。

彼女は「傘差し様」と呼ばれ、子どもたちの間では昔から親しまれていた。


妹のきりたんから「傘差し様」に送ってもらったと聞かされた東北ずん子は、毎日彼女を迎えに行くことを決める。

高校生になったずん子にとって「傘差し様」の存在は不審者以外の何者でもなかった。

最近反抗的になっていたきりたんは姉の過保護にうんざりした様子を見せる。

お姉ちゃんだって昔「傘差し様」に送ってもらったことがあったはずだと訴えられ、ずん子は遠い記憶を辿る。

スーツ姿の女性に傘を差して送ってもらったことが確かにある。だがあれはただの親切な人、あるいはやっぱり不審者だ。

ずん子の決定は覆らなかった。


それから数日後、雨空の下二人は口論になる。

きっかけは些細なことだった。

今日の朝、雨が降るという予報を見たずん子はきりたんに傘を持つように言いつける。きりたんは晴れた空を見て雨なんか降らないと言ってつっぱねた。

その答え合わせがどうだったかというと、小雨だった。

だから傘を持っていけと言ったのにとずん子。この程度なら傘なんかいらないときりたん。

意地を張って言い合いを続けた二人はつい熱くなりすぎてしまう。

もし雨が降ってもまた「傘差し様」に送ってもらえばいい!お姉ちゃんなんかいらない!

ああそう!じゃあ勝手にしなさい!あんたなんか知らない!

雨の中、傘も持たずに駆けていくきりたん。

遠ざかっていく背中を睨んでいたずん子だったが冷静さを取り戻して彼女を追いかける。

どうしてこんな風になってしまったのだろう。前はあんなに仲良しだったのに。あの子がもっと小さい時は…

雨足が強くなっていく中、速度を速める。速足から駆け足へ。

きりたんが赤信号を突っ切っていくのが目に入り、そのままずん子も横断歩道を駆け抜けようとする。

傘を差したままのずん子の視界では、横から迫ってくる車には気づけなかった。


ぼやけていく意識の中、目に映るのはきりたんに渡すはずだった傘と、気づかずに走り去っていく彼女の背中。

そんなに濡れたら風邪を引いてしまうかもしれないから…

傘を…あなたに…


学童の建物から出てきた少女が一人、不安げに空を眺める。

雨の勢いは衰えることなく、傘を忘れた彼女の行く手を阻む。

視線を下ろすと、向かいの路地に傘を差した女性が立っていた。

少女と目が合うと、制服姿のその人は優しく笑った。



④一人の帰還者

おまけ。ヘンゼルとグレーテルを意識したけどほぼ原形無し。


まずはこうして無事に助かったことをお喜び申し上げます。あの事故の生存者は残念ながらもう諦めていました。

なんせ冬の雪山への墜落事故です。救助活動もままならず、生き残りが居たとしても見つけられたかどうか…

一点質問があります。あれから一週間になりますがどうやって麓まで辿り着いたのですか?


警官の質問に彼女は虚ろな目で一言だけ答えた。

「二人だったから。」



2024年7月28日日曜日

鏡、勾玉、剣

夏に向けたホラー三枠。

最初に思いついた鏡に連想され勾玉、剣に関する話も作成。


①姿写しの鏡

テーマは複製。


4時44分ちょうどに踊り場にある姿見を覗くと鏡の世界に引きずり込まれる。

音街ウナの語るありがちな怪談を東北きりたんは鼻で笑い飛ばす。

不満げなウナにきりたんは昔からある話だと告げる。自分も小学三年生の時に聞いて試したが何も起こらなかったと。

がっかりした様子のウナを尻目にきりたんは読書に戻る。


放課後、委員会の仕事で遅くなったウナは例の姿見の近くを通りがかる。

どうせ何も起こらないよねと姿見の前へと立つ。

ゆらゆらと踊ってみせるが普通に自分の姿が映っているだけである。

そのままクルリと回ってみる。

視界の端、一瞬だけ捉えた鏡には立ったままこちらを見つめている自分の姿が映っていた。

驚いて離れようとしたウナの腕を鏡の中から伸びてきた手が掴む。

引きずり込まれそうになるのを耐えながら、必死に助けを呼ぶ。

その時、鏡の割れる音が響き渡った。


鏡の破片と投げつけられた単行本が踊り場に散らばる。

きりたんはウナの手を引き、姿見の前から引き離した。

礼を言うウナを横目に、単行本を拾うきりたん。

ひびの入った姿見からはもう腕は伸びてこなかった。

鏡を割ってしまったことをどうするのかと問われ、逃げるしかないと笑うきりたん。

ウナは自分がやったことにしていいから謝った方がいいと笑う。

ふときりたんから表情が消える。

鏡を見つめるその目は何かを考えているような、何かを思い出したような。

また鏡に映る姿が動き出したのかと身構えるウナに、きりたんは優しく笑いかける。

姿見の前を離れ、階段を下りるきりたんとウナ。

あの怪談には続きがあるんですよ。

きりたんが口を開く。

鏡の中に引きずり込んだ後、代わりに鏡の中の自分が出てくるんです。

それを思い出してました。


割れた鏡にきりたんの姿が映る。

涙を流しながら手を伸ばしていた彼女の姿は、4時45分になると同時に消えた。



②一連なりの勾玉

テーマは融合。


ネットショッピングで不思議なアクセサリーを見つけた花隈千冬。

白と黒の対となった勾玉のイヤリングで、互いに片方ずつ身につけることでその二人は結ばれるというものだった。

友情にも恋愛にも。そんな謳い文句に苦笑しながらも千冬はそれを購入する。


千冬には気になっている相手が居た。同じクラスの紲星さんだ。

高校からこの町に引っ越してきたという彼女はクラスでは高嶺の花だった。

新雪を思わせる白い髪と物憂げな青い瞳。

彼女とどうにかお近づきになりたかった。

買ったはいいもののプレゼントを渡すような間柄ではなく、彼女を目で追うしかない千冬。

そんな折、紲星さんが先輩の女子と話している姿を目撃する。

クラスでの姿とは異なり、人懐っこい様子で先輩に絡む紲星さん。

言い知れない失望と嫉妬心を覚えた。


それから千冬は先輩と紲星さんの仲を裂こうとし始める。

しかしその目論見は上手くいかず、やがて紲星さんには嫌われるようになる。

降り積もったフラストレーションは、いつしか紲星さんへの敵意に変わった。

ある日、階段を降りようとしていた彼女を後ろから…


動かなくなった紲星さんを前に我に返る千冬。

ただ仲良くなりたかっただけなのにどうしてこんなことをしてしまったのか。

後悔の涙を流しながら、あれからずっと持ち歩いていた勾玉のイヤリングを彼女の耳につける。

自分には黒の勾玉、彼女には白の勾玉。

世界がぐにゃりと歪んだ。


次の日の朝、何事も無かったように学校が始まる。

教室の席が一つ少なくなっていることに気づく者はいない。

放課後、いつものように先輩が彼女に声をかける。

右耳に黒の勾玉、左耳に白の勾玉。

黒と白の入り混じったその少女は嬉しそうに笑った。



③縁断ちの剣

テーマは分離。


これは「エンダチノツルギ」だと四国めたんが語る。

良縁だろうと悪縁だろうとその人との因縁を確実に断つことができる。

夏色花梨はそんな御託はいいから早くあの男との縁を切ってくれと頼む。

自分にずっと付き纏ってるあの男との縁を…


高校3年生の夏、ちょっとしたきっかけで付き纏われるようになった他校の男。

地域の有力者の息子のようで強硬な手段も取れず困り果てていた頃、友人の伝手で胡散臭い霊能力者を頼ることになった。

半信半疑だったが駄目で元々と縁切りをしてもらった。

それから驚くことに一度もあの男の姿を見ていない。

噂によると彼は交通事故に遭い入院しているそうだ。

めたんの話を思い返す。

因縁を断ち切った相手とはどれだけ近づこうとしても近づくことはできず、それでも尚近づこうとすれば災いが降りかかる。

もう生涯あの男に付き纏われることは無いのだと思うと清々しい気分だった。


それから10年、そんな出来事もすっかり忘れた頃、花梨には付き合っている男性が出来ていた。

近々結婚も考えていて順風満帆な人生だった。

ただ一つ懸念点があるとすれば彼の持病だった。

ある夜道、発作を起こし路上へ蹲る彼。花梨は携帯で救急にかけようとする。

繋がらない。

見ると画面は暗くなっていて電源ボタンを押しても何の反応も返さなかった。

こんな時に故障かと焦りながら公衆電話を探す。

誰かに助けを求めようとするが辺りはしんと静まり返っていて人の気配はない。

結局離れた公衆電話まで辿り着き、電話をかけようとする。

繋がらない。

怒りと悲しみで取り乱し、電話機を蹴りつける花梨。

尚も助けを呼ぶ方法を探そうとする彼女の耳に、ブレーキ音が届く。

突っ込んできたトラックは電話ボックスごと彼女を押し潰した。


運び込まれてきた患者を悲しげに見つめる白衣の青年。

首を振り、死亡診断書の作成に取り掛かる。

まだ若いその女性の損傷は激しく、身元確認すらできていない状況だった。

かつては恋情に振り回されストーカー行為にまで手を染めた彼も、10年の月日を経て立派な救命医へと姿を変えていた。



④呼び声トンネル

おまけ。小春六花の出番が無かったから。


ランニング中、「おーい、助けてくれー!」という声に足を止める小春六花。

声の出所を探していると小さなトンネルに行き着く。

「大丈夫ですかー!」と声を返しながらトンネルに踏み入れる六花。

すると反対側の出入り口から走り去っていく人影が見えた。

いたずらだったのかと呆れる六花。

踵を返し立ち去ろうとする。


気づいたらトンネルの反対側に立っていた。

状況を理解できない六花。

今度は反対側の出入り口から出ようとする。

再びトンネルの反対側へ、元々入ってきた方へと移動していた。

ループしていることに気づいたのはそれを何度か繰り返した後だった。

得体の知れない状況に混乱し、取り乱す六花。

「誰か!誰かいませんかー!助けてくださーい!」と叫ぶ。

「大丈夫かー!?」と遠くから声が返って来る。

人に見つけてもらえたことがわかり安堵する六花。

だがその時あることに気づく。


「おーい、助けてくださーい!」と引き続き声を上げながらタイミングを見計らう。

トンネルの向こうから誰かが足を踏み入れたのを見届け、走り出す。

出入り口がループすることは無く、そのまま脱け出せた。

六花はそのまま振り返らずに走って行った。

「いたずらだったのか?」と怪訝な顔をする少女。

彼女がトンネルから出られなくなったのに気づくのは、もう少し後のこと…



2024年5月15日水曜日

青山探偵事務所(仮)

青山が探偵、紡乃世が助手の推理モノの構想。 

後でちょっとずつ埋めとく。


1.冒涜者

登場人物:冥鳴ひまり、春日部つむぎ

依頼者:つむぎの両親

テーマ:肝試し

オカルトユーチューバーのひまりとつむぎ。

肝試しに向かった空き家にてひまりが刺殺。つむぎが容疑者として警察に拘留される。

つむぎはひまりが包丁を持った幽霊に殺されたと証言。

つむぎの無実を証明するため、青山と紡乃世は幽霊の正体を探る。


2.這う女

登場人物:ついなちゃん、つくよみちゃん

依頼者:オカルト雑誌の編集

テーマ:都市伝説

オカルト記事の取材のためとある町を訪れた青山と紡乃世。

上半身だけの女が道路を這っているという噂の真相を調べる。

噂の元凶となった悲惨な事故。

刑事の玄野と共に隠された真実へと迫っていく。


3.烽火

登場人物:東北きりたん、音街ウナ

依頼者:玄野武宏

テーマ:狐火

玄野からの依頼により青山と紡乃世は連続放火事件の調査に当たる。

玄野は犯人が子供なのではと考えており、穏便な解決を望む。

犯行の手口を突き止め、現行犯で捕まえようとする青山ら。

姿の見えない放火犯との知恵比べが始まる。


4.悪魔が来りて喉笛を

登場人物:小春六花、夏色花梨

依頼者:花隈千冬

テーマ:祟り

オカルト研究会に所属する六花と花梨。

花梨が何者かに殺害されたことで六花は過激な研究へと没頭していく。

後輩の千冬はそんな彼女の姿を見かね、青山に事件の調査を依頼する。

果たして祟りは存在するのか、花梨の死の真相を探っていく。


5.無数のあなたへ

登場人物:桜乃そら

依頼者:卒業生ら

テーマ:ドッペルゲンガー

高校教師のそらがとある殺人事件の容疑者として逮捕される。

捜査が進む中でそらの目撃情報が上がり、彼女のアリバイが成立する。

しかし、そらはその証言を否定した。

誰が本当のことを言っているのか、青山は迷走する。


6.共振の森

登場人物:琴葉葵、琴葉茜

依頼者:琴葉葵

テーマ:双子

行方不明になった姉を探してほしい。

青山と紡乃世は実に探偵らしい依頼を受ける。

双子である自分たちは近づけばわかると語る葵。

ダウジング方式で片割れを探す不思議な物語。


7.月の都

登場人物:結月ゆかり、紲星あかり

依頼者:あかりの両親

テーマ:新興宗教

怪しげな宗教にはまってしまった娘を助けてほしい。

そんな依頼を受けた青山と紡乃世は新興宗教「月の都」へと潜入する。

依頼者の娘あかりは教祖のゆかりを信奉しきっていた。

青山はあかりの目を覚ますため教団の闇を暴こうと奮闘する。


8.

登場人物:青山龍星、紡乃世詞音

依頼者:

テーマ:


2024年1月11日木曜日

「不可触」「黒猫」「捨六」

怪談っぽい何か。

次の動画用。


『不可触』

近づいちゃいけないと言われていたその家に入ったのは好奇心からだった。

当時小学生だった私たち数人。学校終わりの夕暮れ時のことだった。

足を踏み入れた瞬間から私は嫌な感じがしていた。荒れている、汚れている以上の何かを感じ取っていた。

他のみんなは気づかなかったようで、はしゃぎながら家を物色していた。

彼らに混じるのは気が引け、私は玄関の方に突っ立って辺りを見回していた。

玄関脇に置かれた電話の隣、何かカラフルなものがあった。古いアニメのキーホルダーのようだ。

この家でも昔は家族が暮らしていたことが思い浮かび、申し訳ない気持ちになる。

みんなにもう帰ろうと声をかけようとしたとき、階段から物音がした。

彼らに混じるのは気が引け、私は玄関の方に突っ立って辺りを見回していた。

玄関脇に置かれた電話の隣、何かカラフルなものがあった。古いアニメのキーホルダーのようだ。

この家でも昔は家族が暮らしていたことが思い浮かび、申し訳ない気持ちになる。

みんなにもう帰ろうと声をかけようとしたとき、階段から物音がした。

背筋がぞっとした。みんなはまだ1階を見回っているはずだった。

階段からは物音が続いている。誰かが下りてきているのだ。

黒ずんだ素足が見えた時、私は悲鳴を上げて逃げ出した。

私の悲鳴に驚いて騒ぐみんなの声に混じって、何かの叫び声が聞こえた。

あー、あーという調子の外れた甲高い不気味な声だった。

振り返ると私と同じように逃げ出しているみんなの姿が見えた。そして開け放たれた玄関の先、家の中で大きな影が揺れていた。

そいつと目が合ったような気がして私はそのまま家に逃げ帰ることにした。

人通りのないあぜ道を駆ける。後ろからあー、あーとあいつの声が聞こえていた。追ってきているのだ。

私は泣きそうになるのを必死にこらえて走った。恐怖と後悔でいっぱいだった。

やっとの思いで家までたどり着くと、大急ぎで中に入り鍵をかけた。

磨りガラス越しにその何かの影が見える。

そいつはあー、あーと苦しげに呻きながら扉を叩いていた。

私は動けずにじっと扉を見つめていた。壊されてそいつが入って来るんじゃないかと思うと気が気でなかった。

何時間くらい経っただろうか。

玄関の向こうから怒鳴り声がしてあー、あーという声は遠ざかっていった。

鍵の回る音がして、扉が開かれる。両親だった。

母は今にも泣き出しそうな顔をしていて父は今にも怒り出しそうな顔をしていた。

「お前、あそこに行ったのか。」

父が低い声で問いかける。

「他に行ったのは誰だ。お前だけじゃないだろ。」

今まで見たことのない父の剣幕に隠し事なんてできなかった。私はあの家に行った全員の名前を言った。

父はどこかに電話し始め、私は母に2階の自室に連れて行かれた。

その日はご飯もお風呂もなく、私は布団にくるまって震えていた。

どこからかあー、あーという声が聞こえていた。


次の日の朝、父と母が部屋にやって来た。

母は泣きはらした顔をしていて父は神妙な顔をしていた。

「いいか。お前をこれからおじいちゃんたちの所まで連れて行く。車に乗るまで何も見えていないし聞こえていない振りをしろ。」

何が起こっているのかはわからなかったが、ただ頷くことしかできなかった。

タオルケットを頭から被ったまま家の外へ出る。途端にあー、あーという声が聞こえてきた。近い。

母に連れられて車の後部座席に乗り込む。遅れて父が運転席に乗り込んでくる音がした。

あの声はまだ聞こえていた。車をバンバンと叩く音も聞こえる。

車が走り出すとすぐに声と音は聞こえなくなった。

安心して顔を上げる。車のバックミラーに映るそいつの姿はすぐに小さくなって見えなくなった。


結局私はそのまま祖父母の元で暮らすことになった。

学校も転校することになり、一緒にあの家に行ったみんなとはあれから一度も会っていない。

父の話によると彼らには何事もなかったそうだが、実際のところはわからない。

父と母は数年の間は行ったり来たりしていたが、今はもう祖父母の元に腰を落ち着けていた。

大人になり私がこの町に帰ってきた時には両親と暮らした家は引き払われていた。

数年ぶりに懐かしいあぜ道を歩く。目的地はあの近づいちゃいけない家だ。

当時はわからなかった。

なぜあの家に近づいてはいけないのか。

私を追いかけ回したあいつは何だったのか。

今ならわかる。触れてはならない存在の正体が。

あの場所は更地になっていた。唯一の住人が死んでからすぐに取り壊されたそうだ。その痕跡を消し去るように。

死因は餓死だったそうだ。何かの事故で足を折ってから、治療を受けることもできずにそのまま亡くなったらしい。彼には助けの求め方もわからなかったのだ。

あの時持って行ってしまったキーホルダーを地面に供える。きっと家族との思い出の品だったのだろう。

「ごめんなさい…」

私はようやく言うべき言葉を口にできた。



『黒猫』

私は幼い頃施設で暮らしていた。いわゆる孤児というものだろう。

父の顔は知らない。母が私を育てていたが、ある日から帰って来なくなった。

ひもじさと寂しさに耐えていると知らない人たちがやって来て、私を施設に連れて行った。

施設での生活は悪くなかった。身の回りの世話はやってくれたし、私と同じような境遇の仲間たちも大勢いた。

不安がってる者たちも居たが、多くはこの場所を居心地よく感じているようだった。私も毎日の食事と寝床の心配が無くなっただけで充分だった。

私たちの世話をしてくれる人たちの顔は覚えたが、施設にはそれ以外にもよくわからない人たちが出入りしていた。年齢や性別、人数もバラバラでどういった目的で施設を訪れているのかはわからなかった。

私は彼らのことが嫌いだった。ジロジロとこちらを不躾に眺めてくる視線がとても不快だった。急に体を触られそうになった時さえある。

だがなんとなく彼らに逆らってはいけないということは理解していた。

時々仲間の中から彼らに連れられて施設を出て行く者がいた。施設で働いている人たちの話を盗み聞くと、どうやら今後は彼らの家で暮らすらしい。

今更また知らない人の家で暮らすのは嫌だった。だけどそうも言っていられないのではという疑念もあった。

施設に居るのは子供だけだ。長く暮らした者たちは皆どこかしらに連れて行かれた。

ずっと居ていい場所では無いのだろう。誰にも引き取られなかった場合はどうなるのか。それを考えると母が帰って来なくなった頃のような焦りと不安を感じた。

自分の立場を弁えて大人しくしていたことが好意的に映ったのか、私はある日施設から連れ出された。

相手は女の人だった。若く見えたが目を凝らすと化粧の下の皺は思いの外深かった。

私は一抹の不安を胸に新たな住み家へと旅立った。


女との暮らしは結論から言って最悪だった。

最初こそ私を必要以上に可愛がりあれこれと買い与えていた女は一月も経たずに私への関心を失った。

私の世話をすることは無くなり、食事も時々しか貰えなくなった。そのことに不満を訴えると無言でお腹を蹴られた。

女は夜遅くまで帰って来ず、その間私は部屋の中にずっと閉じ込められていた。女はいつも酔っ払っていて帰るとすぐにベッドに寝転がっていびきを立てていた。

幼少期のひもじさと寂しさを再び噛み締める日々だった。

だがそんな生活にも救いはあった。

気に入らないことがあった時、来客があった時、女は私をベランダに追い出した。

そのまま逃げてしまいたかったが地面ははるか遠く飛び降りる気にはならない。

私がベランダで泣いていると隣のベランダから声がかかった。

「大丈夫かい?」

私はその声に導かれるように隣のベランダへと乗り移り、彼の部屋を訪ねた。

彼の部屋は整然としており、棚には分厚い本がいくつも並べられていた。興味深そうに眺めていた私を彼は突然抱きかかえるとお風呂場に連れて行った。

びっくりして思わず爪を立ててしまった私の頭を優しく撫で、心配ないと囁く彼。私は暴れたことが恥ずかしくなってじっとしていた。

体を洗われ、ドライヤーをかけられる。施設に居た頃にもやってもらったことがある。

私がうっとりしていると彼が頭を撫でてきた。

彼の手が徐々に下がっていく。首筋、肩、背中、お腹。

彼を見つめる。彼は穏やかな微笑を浮かべていた。

私は目を閉じ、されるがままにしていた。


それから私は彼の元へ足しげく通うようになった。

季節が夏に変わりベランダへ続く窓が開け放たれたままになったことで、隣室への移動は容易になった。

彼は私が望んだ全てを与えてくれた。清潔な環境、きれいな体、美味しい食事、そして愛情。

私はいつしか彼と一緒に暮らしたいと望むようになった。

ある日、玄関を出たところで女が誰かと揉めていた。声は聞こえないが相手はどうやら彼のようだ。

勝手に私の世話をしていたことがばれたのだ。女は一体どういう神経をしているのか彼に怒りの言葉をぶつけていた。

このままではまずい。彼との仲を引き裂かれることは私にとって精神的にも生活的にも許容できないことだった。

私は決断が迫られていることを理解した。


女はその日も酔って帰って来た。

仰向けになって眠る女に気配を殺して近づく。傍らのクッションを女の口と鼻が塞がれるように乗せて押さえつける。

ここからが勝負だ。きっと暴れられるだろうが何とか窒息死するまで持ちこたえなければならない。

もし跳ね除けられたらベランダに誘い込んで転落死を狙おうと考えていると、女が大きく跳ねた。クッションを押さえつける腕に緊張が走る。

だがそれからいつまで待っても予想していたような激しい抵抗は起こらなかった。

数十分が過ぎたことを確認してクッションをどかす。女は息をしていない。

こんなに呆気ないはずがないと思ってもう1度クッションを顔に乗せ、押さえつけるというより乗っかった。女は何の反応も示さなかった。

朝が来るまで私はそうしていた。

隣の部屋からの物音で彼の起床に気づき、クッションから降りる。

呼吸音は聞こえない。どうやら本当に死んだようだ。

私は実に清々しい気分になってベランダに飛び出し隣の部屋に移った。

私の姿を見つけた彼は少し逡巡していたが、窓を開けて私を招き入れた。

「ダメだって言われてるんだけどね。」

もうそんなことを言う奴はいない。苦笑いを浮かべる彼に目一杯ほおずりする。

「今日はずいぶんご機嫌だね。」

私は彼の問いかけに応えるようにニャーと鳴いた。



『捨六』

「いたか!?」

「いや、まだ見つからない!」

吹雪の中、村の男たちが総出で捜索に当たる。

捨六が村を飛び出してすぐに皆で追いかけた。まだ遠くには行っていないはずだ。

この雪だ。身動きが取れなくなればすぐに埋もれてしまう。そうしたら春まで見つけることはできなくなるだろう。

太一は歯を強く嚙み締める。俺のせいだ。俺が不用意にあんなことを言ったから。

捨六はどこぞの農村から流れついた十五、六の子供だ。要らない六男坊、口減らしのために村から追い出されたのだろう。

この寒村では人手が足りていなかったこともあり、村全体で面倒を見ていた。捨六は手先が器用で、狩猟道具の手入れに重宝していた。

太一は捨六をよく可愛がり、狩りに連れていくこともあった。だが捨六は所詮余所者、村人たちからはやはり一線を引かれていた。捨六がそのことに気づいていると知っていたのに。

地面に転がる黒い影に気づく。

「捨六!」

とっさに大声をかける。

影はビクリと体を震わせ、白い顔をこちらに向けた。捨六だ。

「探したんだぞ。さあ一緒に帰ろう。」

大股で捨六に歩み寄る。捨六は首を振りながら後ずさった。

「大丈夫だ。もう心配いらない。お前は勘違いしてるんだ。」

不安を拭うように優しく笑いかける。

「お前は村の一員だ。そんなことあるもんか。そうだ、春になったら俺の銃を撃たせてやる。お前撃ちたがってたろう。」

座り込んでしまった捨六に手を差し伸べる。

捨六は恐る恐る手を差し出し、太一の手を掴んだ。

太一はそのまま捨六を引き寄せると、もう片方の手に握っていた鉈で捨六の頭を叩き割った。

一瞬の出来事で捨六には何が起こったかわからなかっただろう。

動かなくなった捨六を引きずりながら太一は村へと急ぐ。

今年の冬はとりわけ厳しく、獣一匹鳥一羽見つからなかった。だから仕方ないのだ。

春はまだ遠い。



2023年12月28日木曜日

未完成ネタのメモ書き

 メモ書き。

「這う女」の下書きが思ったより長くなりそうなのでこっちに。

後でもうちょっと書き足す。


①放火事件を題材としたミステリ

火をつけることが目的だったのではなく、燃やすことが目的だったみたいな展開。

放火に用いた紙片、ライターもしくはオイルを処分することに意味があった。

ノートの破りとったページであれば、そこに書かれた内容、またはノートが誰の所有物であったのかが鍵となる。

ライターであれば、その場所にライターが存在した事実に別の解釈を与えたかった。例えば、喫煙のために使われていたライターを、放火のために外部から持ち込まれたものに偽装するなど。

構想のようなものはできているがまだ盛り込む要素が足りない。


②浮気を問い詰めるやつ

車でのデート中、車内から見慣れないイヤリングを見つけ、口論になる男女。

浮気を疑い問い詰める女に、後ろめたいことがあるように狼狽する男。

観念した男は浮気相手のことを話し始める。

遊びのつもりだった。向こうが次第に別れるようにと迫ってきた。

怒りと悲しみで泣きそうになる女。男は突然女を押し倒し、首に手をかける。

苦しげに呻く女。抜け出そうと藻掻くうちにイヤリングが外れて座席の隙間に落ちる。

最初に誰かのイヤリングを見つけた場所と同じだった。その持ち主もきっと今と同じような状況でイヤリングを落としたのだろう。

男はしかたないしかたないと呟き続けていた。


③オートロック

扉を叩く音に気づいて玄関へと走る。

インターホンが故障しているため、宅配の人には不便をかけてしまっている。あまり待たせたくはない。

急いで扉を開け放ってから気づいた。

このマンションはオートロックだった。


【解説】

今インターホンが故障しててオートロックのかかってる共用玄関とはつながるが、自分の部屋の玄関前とはつながらない。

だから来客があった際は共用玄関からインターホンが鳴り、こちらからの操作でオートロックを解除、来客が自室までたどり着くのを見計らって部屋の玄関を開けるという行程をとっている。

上述の話だとオートロックを解除していないのに扉をたたかれているため、相手は不正な方法で侵入してきた相手だと言える。

て意味怖を考えたけどボツ。

まず状況がわかりづらい。オートロック云々がそういうマンションに住んでないと知らないことだしインターホンの故障がどんなものなのかも不明確。

次に扉を叩いた相手が不審人物とは限らない。同じマンションの住人なら当然オートロックを解除してもらわなくても部屋まで普通にやって来れる。

ということは玄関を開けた先にいた人物が何らかの異常な相手である必要があるが、それもあまりいいのが思いつかない。ただのストーカーではあまりに芸がない。

オートロックのマンションという舞台装置はなにかうまい使い方がありそうなので今後も要検討。


④近づいちゃいけない家

これも思いついたけどたぶんボツ。

町外れにある古びた家。そこにはけして近づいてはいけないと子どもたちはきつく言われていた。

主人公の少女と友人の男女数名で肝試し気分で探検に向かう。小学生くらいの想定。

荒れ果ててはいたが生ゴミやマンガも散らかっており、生活感があった。

住人らしき男と出会う一同。男は子どもたちを見つけると奇声を上げながら追いかけてきた。

散り散りになって逃げるも、男は主人公の少女を追いかけてくる。

自宅まで逃げて立てこもる主人公。男は何か意味不明なことを呟きながらドアを叩き続けていた。

両親が帰宅し、男を何処かに追い払う。お前、あそこに行ったんかとなる。

もうこの街にはいられないと言われ、彼女は転校することになる。

一晩中どこからか男の声と物音が聞こえていた翌朝、彼女は車に乗せられて街の外へ向かう。

男のことは見えていないし聞こえていない振りをしろと言われ、大人たちも皆そうしていた。

街の外までは追って来ないからと母が泣きながら言い聞かす。

男の叫び声と車を叩く音はやがて聞こえなくなった。


【解説】

これだけじゃまだわからないと思うんで補足すると、男は知能と精神に問題がある障害者です。

何をやっても罪に問われず、親の持ち家で生活保護を貰いながら一人で生活しています。

以前も子供を襲ったため街の大人たちは子供を近づけさせないようにしていますが、今回少女が標的になってしまいました。

一度狙った相手を執拗に追いかけるため、少女はやむなく引っ越すことになったというわけです。

障害者が手厚く保護され、拘束することも追い出すこともできなくなった歪な社会を描いた風刺物とも言えます。流石に現代ではこんなことないだろとは思う。

お察しの通りダメなやつです。差別を助長しヘイトを煽るようなものですし、教育的な価値も特にない。

何があっても開けてはいけないと蔵に閉じ込められ、一晩中叫び声。翌朝扉には男の精液が付着していた。

男の注意を逸らすため顔と体を隠して替え玉を立てる。男は何故か動物的な勘で本物の少女を探り当てる。

みたいな洒落怖でやるような奴を転用しようかと考えてました。


叙述トリックを使って、あくまで男を何かしらの怪異のように描く。

十年後と時間が飛んで、主人公が近づいちゃいけない家に再びやってきた場面。

当時はわからなかった。

あいつは一体何だったのか。

なぜ私をつけ狙ったのか。

…どうして誰も警察を呼ばなかったのか。

年を取り、町の事情やあの人の事情を知って私は何とも言えない気持ちになった。

もっと別のやり方もあったんじゃないか。

そんな風に思うのは私がまだ世の中を知らない子供だからだろうか。

今私は役場の職員としてこの家に戻ってきた。

あの人は完全に腐敗し、一部が白骨化した状態でようやく発見されたそうだ。

転んで骨を負った後、治療を受けることもできずに自宅でそのまま餓死したらしい。

私は畳に残った染みに手を合わせた。


こういう作り方ならまだ教育的価値っていうか文学的価値が生まれるな。

法で守られた障害者の犯罪者は怪物ですが、怪物怖いで済ます類の問題ではないでしょう。

読者に思考や情動をもたらす、少なくとも作者は思考や情動を持って取り扱うべき題材。

それでもまぁ「こんなんあったら怖いやろなぁ(ニチャア)」みたいな意図が残ってる気がするので動画にはならない。


以上4点、あんまり使えるネタが増えない。

1月初頭くらいまでは実家にいるんでもうちょっと何か書くと思います。動画は出ないです。

自宅帰ったらたぶん「虜囚」を終わらせる。


2023年12月5日火曜日

冒涜者/這う女

脳が錆びついてきた感じがするので少し頭を絞ってみる。

虜囚の方はプロットはできてるので後は最後まで走りきるだけ。

続き物ばっか作ってるとやっぱ駄目だな。


「冒涜者(仮称)」

取調べを受ける一人の少女。

彼女は先日心霊スポットに行った時の出来事を語る。

包丁を持った幽霊に襲われ、一緒に居た友人を見捨てて逃げたと。

刑事が口を開く。

「そうして彼女は死体で発見された。」

警察は少女を疑っていた。

廃墟で友人を殺害後、錯乱状態に陥って幽霊が現れたと思い込んでいるのではないかと。

彼女たちの通う学校の関係者、近隣住民への調査を進めていく。

二人の間にトラブルは見つからなかった。

代わりに心霊スポットの曰くについて幾つかの事実が判明する。

過去に確かにその家では夫婦が心中していたが、彼らと懇意にしていた叔母は存命であること。

実際に包丁を持った女が映った心霊写真が撮影されていたこと。

幽霊の正体は叔母であり、思い出の家を荒らす者たちを襲っていたことが推測される。


END1

叔母が指名手配され、少女は釈放される。

彼女が再び襲われる可能性を危惧し、身辺を警護する警察。

彼女の部屋から悲鳴が響く。

慌てて踏み込む警察。

彼らの目の前で血のついた包丁を持った女はスーッと消えていった。

血まみれの少女の前で彼らは立ち尽くすしかなかった。


END2

こっちは起承転の部分からちょっと違う。

主人公は少女の両親から依頼を受けた探偵。

少女の疑いを晴らすため、幽霊の存在を証明することになる。

調査を進める中で、かつて心霊スポットを訪れた者が撮影した心霊写真を入手する。

また、心霊スポットとなっている家はかつて夫婦が心中しており、その原因は一人息子の死にあることを突き止める。

彼は電車に轢かれて死亡していた。発達に問題があった彼は駅で迷い、誤って線路に落ちたらしい。

通院のためその駅をよく利用していたという老婆は、苦々しく当時のことを語る。

線路の上でおろおろと狼狽える彼を誰も助けようとはしなかった。罵声を浴びせるか、携帯で撮影するか、無視するか。それは電車が通過してからもそうだった。

駅のホームで両親らしき人物が騒ぎ出した時も、周囲の人は遠巻きに撮影するか、見て見ぬ振りであったそうだ。

探偵はその後も調査を進め、事故の新聞や家の写真から親子と仲の良かった人物、叔母の存在を見つけ出す。

事故が起こったのは、父親と叔母と息子の三人で入院中の母親を見舞いに行った帰りであった。

探偵は調査内容を元に叔母が真犯人であることを主張して少女の釈放を求めることを決める。

その時、ふと考える。

心霊写真を撮影したかつての訪問者は追い払われただけだ。

それなのになぜ今回は殺害されたのだろう。明確な殺意を持って。

少女たちはこれまでも何度か心霊スポットを巡ることがあったらしい。

調査の途中で見た、その様子を撮影した映像を思い出す。

叔母の目には嬉々としてスマホを向け家を物色する姿が、かつて駅のホームで見た無責任な撮影者たちに重なったのではないだろうか。

いや、あるいは実際に彼女たちはあの場にいて、当時も同じように嬉々として惨事を撮影していたのでは…

探偵はそこまで考えてさすがに邪推だと首を振った。


【解説】

END2の方が推し。でもEND1も捨てがたい。同時に成立可能だし。

幽霊に襲われた友達を見捨てて逃げるのは怪談ではよくある。

だがもし見捨てた友達が死体で発見されたら絶対疑われるよなってのが着想の一歩目。

幽霊と見せかけて生身の人間って言うのもよくある話。

一家心中した家とか心霊スポットになることあるけど、亡くなった方や遺族のこと考えたら面白半分で行く奴頭おかしいよなとは前から思ってた。

押切蓮介の漫画で一家心中した後幽霊になって、肝試しに来て傍若無人に振る舞う連中を成すすべなく見続けるしかなくなるってのがあった気がする。

後はいつぞやの障害者が線路に降りて母親が抱き締めてたのがクッソ叩かれてたの。

補足情報。

殺された少女と警察に拘留されてる少女の二人組は心霊系Youtuber。そんなに人気ではない。探偵は参考資料として彼女たちの動画を視聴した。

拘留されている少女が主な撮影担当。殺された少女が画面に写ってリアクションをとる。

殺された少女はスマホをライト代わりにしており、特徴的なストラップをつけている。それによって数年前の事故の時のあいつだと叔母に思われた、みたいな推測の根拠がある。

少女とか言ったけど大学生を想定してる。

事故が起こった駅は、大きな病院の最寄り駅。

老婆が何年も通院しているという話から匂わせ、障害のある息子を連れ出した理由が入院中の母親の見舞いであるという気づきにつなげる。

ちなみに老婆はあの時の周囲の人の態度はひどかったみたいなことを言ってるけど、この人も何もしていない。

探偵を青山、少女たちが通う大学の同級生を紡乃世にして、青山と紡乃世のセットで進めてみたい。あと心霊写真を撮った先駆者は伊織弓弦にしてみようかな。

てことで当分は作らない。


「這う女(仮称)」

女学生が交通事故により上半身と下半身が断裂して死亡。彼女は上半身だけになってもしばらく息があり、道路を這って進んだという。

そんな出来事があった以上、その場所で上半身だけの女の霊が出るという噂が流れたのも無理はないことだった。

私立探偵青山龍生は噂の真相を確かめるべく調査に向かい、思いがけず事故の真相にも迫っていく。


【解説】

どういう形式で扱うか決め兼ねたので暫定的に青山探偵に任せることにする。

以下ネタバレ。まだ詰めきれてないけど。

交通事故によって上半身と下半身が分断されることは通常ありえない。青山は当初その事故当時の状況は脚色されたものだと考えていた。

しかし捜査関係者の話によると確かに被害者は体を両断されたそうだ。以下は青山の幼馴染で刑事の玄野の談。

道路を這っていく少女の上半身を目撃したのは、彼女を轢いたトラックの運転手と後続の運転手。どちらも一生物のトラウマとなったようだ。

その日は大雨が降っていて血の跡こそなくなっていたが、上半身は確かに道路の反対側まで移動しており、位置関係から跳ね飛ばされたわけではないことも確認された。

大雨による視界不良が事故の原因とされ、トラックの運転手は逮捕されていた。少女の姿は全く見えず、何かに乗り上げたような衝撃に車を止め、事故に気づいたそうだ。

どれほどの罪に問われるかは図りかねているらしい。状況が特殊だったからだ。

上半身と下半身の切断、乗り上げたような衝撃、切断が走行中のタイヤによるものだと考えると…

少女は道路に横になっていたことになる。

切断面に残されたタイヤ痕から考えると、少女は道路にうつ伏せになっていた。その時点では生きていたことが上半身だけで動いていた目撃情報と、傷口の生体反応からわかっている。意識があったかは不明。

そのような状況にあった理由として考えられるのは3つ。

まず自分の意思で横たわっていた。この場合は自殺ということになるが、なぜそんな死に方を選んだのかという疑問が残る。

次に何かの病気で昏倒した。彼女に持病はなく、どういった原因が考えられるかは検視の結果次第。この場合は運悪く道路で倒れて轢かれた事故ということになる。

最後に何者かによって突き飛ばされた。トラックが近づいてくるのを見計らって一緒にいた相手が彼女を車道に突き飛ばす。倒れた彼女は走行中のトラックのタイヤによってそのまま…この場合は殺人だ。

玄野はどれも曖昧だが、個人的には殺人の線が濃いと語る。被害者は両断されてからも道路の向こう側へと這って行っている。まるで何かから逃げるように。

容疑者はいるのかと尋ねる青山に、玄野は黙って首を振る。わからないという意味ではなく話せないという意味だろう。

青山はただの幽霊騒ぎではないことを察し、依頼を断るか考えていた。


同じく噂の真相を確かめるべく活動していた紡乃世と合流し、事故現場を実際に見に行くことになる。

事故が起こったのは人通りも車通りも少ないT字路。用水路沿いに敷設された一車線の道路に閑静な住宅街から伸びた路地が合流する地点であった。

紡乃世と共に事故の状況をシミュレーションしてみる。特に新しい発見はなかった。

元々オカルト的な調査であったため、幽霊の目撃談について情報をまとめる方向に進む。

その中で青山は目撃情報が事故が起こった道路の方ではなく路地の方に集中していることに気づく。

上半身だけの女が地面を這っているのを見たという最初の目撃談も場所は路地の方だった。

実際に少女が這っていったのは道路の向こう側であり、反対方向だ。

事故の詳細な状況を誰もが知っているわけではないので、ただその交差点で事故があったという話から適当な噂が立っただけだと青山は考える。

紡乃世の意見は違っていて、少女の幽霊が路地で何かを探していると言い出した。

事故当時少女は路地で何らかの落とし物を探しており、そのまま気づかぬうちに交差点に侵入し、事故にあった。幽霊になってからも再び路地で落とし物を探している。

青山はその推論には否定的だった。幽霊の存在自体に懐疑的というのもあるが、事故にあったときの体勢が違う。四つん這いであればトラックとの接触時に跳ね飛ばされる。彼女は確かに横這いだったのだ。

だが一つ気づきがあった。膝をついて四つん這いになった時の少女のイメージ。上が白いブラウスで下が紺のスカート。夜道であれば下半身がよく見えず上半身だけが地面を探っているように見えるのではないか。

誰か、おそらく死亡した少女と同じ学校の女生徒が路地で夜な夜な何かを探している。


路地を張り込めば、その何者かを見つけられるか考える。

恐らく無理だろう。噂が流れ始めたのは数週間前、本人であれば自分の姿が幽霊と間違えられたことは察するはずだ。

既に探し物は諦めている。あるいはもう発見している。そう考えたほうが自然だ。

紡乃世が警察に遺留品として回収されている可能性を指摘する。

青山もその可能性を完全には否定しきれなかったが、たぶん彼女以外の人間がその場にいた痕跡があれば、警察は殺人罪で捜査を始めているはずだ。

当初から一貫して交通事故として扱われているということは、そういった痕跡はなかったということだ。もっとも初動で交通事故として扱ってしまったために見逃した可能性もあるが。

そこまで考えて青山は違和感を覚える。

事故が起こった交差点部分は確かに鑑識が入っただろう。と言っても屋外だし交通事故の調査だ。そこまで念入りなものだったとは思えないが、まぁまず何かが落ちていたら発見される。

では路地の方はどうだろうか。発見されない、以前に調査されていないのではないか。だってそっちは別に関係ないから。ただの通り道だから。

人気のない薄暗い路地を眺める。何かが起こったのはこっちか。


青山と紡乃世は町内の清掃ボランティアに参加していた。今回は側溝に溜まった汚れをさらうそうだ。それにはあの路地も含まれる。

もし探し物がまだ見つかっていないなら、「彼女」も参加するはずだと踏んでいた。どこかに流されてしまったならそれでもいいが、現場付近で見つかったらと思うと気が気でないはずだ。

参加者に若者はほとんどいなかったが、一人だけ女子高生がいた。彼女と一緒に事故があった交差点近辺の側溝掃除を担当することになる。

誰もその区域は担当したがらなかった。事故当時の大雨により血痕は洗い流され側溝へ。そう考えるとたしかに気味が悪い。

その女子高生は死亡した少女の友人だという。彼女の持ち物が残っていないか探すのと、彼女への弔いのために参加したと話した。

特徴は合致するが、彼女はとても落ち着いていて特に怪しむ要素は見つからなかった。

血の跡や肉片、髪の毛なんかが残っているなんてことはなく、凄惨な出来事を想起させることは何もなかった。

作業も終わり、彼女と少し話ができた。

青山と紡乃世が最近事故を嗅ぎ回っていることはバレていた。探偵であることは隠し、紡乃世のオカルトサークルの活動の一環だと嘘をつく。

幽霊の正体は恐らく自分だと彼女はあっさり認めた。友人がそんな死に方をしたことが信じられなくて、周囲を調べていたという。

なぜ路地ばかり調べていたのかという問いには、道路の方も調べていたがたまたま路地を調べている時に目撃されただけだと答えた。

なにか分かったことがあったら自分にも教えてほしいと彼女は頭を下げた。

明瞭な受け答え。何もおかしなところはない。それが却って青山の直感に引っかかった。

上半身だけになった少女が這っていったのは誰かから逃げようとしていたからではないか。彼女は誰かに襲われたのではないか。青山は玄野の推測を語る。

誰か心当たりはないか。その問いに彼女は首を振った。


幽霊の正体はわかった。これで青山の仕事は終わりである。

自分はもうこの件からは手を引くと青山は玄野に告げる。玄野は青山の捜査能力に感心していた。

捜査の参考にと自分の考察を述べる青山。

その日、下校中の少女は路地で何者かに襲われ逃亡。交差点付近で追いつかれ突き飛ばされる。運悪くそのタイミングでトラックがやってきて轢死。

その何者かは幽霊騒ぎの原因になった別の少女であり、彼女は路地での追走中に自身の特定に繋がる何かを落とし、それを探している。

玄野は驚きもしなかった。

心当たりがない、と答えたのかと問う玄野。最後の質問のことだろう。

青山はたぶん嘘だろうなと肯定する。玄野は何かを考えていた。

たぶん警察しか知らない情報と矛盾しているんだろう。

信頼できるかは分からないがと前置きして玄野が語る。

運転手は視界不良の中でも交差点付近では周囲に人影がないことを確認していたそうだ。

地面に横たわっている少女は見えないが他に誰かいれば気づいたと。

彼女は地面を這った状態で交差点に侵入し、上半身だけになってからも這い続けた。

玄野の仮説はとても気分が悪いものだった。路地で既に致命傷を負い、地面を這って逃げる。その先でトラックに轢かれ、それでもまだ…

それを証明できれば殺人事件として捜査できる。いや、できた。

何かを探していたのではなく、血の跡が残っていないかを確認していたんじゃないかと玄野は呟く。路地に血痕があれば誰かに襲われたと判断されるかもしれない。

傷跡はないのかと聞く青山。トラックとの接触事故以外でついた大きな傷があればそれが証拠になる。

見つからなかったが存在した可能性はあると玄野は答える。腹部に負った致命傷が、同じく腹部に受けたタイヤによる切断という巨大な傷によってかき消された。

このまま行ったら不幸な交通事故として処理される。

玄野は青山に刑事にはできない頼み事をする。


指定した時間に少女は路地へとやってきた。

停めてある車から青山が手を振る。彼女は静かに車に乗り込んだ。

見せたいものとは何かと聞く少女に、青山は下卑た笑みを浮かべる。

この前の側溝掃除の時にこっそり拾った、ずっとあれを探してたんだなと語りかける。

少女の表情が強張っているのがわかる。

青山は警察が殺人の線で捜査を進めていること、容疑者の一人に少女が挙がっていることを告げる。

黙っていてほしかったら、わかるだろと少女の下腹部を指差す。

彼女は呻くようにわかりましたと呟いた。

そう言うってことはやっぱり犯人なんだなと青山が悲しそうに笑う。

少女は一瞬理解が追いついていないように固まったが、すぐに察したようだ。

脅迫と自白の痛み分けだ。

やはり彼女は「何か」を探していた。青山にはそれがどんな物なのかもわからなかったが。

少女は冷静さを取り戻し、白ばっくれる。

青山は恐らく彼女が気づいていないだろう可能性を語る。

致命傷を負った彼女の友人が土砂降りの中アスファルトを這い、どこへ向かったのか。

少女は青山が何を言い出したのかわからず不思議そうな顔をする。


君は「何か」を落とした。君がいつも肌身離さず身につけていて、それが存在することが君がその場にいた証になるような「何か」だ。

君は逃げ去ってから君がそれを落としたことに気づいた。彼女は君が去ってすぐに君がそれを落としたことに気づいた。

側溝の隙間に落ち、流されてしまったなら安心だろう。だがどこかに引っ掛かってしまうかもしれない。君もその可能性に随分頭を悩ませたはずだ。

彼女もそうだった。だからもっと確実な場所を目指した。

用水路だよ。路地を通って道路を越えた先にある。

彼女はその「何か」を拾って用水路へ向かって這っていった。

路地を抜け、交差点でトラックに轢かれ、上半身だけになっても這い続けた。

そしてそれを用水路に落とし、力尽きた。

大雨によって増水した用水路がそれをどこまで運んでいったかは見当もつかない。

君が犯人であることを隠したかったのは君だけじゃない。君が殺した彼女もだ。


少女は青山の話を黙って聞いていた。

聞き終えてもまだ静寂の時間が続いた。

「…二人が親友の証でした。」

彼女がポツリと言い残し、車から降りた。

青山は彼女の方は見ずに、前方の交差点を見つめる。

路地を通って道路を超えて用水路まで。

這う女の幻影が見える気がした。


終わり。

下書きにしては長すぎだろ。

玄野サイドの情報も書いとく。

被害者の少女の交友関係を調べる。

犯人である少女は小学生の頃からの親友。彼女が好いていた相手が被害者の少女の方を好きになってしまったことが不和の原因。

犯人の少女に好かれ、被害者の少女を好いている少年。被害者の少女には振られ、しつこく付き纏うようになる。

振られた少年を第一候補、親友の少女を第二候補の容疑者とする。

犯人である親友の少女が、青山の問いに対して付き纏い行為をしていた少年を挙げなかったことに引っかかりを覚える。もっとも部外者に話すようなことではないが。

道路の血液反応を調べる、側溝をさらうといった捜査方法は効果と必要性の観点から却下されている。

そもそも殺人事件として捜査本部が立っていないので刑事としては越権気味。

他に詰めるべき点。

被害者が持っていたであろう傘と鞄の行方。鞄はもうちょっと状況を変えれば無くせるが、傘はそうは行かない。どっかに飛ばされたとしても多少の言及はあるべき。

用水路の描写を十分に入れる。河川から分岐させ、海へと続くような大きめの用水路であることを伝える。その際は用水路の描写だけが多くならないように、道路、路地、住宅街の様子も同程度入れる。

紡乃世はオカ研の活動。青山はオカルト記事の取材の下請け。探偵にしてはしょっぱい仕事だな。

動画にするときは最初と最後に被害者の少女のモノローグを入れるかもしれない。切断後道路を這う時と用水路に親友の証を流す時。

被害者自身が証拠隠滅に加担する珍しいタイプの殺人事件。


とりあえず2つ。都市伝説×ミステリみたいな感じで結構いい感じ。

シリーズ化できそうなほどのボリュームがあるがシリーズ物は増やしたくないジレンマがある。

「冒涜者」の殺された女を冥鳴ひまり、捕まった女を春日部つむぎ。「這う女」の切断された少女をつくよみちゃん、犯人の少女をついなちゃんで考えてます。

ついなちゃんの使い所がずっとわからなかったが、つくよみちゃんと背格好と髪色が似てるからここでぶっ込むしかない気がする。伊織も出るし。

来年作るかなぁ。


2023年11月1日水曜日

月喰

『月喰』

辺りも暗くなった頃、家路を急ぐ一人の少女、リリン。

学校のホームルームの時間を思い出す。最近行方不明になる人が増えているから、まっすぐ帰るようにときつく言われていた。

だが帰り道の途中、薄暗い路地へと消えていく自分と同じくらいの少女の後ろ姿を見かける。

リリンはお節介と思いつつも、心配になって彼女の背中を追うのであった。

月光を受けて揺らめくその少女の姿はまるで幽霊のようで、リリンは声をかけるのをためらう。

意を決して話しかける。彼女は冷たく愛想のない態度だったが、確かに生きている人間のように思えた。彼女は「つくよみ」と名乗った。

つくよみは人を探していると答えた。リリンは行方不明になった誰かを探しているのだろうと察して、二の舞にならぬよう早く帰った方がいいと忠告する。

つくよみはそれには答えずに歩き出し、リリンは後を追う。一人で帰るようにと促すつくよみに、リリンは一緒に帰ろうと追いすがる。

二人はそのまま人気のない夜の街を歩く。

そんな二人に声がかかる。

若い男の声。こんな時間に子供だけで危ないから車で送ると誘った。

リリンは警戒して断ろうとするが、つくよみは打って変わって愛想のいい態度で車に乗り込もうとする。

リリンはつくよみの手を掴み、それを食い止める。リリンの必死な様子につくよみは意外そうな表情を見せる。

やや苛立ちを見せ、強引につくよみを連れて行こうとした男をリリンは突き飛ばし、つくよみの手を引いて走り出す。

逃げる途中、二人は転倒しリリンは意識を失う。つくよみは彼女を心配している自分に驚く。

追いついてきた男がリリンを蹴ろうとするのを制し、彼女はほっといて二人きりで楽しもうと男に提案するつくよみ。積極的な彼女の姿に男は困惑と喜色を見せた。

二人で車まで戻り、乗り込む。つくよみの服を脱がそうとした男の手が止まる。

彼女の体の異常性に気づいた。

胸部には女性的な膨らみこそみられるものの乳房はなく、肩の関節は球体によって接続されていた。それはまるで女性を模した人形のような。

どうしたんですか?

変わらず蠱惑的な笑みを浮かべる彼女。だがその笑顔はもはや男に興奮を呼び起こすことはなく、代わりに恐怖を呼び起こした。

逃げ出そうとする男をつくよみは掴んで離さない。抜け出そうと暴れた男の腕が、彼女にぶつかる。

彼女の顔が落ちた。

厳密には彼女の顔に当たるパーツが落ちた。

その下には何もない。

ただ真っ暗な虚が口を広げていた。

男の叫びは男の体と共にその虚へと飲み込まれていった。


食事を終え、満足したつくよみが車を出て歩き出す。

少し早歩きで元の場所へ。リリンはまだ倒れていた。

リリンに顔を近づけるつくよみ。

しばらく彼女の顔を眺めた後、ため息をついた。

「まったくもう。」


リリンが目を覚ますと、つくよみの背中で揺られていた。

背丈もさほど変わらないリリンを負ぶうのは大変そうだが、つくよみは軽々と足を進めていく。

その顔には優しい笑みが浮かんでいた。

『月喰』 完


【解説】

その日から始まるのは二人きりの旅の空想。みたいな。

ショートホラームービーを見漁ってた頃、こんな感じの作りたいなーって思って作った奴です。

なんかこうアニメーション感マシマシの編集でやったらいい感じになりそうと思いつつ、編集意欲が尽きてしまって作ってない。

つくよみちゃんは人形の付喪神的なものみたいな設定をどこかで見た気がするんですが、今探しても見つからない。夢で見ただけかもしれない。私夢と現実の区別がついてないから。

球体関節と胸部を板にすること、顔が外れるようにすることはやろうと思えばできる。つくよみちゃんは割と何してもいいらしいからそういう役回りにしたい。

リリンちゃんもメスガキ感は薄いけど、私基本的に良い子が好きだからこういう性格になりそう。

解説するほどのことじゃないと思いますが、つくよみちゃんの「人を探している」は「獲物を探している」って意味で、男について行こうとしたのは餌が向こうからやってきたからです。

リリンちゃんを食べようとしなかったのは単純に好みじゃなかったからで、成人男性を好んで捕食します。

ちなみにこの若い男は「なかよしの魔法」に出てたロリコン野郎でこいつを殺しとかないといけないのでこの話が作られたというのもある。

月喰はツクハミと読む。


題名を考えてないけどもう1個。

家に帰る途中、若い男の後を不審な女がつけているのを目撃する。

男の家は偶然にも自分と同じマンションで、女が男の部屋に押し入ろうとしている現場に遭遇する。

成り行きで女を追い払う手助けをし、男に礼を言われる。

なんとなく男の部屋を気にかけるようになる。

家を出る時、帰る時、男の部屋の方をちらりと見る。それだけだが。

ある日、ベランダから男の部屋に侵入しようとしている女を発見する。

思わず大きな声が出た。

大声に驚いた女はバランスを崩してベランダから落ちて行った。

鈍い音が響く。

駆け寄ると女が血を流して倒れていた。助からないと一目でわかった。

女は凄まじい形相で男の部屋を睨み続けていた。

女は事故死ということで認められた。

男はあなたのせいではないと慰めてくれた。

だが罪悪感は消えなかった。

今もあの女の死に顔が頭から離れない。


転(若い男視点)

警察の事情聴取を終え、自室へと帰ってくる。

あの女にはずいぶん手を焼かされた。どうしてわかったのだろう。

扉を開けると、足をベッドに鎖でつながれた少女がこちらを見つめてくる。

もう何も話さなくなってずいぶん経つ。

「お母さん、死んだって。」

彼女にそう告げる。

少女の虚ろな瞳が見開かれ、涙が溢れた。


おしまい。

ストーカーの女ではなく、行方不明の娘を探す母親だったんですね。

男の部屋にいると気づいたのは愛か執念のなせる業か。証拠はないから警察は動かせず、自力で取り返そうとしたんでしょうね。

死に際に視線の先にあったのは自分の娘だった。そのことに主人公が気づくことはないでしょうね。

またロリコンの犯罪者が出てしまった。せっかく一人倒したのに。

こいつは小ネタ集のトリを飾れそうな奴。

今日はもう終わり!閉廷!おやすみ!


2023年7月20日木曜日

ネタ絞り出し

夏バテ気味でへばってます。7月ってこんな暑かったっけ。

先週の投稿をサボってしまったのでさすがに今週は何か出そうと、途中まで編集してほったらかしにしてた小ネタ集5を作ってます。

いつもなんだかんだで小ネタにしては長くなっちゃってたので今度こそはテキトーに作る。

以下思いついたけど使うか謎の奴。


1.年越しと同時にジャンプするやつ

「年越しと同時にジャンプするやつやりましょうよ。」

「いいですね。」

「それじゃあ行きますよ。10、9、8、7…」

「「0!」」

二人は息を合わせて跳び上がった。

彼女たちの体はそのまま地面へと吸い込まれていく。

年を越した時には、二人はもうこの世にはいなかった。


2.届かぬ言葉

「ご飯、置いとくから。お水も。」

いつものように母がそう声をかける。

俺は何も答えない。

「新しくパート決まってね。今夜から帰るの遅くなるから。ごめんね。」

疲れたような声で母が謝る。

俺は何も答えない。

「母さん!もういいだろ!」

玄関から父の怒鳴り声が響く。

父は母がいつまでも俺のことを気にかけるのを、あまり良く思ってない。

「それじゃあ、行ってくるね。」

そういって父と母は仕事に出かけて行った。

もう老人だというのに、二人とも働きづめだ。

俺が働いていたら、もっと楽な暮らしをさせてやれただろうか。

俺が生きていたら。


3.瘤付

「僕の将来の夢はお医者さんです!」

「僕のお母さんはいつもコブ付きだから結婚できないって怒ってます!コブ付きだから新しいお父さんが見つからないそうです!」

「僕はいっぱい勉強してお医者さんになって、お母さんからコブを取ってあげようと思います!いつかまたお父さんとお母さんと3人で楽しく暮らせたらいいなと思います!」


4.タイムカプセル

何か硬い感触がスコップを通して伝わる。

屈んで土を払いのけるとお菓子の缶が見えた。

もう一度スコップを突き立て、それを取り出す。

10年前に埋めた宝物、誰にも見つかってなくて良かった。

蓋を開けて中身を見る。

白い粉末の入った袋でいっぱいだ。

これでまた一稼ぎできる。



こんなもんで終わる。

そろそろ補遺か虜囚を作ってもいいが、8月に入ったら一回帰省しないといけないんだよな。半端な所で集中を切るくらいなら短いのを作り貯めしておこうか考え中。

夏だしずっとタイミングを失ってた「肝試しに行く演劇部」を作ってみようかな。

長文駄文失礼しました。


2023年6月10日土曜日

長めのネタの調整

新しいキーボードが届いてテンションが上がったので何か書く。

KeychronのK6を買った。海外通販で安く買えると思ったら遠隔地送料が5000円もかかって何も安くなかった。

Gateronの青軸だったが、なんか変な音がしてたのでAmazonで買ったセキセイインコ軸ってのに変えた。茶軸系列らしいが引っかかりの感覚は薄く、底を打った時の音が小気味よくて好き。でもうるさい。

これからキースイッチを変えて気分転換できそう。


書いてなかった長めのネタ。起承転結でまとめておく。


1.寄る辺なき者の歩み

舞台は小学校。主人公の少女はクラスで孤立気味で、空想の世界に浸っていた。小さな天使と悪魔の姿をした空想上の友達と心の中で会話しながら日々を送る。

家族仲は冷え切っており、夫婦は険悪、姉は無関心な様子で、彼女は家でも学校でも一人きりであった。

ある日、帰りの会に全員の前でスピーチをやらされる。大勢の視線に竦んでしまい、何も話せなくなる。

ただ時間が過ぎていく中、先生の怒りは膨れ上がり、クラスメートの苛立ちも募っていく。いつも話しかけてくれる小さな友達は、姿すら見えなかった。

それから主人公は周囲から嫌われ始め、やがて虐められるようになっていく。

放課後一人きりの教室、隠された自分の筆箱を探す。小さな友人たちは彼女を元気づけようと声をかけてくる。

主人公は彼女たちに対して怒りを露わにする。本当に自分が困ってるときは何一つ助けてくれないくせに、こういう時だけ仲間みたいな面をするのかと。

彼女たちは笑いだす。そんなのは当たり前だと。だって私たちはただの妄想なんだからと。

主人公は感情を抑えきれなくなり、暴れ出す。彼女たちの声は消えない。そうやって我を忘れたふりをして、不満を解消しようとする。周囲の気を引こうとする。打算でやっているのなんてお見通しだと。

自身を客観視した存在である彼女たちが消えないのは、主人公にまだ精神的な余裕がある証拠であった。

主人公は椅子を投げつけて窓ガラスを叩き割る。甲高い音と悲鳴が耳について彼女は血の気が引く。

二人の小さな友人が耳元で囁く。これから大変だと。

怪我人こそ出なかったものの、主人公の危険行為は教師や両親の知ることとなり、彼女は苛烈な非難に晒される。当然クラスでいじめられていることや、追い込まれた精神状態などは一切考慮されなかった。

家族会議が行われ、彼女をこのまま同じ学校に通わせ続けるべきか話し合いが行われる。彼女に対する信頼は完全に損なわれ、特別学級のある学校に転校させるべきではないかという話が出た。

主人公は何もかもを諦めた様子で、両親の話し合いを見つめていた。あれから小さな友人たちは現れない。

そんな時、彼女の姉が沈黙を破り、彼女の味方に立つ。彼女にも何か事情があったのだろうと。何も聞かずに話を進めるのはおかしいと。

ずいぶん長いこと話していなかった姉が自分を庇ってくれたことに、主人公は驚きを覚える。姉はけして目を合わせようとはしなかったが、両親との間に割って入り、代わりに弁論を続けていた。

長い話し合いの結果、主人公は他の学校の普通学級に転校することになる。

転校初日の朝、主人公が不安に暮れていると二人の小さな友人が久々に現れ、彼女を励ます。よくもまぁ抜け抜けと顔を出せたものだと彼女は苦笑する。

二人が現れるのは、自分の精神が安定している証拠であった。

玄関から姉の呼び声が聞こえる。学校まで送ってくれるそうだ。

主人公はその声に応え、新たな一歩を踏み出した。


【解説】

最初に考えた脚本。東北きりたんが主人公、イマジナリーフレンドが琴葉姉妹。

財布を拾った時に出てくる天使と悪魔をイメージしたデフォルメキャラが友達。他のイマジナリーフレンド系の話とは違ってマスコット的。

帰りの会で晒し上げられる展開をやりたかった。

鬱屈とした感情を描くタイプの奴で物語的な展開は少ない。元の脚本だと突然姉がやさしくなって無理矢理ハッピーエンドになったきらいがあるので、そのあたりの描写を増やす必要アリ。

イマジナリーフレンドの存在が主人公の精神状態を象徴したものであり、必ずしも彼女たちが居なくなることが、好転を意味しているわけではないのが特徴。


2.残存はかく語りき

舞台は大正くらい。主人公はちょっとだけ名の知れたミステリ作家。汽車に揺られながら避暑地に向かう。

向かいの席に一人の婦人が座る。彼女は主人公を雑誌の特集でお見かけしたことがあると語る。

思いがけずファンと出会い、気を良くした主人公は彼女と旅路を共にする。

彼女はミステリ作家の主人公ならばお身に召すかもしれないと身の上話を始める。

東北の寒村で育った彼女。厳冬の最中、外部から隔絶された状況で彼女の家族は一人、また一人と死んでいった。その様は事故とも他殺ともとれるようで、残された家族たちは徐々に疑心暗鬼に陥っていった。

そして冬を越す頃、生き残ったのは彼女だけであった。

主人公は彼女の真剣な語り口調と凄惨な内容に引き込まれる。

彼女は語り終えると、一息ついてぽつりと呟いた。結局私は自分の家族の中に殺人者がいたのか判断がついていないと。

主人公はそこでなぜ自分がこんな話をされたのか理解する。ミステリ作家の自分なら一連の出来事に対して何らかの解釈を付けることができるかもしれない。

もちろん現場に居たわけではない主人公には想像するしかない。それでも彼女を納得させ得るストーリーを考えることはできるだろう。

主人公の講釈を待たずして、彼女は席を立つ。彼女の降りる駅に到着してしまったようだ。主人公が連絡先を尋ねると、彼女は一枚の封筒を差し出した。

彼女が汽車を下りていくのを見送ると、主人公は思索に耽る。誰かが殺人者であった可能性、全員が事故であった可能性、あるいは彼女自身が殺人者であった可能性。いずれの可能性を考えてもそれらしい話は考えられる。だがいずれにも確かな根拠はなかった。

行き詰った主人公は彼女からもらった封筒を開ける。彼女がどこに身を寄せるつもりなのか気になった。

封筒には一枚の紙が入っており、こう書かれていた。残された者には思い悩むことしかできない。自分はもう疲れたと。

主人公は自分も一人残され、思い悩むことになったと悟った。


【解説】

豪雪地帯の農村だと、家単位でクローズドサークルになることを利用したかった奴。

彼女の話から真相を推察する安楽椅子探偵的な側面と、残された者の悲哀みたいなテーマ性のハイブリッド。

事件の概要はまだ詰め切っていない。東北三姉妹に他家族数名。生き残りはイタコさん。一人目の曖昧な死に方のせいで連鎖的に死んでいく感じ。

いくらでもそれっぽい話は作れるけど、真実かはわからない。彼女はそれで苦悩の果てに死を選び、主人公もまた思い悩むことになったという終わり。


3.誰も死なないデスゲーム(仮)

どこか知らない部屋に集められた数名の男女。殺風景な部屋にはいくつかの監視カメラと一個のモニターがあった。

モニターが映り、主催者を名乗る者がルール説明を行う。最後の一人になるまで外に出ることはできないと。

驚きと混乱のどよめきが広がる中、男が一人、歩み出て質問を投げかける。

この中には妊婦もいる。彼女が最後の一人になった場合はどうするのかと。お腹の子供もいれたら二人になると。

妊婦は怯えた様子で騒ぎ出す。お腹の子を殺すくらいなら一緒に死んでやると。

主催者はお腹の子供は一人とは数えないと約束する。

男は質問を続ける。お腹の子供は脱出可能な人員に含まれない。つまり未成熟な存在は一人の人間としてみなさないということだなと。

主催者は困惑しながらも肯定する。

つまり一人の人間としてみなされなければ、外に出ていいということだな。男はそう言って笑った。

場の主導権は完全に男に移っていた。

参加者たちが自立した思考と行動が取れる状態であるのか。子供だったら何歳から、逆に老人だったらどうか。ヒモであったら、ニートであったら、病人であったらどうか。

この場にいる人間の多くは成熟した一人の人間であるとは言い難く、脱出可能な定員には含まれないのではないか。

主催者も論旨のすり替えであることは分かっていた。しかしスポンサーたちに配信している状況で、言い負かされて無理矢理ルールを押し付けるような醜態をさらすことはできなかった。

主催者と男は言い争いを続け、人間とは何かについて定義していく。

主催者は対話と思索の中で、人間というものに対する理解が進み、自分の行動に疑問を抱くようになっていった。

主催者は極限状態における人間の醜態を嘲笑するつもりでいた。人間の本質は欲深く、身勝手なものだと信じていた。

だが曇りが晴れた目で見る参加者たちの姿は、別に美しくも醜くもない等身大のもので、急に自分がやってることが下らなくなった。

主催者は男に負けを認め、全員を解放することを約束する。

扉が開き、参加者は一人、また一人と出ていく。

男は動かない。何も映らなくなったモニターを見つめていた。

隠し扉から誰かが入ってくる。主催者であった。なんだまだ帰ってなかったかと笑う。

男が主催者に問う。これからどうするつもりかと。

主催者はさすがに誰も死なないとデスゲームとして格好がつかないと語る。自分はここで死ぬから早く出て行けと伝える。

主催者は続けて語る。ここでスポンサーに面白いものを見せられたら、一生使いきれないほどの大金が手に入った。自分は賭けに負けたと。

男は主催者の手から拳銃を奪い取り投げ捨てると、抱き締めた。

お前は人間らしい幸せなんて何も知らないのだろう。俺はお前を一人の人間としては認めない。一緒にここから出よう。

男の言葉に主催者は涙を流した。

二人で肩を抱き合い、部屋を出て行く。彼らの顔は晴れやかで、希望に満ちていた。

部屋から誰も居なくなり、閉じかけた扉の向こうで、最後に男はニヤリと笑った。

その目は監視カメラをまっすぐに見つめていた。

男は賭けに勝った。


【解説】

デスゲーム物。デスゲームは始まらなかったけど。

ルールが曖昧なものが多くて、いろいろ突っ込めるなぁとか考えて作った。モノとしては、「私は何のためにこんなことを…?」ってなっちゃう奴。

ふと我に返って全てがどうでもよくなってしまう瞬間。あるよねぇ。

あんまり明確にしなくてもよさそうな裏話として、本当の主催者は難癖をつけた男の方である。主催者から参加者まで、話の展開から最後に主催者と和解するところまで全て男の思惑通り。

娯楽となるのは必ずしも悲惨なものではないよねってことをわかってた男の勝ち。


以上三本。作ると10分以上かかるので当分作らない。

このキースイッチ想像以上にうるせぇわ。夜中には使えない。

もう一個くらいカスタムできるキーボードが欲しいなぁ。e元素のはoutemu軸しか使えないんだ。

まぁまた来月かな。EpomakerのかYunziiのかで悩んでる。

そんなこんなでおしまい。動画の方は尋常じゃないくらい「補遺」が長くて持て余してる。次のもまた一か月後かな。

いい加減勉強もちゃんとしないとな。

長文駄文失礼しました。

 

2023年4月27日木曜日

歪な天秤

目を覚ますと、殺風景な白い部屋に寝転んでいた。

立ち上がり、周囲を見回す。目につくのは、壁に扉が一つと天井にスピーカーが一つ。

『あなたには2人の人間からどちらかを選んでいただきます。』

唐突に無機質な音声が流れる。

『選ばれた方がいる部屋には毒ガスが流れ、中の人間は死にます。あなたがどちらを殺すのか選ぶのです。』

「なぜ私がそんなことを?」

『どちらも選ばなかった場合、自動的にあなたがいる部屋に毒ガスが流れます。』

選択の余地はないようだ。誰の仕業かはわからないが、ずいぶんと悪趣味なことを。

『二人の人間をそれぞれA、Bとします。Aには愛情深い両親と大勢の友人、そして将来を誓い合った恋人がいます。職場でも内外から慕われ、その働きは人々の暮らしを支えるものです。対してBには家族も友人もなく、知り合いと呼べる相手すらほとんど居ません。勤労意欲に乏しく、仕事を転々として将来性もありません。』

…くだらない。周囲との関係、社会への貢献度、何をとってもAが勝っている。Bが死んでも誰も悲しまない。

そういったことで人間の価値を決めていいのかと問いたいのだろう。だが、そういったこと以外でどうやって判断しろと言うのか。

「Bの人間を殺せ。」

『よろしいのですか?』

「どっちが生きてる価値のない人間かなんてわかった上で聞いてるだろ?」

『本当によろしいのですか?』

「いい。Bを殺せ。」

『Bはあなたです。』


沈黙が流れる。

『Bを殺しますか?』

「…待て。」

先ほど挙げられたBの特徴を思い起こす。私自身に当てはまることだ。

本当に趣味の悪い。どちらが生きている価値のない人間かなんて明らかだろうに。

『Bの死はほとんど何ももたらさないでしょう。Bの死体は自治体によって事務的に埋葬されます。Bが居なくなっても誰も気に留めず、勤め先の経営者は新たに人員を補充するだけです。』

「私の答えは…」


「Aの人間を殺せ。」

『よろしいのですか?』

「ああ、殺せ。」

『本当によろしいのですか?』

「Aを殺せ。」

『Aの死は多くの人に悲しみを与えるでしょう。中には精神的に深い傷を負う者も居るかもしれません。Aが居なくなることによる職務上の損失は大きく、社会にとっても不利益であると言えます。』

『それでもあなたはAを殺しますか?』

私はスピーカーを睨みつけ、にやりと笑った。

「だからだよ。」


扉が開き、外の光が差し込んでくる。

私は光の方へ歩き出し、無機質な部屋を後にする。

『あなたは間違った選択をしました。』

背後でそんな言葉が聞こえた。


【解説】

バットマンのジョーカーが捕まえた人間にこんな感じの選択を迫る漫画をTwitterで見て考えた。

なんか昔似たようなの見かけた気がするけど思い出せないのでオリジナルってことでええやろ。動画にすればツッコミが来るかも。

どちらの人間に価値があるかの問いだったが、保身とルサンチマン的思考によってAに死んでほしいという思いに塗り潰された。

何が正しいかはわからないけど、正しいか正しくないかって現実の選択ではあんま気になんないものですよねって感じの話。


Bはあなたですの展開の後、なんやかんやでAは私ですって展開に持ってくのもありかも。

声の主も監禁されていて、主人公に自分の代わりに死んでもらうことを目的としていたみたいな。こっち路線で詰めてももう一本作れそう。

大揉めの末、主人公は向こうを殺すことを決断。Aを殺すと宣言する(ボタン式の方がいいかも)。声の主は半狂乱になって泣き叫ぶ。

しかし、何も起こらない。すると、本物の犯人のアナウンスが流れる。

曰く、どちらを殺すかは多数決であると。主人公側に決定権があるというのは嘘だと。

声の主はもちろん主人公が死ぬべきだと決定。これで票数は1対1になる。

最後の1票が誰にあるのかを犯人に問う。犯人は実はもう一人これまでのやり取りを聞いていた人間がいたと答える。その人物がどちらを殺すかを決定できると。

その人物とは…

①無難な方。モニターに一人の少女が映し出される。彼女も誘拐されたようだ。二人はそれぞれ向こうを殺すように彼女を説得する。少女は責任の重さにただ泣きじゃくるのみなのであった。

②奇抜な方。視聴者の方を指さす。どちらを殺すべきか動画のリンクで分岐。視聴者に呪いの言葉を吐きながら死んでいく。

メモ程度に残しておく。いつか使うかも?


2023年3月11日土曜日

生存報告兼ネタ出し

動画投稿もブログ更新もしてないけど生きてます。まあまあ元気です。

何にもする時間ないほど就職活動してるって訳ではないんですが、精神的余裕がなくて何にもしてません。メンタルざこざこですね。

動画は没ネタ集、小ネタ集、あと「見上げた記憶」が冒頭だけ作って放置されてます。

ブログの方だと1個思いついた長めのネタを物語調で書いてたんですが途中で力尽きてます。こっちは近日中に仕上げるかも。

マジでそろそろ忘れ去られそうですねぇ。再生数も落ちまくってますし。

まぁそれはさておき、ネタ出ししておきますか。


①サイレントブルーの開口

ある港町に越してきた女子高生が主人公。家庭内と学内における不和の果て、親戚の家に下宿する形で誰も知る人の居ない町へ。

彼女はあらゆるトラブルに対して「喋らないこと」を処世術としていた。口は災いの元。かつての自身の不和の原因をそう結論づけ、彼女は口を閉ざした。

学年に一つしか無いクラス。学級委員長の少女が主人公の世話係を買って出る。最初は表面的な付き合いを保っていた主人公だったが、彼女の田舎町の少女に似合わぬ聡明さにしだいに心を開いていく。

しかし、彼女の目的は主人公をスケープゴートにすることだった。彼女は彼女にとっての邪魔者を排除するために策謀を張り巡らせており、以前濡れ衣を着せられた同級生は自殺していた。彼女は主人公を死んでしまったその同級生の代わりにするつもりだった。

下校前のクラスルーム、町内のある人物の漁船が破損させられ、沈没した事件。その犯人として主人公が疑われる。偽証によって主人公を陥れようとする委員長。何も言えない大人しい少女のままだったら罪を擦り付けられる。主人公は一歩を踏み出した。

論理的に自身の潔白を証明していくと、逆に委員長が犯人である可能性を指摘する。彼女は狼狽するも即座に対応し、主人公対委員長の舌戦が始まる。苦戦を強いられるも主人公はどこか高揚感と充実感を感じていた。委員長も同じ感情を抱いているように見えた。

闘いの末、主人公は辛くも勝利を勝ち取る。委員長は何も言わない。だがやり取りを聞いていたクラスメートや教師からは、彼女が犯人であることは明らかだった。彼女は敗北を認め、笑った。主人公は生まれて初めて達成感を覚えた。

教室の隅、主人公は一人で海を眺める。クラスメートたちは彼女を遠巻きに見つめ、敵意に満ちた表情をしていた。あの日から委員長は学校に来ていない。隣町に転校するという噂が流れていた。どちらが悪いという理屈は抜きにして、クラスのリーダーだった委員長を追い出したことで主人公は嫌われ、疎まれていた。

だがそんなことは主人公にとって何ら取るに足らないことだった。彼女はもう「自分」というものを手に入れたから。孤独も憂鬱も確かな自尊心の前には掻き消えた。いつか委員長と再戦する日を想像し、彼女は笑った。


【解説】

昔Losstime Lifeの「Blue Star」を聞いて、葵ちゃん用にと考えた奴。自己の確立と周囲からの孤立はセットだよねってのがテーマ。

委員長が行う工作は極めて高校生的なスケールで行う予定。町内の有力者である委員長の家の敵派閥への嫌がらせやイメージダウン戦略、肉親に言い寄ってくる不埒な相手の社会的破滅など。漁船を沈めたのは後者。

主人公が転校してくる以前、気弱な同級生がスケープゴートにされた。彼女は唯一の友人である委員長のため濡れ衣を被ることを受け入れたが、町内での迫害に耐えかねて自殺した。

委員長はどこかゲーム感覚で、自身の優越性を確かめるために上記の行為を行っており、同級生が自殺しても特に罪悪感は抱いていない。主人公が自身と対等に渡り合った時、自分が本当に求めていたものが何かを悟った。

細かい部分が詰め切れずに置いておかれている。気が向いたら作る。


②黒い正方形

主人公は富裕層の少女。大学への進学を機に数名の同級生と共に、ホームレスを対象としたボランティアサークルを立ち上げる。それは彼女が幼少期に感じた貧富の格差に対する彼女なりのアプローチであった。

両親、特に父親はそんな彼女に対して否定的であった。娘は貧しい人たちに対して手を差し伸べようという気がないのかと憤る。父はお前は世の中の事をよく知らないと窘める。彼女にはまだその言葉の意味は理解できていなかった…

ボランティアサークルの活動は順調だった。炊き出しや衣服の譲渡会を行い、就労支援を行う団体と協力してイベントを行った。ホームレスたちから涙ながらに感謝の言葉を述べられ、主人公は充実感に満たされていた。

そんなある日、一人のホームレスの男が彼女に相談を持ち掛ける。ホームレスたちで農業を行う会社を立ち上げたいというものだった。山間部に農地を買い、住み込みの社宅を立て、麓の農業組合から農機具を借りる。初期投資のための資金を提供して欲しい。そんな訴えであった。

彼女は計画には賛同しつつも、学生の身分でそんな金は出せないとやんわりと拒絶する。あんたはあの〇〇グループの社長の娘だろ。男の口からそんな言葉が出る。主人公は驚いた。自身の素性はホームレスたちにはもちろん、サークルの仲間にも言っていなかったからだ。

男は笑いながら釈明する。そういうのはどこからともなくわかるものだと。とにかくあんたから父親に頼んでくれないかと頭を下げた。主人公は父と話してみると告げた。

父親の答えはノーだった。一介のホームレスに経営能力なんかあるわけないと一蹴する父親に、主人公はカチンと来て家を飛び出る。なぜ父は貧する者を、窮する者を突き放すような態度を取るのか。

ボランティアサークルの活動も行き詰まり始めた。やれるだけのことはやった。しかしそれが何の成果にも結び付かないのだ。物を配れば一時的にホームレスたちは豊かになる。だがすぐに元通りになった。

就労支援を行う団体に解決策を聞きに行くも、どこかおざなりな態度だった。ホームレスの多くは仕事を与えられてもすぐに投げ出してしまう。抜本的に生活が変わることはほぼ無いと諭される。

ならばなぜ私はこんなことを…。思い悩む主人公の前にあの男が再び現れる。自分にはホームレスたちの気持ちがわかる。自分ならば彼らを社会復帰させられると。主人公は男に懸けてみたくなり、家のお金にも手をつけながら大金を工面し、男に渡した。男は涙ながらに感謝を述べた。

次の日、男は一人でどこかへ消えた。

塞ぎ込む主人公に父親が語りかける。誰しも若い頃は平等を志すと。だがすぐに能力や境遇以前に、人間には質的な違いがあることに気づく。結局それをどうすることもできずに、自分自身やごくごく親しい人間の幸福だけを追求するようになる。

父親が一枚の写真を差し出す。そこには金を持ち逃げした男が見知らぬ街で遊んでいた。高価な服に身を包み、女を侍らせ酒をあおる。どうするか自分で決めなさいと父親は告げた。

主人公は写真に指でバツ印を描く。父親はにっこりと笑った。

もう彼女の目には不平等に虐げられる弱者の存在など見えなかった。


【解説】

「黒い正方形」ってタイトルだけ思いついてそれに見合う内容を考えてた。貴志祐介の「黒い家」に影響されたね。

内容は大筋はこれでいいけどもっとエグい展開を盛り込めそう。でもあんまり胸糞展開を入れるのもな。

就活しててなんか給与の違い、労働環境の違いみたいなのを多く目にするようになったけどそれに対して…いや違うな。

就職活動に対するモチベーションみたいな話を聞かされる機会が増えたけど、なんか違うなって感じることが多かった。

志望動機や自己PRの違いは大学生活の違いだし、大学生活の違いは高校生活の違い。高校生活の違いは中学生活の違い、中学生活の違いは…て感じで現在は過去の積み重ねの結果なわけじゃないですか。

それはつまり学校生活や家庭環境、身体や知能、脳機能や精神みたいな部分に問題があるから今現在の就職活動でも問題が起こってるわけで、なんか就職活動に対してとやかく言う人ってその部分を無視してるよなぁって。

富士通系列の人がそういう傾向が強かったですね。まぁ本選考受ける前に社風を理解してとっとと撤退できたのは良かったですけど。今後独立系で働くにしても関わりたくないなぁ。

ああっ、就活。就活のことを思い出してしまった。はぁやだやだ。

次の最終面接が来週に控えてるんでそこで決めたいっスね。

本題から逸れちゃいましたし終わりますか。要するに給与や待遇とかじゃなくて人間自体に格差があるって話です。

ま、分を弁えた上で精一杯やるだけですけどね。

長文駄文失礼しました。


2023年2月25日土曜日

未使用ネタ下書き

没ネタ集で「エメラルドの瞳」と「守り神」を使って、形にしてないネタがいくつかあったのを思い出したので書いときます。

あんな感じでネタを紹介しながら締めるスタイルでも良い気がしてきたな。妥協は大切。

では行きます。


①虚実の交わる点

孤独な少女はイマジナリーフレンドを心の支えに日々を過ごしていた。

モデルは小さい頃によく遊んだ女の子。小学校に上がる前に引っ越してしまった。

彼女の残した幻影は主人公と共に成長していき、主人公の親友であり続けた。

ある日、学校に転校生がやってくる。幼馴染のあの子だった。

彼女の容姿は奇しくも想像上のものと瓜二つであった。

再会した本物の彼女とこれまで一緒に過ごしてきた幻想の彼女、二人が入り乱れた学校生活が始まる。

主人公の心は現実の彼女の方に傾いていく。

そのことがイマジナリーフレンドの彼女には気に入らないようだった。

イマジナリーフレンドの存在は徐々に疎ましくなり、やがて殺意が芽生えた。

【パターン1 殺害】

人気のない教室、隙を見て鋏で突き刺す。

彼女は消えなかった。ただ血をダラダラと流しながら驚いたようにこちらを見ていた。

あまりにリアルな感触に狼狽えながらも、幻影をかき消すために夢中で鋏を振るう。

遂に動かなくなった彼女。

後ろから不意に声がかかる。そこには殺したはずの彼女が立っていた。

ニヤニヤと笑う彼女。イマジナリーフレンドの方だと確信した。

ではこっちは…。血まみれで倒れている彼女には確かな命の感触があった。

【パターン2 亡霊】

人気のない教室、隙を見て鋏で突き刺す。

彼女は消えなかった。ただ血をダラダラと流しながら驚いたようにこちらを見ていた。

幻影をかき消すために夢中で鋏を振るう。

彼女は消えなかった。血まみれになったその姿でこちらを恨めしそうに睨んでいた。

どれだけ切り刻んでも、肉を断っても、彼女は消えなかった。


私は彼女を消すことを諦め、学校生活を送っていた。

本物の彼女が楽しげに笑いかけるその横で、死体のようになった幻想の彼女が呪詛を吐いている。

私はいつまで正気を保っていられるだろうか。


【解説】

どっちのエンドに進むか悩んでる奴。ずっと放置されてた理由。

一つ目はやや安直かと感じていた。間違って本物の方を殺すのは何となく予想できる。

間違える経緯も曖昧。イマジナリーフレンドは常に引っ付いてるのか、さも普通のクラスメートのように振舞っているのか。

後者なら間違えても納得できそうだけど、なら鋏で突き刺すような危ない真似しないだろって気もする。

二つ目の方が推し。でも一つ目の結末を予想してた人から「えぇ…そっち?」って思われそう。別に良いっちゃ良いねんけどな。

どっちを選んでももう一工夫できそうな雰囲気を感じつつ、思いつかなくて棚上げしてました。

没ネタとしてどっちも紹介しても良いかもですね。


②不燃性の愛

小さい頃から仲良しの双子の姉妹。

妹の方は姉に対して単なる姉妹以上の感情を抱いており、年を取るごとに束縛が強くなってきていた。

ある日、姉が告白されている現場を目撃する。

その日の夜、妹は告白は断るよねと確認する。それは要求、あるいは懇願でもあった。

姉は笑って肯定した。妹の方が大事だと。

その笑みはどこか辛そうに見えた。

姉の様子にどこか不穏なものを感じた妹は、姉をこっそり監視するようになった。

そして姉があの日告白してきた男とデートしている姿を発見する。

姉は今まで見たことの無いような表情を浮かべていた。

激昂した妹は姉と男に詰め寄る。いったいどういうつもりだと。

姉は狼狽え、男は冷静に諭す。いい加減に姉離れすべきだと。

妹は聞き入れない。泣き喚き、男を罵った。

折れたのは姉だった。男に謝り、妹の手を引いて家へと帰る。

男は何も言わずに佇んでいた。

それからの二人にとってこの出来事はタブーとなった。

何事も無かったように仲良く生活を続けていく。

ただ妹は知っていた。あの日の夜、姉が一人で泣いていたのを。それからも時折人知れず涙を流していたのを。

わかっているのだ。自分が姉の幸せの邪魔をしていると。姉の優しさに付け込んでいると。

わかっていても止められない。どうなりたいのかもどうしたいのかもわからない。ただ姉が他の誰かのものになるのは嫌なんだ。

そんな感情だけが彼女の中でいつまでも燻り続けていた。

彼女の愛は燃え上がらない。


【解説】

ドロドロした奴。屈折した愛情と行き場のない独占欲。

なんか琴葉姉妹といったら百合ものかなぁと思って作ったはいいものの、意外な展開や落ちみたいなのが無いからやりづらかった。

燃え上がる情熱的な愛の対極みたいなのをイメージしてました。


③友人探偵

主人公は同じ探偵として切磋琢磨した友人と再会する。

かつては高校生探偵として持て囃された二人も今では中年に差し掛かりつつあった。

思い出話に花を咲かせる中、友人は現在自身が手掛けている事件解決の助力を乞う。

被害者は一人の女性。

容疑者として彼女のストーカーの男が上がるが、足取りがつかめなかった。

友人と共に男の行方を追う。

懸命な捜査も空しく、手掛かりは掴めない。

主人公はどこか違和感を覚える。一介のストーカーに二人の探偵から身を隠す程の力があるだろうかと。

生きている状態で失踪するのは難しい。ただ死体としてどこかに隠蔽されたのなら、発見する難易度ははるかに高くなる。

友人には黙って単独で調査を進めたところ、被害女性の交際相手の存在に気づく。

その人物はかつてストーカー被害の相談を受け、それを解決したことで彼女と交際を始めたという。

友人と二人、酒を酌み交わしながら上述の内容を語る。

無条件にその人物の主張を鵜呑みにしてしまい、無意識にその人物を容疑者から外してしまっていた。自分は探偵失格だと呟く。

友人は自分の方が探偵失格だと言って笑った。

ストーカーの男を殺したのは、彼女にとって有害であったと同時に彼女の元交際相手だったからだった。要するに嫉妬だ。

そうまでして手に入れた彼女。それなのに単なる痴情の縺れで手にかけてしまった。

これまで自分が手掛けた事件のどんな犯人よりも、卑俗な犯行だった。

彼はそう自供した。

主人公はなぜ自分を呼んだのかを問う。友人は答えた。

探偵としてどちらが優れているかの決着がまだついていなかったからだと。

彼は自分の負けを認めると目を閉じ、そのまま動かなくなった。

彼の酒からはアーモンドの香りがした。

主人公は友人の最期を看取ると、静かに涙を流した。


【解説】

自分にとって親しい人物を無意識に容疑者から外してしまう奴です。

認知の歪みが解かれたら、犯人は明らかだったって展開。

友人と被害者が親密な間柄であることを細かな会話で匂わせられたらなぁと思います。


④深夜の放送部

友達と二人で深夜の学校に忍び込む。

真夜中の12時に死んだ生徒が放送を始めるらしい。

もちろん信じているわけではない。ただの肝試しだ。

静寂を破り、放送開始のチャイムが流れる。

二人は驚きと恐怖に息が止まる。じっとスピーカーを眺める。

「さぁ始まりました、深夜放送のお時間です!お相手はわたくし、○○でございます!」

予想外に陽気な声に呆気に取られる。

「今日はなんと、リスナーが二人も来てくださいました!はいよろしくお願いしますね!」

よ、よろしくと友達が小さく呟く。

「それじゃあやっていきましょうか!今日のテーマは~」

軽快なトークを続け、時折こちらに言葉を投げかけながら放送を続けていく謎の人物。

友達はすっかり警戒心を解いてしまったようで放送を楽しんでいる。

主人公はこの異常な状況に呆けてしまっていたが、正気に戻り友達を連れて帰ろうとする。

だが友達は帰るのを渋る。放送の声も帰ろうとするのを引き留める。

こちらの様子を把握されていることに気づき、主人公は更に焦る。

無理やりにでも友達を引っ張っていこうとする主人公。抵抗する友達。

友達の目はどこか虚ろで、魅入られているようだった。

ふと気づく。放送の声が止んでいる。

諦めたのか。そう思った刹那、理解した。

放送室を出たのだ。今こっちに向かっている。

友達の顔を思い切り殴りつける。

正気に戻った友達が狼狽えているのを気にせず、引っ張って出口に走る。

友達は状況の説明を求める。主人公はいいから走れと叫ぶ。

後ろから足音と気配が迫ってきているのがわかった。

校舎から出た直後、後ろからバンという音が響く。

黒い影はガラスに手形をつけると、残念そうに去って行った。放送室に帰るのだろう。

二人は急いで家へと逃げかえるのだった。


「いやぁ、現役時代ならもうちょっと走れたんですがねぇ。いやはやお恥ずかしい。恥ずかしい失敗といえばわたくし以前~」

深夜の放送はまだまだ続く。夜が明けるまでは。


【解説】

どこかコミカルなホラー。

放送が止む。諦めたのか?違う放送室を出てこっちに向かってるんだって流れをやりたくて作った。

放送部分をどれだけ面白くできるかにかかってるね。難しいなぁ…


⑤再会

飲み会の帰り、何者かに声をかけられる。

親し気な相手。久しぶりだなと笑いかけられる。

思い出せないながらも昔の知り合いだと察して話を合わせながら歩きだす。

そいつは中学の頃の思い出を語りだした。

それは確かに自分の記憶とも合致するものだった。

なんだ同級生だったのかと思いながら共に昔を懐かしむ。

中学のクラスメートの誰なのかを当てようとする。

当ててみろとそいつはおどける。

思いつく限りの名前を挙げていく。そいつは否定する。

「〇〇。」

違うと思いながらもふざけて言ってみる。それはクラスのいじられキャラだった奴の名前だった。

「正解だよ」

そいつは笑った。

言葉に詰まる。驚いてそいつを見つめる。いや、違う。あいつはこんな顔ではなかった。

「俺も〇〇だよ。兄貴だからな。」

気づけば人通りのない路地まで歩いてきてしまっていた。

そいつはもう笑ってはいなかった。

「弟が随分世話になったな。アンタの顔はクラス写真で知ってるぜ。」

周囲を見渡す。辺りに人は見当たらない。

「突然の再会でびっくりして、思わず声をかけちまったよ。元気そうだな。」

初対面だが無関係ではない相手。

いじめという程のことはしていない。恨まれる筋合いなんてない。そう伝える。

「かもな。高校に行かずに家に引きこもった時も、二十歳を超える前に首を吊った時も、あいつは何も言わなかったから。」

武器になりそうなものは見当たらない。向こうも武器を持っているようには見えない。

「でもお前の顔を見た時、殺そうって決めたんだ。」

闘いのゴングが聞こえた気がした。


【解説】

まさかのバトル展開な終わり方。締め方がわからんかったんや。

中学での出来事は弟から聞いて知っていた。あるいは一つ上の学年で同時期に在籍していたのかもしれない。

ホラーっぽい奴。ヒトコワかな。ちょっとゾッとする感じが足りないかなって印象。


以上5点。

在庫整理みたいなもんですね。意外と時間がかかる。

放置してたネタもだいぶ捌けてきました。

未使用ネタ覚書に書いてあった大したことないネタもここでちょろっと書いておきます。

「だから笑って」は駅前で自分のことを笑っただろうと通行人に突っかかるみすぼらしい姿の男。身なりのよい通行人の一人がその男を諭そうとする。男はボロボロのコートをはだける。胴体にはパイプ型の爆弾が巻きついていた。「笑えよ」と挑戦的に笑う男の目には涙が浮かんでいた。

自分は社会に除け者にされ、社会に対して復讐してやるんだっていう思いに縋っているような話。惨めだね。

「100万円のボールペン」はセールスマンが家に訪ねて来てボールペンを100万円で売りつけようとしてくる。何か特別なボールペンなのかと聞けば何の変哲もない代物だと答える。理解に苦しむ主人公にセールスマンは語る。主人公は新進気鋭の実業家であり、金を使うこと自体に意味があると。

確かに資金力をアピールするために高い買い物をすることもあるが、それでもただのボールペンを100万円で買うことはないと呆れる主人公。だがセールスマンは続ける。ただのボールペンだからこそ意味があるのだと。例えば100万円の腕時計を100万円で購入したとしても、それは自由に使えるお金が100万円ある証明にしかならないだろう。だがもし、100円のボールペンを100万円で購入したとしたら、それは庶民にとっての100円が自身にとっての100万円である証明になると。

セールスマンは続ける。私はあなたが100万円でただのボールペンを購入したことを喧伝します。そうした売名サービスも含めて100万円という値段を提示しているわけです。主人公は悩んだ末、購入を決めた。100万円のボールペンは彼の書斎に無造作にしまわれた。

「実業家の〇〇氏、ただのボールペンを100万円で購入!?」ネットニュースの見出しにそんな言葉が躍る。「へっ、バカじゃねぇの?」スマホをいじりながら茶髪の若者が鼻で笑った。

ちょっと長くなっちゃった。かなり毛色が違うジャンルなので扱いかねてる。

実際そんなセールスが成り立つのか、効果があるのかは謎。でも100万をそんなことに使える人も居て、大衆の多くはそういう経済格差があることもそういうビジネス戦略があることも想像できないってのが一番のテーマな気はする。今テキトーに考えたけど。

作ってもいいけどウケるかがなぁって感じ。

疲れた。5時間ぐらい書いてた気がする。それは嘘か。盛ったわ。

ある程度形になったネタのストックも増えてきましたし、動画も作ってきますか。

小ネタ集没ネタ集を作るか、長編で「寄る辺なき者の歩み」を作るか考え中。これは「本当のことを教えて」と東北姉妹の役柄が被ってるから期間を開けたかった。そろそろ良いかな。

アイちゃん先輩の話も作りたいんですが、思ったように喋ってくれなくて置いておかれてます。他の動画だともっと可愛く喋ってたはずなんですがね(不思議)。

そんなこんなで終わります。メチャクチャ長くなっちゃった。

長文駄文失礼しました。


2023年2月17日金曜日

私、キレイ?

めっちゃ催促されてたから演劇部の動画作ろう思って、没ネタ集くらいならいけるやろ思って作ってたんですけど。

やっぱ没ネタだと気分があんまり乗らなくて編集が進まないっすわ。

気楽に作るための没ネタ集なのに気が重くなるのは本末転倒っすね。

土日で作れるだけ作りますわってことで今日は思いついたネタをメモって寝ます。


①私、キレイ?

女「私、キレイ?」

少女「…キレイだよ。」

女「これd「キレイだから!」

マスクを外そうとする女を遮る少女。

少女「キレイだから…キライだよ…」


【解説】

醜形コンプレックスなのは少女もだったみたいな奴。

落ちをどうするか考え中。

マスクを外し、自分の方が醜いと諭す。

外したマスクを少女につけ、顔を伏せながら立ち去る。

こんな感じ。


②今日、家に誰もいないから

女「今日、家に誰もいないから…」

男「え?」

恥ずかしそうに目を伏せる女。


その日の夜、男は女の家を訪ねる。

インターホンを押しても返事はない。ドアノブをひねると鍵はかかっていなかった。

部屋は真っ暗だった。男はきっと驚かそうとしてるんだと考えて進んで行く。

「警察だ!!」

その時、玄関の扉が開き二人組の警官が入ってきた。

「な、なんですか!!」

「何がなんですかだ!泥棒の分際で!」

「ち、違うんです!誤解なんです!」

「何が誤解なんだ言ってみろ!」

「今日は家に誰もいないって聞いて来たんです!」


【解説】

ちゃんちゃん。

空き巣の現行犯ですね。落語みたいな終わり方で草。

ウケるかがわからん。自分のツボが世間のそれとどれくらいかけ離れてるのかがどうもね。

だがしょうもない奴なのは確かだ。


③でも少しこの風泣いています

男「今日は風が騒がしいな。」

女「でも少しこの風泣いています。」

男「…は?」

耳を澄ますようにジェスチャーする女。男は訝しみながらも言われたとおりにする。

唸るような風の音。それに混じってかすかに聞こえてくる。大勢の人が泣き叫んでいるような声。苦しげなその声が耳を震わし、背筋に冷たいものが走る。

男「…!」

女「ね、泣いていたでしょう?」

その得体の知れない女は得意げに笑っていた。


【解説】

いったいどういう状況なんだ。

勢いと雰囲気だけで乗り切るタイプのホラーですね。

元ネタからしてふざけてるのにこんなふざけ方していいんか。


短いですけど今日はこんなもんで。

この前動画にした「ベンツが止まってますね。」

あれと似たような連中ですね。

ベンツの奴は意外とホラーとして受け入れられてたのでこいつらも動画にされるかもしれません。流石に徳用パックにして出すと思いますけど。

じゃま終わります。

短文駄文失礼しました。


追記)

もうちょっと思いついたからここに書いちゃえ。


④寿司ネタ

大将「へいらっしゃい。何を握りやしょうか。」

おもむろに手を差し伸べる客。

客「私の手を、握っていてくれますか?」

大将(トゥンク…)

流れる恋愛映画っぽいBGM。


【解説】

キッショ。考えた奴バカかな。

美少女の絵面で中和できなかったら耐えられないだろうな。


⑤豚のエサ

クレーマー「食えたもんじゃねぇな!まるで豚のエサだ!」

店主「…。」

ざわざわ。

男「取り消せよ。」

クレーマー「あ?」

男「この店のラーメンは豚のエサなんかじゃない。」

クレーマー「いいや豚のエサだね。こんなまずいラーメンは食ったことがない。」

男「明日もう一度ここに来い。本物の豚のエサっていう奴を食わせてやる。」


【解説】

最近マンガワンでラーメン発見伝と才遊記を読んでる。料理漫画はあんまり好みじゃなかったけど結構御面白い。

「明日もう一度ここに来てください。本物の○○というものをお見せしますよ」構文。美味しんぼが発祥みたいですね。料理漫画だとしょっちゅう見かけてる気がしてた。

一見するとそれと同じに見えるけど、よく見たら豚のエサを食わせようとしてる。

料理対決ではなく普通に暴力で解決しようとしてるのがわかりますね。だからなんなんだ。


⑥見てくれだけじゃない女

少女1「どうだった?」

少女2「…告白されたよ。」

少女1「え?付き合うの?」

少女2「まさか。断ったよ。話したこともない相手だし。」

少女1「美人だとそういう告白も多くて大変だね。」

少女2「うんまぁ、そうだね。」

少女1「でも喋ったことも無いのに告白するのってなんか失礼だよね。見た目で惚れましたって言ってるようなもんじゃん。」

少女2「そうかな?私は別にいいと思うけど。」

少女1「見てくれだけで選ばれるのは普通に腹立つでしょ。試しにやってみる?」

少女2「うん。」

少女1「あなたの見た目が好きです。ずっとそばで見ていたいです。」

少女2「…見てるだけでいいの?」

少女1「…え?」

頬を赤らめて見つめ合う少女二人。

流れる恋愛映画っぽいBGM。


【解説】

初めから少女同士にしておけばいいんだ。

ふざけた感じで告白して本気っぽいカウンターくらうの好き。

見てるだけじゃ満足できないでしょ?ね?みたいな。

あ~脳が回復する。


2023年2月15日水曜日

Abyss/Null

まだそこまで作り込んでない奴のメモ。

今朝起きてから急に腰回りが痛い。骨や筋肉ではなく皮膚の痛み。

帯状発疹かもしれん。 中学の時も一回あったんだ。

激痛ってわけではないけど地味な痛みが延々続いて憂鬱。

それはさておき。


①Abyss

精神科医の主人公。自殺未遂した女性の治療に当たることになる。

一時の気の迷いで手首を切ってしまった。今はもう死ぬ気は無いと彼女は語る。

患者の言葉を鵜呑みにすることは無く、主人公は彼女の自殺願望の原因を探ろうとする。それは医者としての使命感だけでなく、物憂げな彼女の姿に心を惹かれたからだった。

主人公は彼女の両親や学生時代の友人など、これまでに関わりのあった人たちを辿って行き、彼女のことを知ろうとする。

だがわからなかった。わずかな不和や不幸はあれど、死に至るほどの事象は何も見出せなかった。

彼女との問診の中でも、やはり彼女が死を望む理由は見つからなかった。彼女自身でさえもわかっていないように思えた。

主人公は治療の終わりを告げる。それは彼女が完治したと結論づけるものだった。

彼女は礼をして立ち去ろうとする。主人公はそれを引き留め、言葉を続けた。

あなたの感情に病名をつけることもできないし治療することもできない。

だけどあなたがこれから生きていけるとは思えない。

精神科医としてではなく、一人の人間としてあなたを助けたいと。

彼女は少し考えた後、頷いた。


彼女との結婚生活は順調なものだった。

両親や友人たちとは既に顔合わせが済んでいることもあり、皆から祝福された結婚であった。

初めはぎこちなかった二人の雰囲気も年月と共に進展し、彼女が笑みを浮かべる時も多くなっていった。

そんな日々がずっと続くと思っていた。

2年が経った頃、彼女が妊娠した。母になったことを知った彼女は喜んでいるように見えた。

ただ彼女は元々病弱だったこともあり、大事を取って入院することになった。

病院から連絡があったのは臨月を迎える前だった。私は嫌な予感を胸に抱きながら車を走らせた。

死産だった。彼女自身も出血が多く、助からないかもしれないと伝えられた。

私は涙を堪え、彼女の手を握りしめる。

彼女の唇がかすかに動く。何かを話そうとしている。

身を乗り出し、彼女の口元に耳を寄せる。

彼女の最後の言葉になるかもしれない。

彼女は絞り出すような声でそっと呟いた。

「やっと死ねる。」



Abyssでした。

ずっとどんな気持ちで生きていたんでしょうね。

主人公の独白と周囲の人物の聞き取りから彼女という人物が評価されていくけれど、肝心の彼女が何を考えていたのかは結局わからず仕舞いってテーマになってます。

死にたいって気持ちはな、誰にも止められないんだ。

題名は何となく思いついた奴です。ありきたりですけどね。


②Null

主人公は東京行きの新幹線の中、目を閉じて物思いに耽っていた。

誰かに声をかけられる。隣の席の乗客のようだった。

一度立ち上がり、窓際の席へ彼女を通す。

「一人旅ですか?」

彼女は知らない人に話しかけてくるタイプだった。私は焦りながらも話を合わせる。

就職先も決まり来年から東京で働くことになるので、その下見がてら観光する予定だと。

真っ赤な嘘だった。

彼女は自分も来年から東京に進学するので、同じようなものだと言って笑った。

私は大きな旅行鞄を抱きかかえ、早くどっかに行ってくれないかと思っていた。

この中には手製の爆弾が入っている。

私はこれから大勢の人間を殺すつもりなのだ。


私の気など知らずに彼女は駅を出てからもついてきた。

特に行きたい場所は決めてないと言うと、一緒に美術館を回りたいと言い出した。

断り切れずに押し切られ、二人で東京を観光することになった。

どちらにせよ人が大勢集まる場所を探さなければならなかったので丁度いいと思ったのだ。

彼女が楽しげに絵画のことについて語る。芸術のことなんか何もわからなかったが、彼女のキラキラとした瞳から目が離せなかった。

時間が経つのはあっという間だった。

今日中に事に及ぶつもりだったため宿など取っていない。

彼女がスマートフォンの画面を見せて笑う。一部屋だけ予約が取れたと。


私はそのままホテルの一室に佇んでいた。彼女はシャワーを浴びている。

私はいったい何をしているんだろう。今日ほど自分の意志薄弱さに嫌気が差した日はない。

彼女がドライヤーで髪を乾かしながらシャワールームを出てくる。

「次どうぞ。」

こいつだ。こいつはいったい何なんだ。私はずっと感じていた疑問をぶつける。

「誰とでもこんなことするわけじゃないよ。でもきっと私と同じなんだろうなって思ったから。」

私にはわからない。こいつにいったい何がわかると言うのか。

「私のも嘘だよ。ホントは大学落ちちゃったの、芸大。無理言って受験させて貰ったのにね。」

彼女がそう言って笑う。よく見知った暗い瞳をしている。

「大事そうに抱えてたね、カバン。中身が何か想像がつくよ。」

彼女は自分の鞄からロープを取り出した。既に輪は作られている。

「明日一緒に死のう?」

私は違う。私はこいつとは違う。鞄から爆弾を取り出し、ベッドに置く。

「ただ死んでやる気なんかない。こいつで大勢道連れにしてやる。俺はずっとこのためだけに生きてきたんだ!」

彼女は驚いた顔をした後、冷たく笑った。

「そっちでもいいよ。」


翌日、私たち二人は適地を探していた。二人の人生を爆発で終わらせるための場所だ。

彷徨を続ける中、互いの身の上を話した。鬱屈した感情とそれが導いた歪な結論は確かに似た者同士だと思った。

私は熱が冷めていくのを感じていた。彼女が私を止めていたら私の憤懣は燃え上がり不特定多数の人間を焼き払っただろう。

だが彼女は私を止めなかった。受容し、肯定した。私はそれだけで満たされてしまったのだ。

こんなにも小さな人間だったのか。情けなくて、悔しくて、私はただ歩いた。彼女は黙ってついてきた。

気づけば夕暮れ時になっていた。死に場所はまだ見つからない。

「あれ、乗ってみる?」

彼女が指差したのは貸しボート屋だった。それが意味するところは…つまり…

私は頷いた。彼女の意向に沿うことを決めたのだ。


二人でボートに揺られながら、夕焼け空を眺める。

この世界で最も美しい光景だと思った。

鞄から爆弾を取り出す。私の人生唯一の成果物だ。彼女のためだけに使えるのはむしろ光栄なことかもしれない。

「大勢道連れにしなくていいの?」

彼女がからかうように笑う。

「…どうでもよくなってしまった。」

そう、どうでもよくなってしまった。きっと初めから世界と私には何の関わりもなかったのだ。私にはただ何もなかっただけだ。

スイッチを握りしめる。ボタンを押せば起爆する。この距離なら二人とも即死だろう。

「最後に君と会えてよかった。」

柄にもない言葉が口を零れた。

「私も。」

彼女が笑う。

私はボタンを押した。

何も起こらなかった。


何度押しても何も起こらない。私は失敗したのだ。

人生をかけて作り上げた機械すらまともに機能しなかったのだ。私は本当に生涯を通して何もできなかった。

私はその火薬の入った鉄くずを川に投げ捨てた。これで本当にただのゴミだ。私と一緒。笑いが止まらなかった。

彼女が呆気に取られた様子でこちらを見つめている。

「ダメだった。」

「え、ダメだったって何?」

「配線が悪かったか基盤が悪かったかはたまた両方か。」

「テストとかしなかったの?」

「テストして成功してたらもう死んでるだろ。」

ぶっきらぼうに答える。この大一番で致命的なミス。穴があったら入りたい。

「…どうするの?」

「…どうしようか。」

「私、ロープならあるけど…」

彼女が鞄からロープを取り出す。

「でも一つしか無いしね。」

「くくる場所も無いね。」

今さら日を改める気にもならない。私は彼女からロープをひったくる。

「片方が片方を絞め殺す。残った片方は川に飛び込んで死ぬ。」

私は考え得る限り最善の解決策を提示した。

「却下。」

「え、なんで?」

「どっちか生き延びそうだし一緒に死んでる感がなくてヤダ。」

女心は難しい。私はロープの結び目をいじりながらふとあることに気づく。

「これ、締まらないぞ。」

「え?」

「ただ輪っかになってるだけだ。ちゃんと調べなかったのか?」

「いや、首吊り用の結び方なんて知らないし…」

彼女が少し赤くなる。私は相方にも落ち度があったことを知って気を良くする。ロープの結び目を解き、自分の鞄にしまった。

「お互い準備不足だったということで今日の所は見送ろうか。」

「…そうね。もうすぐ暗くなっちゃうし。」

彼女の声はどこか安堵しているように感じた。たぶん私の声もそうなのだろう。

並んで夕焼け空を眺める二人には、もう何も残されていなかった。



Nullでした。

想定してた終わり方と違ったけどまぁいいでしょう。

空っぽ人間の末路みたいになるはずが、ハッピーエンドっぽくなっちゃいました。反省。

まぁ叩き台ですし動画にする時は別物になってるかもしれませんが今日の所はこれで勘弁してやる。

男女の雰囲気をもった2本でしたね。動画の時はどうなるか。

明日面接ですしもう寝ます(唐突)。

長文駄文失礼しました。


2023年2月7日火曜日

創作物取扱責任法 他多数

さて今日も元気にネタ出ししていきましょう。

この前のセイカさんの話は「パラレルコンプレックス」って題名にしよう。

なんかこういうSF系って言うのかは謎だけど、世にも奇妙な物語とかでやってそうな雰囲気のネタ、あった気がしたんで書いときます。


①創作物取扱責任法

小説家の主人公。提出した原稿が幾度目かわからない書き直しを求められ、溜息を吐く。

創作物取扱責任法が施行されて以来、肩身は狭くなるばかりだった。

読者が著作物に影響を受け重大犯罪に及んだ場合、著者と出版社は刑事責任を問われる。

全くふざけた法律だ。おかげでミステリもホラーも碌に書けない。

創作物が現実の世界に大それた影響を与えるわけがないのに。

同じように苦境に立たされている作家仲間が訪ねてくる。

仕事が無くなり生活が苦しくなってきたことを話すと、ある提案を受ける。

いわく、一般に出回らない書物に乗せるストーリーを一緒に考えてほしいと言う。

できるだけリアリティに富み、それでいてヒロイックな物語。

胡散臭い話だと思ったが、酒の肴にと久々にアイディアの限りを尽くした。

主人公は神々の末裔で、最終的に世界を救う使命を背負うことになった。

半信半疑だったが報酬はきちんと支払われた。

作家仲間は満足そうな表情で評判が良かったと語っていた。

私は一晩経ったらあんな稚拙な話を世に出したことを後悔していたが、背に腹は代えられないので黙っていた。

それから数か月後のことだった。

ある新興宗教の信者が大規模なテロを起こしたのは。

連日ニュースではその宗教団体のことが報道された。

教祖の逸話の数々、教典に書かれた教義の内容はどこか見覚えのあるものだった。

作家仲間に連絡を取ったが繋がらない。風の噂によると教団の幹部として逮捕されたらしい。

私は自身の創作物が与えた影響と、自身が背負わなければならない責任がどれほどのものかを考えていた。


以上。

昔こんなの書いてたなってのを引っ張り出してまとめておきました。

製造物取扱責任法って単語を見た時、パッと創作物取扱責任法って単語が思い浮かんで、それに合わせて話を作った代物ですな。

まぁ悪かないけどちょい意外性に欠けるかなって印象ですね。タイトル見た時ストーリー予想ついちゃう人も居るんじゃないかな。

そのうち作るかなぁ?

次のはホントにメモ程度でパパッと書いときます。


②インナーチャイルド

ある日子供の幽霊が見えるようになる。そいつはどこか恨めしそうにこちらを睨んでくる。

自分の子供の頃の姿にそっくりで、もしかしたら自分が幼少期に押し込めた感情の発露なのではないかと考える。

そいつを目の前から消すため、昔を思い返しながら小さい頃欲しかったお菓子やおもちゃを買い与える。だがそいつは一向に消えない。

子どものころ自分がどうしたかったかを真剣に思い返す。家では煙たがられ、学校ではいじめられた日々。何を望んでいたっけ?

そんな折、同窓会で初恋の相手と再会する。かつては顔も合わせられなかった彼女。だが今なら手が届く。

今は銀行で働いていること。出世を見込まれていることなどを話す。彼女が食いついているのを感じる。私は変わったのだ。

ふと何かに押される。私の身体は階段を転げ落ちていき地面へ。

薄れる意識の中最後に見た光景を思い出す。

憎悪と嫌悪に満ちた視線を向ける子供の姿。

ああ、そうだ。私は小さい頃…

死にたかったんだ。


③自殺オフ会バトルロイヤル

ある古びた倉庫に訪れた男たち。ネットで知り合った彼らは集団自殺をするために集まったのだ。4人でやる予定だったが、1人は怖気づいたのか現れなかった。

死に方や苦しくないかについて話す中で、話題は当然各々の自殺理由になった。

一人目がそれを語った時、他の1人が呟いた。「くだらない」と。

二人目は自分の方がもっと不幸な目に遭って来たと語る。他の者はそれに反論する。

三人目も我こそはと名乗りを上げ、自らがいかに悲惨な状態にあるかを熱弁する。

男たちはやがて取っ組み合いを始める。この中で一番不幸な奴しか死ぬことは許されないと。

殴られた男が廃品のクローゼットにぶつかり、それが開く。

暗い倉庫の中、そこからもっと暗い場所に彼はいた。

彼がどんな人生を送って自殺を志したのかはわからない。

彼が何を思ってその場所に逃げ込んだのかはわからない。

彼がどうして他の3人を待たずに握った薬瓶を飲み干したのかはわからない。

勝者は何も言わずに死んでいた。


④直葬

重い荷物を引きずるように抱え、やっとの思いでエレベーターに乗り込む。

先客の男も汗だくだ。足元には大きなボストンバッグが置いてある。

「どちらまで?」

「一階まで。」

最低限の会話を終え、荷物を下ろしてホッと一息つく。一階まで行けば車までもうすぐだ。

ピー。謎の機械音を発し、エレベーターが止まる。

「故障ですかね?」

「参りましたね。」

非常ボタンを押し、通話を試みる。ダメだ。つながらない。

男と気まずそうに顔を合わせる。

「携帯は?」

「あ、そうですね。」

電話を開く。おかしい、圏外だ。

男はどうだろうと目を向ける。体のあちこちを触りながら携帯を探しているようだ。

「バッグの中では?」

「あ、そうかもしれませんね…」

男が動きを止める。こちらをじっと睨んでくる。

私は最初何のつもりかわからなかったが、ハッと気づいた。そうか中身を見られたくないのか。

私はわざとらしく視線を外し、天井の隅を見つめていた。

クソッ圏外だ。男が呟く。

チラッと視線を向けた私は思わず声を上げてしまった。

「見たか!」

「え、あ、いや。」

「見たんだな!」

男が詰め寄ってくる。

ボストンバッグから覗いていたのは、血のついた制服…

「見られたからには生かしておけない。」

「いや違うんですよ。」

私は必死に釈明する。

「あんたも運が悪かったな。」

男がギラリと輝く巨大なナイフを取り出す。

「違う!違うんです!」

今にも切りかかろうとしてくる男に、私は私のボストンバッグの中身を見せる。

「私も同じなんです!」


暫しの沈黙。呆気にとられたような顔をしていた男は不意に吹き出した。

そのまま二人で笑い転げる。

「いやぁすごい偶然もあったもんだ。」

「全くです。あなたの様子をお見受けした時もしやと思いましたが。」

「それ奥さん?」

「いえ、不倫相手でして…。そちらは?」

「全然知らない女子高生。」

お互いの事情を話す。まるで数年来の友人であるかのような気さくな会話だった。

異常な緊張状態が解けたことによる異常な緩和状態であった。

「そう言えばエレベーター、どうする?」

「あ。」

閉じ込められていたことをすっかり忘れていた。

外部との連絡手段はない。というかよく考えたら外部の人間に来られるのはあまりよろしくない。どうしたものか…

ガタン。そんな私たちの想いに応えたかのように、エレベーターは動き出した。

二人で笑って顔を見合わす。

エレベーターはグングン下がっていく。下へ。下へ。

「…長くないか?」

男の疑問は私も抱いていたものだった。もう1階に着いても良い頃では…

エレベーターは加速していく。もはや下がっているのではなく落ちているような。

耳をつんざく金属音と内臓が浮き上がる浮遊感に心臓が早鐘を打つ。

いったい何が起こってるんだ?

ガーーーン!!

衝撃音とそれに見合った振動の後、ゆっくりと扉が開く。

その先は真っ暗で何も見えない。

いったいどこへ辿り着いたのかわからない恐怖に、二人は縫い付けられたように暗闇を見つめていた。

彼らは気づかない。

扉の向こうを見つめる彼らの背後で、二つのボストンバッグがかすかに蠢きだしていた。



こんなもんか。

メモ程度って言ったのに結構がっつり書いちゃったね。

興が乗っちゃったわ。

明日明後日辺りで注文したボイロが届きそうですし、そしたら動画編集に移りますかね。

他のことで忙しいですし今日はこんなもんで。

長文駄文失礼しました。


2023年2月6日月曜日

かえして

「か~え~し~て~っ!か~え~し~て~っ!」

公園で子供が騒いでる。誰かに意地悪されたのかな。

「か~え~し~て~っ!あ~の~こ~を~か~え~し~て~っ!」

「か~え~し~て~よお~っ!あ゛あ゛あ゛~~~!」

「…君、なにやってるの?」

「ちーちゃんのおかあさんのまねっ!このまえいっぱいあつまったときやってたの!」

ちーちゃんが誰かはわからないが、なんとなく察しがつく。

「か~え~し~て~っ!あ~の~こ~を~か~え~し~て~っ!」

「ひ~と~ご~(完


一発ネタだぁ!

無邪気さ故の残酷な遊び。ま、葬式の時の遺族の真似ですね。

ちーちゃんが死んだこともわかってないし、母親の言葉の意味もわかってないんでしょうね。いつか気づいたとき嫌な気分になりそうだ。

これじゃ短いので小ネタをいくつか。

何にしようかなぁ?エセホラーの奴にするか。

まあまあしょうもない奴なんで放置されてる連中です。


①自宅の地下室の写真

心霊番組の一幕。視聴者から寄せられた心霊写真を霊能者が鑑定する。

ナレーション『これはAさんの自宅の地下室に設置された、監視カメラに映った映像の一部である。』

写真には殺風景な部屋の中、両手に手錠をかけられた少女の姿が映っている。

ナレーション『おわかりいただけただろうか?画面右端、ベッドの陰から恨めしそうにこちらを見つめる少女の姿を…』

カメラが画面端に寄っていく。そこには半透明な少女がこちらをじっと睨みつけている。

オーディエンスの間に怯えたどよめきが広がる。

「先生、これはどういった霊なのでしょうか?」

「これはこの部屋で無念の最期を遂げた少女の霊ですね。強い怨念を感じます。」

ナレーション『かつてこの部屋で非業の死を遂げたという彼女。いったいこの場所で何があったというのだろうか。Aさんの身に不幸が降りかからないことを願うばかりである…」


【解説】

は?てなるだろ。そういうことだ。

ツッコミ役不在のシュールな恐怖みたいな感じ。

なぜか自宅に地下室がある。なぜか地下室に監視カメラがある。なぜか監視カメラには少女が映っている。なぜか少女の手には手錠がかけられている。なぜかそこには別の少女の幽霊もいて、なぜかその少女は地下室で亡くなったらしい。

明らかに連続誘拐殺人事件が起こってるのに誰もそこには触れない。

Aさんの身を心配してる場合じゃねぇだろ。犯罪者だぞそいつ。


②遊泳禁止の海の写真

心霊番組の一幕。視聴者から寄せられた心霊写真を霊能者が鑑定する。

ナレーション『これはBさんが、とある海辺で写真撮影を行っていた際に撮られた写真である。』

顔と声が加工されたBさん「ええ、当時私はオカルト雑誌でルポライターをしてて、記事に使うための写真を撮ってました。そこは自殺スポットとして有名で、もしかしたら幽霊の一体でも映らないかなって…」

ナレーション『雑誌の取材のため、遊泳禁止の海で写真撮影を行っていたBさん。そこに不可解なものが写り込んでいた。それがこの写真である。』

写真の中では派手な髪色の女性が溺れており、その体には無数の青白い腕がまとわりついている。

Bさん「遊泳禁止だって言うのにふざけて泳いでる若者が居て、けしからんって思いながら撮影してたんですが…。急に様子がおかしくなって写真をよく見たらこれが…」

カメラはスタジオを映す。

「先生、これはどういった霊なのでしょうか?」

「これはこの海辺で自殺した者たちの霊ですね。強い怒りを感じます。」

ナレーション『Bさんは写真に写り込んだ霊に気づくと、その場をすぐに逃げ出したそうだ。皆さんも遊泳禁止の海にはけして入らないように…』


【解説】

これはちょっとわかりづらいね。

正解は溺れている女の人の救助もしてないし、警察にも通報してないでした。あとシレッと盗撮してる。

最後に『この写真を載せた記事は、まあまあの評判だった…』て締めくくろうと思ったけどふざけ過ぎかと思ってやめた。


以上二つ。もう一個くらい思いついたらまとめて作ろうかとも思うけど、どれも微妙そうな出来だから作らないかも。暇かつネタ切れなら使う。

これ書いてる間に思いついた小ネタをもう一つ。


『娘は預かった。返してほしければ一億用意しろ。』

「へぇ?」

『…俺は本気だぞ。探してみろ。アンタの娘は見つからないはずだ。』

「ん、ああ、そうみたいだな。」

『物分かりが良くて助かる。一億用意できるな?愛する娘のためだもんな?』

「断る。」

『は?』

「お前のようなクズに渡す金なんかない。どうせロクに努力もせずダラダラと遊び惚けて、犯罪に手を染めなきゃならないとこまで追い詰められんだろう。それで社会が悪いだの金持ちが悪いだのクソみたいな理屈を並べて誘拐にまで手を出して。まったく恥というものを感じる知性もない人間は羨ましいよ。」

『…黙れ!お前に何がわかる!お前みたいに恵まれて生まれた人間が!』

「これまでの人生何一つ満足に成し遂げられたことなんて無いんだろ。ホント惨めな人生だよな。誘拐する前にも思わなかったか?どうせ自分のやることなんて上手くいくわけないって。正解だよバーカ。私はお前に一銭だってくれてやる気は無い。刑務所でも楽しめるような趣味を見つけとくんだな!」

パァンッ!!

けたたましい破裂音が響く。もしかしてこれが銃声だろうか。

『……ハハ、ハハハッ!やってやったぞ!ぶっ殺してやった!お前の娘ぶっ殺してやったぞ!聞こえるか!』

男の興奮したような、怯えたような声が聞こえる。

『思い知ったかこの野郎!俺らみたいな人間でも人生をかければアンタらみたいな人間に一矢報いれるんだよ!』

「電話する前に番号はちゃんと確認した方がいいぞ。」

私は極めて有用なアドバイスを彼に与えると、電話を切った。

そして見知らぬ不幸な親子のことを想って暫し目を閉じた。


倫理観をどこに置いて来てしまったのだろうって話ですね。

電話による匿名性と現実感の無さによって、非道な行いをしてしまうってテイストにする予定でしたが、なんか純粋なクソ野郎になっちゃいましたね。

ま、短編としてきっちりまとめるならこの方が良いかも。

そこそこのボリュームになったので切りますか。

なんか最近ネタがたくさん思いつく。メモが追いつかないもん。

投稿頻度もあまり落としたくないんですが、しばらくは細々としたネタをたくさん書き留めておこうと思います。

こうゆうのが後々役立つんだ。


2023年2月4日土曜日

残叫

歯医者に連れてこられた少年。奥から少女の叫び声が聞こえてくる。

痛みを訴え、懇願するように泣き叫ぶその声。少年も恐怖のあまり泣き出してしまう。

抵抗するも診療台の上に座らせられる。隣から聞こえる叫び声は耳をつんざくばかりだった。

叫び声が途切れ、咳き込む声が聞こえる。少女が盛大にうがいする音が聞こえる。

「これが私の楽しみなんだ。」少女が声をかけてくる。

なんて趣味の悪い人だと思いつつも安堵する。

少女はしきりに話しかけてくる。お前を今治療してる歯科医はまだ若いが腕は確かなこと。この診療所も昔と比べて新しく、綺麗になったこと。

思わず笑みが漏れる。歯科医が不思議そうに尋ねてくる。

「どうかしましたか?」

「いや、隣の人すごい話しかけてくるなって思って…」

「…?。隣に人はいなかったはずですが。」

ちょっと見てきますと言って歯科医はその場を離れる。

少年の心に恐怖心が帰って来る。そう言えばあんなに叫んでたのに自分以外誰も反応していない。

歯科医の人を呼び戻そうとする。だけど恐怖で声が出ない。

瞬きの刹那、少女が目の前に現れる。

「安心しろよ。滅多に死なないから。」



以上。

歯医者で起こった死亡事故と言えば、フッ化ナトリウムとフッ化水素酸を間違えたあの出来事を思い出しますね。

そうそう起こるものではないとは言え、ああいうパターンを知っていると歯医者で聞こえる子供の泣き声もちょっと不安になっちゃいますね。

そんなことを考えながら作った話でした。

起承転結の方がメモとしては残しやすいですね(新たな知見の獲得)。


2023年2月3日金曜日

見上げた記憶

物語調で残そうかと思ったんですが恥ずかしくなったので止めます。

アイちゃん先輩用のストーリー。


虐めにあっている小学生の男の子。

3階にある開かずの教室の前で泣いていると、誰かに声をかけられる。

見上げると知らない女生徒の姿が。その少女は先輩だと名乗る。

いつも慰め、元気づけてくれる先輩。しだいに心惹かれていく。

しかし虐められ、泣いているだけの自分の情けなさに何も言葉が出ない。

苦悶と羞恥の果て、少年は死を願う。

先輩はそんな少年を叱責する。彼の手を引き、開かずの教室へと招き入れる。

見上げると先輩の死体が天井からぶら下がっている。舌をだらりと垂らし、目をカッと見開いたその顔。

少年は目を逸らそうとするが先輩はそれを許さない。小柄な少女とは思えない力だった。

頭を押さえつけていた力がふっと緩み、柔らかな感触が体を包む。

お前は私みたいになるな。彼女は優しくそう言った。

それから少年は泣かなくなった。急に虐められなくなったりはしなかったが、言い返して、殴り返してくるようになった彼に、周囲の見る目も変わっていった。

少年はたくましく成長していった。彼の視線が少女のことを見下ろすようになった頃、彼女の姿は見えなくなった。

先輩は何者なのか、なぜあの教室は閉鎖されているのかを察していた彼には意外なことではなかった。ただ初恋の終わりを悟っただけだった。

それから50年、老人になった少年は校長として学校に帰って来ていた。

3階の開かずの教室の前でうずくまる。

あの時はこうしていたら先輩が声をかけてくれた。思い出は色褪せないままだった。

自分は先輩の望みに応えられただろうか。自身に問いかける。

既に旧校舎となっていたその場所は、来年で取り壊しが決まっていた。

先輩にもう一度会いたい。老人の目から涙が零れた。


誰かに声をかけられる。いつの間にか眠っていたようだ。

見上げると懐かしい少女の姿があった。

結局ここに帰って来るのか。先輩はそう言って笑った。

立ち上がっても目線は彼女の背丈を超えなかった。そうだ。これをずっと求めていた。

先輩が少年の手を引いて歩き出す。見上げた彼女の顔は優しそうに笑っていた。


旧校舎には自殺した子供の幽霊が出る。

生徒たちの間ではそんな噂話が広がっていた。

校長先生が不審死を遂げたことで取り壊しは中止となり、その建物はまだ敷地の一角に残っていた。

そこからは時折、少女と少年の笑い声が聞こえてくるのであった。



以上。「見上げた記憶」でした。

結構気に入ってる。どこがどうとかは言えないけど。

見上げるほど大きな存在に慈しまれていた記憶に、ずっと囚われていたんでしょうね。

私も幼女にバブりたい。おぎゃあ。

それはさておき。

さすがに幼稚園児では話を作れなかったため小学生になってもらいました。まぁ小学生くらいならいいでしょう?許して…

基本的に独白形式で話が進むため、分量の割に画面の動きが少なくて作るの楽そう。こういうの待ってた。

買ったら作ります。


筆始め

いつも帰省中は色々ブログを書き進めてましたが今年は何にも書いてません。なので筆始めです。 昔のカードを引っ張り出して遊んでました。あと普通にダラダラしてた。 そのまま休み気分を引きずってモチベが上がりませんでしたが一応動画を一本作れました。日常系小ネタ集ていう5分くらいの軽いギャ...