時系列が進んでしまうため来るべき時まで置いておかれるネタ。
忘れないように下書きを残しておく。
夏色花梨は優秀な生徒会長だった。
弓道部の部長と兼任でありながらどちらの職務も疎かにすることなく、学業においても優秀な成績を保ち続けた。
運動部、文化部問わず良好な関係を築き、生徒の代表及びまとめ役としての評判は歴代でも屈指のものだった。
彼女は1年間の任期を見事に務め上げた。
次の生徒会長を決めるため、生徒会選挙が始まる。
「ずん子さんでいいでしょ~!」
生徒会室のパイプ椅子にひっくり返りながら小春六花がそう口にする。
指名された東北ずん子は涼しい顔で目を閉じる。二人を見つめる夏色花梨と花隈千冬は苦い顔だ。
六花は結局花梨の任期が終わるまで会長になる意欲を持つことは無かった。
この学校の生徒会には幾つかの通例がある。
まず生徒会は会長、副会長、会計、書記、庶務の5人。現在は六花が会計、千冬が書記、ずん子が庶務だ。
3年生の会長、副会長が抜けると2年生の2人が会長、副会長と現在の役職を兼任する。
もっとも庶務は兼任するような役職ではない。3人では少なすぎるため1年生から新たに一人招き、庶務とするのだ。
最初から生徒会だった1年生のもう一人と比べて当然その人は経験が少ない。基本的に補佐へと回り、その関係性は翌年に繰り越される。
要するに1年の途中から生徒会に入った庶務のずん子は副会長になるのが妥当なのだ。
「…やる気ない人に言ってもしょうがないですよ。」
千冬は呆れたように笑う。実際のところ生徒会の活動を牽引していたのはずん子の方であり、補佐に回っていたのは六花の方だ。通例がどうあれ現在の状況を反映した方がいい。
「別に庶務の人がなっちゃいけないってわけじゃないんでしょう?」
「そうね、そういう年もあるわ。」
六花の問いかけに花梨も諦めた様子で答える。
東北ずん子は我が校始まって以来の才女だ。生徒会長になることに疑問を持たれることは無い。というより生徒会長にならない方が疑問を持たれることだろう。
六花も優秀な生徒ではあるのだが、ずん子と比べれば見劣りしてしまうのも否めない。
「ただ、選挙には出てもらうわ。」
「ええ!!」
「このままだと対抗馬がいないもの。不戦勝は恰好がつかないわ。」
生徒会長は誰でもなれる。生徒会役員である必要は無い。毎年何人かは立候補してくるものだ。
もっとも彼らはそれほど真剣ではなく、花梨の時も順当に生徒会役員が勝利した。
ただ今年はやはり他の生徒も東北ずん子に尻込みしてしまったようで、未だ立候補者は一人も来ていない。
そういう時は生徒会からもう一人候補を選出して形だけでも選挙を行う。こっちの通例は曲げられない。
「形だけの選挙よ。副会長としての最初の仕事だと思ってやりなさい。」
「うへぇ。」
六花が嫌そうに顔をしかめる。
花梨は六花のそんな態度を本気で信じてはいなかった。そもそも彼女は1年の1学期から他の部活にも入らずに生徒会に加わったのだ。やる気が無いわけがない。
当時の彼女はもっと意欲にあふれていた。そうでなくなったのはずん子が生徒会に入ってからだ。
ひとえに彼女の態度は生徒会を割らないため。六花が会長になろうとすれば花梨や副会長、後輩である千冬もどちらを支持するか決めなければいけなくなる。その結果がどうなろうと余計なわだかまりを残すことになるかもしれない。
だから初めから興味が無いフリをしているのだ。
「それじゃあ六花ちゃん、正々堂々頑張ろうね!」
「出来レースだけどねぇ。」
ずん子が両拳を握りしめ六花に笑いかける。六花も何てこと無いように笑い返す。
別にずん子が会長になったからと言って何がどうなるわけじゃない。六花が会長になったとしても何がどうなるわけじゃない。
ただそれでもいざ勝負になったら六花にも火がつくのではないか。花梨は内心そう期待していた。
しかし不安もある。六花が敢えて身を引いているというのは花梨の希望的観測だ。
…本当は単に自分より優秀な相手に折れてしまってるだけではないか。
本心の見えない六花の笑顔を前に、生徒会を去る花梨の心は複雑だった。
舞台は変わり新聞部部室。
唯世かのんはボールペンを握りしめ長考していた。
大会もなく引退時期が曖昧な文化部にとって生徒会選挙はちょうどいい時期だ。前部長である彩澄りりせから先日新聞部を受け継ぎ、新部長となったかのんにとってこの生徒会選挙が初仕事となる。
東北ずん子が当選確実、同じく生徒会の小春六花が形だけ出馬。これから選挙シーズンの間そんな内容の記事を上げ続けることになる。
いったい何が面白いのか。
ボールペンを握る手に力がこもる。前部長のりりせは前会長の花梨と友達だった。1年を通して温い記事を書き続け、新聞部は生徒会の太鼓持ちという風潮まで定着してしまった。
それでなくても学校新聞などというものは面白みが無い。起こった事をそのまま伝えれば誰の目にも留まらないのは当然だ。多少なりとも色をつける必要がある。
りりせが居なくなり記事を自由にできる環境になった今、自分はどうしたいのか。
かのんがボールペンを走らせる。胸に浮かぶ言葉は一つ。
これは捏造ではなく演出。
立候補者を周知する校内新聞はセンセーショナルなものだった。
『生徒会真っ二つ!!会長の座を巡る熾烈な権力争い』
夏色花梨前会長は第一候補小春六花を次期会長に推し進めていた。彼女にとって1年生の初めから生徒会の後輩だった小春さんを推すのは当然のことだった。彼女自身も昨年そうやって会長になったのだから。
しかしそこに第二候補東北ずん子が待ったをかける。東北さんは1年生の途中に庶務として生徒会に加入した言わば外様だ。しかしその優れた才覚と旺盛な野心によって生徒会内での立場を強めていた。
東北さんは他の生徒会役員である副会長と書記の支持を取りつけ、夏色さんと小春さんに立候補の辞退を迫る。同学年である小春さんはその圧力に屈しかけたが、夏色さんは退くことは無かった。
そも夏色さんと東北さんは以前から因縁のある相手なのである。同じ弓道部に所属し、生徒会内外でも先輩後輩の間柄だ。
夏色さんが文武両道の才女であることを知る者は多いだろう。彼女は1年生の頃から先輩に混じって大会に出場し、優秀な成績を残していた。このまま行けば来年は優勝も狙えると目されていた。
しかし昨年、優勝したのは彼女と同じように先輩に混じって大会に出場した1年生の東北さんだった。夏色さんは先輩を追い抜こうとしたところを後輩にまとめて追い抜かされたのである。
そして今年、夏色さんにとって高校最後の大会においても優勝したのは東北さんだった。時期が違えば2年生、3年生で連覇を狙えたかもしれない才能はもっと大きな才能に敗れ、無冠のまま高校生活は終わったのである。
頑なに小春さんを次期会長に推し、東北さんを冷遇する彼女の姿勢にそんな事情から来る何かを見出してしまうのは邪推なのだろうか。
改めて今回の生徒会選挙、第一候補は生徒会会計小春六花、第二候補は生徒会庶務東北ずん子となる。投票の日までどちらの候補者を選ぶのか、生徒の皆様はどうぞ存分にお考えを。
「嘘じゃん!いや嘘じゃないとこもあるんだけど…!」
貼られた校内新聞の前には既に人だかりができていた。内容を確認して驚きの声を上げた小春六花に周囲の視線が集まる。
記事をそのまま信じているわけではないのだろうが、やはり周囲の生徒には面白がるような空気が感じられた。
新聞を剥がしてしまおうとして六花は思い留まる。他の場所にも貼られているかもしれないし、強く否定することは肯定することと同じだ。
踵を返し生徒会室に向かう。他の役員も確認したなら向かうはずだ。
六花が生徒会室の前で所在なく歩き回っていると、同じ理由でやってきたであろう人物が現れた。
他の生徒会役員ではなく、新聞部前部長のりりせだった。
「あー、えっと!ごめんなさい…!」
六花の姿を認めると申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする。りりせが頭を下げる必要は全く無いが責任を感じてしまっているのだろう。
「やめてください。知らなかったでしょう。」
動揺を押し隠し、気にしないようにと笑いかける。りりせは尚も申し訳なさそうに続ける。
「やっぱりあの子を部長にすべきじゃなかったわ。」
「唯世さんでしたよね。」
唯世かのんとはそんなに話したことは無い。表情が少なく生真面目そうな印象だったが、こんなゴシップまがいのことを仕掛けてくるとは。
「前からちょっと危なっかしいところはあったのよ。私が引退するのを見計らってたんだわ。」
「ジャーナリストらしいと言えばそうですけどね。」
むしろこれまでが大人し過ぎたとも思える。りりせが部長の間は確かに健全で問題も起こらなかったが、それ故に印象に残るところもない。
マスメディアに興味を持つような生徒の意向を反映していたとも思えない。恐らくは新部長の暴走というより新聞部の方針ごと変わったのだろう。
今までのように付き合っていくことはできないと六花は苦い顔をする。生徒会の内情を知られていたからこそ、事実と脚色を混ぜて筋書きを書かれたのだろう。
あの記事を見れば六花とずん子が真っ向から対立しているように思われる。
小春六花を第一候補、東北ずん子を第二候補と呼んでいるのも小賢しい。
本来候補者に立候補順など無い。ただ五十音順で並べているだけだ。
それでもこう書かれたら六花が立候補したところに後からずん子が割って入ったように思える。そう狙っているのだ。
「まったく困ったものね。」
聞き慣れたツンとした声がかけられる。
「花梨先輩…」
ちょっと気まずくて目を逸らしてしまう。花梨と一緒にやって来た千冬もどこか居心地の悪そうな表情だ。
新聞に書かれていた弓道の大会に関することは事実だ。
花梨はずん子に2年連続で敗れている。もちろんそれを理由に逆恨みしているなんてことあるはずがないのだが…それでも…
「しゃんとしなさい!」
花梨に背中を叩かれ、六花はむせる。その言葉を聞いた千冬も背筋を正した。
「私たちから分断させようとしてるのはわかるでしょ。これでギスギスしてたら相手の思う壺よ。」
花梨の言うことはもっともなのだが、わかっていても気にしてしまうのが人情というものだ。
ずん子と共に生徒会で過ごした1年間、花梨は一度の負い目も負けん気も見せることは無かった。ただ先輩として、生徒会長としてふさわしい態度であり続けた。
それは引退した今も変わっていないようだ。六花はそんな花梨に敬意を覚える。
「放課後に対策を考えましょう。今日は各々、変な考えを持たれないように毅然とした態度で過ごすこと。良いわね!」
花梨が言い終えると同時に予鈴が鳴った。4人は急いでそれぞれの教室へと帰る。
六花の頭を占めるのはどうやってこの事態を切り抜けるかと、もう一人の候補者のこと。
東北ずん子は来なかった。あんな記事を書かれたくらいで不安になったりしないし、他の人のことが気になったりもしない。
それは紛れもなく強さであるのだが、六花の心にはモヤモヤとしたものが残るのだ。
「面白いことになりましたねぇ。」
結月ゆかりが意地の悪い笑顔で語りかける。朝のホームルームが終わったところでウキウキと六花の元にやって来たのだ。
けっして人に褒められるような人間ではないのだが、こういう時に直接来れるのはある種の美点だろう。現在進行形で噂が広がっているようで六花をチラチラと見ているクラスメートは多かった。
「初っ端からやられたよ。」
「ふふふ、戦いの火蓋って奴ですよ。」
内心を包み隠さないゆかりのスタンスは嫌いじゃない。最初からそういう手合いだとわかっていれば相応の付き合い方があるのだ。
「あまり面白がってやるな。六花にとっては胃痛の種やろうが。」
「うんうんそうだよ。私は何のことかわかってないけど。」
琴葉茜、弦巻マキも続いてやって来る。二人とも六花とゆかりの共通の友人だ。
単体ではそれなりに嫌われそうな結月ゆかりという人間を中和してくれる存在でもある。
「見てないんですか。学校新聞。」
「学校新聞…?」
「生徒会選挙のことでゴシップが書かれてたんですよ。」
「…?」
「あ、もしかして学校新聞自体をご存じない。」
ゆかりとマキが気の抜けるような会話をする。
「新聞部が書いてる学校に関する新聞や。新聞部はわかるか?」
茜の問いにマキは尚も首をかしげる。そんなはずは無いだろうと思うがマキだから本当に忘れているのかもしれない。
「りりせ部長のこと覚えてる?」
「あ、りりせさんのところか!新聞部って…ああ!」
思い出してくれたようで一安心だ。
「簡単に言うと六花さんと花梨先輩、ずん子さんと千冬さんで対立してるんですよ。」
「そうなの!」
ゆかりのざっくりとした説明に驚くマキ。
「嘘だよ。あと副会長も忘れないであげて。」
「でも前からそんな話聞いてたで。」
「それはね…」
六花は否定しようとしたが茜の一言に言葉に詰まる。花梨が六花を会長に推しており、千冬と副会長が別にずん子でいいじゃんという立場だったのは紛れもない事実だ。
そして花梨が六花を推していた理由は定かではない。弓道の大会で負けた腹いせという邪推は十分にそれらしいものだった。
「まぁ真偽のほどはどうでもいいんです。重要なのはあのずん子さんとやるってことですよ。」
「出来レースのつもりだったのに…」
「あなたはちょっと認識が甘いですね。」
ゆかりがピシャリと言い放つ。いつも気に食わない物言いだがゆかりは頭のキレる奴だ。六花は続く言葉を待つ。
「あの記事があっても無くてもこの選挙は荒れる可能性があった。あなたが思っているよりも前会長夏色花梨には人気があり、会長候補東北ずん子にも人気とその逆がある。」
「それは…」
「起爆剤を仕掛けられたのはその通りですが、元から燃料があるのは忘れてはいけません。」
六花はまたしても言葉に詰まった。
花梨の人気は必ずしも生徒会長としてのものではない。もちろん純粋に心優しく優秀な模範生としての慕われ方もあるが、その容姿と性格によるところも多い。
美人でスタイルが良く、気が強いが程良く隙がある。男子からはお姫様のように思われながらも、女子からは王子様のように思われていた。
要するに男女問わずファンが居るのである。
片やずん子の人気はどのようなものか。
文武両道才色兼備の非の打ち所がない存在であり、完璧という評価がふさわしい。
だがそれ故に憧れも反感も向けられていた。弓道の大会のことだって後輩に負かされたのは花梨だけではない。
あらゆる分野で並外れた才能を発揮し、不用意に得意分野で勝負をしてしまい心を折られた者も少なくないと聞く。
要するに男女問わずファンとアンチが居るのである。
六花とてどっちがすごいかと問われればずん子と答えるだろうが、どっちが好きかと問われれば花梨と答えるだろう。
生徒会で一緒に仕事をしていても、花梨といる時は支えていると感じるがずん子といる時は従っていると感じる。
ずん子はどこか気に食わないし、得体が知れない。
この生徒会選挙は六花を代理とした花梨とずん子の対立となり、好きと嫌いの対立となる可能性を持っている。
「私としてはずん子さんに負けてほしいですけどねー。」
あっけらかんとゆかりが言う。ゆかりにとって自分よりずん子の方が親しいとは思えない言い草に六花は呆れる。
しかしはっきりとそう口にできるだけ彼女はやはり友人なのだろう。口には出さずとも後ろ暗い思いを持っている者にとって匿名の投票はそれを形にする機会だ。ゆかりの言うようにこの選挙は荒れる。
「ウチらとしてはどっちを応援するか悩ましいな。」
「うーん六花ちゃんかずんちゃんか。」
周囲がどう煽り立てようが出来レースだ。気にせず東北ずん子に投票すればいい。
だって私には生徒会長になる気なんて無いんだから。
そう言って笑おうとして六花はできなかった。
放課後、生徒会室に向かう前に一早く六花は隣の教室に向かった。
慌ただしい生徒たちの中、悠然と過ごすずん子を見つける。スラリと伸びた長身と緑がかった黒髪、その所作には常に気品と余裕がありどこに居ても目につく。
「ずん子さん。」
「来るんじゃないかと思ってた。」
ずん子は普段のように穏やかな笑みで告げる。記事について知らないことは無いだろう。
「その神経の太さを分けてほしいよ。」
「分けてあげられるものならそうしたいけれど、他のところと釣り合いが取れないかもね。」
ずん子は横柄ではないが謙虚でもない。六花はその態度をどう言い表せばいいか知らなかった。
ずん子が軽く首をもたげ、視線を後方に飛ばす。
「かのんちゃん。」
「見てるね。」
新聞部新部長の唯世かのんは腕組みをしてこちらを見つめていた。ずん子と同じクラスにも関わらずあんな記事を書けるあたり彼女の神経の太さも相当なものだろう。
「今日1日ずっと見てるの。私がどんな反応するかなって。」
「うわあ。」
「可愛いよね。」
小動物を愛でるようにずん子は笑う。馬鹿にしているわけでも強がっているわけでもないのだろう。本当にただ可愛いと思っている。
だから得体が知れないのだ。
「さて、本題に入るけど。」
指先を合わせたずん子が視線を六花に戻す。
「花梨先輩が生徒会室で今後の対策を考えようってさ。」
「六花ちゃんはそれでいいと思ってるの?」
答えられない。どんな対策が考えられるか以前に。
「もう花梨先輩は会長じゃないんだよ?」
ずん子の言葉はその通りだ。既に彼女は引退している。生徒会の今後を決めるべき立場ではないし、決めていい立場ではない。
「ちゃんと戦おうよ。」
「あの記事に乗っかるの?」
「乗っかるかどうするかそこも含めて。」
ずん子の目がスッと開く。彼女の目は怖い。抜き身の刀身のような冷たい輝きを放っている。
「どうやったって遺恨は残るよ。ちゃんと戦った方がいい。」
「私は…」
「あなたにも他の誰にも、譲ったと思われるのは癪だからね。」
六花は自分では身を引いたつもりでいた。ただ気後れする気持ちがあるのもまた事実だった。そんな内心はずん子には見透かされていた。
「あなたと戦う…何のために…?」
もはや選挙で争うことは避けられないと悟りながらも、六花は腹を決め兼ねていた。
多少気に入らないところはあれど、ずん子なら問題なく生徒会長を務められるのだ。この勝負には意義が無い。
「互いの意地のために。」
迷いの無い目でずん子は答える。
私にどんな意地があるのかと聞き返そうとして六花はやめた。ずん子にもどんな意地があるのか知らない。
そもそも彼女は何のために生徒会長になろうとしているのか。そんなことも知らないまま彼女に任せようとしてしまっていた。
どのみち避けられない戦いならば、その中で知ればいいことだ。
「やるからには勝つからね。」
六花はそう言って立ち上がる。口にした瞬間、これまで抑えつけていた熱が体の奥から広がってくる気がした。
本当は生徒会長になりたかった。理由なんてわからずともずっとそうだったのだ。
「相手になるといいけど。」
ずん子が薄く笑う。今の笑いには確実にこちらを馬鹿にする意図があった。
目の前のずん子を睨み、教室奥のかのんを睨み、六花は教室を出て行った。
戦いの火蓋が切られた。