2024年12月7日土曜日

歯車は回るだけ

アンドロイド編本編。TTさんことナースロボタイプTの物語。


・TTさん

古株のナースロボタイプT。剣崎、はう達と親交がある。

機械らしい勤勉な働きぶりと長年の勤務で培った経験と勘により高い信頼を寄せられる。

普段は無表情だが自身に対する恐れや嫌悪を察知すると笑顔を見せる。

歯車のような働きこそ機械の目指すべきところという信念がある。


・剣崎雌雄

病院に勤める医師。TTさんとの付き合いは長い。

アンドロイドとしての線引きなくTTさんに接する数少ない人物。

ほとんど同期であるTTさんとの距離は近いが、若干ウザがられている。


・雨晴はう

剣崎に憧れる女子高生。TTさんとの付き合いは長い。

アンドロイドとしての線引きなくTTさんに接する数少ない人物。

TTさんが病院外で親交を持つ唯一の相手。


・初老の男性医師

病院に勤める医師。剣崎、TTさんよりも古株。

ナースロボには純粋な労働力として期待を寄せており、偏見はないが線引きはしっかりしている。


・若い女性看護師

病院に勤める看護師。勤め始めてまだ年月が浅い。

面倒な仕事をTTさんに押し付けるなどアンドロイドとの関わり方には懸念がある。


・入院患者の老婆

病院に入院している患者。

病による苦痛と回復の見込みが乏しいことで攻撃的になっている。


・他のナースロボタイプT

作中には受付業務を担当しているナースロボ、通称「ウケツケ」さんが登場している。

他には手術の補助を担当する「ジョシュ」さん、機械設備に詳しい「メンテ」さんなどを考えていた。何機配備されているかは未定。



後語り

20分想定でしたがだいぶ足が出て29分50秒で決着。ギリギリ20分台なのでセーフということにしておきます。

なかなか作っていてしんどい動画でしたが何とかまとめきれたと思います。

テーマとしては「アンドロイド」という存在そのものとそれを通した人間的な苦悩。また、前回の流れを汲んで命と死や自我というものに関しても盛り込まれています。

わかりづらそうなところをまとめておきます。


「反アンドロイド主義者」サイド

離島に送られたナースロボタイプTが島民によって破壊された事件を察知。秘密裏に彼女の機体を回収し修理する。

彼女を使って事件を起こし、反アンドロイド感情を煽るつもりだったが彼女は協力を拒否。

彼女との問答からアンドロイドが道具としての縛りから抜け出せないのではなく、人間よりも高い精神レベルにあるのではないかと気づく。

この時点でアンドロイドの排除を躊躇うグループが生まれ、組織の根幹が揺らぎ始める。

他の者たちもアンドロイドが人を超えてくるのならば尚のこと彼女たちの存在を許してはいけないと強い危機感を抱き始める。

アンドロイドの真価を確かめるための作戦が立てられる。

TTさんが感情に任せて人間を殺したらそれで良し。その姿をクローズアップしアンドロイドがいかに危険な存在か世間にアピールする。

TTさんが一切屈することが無かったらそれも良し。アンドロイドがいかに危険な存在か組織のメンバーは再確認し、彼女たちを全て破壊するという覚悟を新たにする。

作中の事件はそのような背景で立てられた実験的な犯行である。

第一段階

TTさんを誘拐。講演のため単独で外出することは内通者の看護師から知らされている。

回収した機体を操作して、同じナースロボが人間に敵意を向けている姿を見せる。

TTさんがアンドロイドとして必ずしも良い扱いを受けてこなかったことは調査済み。

第二段階

病院に爆発物を設置する。看護師の裏切りと反アンドロイド感情を見せる。

このタイミングで期待されていた反応は3通り。

悲惨な目に遭った仲間に共感し人類への復讐に協力する。

裏切りによる失意と怒りで看護師への暴力性を見せる。

犯行を止めるためナースロボを破壊、看護師を殺害する。

いずれのパターンにもならなかった。

第三段階

最終手段。この事態を見越してアンドロイドが爆弾を持って病院に侵入したことは警察、マスコミ等に通達済み。

このタイミングで期待されていた反応も3通り。

爆弾を解除するため人間に助けを求め、話を聞き入れられない怒りで暴力性を見せる。

爆弾を解除するため人間に助けを求め、周囲の人間を爆発に巻き込む。

病院から離れようとするのを人間に止められ、暴力的な手段でそれを突破する。

いずれのパターンにもならなかった。


「TTさん」サイド

ナースロボは患者および医療従事者との対話のため、最大限の知性と共感性を有している。

TTさんも例外ではなく、冷静沈着に見えても何も感じていないわけではない。

彼女がどれほど苦しんできたかは作中ではそんなに描写していない。

TTさんがはっきり口にしたのは、人間に腹を立てることもあったというだけだった。

第一段階

TTさんは常に最悪のパターンを想定して行動している。

ナースロボが遠隔操作されたものであり、アンドロイドである自分に自発的に人間を襲わせるための舞台なのではないかというのは当初から考えている。

その場合は病院には向かわずに犯人グループに破壊されるのが正解である。

しかしそうではなかった場合、ナースロボによる病院への襲撃を防ぐことができないためそちらの可能性を優先している。

第二段階

看護師の裏切りも内通者の可能性は考慮していたため動揺は少ない。彼女が自分の反人間感情を煽るための役者であることも考えている。

説得を試みたのは看護師の精神を揺さぶり、ナースロボの隙を引き出すためである。

犯行を確実に防ぐにはナースロボは破壊し看護師は殺害するのが最適解である。

戦意を失ったように見えてもそれが演技であった場合の方が最悪のケースなので看護師を殺さなかったのはTTさんの甘さである。

第三段階

作中では完全にタネが割れてしまっている状態でこのフェーズに突入した。

TTさんは自分が助かるために警察に助けを求めるという選択肢を完全に切ってしまっている。

これは爆弾は時限式だと犯人グループが言っていても、実は遠隔で起爆できる可能性を最悪のケースと想定したためである。

爆弾が本当に仕掛けられているのかも定かではないが、本当に仕掛けられていた方が最悪なのでそう想定している。

この場面は非常に難しく、何が最適解か私もわからない。

爆弾の存在が証明できないためTTさんも警察も行動を起こせない。絶対に爆発すると確信を持てていればTTさんが犯人であろうとなかろうと警察は彼女を通す。

だけど単なる脅しで包囲網を抜けようとしているだけの可能性もあるので彼女を止めないわけにはいかない。取り押さえられてしまったら人命を危険に晒すためTTさんもうかつに動けない。

TTさんが何とか信じてもらう以外突破方法はない。はず…

こういう展開はいつもコメントで「こうすれば良かったじゃん!」という目から鱗の解決策が出ないか冷や冷やする。

結局彼女が病院を抜け出せたのは何か流れである。はうちゃんや剣崎先生らが騒いでわちゃわちゃやってる間にもうだいぶ進んじゃって、今更止めるのもなって感じになったため。


以上が犯人サイド、TTさんサイドの思惑。

だらだら説明しても長いしわかりにくいだけかと思ってバッサリ切ったが、視聴者がついて来れるかは謎。まぁ説明したところでかもしれないが。

感情に振り回されて反社会性を見せる。命惜しさに周囲の人間を危険に晒す。逆に一切の感情を排して人命も人心も無視する。

どう転んでもアンドロイドの欠点を世間に、または組織に証明してくれる想定だったがことごとく外されてしまった。

TTさんは分かっていなかったが単純にアンドロイドの危険性を知らしめるための演出としてもこの方法は理にかなっていた。

TTさんを操って爆弾を仕掛けたとしても大した事件にはならない。爆発で大勢死んだとしてもあのアンドロイドは遠隔操作されたものだったと主張できる。

また大衆感情としても病院で爆破テロが起こり、その犯人が実はアンドロイドでしたと言われてもインパクトは薄い。

立て籠もり事件としてテレビ中継をさせたりすればもっと面白味は増すだろうが、アンドロイドの本性だいいや遠隔操作だの水掛け論の域は出ない。

しかしもしアンドロイドが自発的に人を襲ったら。TTさんは人間へ敵意を持つかどうかを気にしていたが大衆にとってそんなものは重要ではない。

爆破テロを防ぐために同僚の看護師を殺害する。病院を爆弾から守るために警官隊に怪我を負わせる。

そんな映像が流れた方が遥かに生々しい。何か正当な理由があったらアンドロイドは冷酷に人を害するのだと、そう人々に感じさせる。

人間憎しという敵意による攻撃だろうが人間を守るための危機回避による攻撃だろうが大差ないのである。

TTさんがその事態を避けられたのは運の要素が大きい。

看護師が死に物狂いで爆弾を起爆しようとしていたらTTさんは殺してでも止めるしかなかったし、はうちゃんや剣崎先生が助けに来なかったら警官隊を強行突破せざるを得なかった。

いやこれらは運ではなくTTさんの人徳によるものでしたね。


いつだか日常系では人は死なないと言いました。

あれは嘘ではありません。TTさんは人ではありませんので。

アンドロイドだけはたとえいなくなっても同じ姿の別の者が代わりに出続けることができます。

メタ的な意味でも「歯車が一つ欠けたって動き続けるから」ってことです。

テーマ曲は「NexTop」。この物語自体曲に寄せました。

あまり描かなかったTTさんの内面を表しています。曲中で「Alrigt」を言い聞かせているようにTTさんも「問題ない」と言い聞かせています。

人に嫌われて傷ついていなかったのか、自分の判断と選択に自信を持っていたのか、本当に死ぬのが怖くなかったのか。

受け手に委ねるって奴です。

蛇足ですが最後TTさんが別個体であることを示唆するシーン。

患者の老婆がいつも文句を言いつつも嫌いなニンジンを食べていることを知らないのがわかりますが、「お下げしますか。」と言った理由について補足しておきます。

まず対人経験が少ないのでこういう手合いは不平を言いたいだけで本心から嫌がってるわけではないことに気づいていない。

次にもう長くないのだから嫌いなものまで頑張って食べる必要は無いと思っている。

TTさんが好き嫌いせず全部食べるように言っていたのはまだまだ人生が続いていくと信じていたからです。

子どもにそう言い聞かせるのと同じ理由です。先々のため。

10年の勤務経験を通して得たのはそういう非合理的な思考だったわけです。

終わり。


5 件のコメント:

  1. 別個体匂わせは気付かなかった、単なる心情の変化かとばかり

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    1. 俺も気づかんかった。TTさんは老婆が文句を言いながらもどうせニンジンを食べると思って、からかうというか試すように「お下げしますか」のセリフが出たと感じた。後のやってきたことの価値を信じるがちょうどその信頼関係と結びついてるようだったから…
      まあでもたしかに爆破前のTTさんならそんなことしないだろうな

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    2. あんな無表情でお下げしますかって言うわけないよな。うわー気づけなかったわ…
      でも最後のセリフがより染み渡る。おばあさんはニンジンを食べたし、やってきたことは無駄じゃなかった…
      けど悲しい…

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    3. 気づけなかった…
      後輩ナースロボも気付けないのがなるほどなーって思いました
      おばあさん長生きして…

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  2. エグい。めちゃ面白かったし裏話を見れるととてもワクワクする

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