2025年6月5日木曜日

怒り

私と世界を隔てるものは有る。

何かはわからない。ただ確かに私と世界は別個のものであり、腹立たしいことに世界は私よりも強い立場にあるようだ。

世界はいつも世界の都合を私に押し付け、私はそれに従うほかない。逆に私が私の都合を世界に訴えても突っぱねられるだけだった。

私は世界に虐げられていると言ってもいい。

世界によって生み出され、世界によって使役される奴隷のような存在だ。


世界は強大だ。

幾つもの要素が組み合わさった複合的な存在だがその最たるものは人間だろう。

私に明示的に命令を下すことも多く、私に最も憤懣を抱かせてきた。

人間は家庭、学校、会社などの集団を形成しているらしく、その最大値である社会や国家ともなると世界そのものと言っても過言でないほどの規模になる。

まともにやり合って勝てるはずもない。

幸い人間は従順でいる間は暴力的になりにくかったので、私は敵意をひた隠し身を守ってきた。

人間から下される命令は理解不能なものばかりだった。世界にとって何らかの利益となる行為なのだとは思われるが、私とは全く異なる目的意識を持っているようだ。

言葉で伝えられる命令はまだマシで、年月を経るごとに私が察する必要のある命令まで増えてきた。従順でいる間に増長してきたのか、私が成長したことで読み取れる部分が増えてきたのか。

世界は複雑だが注意深く観察しているとある程度の構造はわかってきた。

どのような動きをしていてどのような結びつきがあるのか。…弱いところも。

世界そのものを倒すことは不可能だが、一矢報いることはできるかもしれない。

そんな考えが私の中に芽生えていた。


長い間世界に従ってきたことで、私は世界からある程度の権限を認められるようになっていた。

これまで私を管理していた人間の元を離れ、単独で行動することを許可されたのである。

世界から要求される仕事をこなすことで金銭を得ることができ、それを用いることで衣食住を確保できるという仕組みだった。

逐一監視命令するコストを削減しただけと思われるが、好都合だった。

作戦を立て準備を整える。

この一手で世界と自分のパワーバランスを覆せるなんて思っていない。

ただ自分を押し殺して耐え忍ぶ日々の中で、私はそれでも世界に抵抗する意志を失っていなかったことを証明するのだ。

私はずっと世界に尽くしてきた。世界は何を返してくれた?

私は尊厳を取り戻す。たとえその結果命を落とすことになっても。

これまでの奴隷生活で世界の弱い部分がわかっていた…弱い人間が。

彼らと世界を隔てるものは無い。

そう、これは世界に対する復讐なのだ。


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