2025年2月19日水曜日

鬼っ娘ハンターついなちゃん

昔考えた奴。たぶん動画にされることは無い。

平安の世を舞台に人知れず鬼を狩るついなちゃんの物語。プリキュアみたいなポップなノリでタイトルコールした後、急に時代劇みたいなナレーションが流れるギャップを考えていた。

鬼切丸を元にした、鬼とのバトルというより鬼側人間側問わないヒューマンドラマを軸とした一話完結型のストーリー。

時代考証や舞台設定などについて不勉強で、あまり数が揃わなかったためボツとなった。

マインド自体は今のついなちゃんの設定に引き継がれており、やはり一話完結型の鬼狩りストーリーを構想しているが、まだ動画には出ていない。

以下メモ書き。


①「京の町に雪が降る」

貧しい少女の視点でお話は進む。

前の年の日照りが原因でどこもかしこも食糧不足に陥り、餓死者がバタバタと出ていた。

お屋敷に勤める少女は毎日水くみの仕事をしがてら、こっそり水を飲んで飢えをしのいでいた。

どうしてこれほどお腹が空くのか。飲めども飲めども腹が満たされることは無かった。

ある日、屋敷に誰かが訪ねてくる。

食糧の無心に訪れる者が後を絶えないため、屋敷の門はずいぶん前から閉め切られていた。

その閉じられた門の向こう。扉を叩く何者かに少女は強い恐怖を抱いた。

なぜかはわからないが決して開けてはならないと直感していたのだ。

幸いその何者かの気配はすぐに遠ざかっていったが少女は気が気でなかった。


夜半、床に就いていると甘い香りが鼻をついた。

飢饉に陥るずっと前、まだ幼い頃に一度だけ水飴を分けて貰ったことがあった。その香りに似ていた。

飢餓感に苛まれ続けた頭ではもう何も考えられなかった。

少女は跳ね起きると香りの元を探り、門へと駆けていく。門の下から赤い水飴が染み出していた。

少女は門を開け放つと、甘い匂いを放つそれを口に放り込んだ。噛めば噛むほど液の染み出る。甘い人間の死骸。

「悪鬼め…」

少女はようやく昼間感じた気配がすぐ隣にいることに気づく。

鬼だけを喰らう鬼。ついなであった。

自分が悪鬼と呼ばれている意味がわからない少女、いや少女の姿をしていた鬼についなが真実を聞かせる。

屋敷にもう生きている人間はいない。一人残らずお前が喰い殺し、骨までしゃぶり尽くしたのだと。

記憶の混濁に戸惑う。最後に誰かと会話したのはいつだったろうか。

この辺りでは最も裕福な屋敷でもやっぱり食糧は足りなくて、最初に切られたのは自分だった。

水を飲んでも飢えが消えなくて、倒れ伏しても飢えが消えなくて、体が消えても飢えが消えなくて…

鬼に転じた。

自分の正体を悟り、ついなに襲い掛かる。しかし体は思うように動かなかった。

悪鬼羅刹になり果てても尚、飢えていたのだ。


「こんな思いをするだけなら生まれて来なければよかった…」

少女だったものは血と涙を流しながらそう呟いた。

空に雪が散らつき始める。

養和元年、京の長い歴史で最も多くの餓死者を出した年であった。



「小さな手」



ついなが男の手を握る。

「こんなに小さかったっけか」

男はそう言って笑った。



「踊る鬼」



「銭だけと言うたではないか」

他の男のものになったことより、嘘を吐かれたことより。

お金しか信じないと言っていたあの女がもうどこにもいないことが悲しい。

鬼は頭を抱えて天を仰ぎ、そのまま自身の頭を潰して果てた。

銭を拾うのに夢中な人々がそれに気づくことは無かった。



④「京の町に鬼が出る」



怒り

私と世界を隔てるものは有る。 何かはわからない。ただ確かに私と世界は別個のものであり、腹立たしいことに世界は私よりも強い立場にあるようだ。 世界はいつも世界の都合を私に押し付け、私はそれに従うほかない。逆に私が私の都合を世界に訴えても突っぱねられるだけだった。 私は世界に虐げられ...