アリアルさんとミリアルの出番から一年が経過しそうなので何か動画を出す。
ついでなのでいい加減学外の人たちとどういう関係なのか動画内で説明しようと思う。
ブログを見てる人なら設定集で知ってるかもしれないけれど、動画しか見てない人たちだと絶対わかってないだろう。思い返すとよくこれまでなあなあでやって来たものだ。
いつもの4人に分散して他の人たちと絡みに行ってもらい、会話の中でお互いの出会いと関係性を説明しよう。
①普段絡みがない人と絡んでみよう
登場人物:結月ゆかり、紲星あかり、冥鳴ひまり、春日部つむぎ、京町セイカ、東北イタコ
とある休日、ゆかり、あかり、ひまり、つむぎの4人で喫茶店に集まる。
一度ひまりと話してみたかったと語るゆかり。
動画投稿者であること、実家を半ば追い出される形で一人暮らししていること、頭と口はよく回るが身を立てられるほど才覚や熱意があるわけでもないこと。
似た者同士であることを確かめ合う二人と、除け者にされて若干やきもきする二人。
会話の中でマキとつむぎの交友により縁ができたことが語られる。
互いのチャンネルについて話しているうち、ひまりが動画投稿で生計を立てていけると思ってるわけではないことを口にこぼす。
そのまま話題は将来のことへ。
ゆかりはとりあえず進学予定であると語り、ひまりもとりあえず大学に行くことを検討する。つむぎはひまりと、あかりはゆかりと同じ大学に行くと宣言する。
それ以上の将来像が見えない4人は身近な大人たちを思い浮かべる。
ゆかり達は教師の桜乃そら、水奈瀬コウをまず挙げる。
ひまり達も同じく教師の後鬼、麒ヶ島宗麟に加えて医師の剣崎雌雄、模型店のもちこさんを挙げる。
あかりが月読アイに電話をかけ、何をしてる人なのか尋ねる。
自分の素性に関してはいつも秘密にしていたアイだったが、将来について悩む若人のためならと現在運営している慈善団体の活動について語り、人生のアドバイスを行う。
謎に包まれていた月読アイの思わぬスケールのデカさに面食らったゆかりとひまりは急速に将来の不安に襲われる。
もっとダメな大人に会うために喫茶店を出て街へと繰り出す。
ゆかりに連れられた先ではセイカとイタコが昼間から飲んでいた。
ヒモの無職と実家暮らしの無職だと紹介するゆかり。
唐突に失礼な扱いを受けながらも一切動じぬセイカとイタコの姿にひまりは感銘を受ける。
小馬鹿にするつもりで来ていたゆかりも、もしかしたら自分たちのように斜に構えた半端者にとっては一つの目指すべき形なのではないかと考え始める。
あかりとつむぎはそんな二人をワルっぽい生き方に憧れるありがちな中高生だと叱咤し、強引に連れて行く。
セイカとイタコは特に気にする様子もなく笑って見送る。
色々と互いに知らないことを知れたといい感じにまとめる一同。
動画に出演してもらう時はまた声をかけると言い別れる。
帰り道、少しやきもちを妬いたと唇を尖らせるつむぎに、ひまりは違うところも多かったと語る。
ゆかりは自分で部活を設立したり、交友を広げて演劇への出演を打診したりと高い行動力と社交性があった。
人と正面から向き合うことから、真っ当なやり方で勝負することから逃げている私なんかとは違う。
ひまりは自嘲気味に笑った。
もう一方の帰り道、ゆかりはあかりに語る。
ひまりは自分を面白く見せ、視聴者を楽しませることに全力で取り組んでおり、結果を出していた。
現実を諦め創作に逃げ、その創作の世界においても本気で取り組もうとはしていない私なんかとは違う。
ゆかりは自嘲気味に笑った。
②恋人持ちの人に話を聞いてみよう
登場人物:琴葉葵、ミリアル、中国うさぎ、雨晴はう、紡乃世詞音
普段絡みが無い人と絡んでみようというゆかりからの提案を受け、アリアルたちが住み着いている洋館を訪れた琴葉姉妹。
葵とミリアル、茜とアリアルの二手に別れてそれぞれ知り合いに会いに行くことになる。
葵はこの機会にと以前から気になっていたうさぎ、はうと待ち合わせる。
葵、ミリアル、うさぎ、はうの4人はこの世界では数少ない異性愛者であった。
念願叶い恋バナに花を咲かせることができた葵。
しかし、葵ミリアルうさぎは白馬の王子様を夢見るだけであり、はうの恋愛対象も恩人の医者で現実味が薄かった。
はうは恋人持ちの友人を呼ぶことを提案する。
詞音が合流する。
まだ恋人ではないと否定する詞音だったが、ホワイトデー以降、青山と下の名前で呼び合うようになったことを指摘される。
その日の甘酸っぱい思い出を語る詞音に4人は大いに盛り上がる。
真っ当な恋愛観と常識的な感性を持っていることがわかり、すっかり打ち解けた5人。
何か浮いた話があったら報告するようにと連絡先を交換して別れる。
詞音、はう、うさぎと別れ、ミリアルと共に洋館へと帰る葵。
帰り道、少し寂しくなってしまう。
詞音はほぼ恋人と呼んでいいような異性が居る。
はうは憧れの相手が居てその人の傍で働く夢がある。
うさぎは飛び級で高校生になるような神童で、きっといつか彼女に恋をする誰かが現れるだろう。
みんな進んでるな…
また良くない考え方をしてしまっていると首を振る葵。
ミリアルがみんな羨ましいなぁと声を上げる。
葵が笑いながら言う。
私を置いて行かないでね。
ミリアルはそうしたくても出会いが無いよと笑い返す。
そのまま二人で笑い合いながら帰る。
脳裏によぎった白馬の王子様の顔は黒く塗り潰されていた。
③置き忘れた青春を取りに行こう
登場人物:琴葉茜、アリアル、四国めたん、九州そら、双葉湊音
葵、ミリアルと別れ、知り合いを探す茜とアリアル。
足取りは自然と手近な所、めたんの暮らす自然公園へと向かう。
いつもの場所でめたんとそらと出会い、普段絡まない人と絡むという目的を達成したこととする。
茜、アリアル、めたん、そらの4人は良く言えば大人びており、悪く言えば枯れていた。
茜、そらは補佐役に、アリアル、めたんはお調子者になることが多かったが、このメンバーではその役割分けが機能しなかった。
けして仲が悪いわけではないが今一つ盛り上がらない会話が続く。
会話の中で演劇に参加する校外の人間を募集した際、縁ができたことが語られる。
4人は互いの出自や展望について語り合う。
茜は人の役に立つことをしたいと思うが、自分自身がどうしたいかみたいなのは思いつかないと語る。
アリアルは興味を持って取り組んでいることはたくさんあるが、別にその結果どうなるかみたいなのは考えていないと語る。
めたんは家を再興させたり能力について研究したりといった目標はあるが、基本的に世の中には関与せず己の道を往くと語る。
そらは共存共栄という夢があるが、詳しくは話せないと語る。
ずん子に王になってほしいというそらの願望は、自分の人生の意味を他人に押し付けるようなものではないかと突っ込む茜。
そらはあなたがそれを言うかとムッとしたように言い返す。
めたんは強固な自我が無いから他者との関わりの中で自分を定義しようとすると二人を批判する。
アリアルはそんな彼女たちの様子を華が無いと評する。
年若い乙女がやりたいこともなく、斯く在るべし斯様なことを為すべしと雁字搦めで実に嘆かわしい。
もっと自由に、奔放に生きようじゃないかと語る。
そう言われるとそうかもなぁと気まずくなる3人。特にめたんは自分がいつの間にか頭が固くなっていたと謝り、青春を探しに行こうと提案する。
青春を探しに行くというフワフワした動機で街へ繰り出す4人。
いったい青春とは何なのか。いったい何をすればいいのか。
青春青春と騒いでいると一人の少女が話しかけてくる。
双葉湊音と名乗るその少女は共に青春を探しに行こうと告げた。
4人はノリで快諾する。
海へ行こうと提案する湊音。
軽い気持ちで承諾した茜だったが、すぐに後悔することとなる。
海まで徒歩で3時間、最初に脱落したのはアリアルだった。
なぜ自信満々で参加したのか。あっと言う間に体力が尽き動けなくなる。
めたんがアリアルを背負って進むことになるが、茜も体力の限界が訪れていた。
そらに助力を求めるも、先ほどのやり取りを根に持っていたそらは協力を拒否する。
あまりの子供っぽさに呆れるめたんと茜。
湊音は仲間同士の衝突にテンションが上がる。
諸々のやり取りで時間が押して3時間半後、一行は海へと辿り着く。
疲労困憊で意識が朦朧としている茜をめたんが労う。背負ったアリアルにも声をかける。
返事は無かった。
めたんがアリアルを砂浜に横たえる。彼女は穏やかな微笑を浮かべていた。
どうか安らかに…
めたんとそらが悲し気に目を伏せ、湊音の目から大粒の涙が溢れる。
さすがに死んではないだろと茜は突っ込まなかった。
アリアルは置いておき、茜、めたん、そら、湊音の4人は海を眺める。
ちょうど夕日が沈むところだった。
青春だね。
ええ、青春ね。
湊音とめたんの意味の分からないやり取りも何だかしっくり来た。
青春やな…
茜も呟いてみた。
湊音が茜とそらに仲直りするよう要求する。
そらはバツが悪そうに謝り、茜もついでに謝った。
なんで揉めていたのかもお互いよく覚えていなかった。
湊音が感謝を述べる。
自分の青春に付き合ってくれたのはみんなが初めてだと。
めたんはまたいつでも呼びなさいと答える。
茜はもう来ないと答えた。
沈む夕日を見届けながら考える。
さてどうやって帰ろうか。
潮風が頬を撫でた。