2025年7月30日水曜日

このテープもってないですか?を見て

「飯沼一家に謝罪します」が面白かったため他のものも視聴してみた。

TVerで見れたので「このテープもってないですか?」を視聴。

「飯沼一家に謝罪します」ほど初めて見たときの怖さは無かった。明正さんが何かしたんだってなる感じのわかりやすい落ちが無かったのが大きい。

1985年に放送された「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」を2022年の「このテープもってないですか?」で見返すという入れ子構造になっている。

「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」の放送内容は徐々におかしくなっていき、「このテープもってないですか?」のキャストもおかしくなっていくというホラー。

赤ん坊の呪いが時代を超えて伝播していくような話に思える。

と書くとそんなに面白くはない。

「飯沼一家に謝罪します」も掘り下げると全然違う話だったため考察していこうと思う。

あっちほどわかりやすい取っ掛かりが無いため気合を入れて見る必要がある。


情報源としてニコニコ大百科に「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」の記事がある。

https://dic.nicovideo.jp/a/%E5%9D%82%E8%B0%B7%E4%B8%80%E9%83%8E%E3%81%AE%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%B9

面白い試みだが外部に情報源を置き、そこへの誘導も無いのは結構不親切である。その辺りもこの番組の評価が割れた要因かもしれない。

関連記事はこの6つ。

・坂谷一郎のミッドナイトパラダイス

・坂谷一郎

・朝戸わたる

・岡崎茂一

・四つ木寿郎

・花村美鳥

こちらの内容について説明はしないので気になったら自分で見てみることをおすすめする。

いったん入れ子構造は無視して「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」についてのみ深堀りしていく。


〇第一夜

埼玉県 隠戊宏光(おんぼ ひろみつ)さんが3回分提供したうちの1本目。

『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』。1985年放送分。

1980年4月~1985年7月まで放送。6月に看板の坂谷一郎が引退したため。


・福岡県 蓮池さん「池が地獄絵図に」

カット1。橋の上から右側を撮影。子供二人。

カット2。橋の上から左側を撮影。子供二人。同じ人物?

カット3。池を挟んだ向かい側を撮影。男性二人。右手に橋が見える。後ろで誰か走っている。

カット4。池を挟んだこちら側を撮影。子供二人。正面に橋が見える。


初回はスルーしたがちゃんと見ると初っ端からだいぶおかしい。

うちの近所にある風情のある池を撮っていたらあっという間に地獄絵図になったという触れ込み。

どこらへんが地獄絵図なのかが不明。鯉が大量に集まってくる様子だとしたら映像の尺が余計である。

あっという間と言うほどのスピード感は無くカット編集を複数回挟んでまで何を伝えたかったかわからない。

鯉の口をパクパクさせるところが苦手だと言う坂谷さん。それを聞いた朝戸さんは突然無表情になりじっと坂谷さんを見つめる。


・長野県 柴さん 「奇妙な健康法」

82歳になるおじいちゃんの健康法。

蝉の抜け殻を拾い集め、天日干しにして食べているらしい。

蝉の抜け殻を置いている新聞から読み取れる情報。

「教会長子弟がっちりスクラム。天理教校附属高校ラグビー部。」のみ判読可能。

天理教校付属高校は奈良県天理市にある高校。天理教の大学「天理教校」関連の学校の一つ。

1974年開校。2005年天理教校親里高校と合併。2023年閉校。

1985年(昭和60年)の第65回全国高等学校ラグビーフットボール大会に出場し、1勝を上げている。Wikipediaより。

長野県からのお便りであるため全国紙と思われる。天理教校附属高校が全国大会に出場したのはその年だけのため、きっちり当時の新聞を用意したと思われる。

全国大会本選は12月~1月。予選は10月から11月。

蝉の抜け殻がある時期と合わない。


スタジオで坂谷さんが蝉の抜け殻を食べるシーン。

左手でこれはないと嫌がりながら持ち上げるところ、蝉の抜け殻のシルエットのように見えない。小枝?のような形状。

左手を皿に戻し右手で何かを掴んで口に入れる。皿は花で見えず本当に蝉の抜け殻を食べたのかわからない。

咀嚼音がおかしい。そもそも音が聞こえるような距離ではない。


・埼玉県 御戊さん「お悩み相談」 ※音声が乱れており御戊の読み方が不明。

方向音痴だという男性の映像。赤ん坊の泣き声が響いている。

時折泣き声は止み男性の声色が変わる。どっから来たんだろうと言いながら手を前に出し捻る。アナログテレビのダイヤルを回す動き?

一人でに落ちる布団。勝手に動く空のベビーカー。男性の顔の乱れ。サブリミナル赤ちゃんと言った怪奇現象が起こる。

高槻さん、坂谷さんもこういうことありますか?と聞こえる。最初に呼びかけた相手は誰?

最後に謎のカットが二つ。山道のどこか?


「高槻」かはわからないが少なくとも「坂谷」ではない名前で呼びかけている。坂谷さんの本名かと思ったがニコニコ大百科の記載には本名「三谷克也」とあった。

ニコニコ大百科で記載のある5名のうち四つ木寿郎のみ記述が少ない。基本プロフィール、略歴が無く、本名がわからないため彼が「高槻」さんの可能性がある。

映像を見た坂谷さんの様子が明らかにおかしい。赤ん坊の声と最後に映ったカットに心当たりがあった?

山道と赤子の泣き声で一番連想させるのは赤子の置き去りである。その場合、高槻さんとはその子の母親のことと思われる。もちろん父親は坂谷さん。


・千葉県 高村さん「タカキさんからのお悩み」 ※なぜかタカキさんと呼んでいる

マンションに面した歩道橋の上。

高村ミカコと名乗る女性。ケイタという少年。

お父さんがタバコを吸うことへの不満をミカコがケイタに言わせている。

画面奥、手すりに座っている人物がいるように見える。こちらを見たり顔を逸らしたりしている。


なぜかフルネームを名乗ってくる。御戊さんと同じくらいカメラから遠い。

違和感はあるが決定的におかしな部分はわからない。


・エンドロール

ゲストの花村美鳥より新曲「涙、涙、キス、涙」が5月25日に発売されることが宣伝される。

よってこの回の放送時期は1985年5月ごろと推測される。蝉の抜け殻があったことと季節は合わない。

来週は俳優の小野寺慎吾さんがゲスト出演すると坂谷さんより発表される。


〇第二夜

隠戊宏光が3回分提供したうちの2本目。

ゲストが小野寺慎吾さんではなく生島勉さんだったため、前回の次の週というわけではない。

四ツ木さんに小二の娘がいることが判明。

坂谷さんの言動が若干おかしい。


・静岡県 望月さん「娘が暗いところを異常に怖がる」

母親らしき女性が声を上げ、娘が背後の暗闇を振り返る。その後娘は怯えて逃げ出す。

娘が半狂乱にもかかわらず母親の口調は変わらない。

母親が暗闇の中に進むも何も無く、振り返ると娘は無表情で座っていた。


映像が始まる前に坂谷さんが俺は暗いところが好きだけどねとちょっと変な発言。

映像が終わると朝戸さんが放心状態になっている。坂谷さんの言葉にも反応しないがなぜか坂谷さんは普通に続行。

四つ木さんが何かが肩に乗っかって来たかのような不自然な反応を見せる。


・千葉県 溝口さん「近所にいるエスパー婆さん」

宇宙人と呼ばれた時代もあった変な婆さん。スプーンを曲げる。

赤ん坊の声、姿が鏡に映る。

8割って3と並んで嘘の代名詞じゃない。とは言ってもねぇ、拷問はほどほどにしないとね。など朝戸さんと坂谷さんの意味不明なやり取りがある。

生島さんがドン引いている。


・投稿者不明「人見知りなペペちゃん」

自宅でペットらしきペペちゃんを探す女性。

風呂場がなんかすごいことになってる。床に直置きのテレビ。クローゼットにベビーカー?

赤ん坊の声と彼女に近づく黒い影が映る。

拾った鼠を飼っていたが猫に食べられてしまい、その猫を今度は飼い始めたというエピソードを話す生島さん。

同じことを何度も言う坂谷さんに引き気味にツッコむ。


・投稿者不明「悩み相談」

ミュージカル女優を目指して上京したが5年ほどやっても芽が出ないという女性。背景は公園。

母は協力的だが父は自分に会いたがらない。母が自分に電話をかけているのを見て怒鳴りつけたと言う。

てめえだろ。くそったれ。気持ち悪い顔しやがって。と突然悪態をつく。赤ん坊の泣き声が聞こえる。

何事も無かったように父と仲直りする方法を坂谷さんに尋ねる。

彼女に近づく黒い影が映る。


朝戸さんに話を振ったのに何故か突然自分の生まれを語りだす四つ木さん。

朝戸さんも意味不明なことを言い出すが、岡崎さんが気にせず話を進める。


・エピローグ

スペシャルゲストのアリ・ミラーさんがスプーン曲げを披露する。

赤ん坊の声とベビーカーの音が聞こえ、朝戸さんが画面外を凝視している。

スプーンは曲がらずに何とも不自然な終わり方をする。


〇第三夜

隠戊宏光が3回分提供したうちの3本目。

第三夜は完全にみんなおかしくなってしまっているため後編に回す。

そちらに書くが実際に放送された番組ではないため別物としていいと思われる。


〇時系列の整理

坂谷一郎のミッドナイトパラダイスの放送終了は1985年7月。6月に看板の坂谷さんが引退したため実質的には6月で打ち切りだろう。

1985年5月25日は土曜日。花村さんの新曲リリース直前だったとして彼女のゲスト回を23日の木曜とする。

それから小野寺慎吾さんゲスト回を挟み次が生島勉さんゲスト回。この時点でだいぶ出演者がおかしかったため番組が終わったのはその辺りだろう。

番組終了後4人は引退。

坂谷さんは消息不明。2022年現在の病院で寝たきりの状態が「このテープもってないですか?」内で放送される。

朝戸さんは1985年12月から1986年4月まで生島姓だった。生島勉さんと結婚し、すぐに離婚したと思われる。その後は不明。

四つ木さんも詳細は不明だが、1995年にエッセイ「笑いの言霊」を出版している。

岡崎さんはメディア出演を辞した後、1998年8月に自宅で心筋梗塞で亡くなったことが報じられる。


〇花村美鳥さんについて

1回きりのゲストであるにもかかわらず大百科が作られているため、恐らく物語のキーパーソンである。彼女のゲスト回が出演者がおかしくなったきっかけと見て間違いないだろう。

他の出演者はミッドナイトパラダイス終了以降メディア出演が無くなっている。

彼女も5月25日「涙、涙、キス、涙」リリース、12月24日「ジングルベルには間に合って…」リリース、その後1987年3月2日に引退している。

彼女の最終曲の名前は「ジングルベルには間に合って…」。近々引退しなければいけないことがわかっておりそれまでに間に合うようにと作られたと推察できる。

全7曲のシングルの発売日を見ると「恋のガーデンテラス」のヒット後、リリース間隔を早めて「涙、涙、キス、涙」を出したことがわかる。ノリに乗ってるうちに売り込みたいという事務所の思惑があったのだろう。

坂谷一郎は通算5回不倫スキャンダルを起こしており、隠し子も存在している。もし花村さんが枕営業を行い彼の子供を身ごもった場合、5月から12月で妊娠7ヶ月になる。

7か月でも相当ギリギリだとは思うが妊娠を隠したまま曲を出せる最後の機会だったと思われる。

翌年3月に出産だったはずだが事務所を辞めたのはその1年後である。ある程度復帰を考えていたが結局やめたのだろう。

この妊娠説は確かな根拠のあるものではないが赤ん坊がこれだけ描かれている以上ありそうな話だとは思う。


余談だが妊娠説は朝戸さんにも適用できる。朝戸さんは12月に生島さんと結婚、翌年4月に離婚している。

時期的に見ると5~6月に妊娠し、12月に責任を取る形での結婚と捉えられる。出産は翌年3月でその直後に離婚する。

例えば生島さんは自身のゲスト回の前後に朝戸さんと関係を持つ。死産だった、あるいは生島さんの子供ではなかったため離婚という流れである。


〇誰が何をしたのか

番組MC

・坂谷一郎

アシスタントMC

・朝戸わたる(番組初期のみ山本章枝)

レギュラーゲスト

・四つ木寿郎(1982年頃より)

・岡﨑茂一(1983年頃より)

・島田宗也(番組初期)


上記は坂谷一郎のミッドナイトパラダイスのメインキャスト一覧である。

山本章枝、島田宗也の二人は情報が無い。朝戸わたるが1980年4月にアシスタントMCに起用とあるので1か月も経たずに山本章枝はやめたことになる。

同じタイミングで島田宗也も降りたとなると、1982年に四つ木寿郎が入るまでレギュラーゲストという枠はなかったのだろう。

四つ木さんは坂谷さんとは旧知の仲である一方、岡崎さんは政治系ジャーナリストで元々関わりの薄い相手だったと思われる。第二夜までで岡崎さんだけ明確におかしくなった描写が無いのもそのためかもしれない。

情報が無いので想像するしかないが、番組初期では坂谷さんのセクハラまがいのフリに山本章枝が対応できなかったのではないかと考える。番組の雰囲気は悪く山本章枝の降板と合わせて島田宗也も降板する。

代わりのメンバーとしてやってきた朝戸さんは坂谷さんのフリを笑いに変えることができ、ミッドナイトパラダイスは人気番組となった。

坂谷さんが山本章枝に関係を迫り、彼女に思いを寄せていた島田宗也も巻き込んでトラブルになった。なんて想像もできるが邪推だろう。


坂谷さんは赤ん坊に祟られている様子から不倫や婚外子の不認知のほか、堕胎や死体遺棄の疑惑がかけられている。

坂谷さんについては2022年現在寝たきりになっていること以外情報は無い。

しかし他のメンバーについてはその後も活動の軌跡がある。

朝戸さんは生島さんと結婚、離婚しているし、四つ木さんもエッセイを出版している。

岡崎さんは東洋大学(東近台大学は誤字?)で客員教授を務めており、メディア出演は取り止めたもののそちらは辞めたか定かでない。

生島さんゲスト回で彼は坂谷さんと昨晩飲んでいたと語っており、坂谷さんはプライベートでは普段と変わりなかったと思われる。

恐らくミッドナイトパラダイスを放送するたびおかしくなっており、テレビに出ることが状態を進行させると判断して引退したと推測している。


〇どこまでが実際の放送内容だったのか

全て実際のものであるという見方はできない。

第三夜は言わずもがな、第一夜、第二夜も投稿映像が不気味なものが多い。

蝉の抜け殻を食べる健康法について、映っているのは1985年12月頃天理教校付属高校がラグビーの全国大会に出場した際の新聞と思われる。

その頃ミッドナイトパラダイスは放送終了しているため、あの映像が番組内で紹介されることはあり得ない。

また、次の年の夏に古新聞を引っ張り出して使った可能性もあるがあの映像自体も時季がおかしい可能性がある。

断定できるほどの根拠が無いため想像のみで語る。


「このテープもってないですか?」で紹介された「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」は坂谷さんが見た夢の内容である。

実際の放送内容では花村さんゲスト回で何らかの事象が起こり、坂谷さんが精神に変調をきたす。

続く小野寺慎吾さんゲスト回、生島勉さんゲスト回でそれは顕著になり、坂谷さん以外のメンバーもおかしくなり始める。

テレビ局側が止めたのか、キャスト側から言い出したのか、坂谷さんらは引退し番組は終了という流れになる。

あのミッドナイトパラダイスは坂谷さんの記憶と外部からの干渉によって再構築されたものである。

まず前提としてあの番組映像はノーカットではない。恐らく30分番組であり本来であれば25分程度の尺があるはずである。

「このテープもってないですか?」側の都合、テープを提供した隠戊宏光さん側の都合によって省略された。あるいはこれが坂谷さんの夢であれば、本当に25分の尺は無かったことが考えられる。

隠戊宏光=埼玉県 御戊さんとして、この番組では「隠戊さん」と「ベビーカー」という2つの超常的な存在がいる。

ベビーカーは赤子の霊を運んでおり、隠戊さんはテレビを通してあの世とこの世を繋いでいる。

「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」の放送中、隠戊さんによってベビーカーおよび赤子の霊が坂谷さんに干渉できるようになる。

出演者が精神に異常をきたし番組は終了したが、その後も坂谷さんはミッドナイトパラダイスを夢の中で放送し続けあの世からの干渉を受けるようになる。

最初の福岡県 蓮池さんからの視聴者映像。うちの近所にある風情のある池を撮っていたらあっという間に地獄絵図になったというもの。

池を挟んだ向こう岸への移動というのはあの世とこの世の移動を連想させる。映像では橋から見て右側から左側へ子供たちが移動している。

撮影者は橋の上から左側の岸へと移動する。対岸、つまり橋から見て右側の岸では男性二人が池を覗き込み、後ろでは一人が駆け出している。

橋から見て右側の岸をこの世、左側の岸をあの世と定義する。

元々の映像ではコイに餌をやっていた子供二人が溺れて亡くなり、彼らの死体が他の人達に発見されるまでが収められていた。

ただそれは坂谷さんにとって受け入れがたいものだったため、適度に改変されてこのようになったのである。

その次の長野県 柴さんからの視聴者映像。蝉の抜け殻についても映像内では「ガラ」としか呼ばれていない。

本来映像に映っていたのは別の何かの亡骸であったが、それも坂谷さんにとって受け入れやすい蝉の抜け殻へと改変される。

このように坂谷さんは視聴者映像という形であの世の住人から干渉を受けるが、それをバラエティ番組のノリで対処できるように頭の中で変換していた。

そこに手本を見せに来たのが埼玉県 御戊さんこと隠戊さんである。隠戊さんの映像は坂谷さんにとって受け止めきれないものであり、放心状態になる。

その次の千葉県 高村さんの映像も構図は参考にされていたが、内容がついて行っておらずタバコの話として処理される。改変前はどんな話だったかは不明。

これが新聞の内容から1985年12月のことと思われる。


第二夜ではよりインパクトのある干渉を受ける。

静岡県 望月さんからの映像では暗いところを異常に怖がる女の子の姿が映される。これは同様に暗いところからの干渉に怯える坂谷さんの精神状態を揶揄している。

なおこの時点で既に坂谷さんは暗いところを受け入れるような発言をしている。これを見て放心状態になったのは朝戸さんである。

この夢が坂谷さん、朝戸さん、四つ木さん、岡崎さんの4人で共有されている可能性もある。しかし朝戸さんはこの頃生島さんと結婚しており、そのような精神状態にあるとは考えにくい。

また、生島さんについては一緒に夢に囚われる理由は無いので、生島さんが困惑している様子は実際の放送の映像だと思われる。

夢の中で坂谷さんのパーソナリティはずっと番組をやって来た4人に分散しており、坂谷さん本人が陥落しても他の3人をトレースする形で坂谷さんの精神は保持されていた。第二夜ではそれも崩されていく様子が記されている。

ただし生島さんが困惑している様子は記憶由来のものだろうから、実際の放送でも噛み合わない会話をしたり、同じ言葉を繰り返したり、放心状態になったりしていたと考えられる。

第二夜で視聴投稿された映像は大枠は同じものだったと推測される。千葉県 溝口さんからの映像であるエスパー婆さんは、エンディングでアリ・ミラーがスプーン曲げを披露することにもつながっている。映像自体は実際に放送されたもので赤ん坊の声と姿だけ夢の中で後づけされたのだろう。

逆にその次の映像は音声のみが実際に放送されたもので映っている映像がおかしくなっている。これにも赤ん坊の声と黒い影が入り込んできている。

そのまた次の映像はほとんど変化なかったが、突然罵声を浴びせてきたところだけ夢の中で付け足されたものである。これにも赤ん坊の声と黒い影が。

4人の会話もだが、誰からの投稿なのか読み上げとテロップが表示されず、エンディングも不自然に途切れるなど番組の正常な進行ができなくなっている。

このように第二夜では坂谷さんの精神が完全に崩壊したことを示している。


〇まとめ

「隠戊さん」と「ベビーカー」という2つの超常的な存在により、坂谷さんの精神状態はおかしくなっていく。

それには坂谷さんが堕胎や赤子の死体遺棄など、赤ん坊ないし「ベビーカー」の恨みを買うような行為を行っていたことが関係している。

坂谷さんと他3人のメインキャストは徐々に様子がおかしくなっていき、番組は打ち切りとなる。

その後も「隠戊さん」は坂谷さんの夢の中で番組を放送させ、坂谷さんを追い詰めていく。

「このテープもってないですか?」で紹介された「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」はその映像を記録したものである。

そこで紹介される視聴者映像には「隠戊さん」によってあの世の者から提供されたものもあり、番組自体もあの世の者に向けて放送されている。

「隠戊さん」が「このテープもってないですか?」に提供した3本は1985年12月ごろの番組である。

坂谷さんはあの世からの干渉を受け続け精神が崩壊してしまっている。

というのが「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」についての仮説。

後編では第三夜の内容と「このテープもってないですか?」という番組の違和感について考察していく。


2025年7月28日月曜日

飯沼一家に謝罪しますを見て

作業のお供として見ていたが想像以上に面白かった。

今後の糧にもなりそうなので他の人の考察も参考に考えたことをつらつら。


〇矢代教授が行った「影の行列」という儀式について

私はそれなりにオカルト好きだが体系的に学んでいるわけではない。よって私の解釈には私個人の思想が多分に入り込んでいることを注釈としておく。

まず運気を上げる儀式としてはそこまで悪くなかったと思う。ツギハギではあったが絶対にやってはいけないようなことは見当たらなかった。

ただ儀式の方向性が家族の中の「悪いもの」を送り出すことに終始していたのが良くなかったと思う。

悪い気を取り去り良い気を呼び込むというのがこういう儀式の基本だ。しかし悪い気の行き先は鏡と明確にしていたにもかかわらず、良い気をどこから呼び込むのかは示されていなかった。

儀式において良い気を呼び込もうとしていたのは最後だけであり、それもネットに転がっている「センテンナムフルホビル」とかいう呪文を唱えただけである。

この儀式は運気を上げるためのものとしては不完全であり、効果は無かったと考える。

一時的に運気が上がり「幸せ家族」では成功したように見えるが、恐らくあれはヤラセである。他の人の考察からの受け売りだが成功時の映像とリプレイ映像が異なる箇所があった。

そもそも全てのチャレンジを成功させないと賞金が貰えないチャレンジ番組など、最初のチャレンジで失敗したらお茶の間冷え冷えである。複数回チャレンジし成功した映像を繋ぎ合わせたのだろう。

少し脱線するがスタジオに応援しに来ていた人たちもたぶんサクラだ。さすがに明正さんが替え玉なのにはしゃげる知り合いはいないだろう。

閑話休題。ではこの儀式は全くの無意味だったのかというとそうではない。

本物の明正さんを除く飯沼一家が「悪いもの」として指定したのは明正さんだった。そのためこの儀式は明正さんを呪うものとして作用する。

行き先とされた鏡がどこを表すのかはわからない。彼岸を意味するという話も聞くがとりあえず「向こう側」だ。

良樹さんは他の人が書いた紙の内容を知らなかったろうが、みんなで明正さんが「向こう側」に行くように祈願したことになった。


〇明正さんが呪い返しを行ったか

「影の行列」が上記のように作用した場合、「向こう側」に行こうとするのは明正さんのはずであった。

しかし実際におかしくなったのは他の飯沼一家と良樹さんの4人である。呪いが返ってきたようにしか見えない。

明正さんが意図的に呪いを防いだ。あるいは仕返しに4人を呪った。この可能性は限りなく低いと思われる。

当時明正さんは2階にいたのかもしれないが、家族3人が紙に自分の名前を書いたとは知りようがない。あくまで階下で行われているのは運気を上げる儀式の認識だったはずだ。

結論から言って偶然だろう。

当時オカルトにはまっていた明正さんは自室に魔術的な装飾を施しており、その様子が写真に収められている。それによって明正さんが加害者なのではないかと考えるのはミスリードである。

写真に写っているのはロープと六芒星の書かれた紙。これらから連想されるものはなんだろうか。

扉の前に張られたロープは明らかに「注連縄」を意図している。神社とかによくあるアレである。

六芒星の書かれた紙はどうか。アニメや漫画で陰陽師はこれを使って攻撃するだろうか。

これらはどちらも結界を作るためのものだ。引きこもりである明正さんは自分にとっての聖域である部屋を守ろうとしていた。

明正さん本人も本気で信じてはいなかっただろうが偶然ちゃんと作用して呪いを弾き返したのである。

明正さんは恐らく今もそのことを知らない。


ここからは根拠の乏しい想像。

明正さんは気性の激しい引きこもりだったと言う証言があるがそれは事実だろうか。

自分の部屋の中で勝手にやることで自分を偽る必要はない。自分の居場所を守りたいというのが明正さんの根幹にある気持ちだったと思われる。

もし本当に気性の荒い人物ならもっと藁人形に五寸釘や動物の死骸なんかを飾るか、壁に殴った穴とか開いてるだろう。

当時の同級生がテレビ映像の良樹さんを見て違うと断言したのは、明正さんはこんな快活さなど微塵も無い根暗でおどおどした奴だったからだ。

ていうか暴れるような奴だったら家にテレビ局とか教授とか呼べないよね。

これも他の人の考察の受け売りだが明正さんは飯沼一家においてスケープゴートなのだったと思われる。

経営不振による生活難という危機的状況において、共通の敵を持つことを娯楽としていた。

良樹さんという代わりの息子を用意するほど明正さんを疎んじていたというより、良樹さんを息子として扱うという嫌がらせの意味合いがあったのではないだろうか。

多くの場合引きこもりのいる家庭ではその子をいないものとして扱う。

存在を想起させるような代替物を用意したりしないし、他の人に見られるかもしれないのに悪いものとして紙に書いたりはしない。

飯沼一家の行動にはどことなくいじめっ子気質が感じられる。


〇明正さんの謝罪は何に対してなのか

明正さんは家族が自分を呪ったことも偶然呪い返しが成功したことも知らない。では何に対して最後「すいません」と言ったのか。

まず明正さんが放火したかについて。これも恐らくミスリードである。

明正さん自身重傷を負っているし、警察が放火の可能性を見逃したとは考えにくい。

封印していたビデオカメラの映像、明正さんは明らかに怯えていた。ほとんど部屋から出なかったと思われる。

出火原因はわからないが少なくとも父、母、妹の3人は逃げずに亡くなったことで無理心中と見なされたというのが一番もっともらしい。

2階にいた明正さんは火事になっていることに気づき、慌てて逃げだした。窓から飛び降りたのかもしれない。

明正さんだけが生き残ったのはシンプルに火元からも他の3人からも距離があったためだろう。

明正さんは「オカルトにハマってたんですか?」というスタッフの問いに動揺した。3人がおかしくなったのは自分のオカルト行為によるものという認識があったと思われる。

ビデオカメラの映像を見せた後、彼は家族が「特に旅行に行った後とかに」おかしくなったと言った。

これまでの経緯を知る我々からはおかしなセリフである。彼らは番組終了後、あるいは儀式が終わった後からおかしくなって心霊スポットを巡る旅に出かけたのだ。

儀式終了直後の写真が既に歪んでいることからも、彼らに何かが生じたのはそのタイミングであることがわかる。

しかし明正さんは矢代教授の儀式による影響は無かったと断言し、家族がおかしくなったのは旅行に行った後と言った。明正さんには心当たりがあったのだ。

明正さんは家族と良樹さんが旅行中に呪いをかけた。

明正さんにとっては楽しいハワイ旅行のつもりだった。自分を除け者にして他人の子供と自分の家族が遊びに行っている。呪っても仕方がないような状況である。

しかし皆さんご存じのように呪いなんて物はまず機能しない。仮に正当な手順で儀式を行えたとしても1人の念で4人を殺すのは釣り合い的に無理である。

また、明正さんを除く飯沼一家と良樹さんの旅行も何の成果も得られていない。もし彼らが「向こう側」に行く方法を見つけられていたら行方不明になっている。

帰ってきたということは特に何も無かったということだ。あの旅行は不気味なだけで何か意味のあるイベントではない。

しかし旅行から帰って来て彼らは目に見えておかしくなっていった。実際には儀式終了後からちょっとずつおかしくなっていたのだが、期間が空いたことでその差が顕著になったのだ。

明正さんはそれを見て自分の呪いのせいだと思った。

怯えて閉じこもり、火事になって逃げ出した。それから二十数年が経っても自分のせいだと罪悪感を抱いて来たのだ。

最初はとぼけて乗り切るつもりだった。だが良樹さんの話が出たことで耐え切れずに本当のことを話した。

家族と良樹さんに対して、すいませんと。


〇四十九日の裁きについて

既にだいぶ長丁場だが最後。最もおぞましい部分である四十九日の裁き。

矢代教授と良樹さんが融合してしまっているような姿で、二十年間岸本家の二階に横たわっている。

何をやったのかは定かでない。「向こう側」に行ってしまった良樹さんを連れ戻す儀式だろうとは推測できる。

矢代教授の命を犠牲に良樹さんを助けるものだったと思うが、その結果がアレでは何とも浮かばれない。

ここからは推測を大きく含む。

2004年に放送され都市伝説となった「飯沼一家に謝罪します」。

この番組は岸本母が作らせたものだったと本人が言っている。ここは疑う余地は無いだろう。

前半のテレビ関係者の取材で「覚えていない」と答えた二人の人物。制作局員と編成局長というどう考えても知らないわけのない立場の者たち。

彼らは明らかに異質な番組をわざと見逃している。番組表に穴を開けないためか、製作費は既に貰っているためか。理由は定かでない。

邪推だが岸本母に脅された、あるいは賄賂を貰ったのではないかと考えている。いくら深夜番組とは言え公共放送で乗せるような内容ではない。

岸本母はなぜそこまで矢代教授に謝罪させたかったのか。

世間に彼の行為を知らしめると言うほどの規模ではない。儀式的な意味があったと思われる。

裁きを受けるにはまず懺悔をしなければならない。四十九日の裁きを実行するためには公の記録に残る形で謝罪を行う必要があったのだ。

「四十九日の裁き」をやってもらいました。

岸本母のセリフである。私はこの言葉にとても引っかかった。

やってもらうとは何とも微妙な表現である。どうにかしろと問い詰められた矢代教授がではこれでと提案したのだろうか。

私は実はこの儀式は岸本母が考えたものなのではないかと思っている。

「飯沼一家に謝罪します」で矢代教授が見せている表情。そこには謝意や後悔、自責の念や自己陶酔のようなありがちな感情は見られない。

あれは謝罪させられている人の顔である。

中途半端な知識で儀式なんかやっちゃいけないんですよ。

これも岸本母のセリフであるが、自分自身にかけた言葉なのではないかと思う。


彼女はどこまでわかっていたのか。

私がこれまでに書いた全てをわかっていたと仮定しよう。

岸本母は矢代教授が行った儀式がたまたま呪いとして作用し、明正さんがたまたま呪い返しを成功させたと気づいた。

儀式に使われた紙と箱、明正さんの部屋を映した写真を持っていたため十分に推測可能である。

彼女はその責を矢代教授に求め、四十九日の裁きを受けるように迫った。教授は保身からか罪悪感からか了承する。

しかし儀式は失敗。良樹さんも矢代教授も取り返しのつかない状態になってしまう。

岸本母は自分にも責任があると受け止め、その後明正さんに対して何かすることは無かった。

二十年が経ち、テレビ局が取材にやって来る。岸本母は全てを明かし番組を必ず放送するように言い含める。

恐らく特殊なルートで入手したであろう儀式に使われた紙と箱を良樹さんの私物だと偽って渡し、明度を上げるだけで判別可能な写真をさも何だかわからないものとして渡す。

取材陣がそれを持って明正さんの過去を暴きに向かうとわかっていたからである。

四十九日の裁きの詳細は想像がつかない。ただ裁きを受けるのなら誠実な謝意が必要なのは道理だろう。

矢代教授の四十九日の裁きが失敗したのは教授が本気で申し訳ないとは思っていなかったからかもしれない。

岸本母の気が収まるまで真剣にやる振りをしていた。だからいざ自分の命が引き換えにされそうになったら抵抗した。その結果があの中途半端な融合である。

この番組が放送されたことで明正さんは公に謝罪を行った。

明正さんが岸本家を訪れ、次は自分が四十九日の裁きを受けると言い出したら。

今度こそ愛する息子が帰ってくるかもしれない。

彼女はそんな一縷の望みを信じているのかもしれない。



おまけ。

一晩経って読み返して思いついた補足。

Q.矢代教授は「飯沼一家」に謝罪したけど良樹さんには謝罪しなくていいの?

A.  発端となった「影の行列」では飯沼父、母、妹、良樹さんの4人を家族としている。そのため儀式的な意味での「飯沼一家」とはやはりその4人のことになる。

Q.なんで矢代教授や教え子たちは呪い返しの影響を受けなかったの?

A.儀式の主体はあくまで飯沼一家であり、矢代教授らは言わば舞台装置である。儀式に使われた箱や鏡が「向こう側」に行ったりしないように、道具である祭司らも呪い返しの影響は受けない。

Q.そもそも呪い返しってなに?

A.呪いはかけた相手に防がれた場合、増幅されて返ってくるという法則がある。今回は「向こう側に行ってしまえ」という念が返されたので、それを受けた飯沼一家が「向こう側」に行こうとした。

Q.なんで飯沼家の3人と良樹さんは「輪っか」を作ったの?

A.心霊スポットを巡ったことからも彼らは「向こう側」をあの世と認識していた。遠く離れた別の場所で同じ「輪っか」を作ったのはそれが一つの正解だったからかもしれない。

Q.飯沼家の3人と良樹さんは「輪っか」をくぐって「向こう側」に行ったの?

A.魂だけが行った可能性もあるが恐らく行っていない。「輪っか」を作り終えた後すぐに良樹さんが動かなくなったなら岸本母はもっと「輪っか」に固執しただろう。明正さんが撮影した映像でも「輪っか」は放置されていた。

Q.じゃあ彼らって「向こう側」に行けなかったの?

A.わからない。とりあえずあの世に行く一番手っ取り早い方法は自殺である。飯沼家の火災が本当に無理心中だったならその方法で「向こう側」に行ったと言える。もしかしたら良樹さんも自殺を試みたかもしれない。

Q.岸本母は明正さんを憎んでるの?

A.たぶん憎んでいない。彼女の表情から矢代教授に対しての怒りは感じたが明正さんへの怒りは感じられなかった。演技の可能性もあるが毎年リンゴを送ってくれると話す彼女の表情は哀れみだったと思う。

Q.明正さんに四十九日の裁きを受けてほしいならなんでもっと早くに行動しなかったの?

A.会社設立、番組放送、そして良樹さんの生命維持装置で財産が無くなったのが一つ。以前ほど人を動かすことができなくなっていた。もう一つはまた儀式をやっても失敗する可能性が高いと察していたためと思われる。


昨晩は匙を投げた四十九日の裁きという儀式の詳細。もう少し考えてみる。

四十九日は人が亡くなってから生まれ変わるまでの期間。つまり肉体が魂を離れてあの世に行き、また転生するまでの猶予期間だろう。

矢代教授が死に装束を着ていることから、儀式の実行者があの世に行って魂を連れ帰るものと思われる。

では裁きとは何か。本来の四十九日とは若干違うみたいだが閻魔大王による裁きを受ける期間でもあるらしい。

矢代教授があの世に行き、良樹さんの代わりに裁きを受けるというのが字面から受ける印象だ。

しかしこれはやっぱりしっくり来ない。

良樹さんは何らかの罪による罰としてあの世に行ったわけではない。呪い返しの影響ではあるが自ら望んで「向こう側」を目指したのだ。

そも地獄の裁判で矢代教授が代わりに裁きを受けたとて、良樹さんの罪が軽減されて来世が良くなるだけである。良樹さんを元に戻すという岸本母の願いを反映した儀式とは思えない。

いったん「裁き」は置いておく。

四十九日の裁きにおいて確かなのは良樹さんと矢代教授の融合が起こったという点だけだ。

儀式の開始時点で良樹さんは臨死状態、あるいは死亡していたと思われる。でなければ矢代教授は死に装束を着て二階には向かわない。

もし矢代教授も臨死状態になり魂だけがあの世に行ったとしたら、たとえ二人が混ざり合って帰って来たとしてもあんな姿にはならない。

矢代教授は肉体ごとあの世に行き、良樹さんの魂と一緒に良樹さんの肉体に帰ってきたため物理的な融合が起こったのである。

儀式の手順としては問題なかったが、本来あの世に残って良樹さんを送り出すはずの矢代教授も帰ろうとしたため失敗したのだ。

そう考えると岸本母の矢代教授への怒りも理解できるだろう。

という話だとしたら、なぜ岸本母は矢代教授にやらせたのかという疑問が出てくる。

自分があの世に行って良樹さんの魂を送り出せば確実である。その犠牲を厭うような精神の持ち主ではないだろう。

やはりこの儀式は「裁き」なのである。

公の場での謝罪が必須であるように、何らかの罪に対する許しによって魂を現世に帰還させる。それが儀式の根幹なのだろう。そのため良樹さんがこうなった責任がある者でなければ実行できなかった。

しかし実際のところ飯沼一家の3人も良樹さんも矢代教授も明正さんも、誰も意図的に呪いをかけたわけではないのである。

何に対する謝罪なのか。何に対する許しなのか。その部分がガタガタである限りこの儀式はどうやっても成功しそうにない。

仮に明正さんが四十九日の裁きを受けるとしても、じゃあもう1回良樹さんを臨死状態にするのか、既に二人分くっついちゃった肉体はどうするのかという話だ。

もうこうなっちゃった時点でどうにもならない。やっぱり中途半端な知識で儀式なんかやっちゃいけないのだろう。

考察おしまい。


2025年7月25日金曜日

今後のラインナップ2

1がまだ全部終わっていないが2も。

基本的に日常系の動画のネタ帳。

必ずやるとは限らない。タイトルもテキトー。


①サイコパス診断

登場人物:紲星あかり、弦巻マキ

サイコパス診断について語る紲星あかり。

最近あかりちゃんの声を聴いていなかったから考えた小ネタ。

EDは「My Hero」。汎用エンディングの候補。


②四国めたんという女

登場人物:四国めたん、結月ゆかり

31番目の子供を作ったら後語りで入れる。

四国めたんは中学生組の動画でも出てくる。

EDは「GAIA」。


③中国うさぎという女

登場人物:中国うさぎ、琴葉葵

中国うさぎの内面を掘り下げる回。

葵ちゃんの掘り下げも兼ねる。

EDは「夕景オブリージュ」。


④勝手にしやがれ

登場人物:夏色花梨、小春六花、花隈千冬、フィーちゃん

やっぱり副会長は男の方が作りやすそうなのでそっち方面で作る。

生徒会の日常描写と副会長の一人称視点。

EDは「夜想」。


⑤九州そらという女

登場人物:九州そら

九州そらの掘り下げ回。

出生の秘密や普段何をしてるかなどが描かれる。

EDは「UNIVERSE」。


⑥カフェインデトックス部

登場人物:宮舞モカ、結月ゆかり、冥鳴ひまり、ぞん子

紅茶のモカ、コーヒーのゆかり、エナドリのひまりとぞん子。

彼女たちはカフェインデトックスのために山奥の合宿に押し込まれる。


⑦猫の国

登場人物:小夜、猫使アル、猫使ビィ、来果

小夜、アル、ビィの3人は来果によって猫の国に連れて行かれる。

ただ猫耳をつけているだけの彼女たちは猫のフリをしながら脱出の方法を探る。


⑧性の裏技

登場人物:後鬼、伊織弓鶴、満別花丸、波音リツ

男なのか女なのかよくわからない人の多い学校。

後鬼が多様性について考える回。


⑨基準停止装置

登場人物:京町セイカ、桜乃そら、Voidoll

セイカはある日ゴミ捨て場でVoidollを拾う。

未来からやってきたロボット、Voidollを巡るSF回。


⑩ヒナギクルミを探しています

登場人物:ユーレイちゃん、双葉湊音

作るとしたらシリーズ物になる。

ユーレイちゃんこと雛菊留美の消息を追うストーリー。


2025年7月1日火曜日

31人目の子供の霊

元ネタは意味がわかると怖い話。

名称は不明。「合わない死体」「爆発」など。

とある学校の理科室で爆発が起こり、児童39名、教員1名が犠牲となる。

しかし奇妙なことにバラバラになった死体を並べてみると遺体が一つ多い。

子供が40人、大人が1人。

はてどういうことだろうか…?


と記憶していたが改めて調べてみるとちょっと違っていた。

晴れだの雨だの天気の話があったり検察官が「数が合っている」と叫んだり。

解説の方も子供がてるてる坊主として吊るされていたとか、骨格標本が本物の死体だったとか、教師が女性で妊娠していたとか、原爆をもじったストーリーだとか。

まぁ割としょうもない奴だった。

私が定説だと思っていたのは個人ブログで創作されたものだった。どっかのまとめサイトでみかけたんだったか。

リンクはこちら。タイトルは「40人目の子供」。

http://sekiryoku.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/40-0e9c.html


内容はリンク先を読めばいいが、ざっくり言うと遺体を検分するため手作業で人の形に並べていく中で、誤って一人分多く作ってしまったという説だ。

バラバラになった死体はどれも完全な形にはならず、ちょっとずつパーツが欠けている。その欠けたパーツが組み合わさって一人分の死体になったという。

これも厳密にはあり得ないのかもしれないが、お話として面白かったのでベストアンサーとしておきたい。

本題。こちらを参考にして怪談風の長編を1本作成しようと考えている。

今のご時世一クラス40人はそうそう居ないので人数を減らし、一人余っている感を出すために31人目の子供とした。


物語は東北家できりたんとゆかりが話しているところから始まる。

きりたんが小学校で噂になっている怪談として「31人目の子供の霊」について語る。

バラバラになった30人の子供の余ったパーツから生み出された、31人目の子供。

肉片が繋ぎ合わさった不気味の姿のその子が、「席がない。席がない。」と訴えながら放課後の学校を彷徨っている。

ゆかりはその都市伝説を知っており、現代ではそのように伝わってるのかと感心する。

きりたんの隣のクラスでそれを見たという生徒が現れ、盛り上がりを見せているそうだった。

本当に怖がっている生徒もいるため不謹慎とは思いつつも、ゆかりときりたんはちょっかいをかけようと画策する。

教室に席をもう1個用意し、「31人目の子供」をクラスの一員として扱うことでその霊を供養する。

ゆかりが聞きかじりのオカルト知識でそんなことを提案する。奇しくも隣のクラスの人数も30人であった。

きりたんはその話を隣のクラスに流してみると承諾する。


時は流れ再び東北家。きりたんはゆかりに状況報告する。

意外なことにそれは本当に実行されていた。

面白がってる男子と怖がってる女子、生徒に押し切られた先生という構図が語られる。

「31人目の子供」は「アマル」君と名付けられ、教室内では彼は実在するものとして扱われていた。

当然周囲には気味悪がってる者も多く、ウナやコウ先生も誰がそんなことを言い出したのかと憤っていた。

すぐに飽きてやめるだろうという二人の予想に反し、その取り組みは1か月ほど続いた。

「アマル」君の存在もすっかり定着したころ、きりたんは隣のクラスの様子を見に行く。

特におかしなところも感じない普通の教室風景だった。

案外大したことじゃないのかもしれないと帰ろうとした時、誰も座っていない椅子が動いた。

「アマル」君の席だった。

クラスメートたちは何も気にしない。というより「アマル」君が呼びかけに反応して席を立っただけという扱いだった。

みんなが見えている振りをしているのではなく、みんなにだけ見えている何かがいるのではないか。

きりたんはそんな疑念と恐怖を抱く。


ゆかりときりたんは今後の対応について考える。

集団心理を観察したかっただけで本当に幽霊が存在するとは思っていなかったのだ。

このままでは隣のクラスの人たちに何か悪影響があるのではないか。

二人は霊的な事象に詳しそうな人に相談することにした。

イタコやずん子に話したら怒られそうだったため、倫理観の緩めなめたんに意見を聞きに行く。

めたんは面白そうな試みだとは認めつつも、他人にやらせたのは感心しないと顔をしかめた。

めたんはゆかりの計画は最初から破綻していたと告げる。

確かに霊に居場所を作って供養するという方法はある。

人形などの形代を用いることもあるが、今回のように席を用意するだけでも十分だ。

墓石や墓標も原理としては同じものだ。

ではどこがダメだったかというと、誰のための場所なのかを指定していなかった。

席を用意した後、霊に対してここはあなたの席ですよと告げないと、ただ空っぽの席が用意されただけになる。

霊の名前などがわかっていれば、それを利用することでその場所と霊を結びつけることもできた。

しかし今回目的の霊が誰なのかはわかっておらず、「アマル」君という名前もその霊に向けてつけたものではない。

空の席を用意し、そこに座る「アマル」君という何者かを一から作っていった。

あの教室で行われたのはそういうことになる。


隣のクラスの教壇にめたんは立っていた。

複数人の思念で作られた存在が実体を持つかはめたんにも確信が無かった。

けれどこの形式は信仰によって神を生み出すようなことに近く、子供たちに続けさせるのは危険だった。

学校側もクラスがこのような状態になっているのは好ましくなく、めたんの提案を受け入れた。

やめろと言われてやめることはまず無い。「アマル」君の存在を信じない大人と思われて反発を受けるだろう。

めたんは霊能力者を名乗り、「アマル」君を受け入れたクラスの皆を褒めた。「アマル」君もクラスの一員になれて喜んでいると。

その上でめたんは一つのお願いをした。このクラスの人ならきっと助けてくれると。

めたんは自身の隣を示す。ここに「トオル」君という霊がいる。

彼もこのクラスの一員にしてほしいと。


その日からクラスには席がもう一つ増えた。

目には見えないクラスメートが二人いる。その状況に適応しきれなくなる生徒が出てきた。

そこに「アマル」君がいる。「アマル」君がこう言った。「アマル」君がこうしている。

対象が一人だけならば誰かの発言に合わせて共通理解を持てる。

だがそれが二人になれば、認識を合わせられなくなってくる。

「アマル」君はここにいる。では「トオル」君はどこにいる。

「アマル」君はこう言った。では「トオル」君はどう言った。

「アマル」君はこうしている。では「トオル」君はどうしている。

二人分の存在を把握できなくなり、クラスの意識は分散していった。もうやりたくないと言い出す生徒と、二人のためにも続けるべきだと言う生徒で口論も増えていった。

その報告を受けためたんは、駄目押しの一手に向かう。

再び教室を訪れためたんは、皆のおかげで「トオル」君も満足していると告げる。

既におざなりな扱いになっていたにも関わらず、大丈夫だったようで安堵するクラスの一同。

めたんはあなた達ならばもう一つ頼みごとをしても大丈夫だろうと語る。

めたんは自身の隣を示す。ここに「ミツル」君という霊がいる。


めたんが何を言い出すのか察しがついたようで、クラスに動揺が走る。

二人ですら対処しきれなかったのに三人。絶対に無理だった。

クラスの心は分裂していた。賛成派、反対派、どうすればいいかわからない派に分かれて言い争いが始まる。

ひとしきり争わせた後、めたんが告げる。

ここに霊なんかいないと。

「ミツル」君なんかいないし、「トオル」君なんかいないし、「アマル」君なんかいない。

めたんは語る。死者にこのような情けをかけるべきではないと。

もし本当に霊がいたとして、クラスの一員として扱われたとして、それが成仏に繋がることはない。

霊は単なる残留思念でしかなく、形を保てなくなったら消えるだけのものだと。

いようがいまいが放っておけばいい。めたんの言葉はシンプルでシビアだった。

一人の女の子が生前やりたかったことをやったらきっと満足すると訴える。

めたんはそれはいつまでと問いかける。後何か月こうしていれば満足するのか、小学校を卒業するまでやれば満足なのか。

あなたが死んでもいいと思える時が来ないように、霊にも消えてもいいと思える時は来ない。

一人の男の子が途中で投げ出してしまって祟りはないかと確かめる。

ここには何もいないのだから霊による祟りなど起こりようもない。

それでもあなたたちの前に何かが現れたとしたら…

「私が消してあげる。」

めたんはそう締めくくった。


ゆかりときりたんはめたんにお礼を言う。

告げ口したりはしないけれど悪ノリはほどほどにするように。めたんの言葉に二人を肩をすくめる。

ゆかりは本当に何もいなかったのかと尋ねる。

少なくとも自分には見えなかったとめたんは答える。

特別な力があるわけでもない30人の子供と1人の大人。その思念が集まったとて何かが生まれることなどあり得るのか。

31人目の子供。一つ多かった死体。

本当に居たんじゃないかとゆかりが口にする。

そのクラスでも同じようなことをしており、生み出された存在はやがて肉体を持つまでに至った。

31人分の死体を30人分にまとめることで、逆に彼の存在を無かったものにしてしまったのではないか。

きりたんはその荒唐無稽な話を笑おうとしてやめた。

最初に目撃されたという「31人目の子供の霊」。結局それは何だったのか。

多感な時期の少女が視た幻影か、別のどこかで亡くなった子供の幽霊か、あるいは…


みたいなの。

「拾遺」の能力者編でやったようなオカルト的な部分を掘り下げていくための前哨戦に近い。前提となる世界観を別の物語で解説するのである。

幽霊や魂といったものがどのようなものかを描くと同時に、「31人目の子供」という存在の哀れさを描く。

最初の「席がない。席がない。」は「墓石がない。墓石がない。」だった。てのも入れようかと思ったけどやっぱ没で。

夏になったら作る。


このテープもってないですか?を見て2

前回の続き。 このテープもってないですか?について考察していく。 電波的な会話内容について逐一掘り下げることはしない。いくらでも恣意的な解釈が可能だからである。 ここでは目に見える違和感のみ掘り下げていく。 〇「このテープもってないですか?」という番組について ・武田鉄矢の泣いて...