2025年11月18日火曜日

宝船

永き世の 遠の眠りの みな目ざめ 波乗り船の 音のよきかな


解釈

進みゆく船は心地良く波音を立てるので、過ぎ去る刻の数えを忘れてしまい、ふっと「朝はいつ訪れるのだろう」と想うほど夜の長さを感じた。


ある夜、目覚めると私は船の上にいた。

穏やかな海に浮かんだ豪奢な船だった。

そこには同じ年頃の少年少女が十数名乗っており、船長と船員から歓待を受ける。

船には至る所に宝物が溢れ、不思議と欲しいと思った物は何でも見つかった。


船での生活は数日ほど続いたような気がする。ずっと夜のため時間の感覚は曖昧だった。

他の乗客とも打ち解け贅沢な暮らしに慣れ切った頃、船長から出発の知らせを受ける。

船は海の上にずっと浮かんでいたが、ついに動き出すようだった。

船長は私たちに告げる。

今ここで飛び降りれば明日から元の生活に戻る。

けれど長く乗っていればこの船からより多くのものを持って帰れると。


船で手に入れたものを手放す勇気と、船から海に飛び込む勇気が出ず戸惑う乗客たち。

私は他の人が降りようとしない姿を見て、つい自分は降りると言ってしまう。

周囲と違う行動を取りたくなる性分なのである。

船尾に連れて行かれここから降りるよう命じられる。

私はとても後悔しながらも恐る恐る真っ暗な海へと飛び込んだ。

そこで夢から覚める。生活は何も変わりない。

時々ある変な夢だとすぐに忘れていった。


十数年が経ち青年から中年に差し掛かる頃、現実世界であの時の乗客と再会する。

彼は身なりもよく、聞けば一流企業の社員であった。妻子もでき幸せの絶頂であろう。

お前は長く船に乗っていたから幸福になったんだろうと僻み交じりに皮肉を言う。

すると彼は浮かない顔でその後のことを語った。

私を降ろした後、船はゆっくりと進み始めた。

最初はこれまでと変わらず贅沢な暮らしに溺れていたが、だんだんと不安というか飽きが出てくる。

顔ぶれも変わらないし欲しいものも全て手に入れてしまった。自分の想像できる楽しみだけでは一生を過ごすには足りないのである。

そろそろ自分も降りようかと海を覗き込んで驚く。船はいつからか凄まじい速さで進んでおり、海もまた波と渦によって荒れ狂っていた。

もはや飛び込めるような状況ではないと、船長に相談しに行く。船長はそのうち穏やかな海になると待つように勧めるだけだった。

すっかりここでの生活に慣れ切ってしまい元の生活に戻る気があるのかもわからない他の乗客たち。彼自身ももうこのままでいいのではという気持ちがあった。

それでも海に飛び込んだのは最初に船から降りた私のことを思い出したからだった。

彼の話を聞いて私は何とも言えない嫌な気持ちになりながらも、現実世界に戻って来れたことを祝福する。

彼は呻くように答える。あの船で手に入れたものとあの頃に望んだ成功は全て手に入れていた。

夢から覚めたのはつい最近なのだ。気づくと十数年が過ぎ去っており、自分の人生は既に完成されていた。そういう人生を送った記憶はあるのだが、どうしても自分が体験したものだとは思えない。

誰かが組み上げたジグソーパズルを渡されたような気分だった。

私は彼の言葉を錯覚だとは笑い飛ばせなかった。あの船での不自然なほどの歓待、大人になった今ではその裏に何らかの意図を感じずにはいられなかった。

彼はそれでも自分はまだ良かったと語る。今も船に乗り続けている者たちもいるかもしれないからと。

残された彼らが帰ってくる時、どれほどの年月が過ぎているのか。もしその時もう人生が終わってしまっていたら、彼らはどこへ帰るのか。

私はそれを想像して自分の性分に感謝した。



これも私が見た夢を元にした物語。演劇部用のネタにしようと思う。

船から降りるまではほぼこのままなのだが、実際の夢ではその後に残った側の視点から状況を見ていた。

降りるタイミングを完全に逃してしまい、皆ずっと乗り続けていた。だから遅れて帰ってきた他の人は年月が過ぎ去ってしまっていたというのは私の創作である。浦島太郎的な。

盛り込み切れなかった分を含めて補足がてら書き残しておく。


宝船について

・ランダムで一度に数十人を招く。船が止まっている間は現世の時間も止まり、船が進み始めると現世の時間も進み始める。

・7日間の体験期間を経て船が進み始める前に、現世に戻るか船に留まるか選択できる。もっともこのタイミングで戻る選択がされることはあまり想定されていない。

・船が進んでいる間、乗客の人生を代わりに進めて願いを叶えていく。現世に乗客が戻るとその進行状態を引き継ぐ。その際、船での記憶は失われて代行されていた間の記憶が差し込まれる。

・船の構造は扉を開閉するたびに変化する。そのため使用人の誘導が無ければ目的の場所に辿り着くことは困難。ゆかりや葵が過ごしていたのは船に乗っかってる建物部分であり、全体のほんの一握り。

・船内に放置されている金銀財宝はかつての名残。昔はこれをやっていれば間違いなかったが、現代では無暗に持って帰らせると乗客が犯罪者だと思われるためオブジェと化している。人生の代行による願いの成就はそうした時代の流れに合わせたもの。

・現世でのことを思い出せなくなる、相手の姿がわからなくなるなども時代の流れに合わせた取り組みの一つ。単なる物質的な欠乏だけでなく心理的な欠乏を解消するために苦慮されている。現世の記憶は葵のようにきっかけがあれば普通に思い出せる。あくまで忘れたいから忘れてしまっているだけ。

・ただ贅沢をさせれば楽しませられていた昔とは異なり、今はあまり乗客を楽しませられなくなっている。そのことは船員たちも痛感しており表情も乏しく元気も無くなっている。そのため船でのもてなしを心からエンジョイしていたゆかりは人気者だった。


動画的なネタ

・船を降りる理由が突飛すぎるため、ゆかりの考えた話では茜、ずん子が船への不審を示した。二人がもし船に乗っていたらこういう行動を取っただろうなというゆかりの想像。行動の指針を測る上で二人を高く買っていることを表している。

・ゆかりにはマキ、あかりが自分がいない時にどういう行動を取るかよくわからない。葵はたぶん乗り続けるだろうなと思っている。そのことまで言及してしまうと露骨すぎたためやめた。

・葵は今も船に乗り続けている。本来の動画パート20分において普段よりも葵の存在感を増しておいた。中身がつくよみちゃんの方が上手く回ることを感じてもらえたら良し。

・つくよみちゃんはこれで登場が3回目。「月喰」「三顧の願い」「宝船」。「三顧の願い」は演劇であることを明かしている。「月喰」「宝船」については演劇なのかは明らかにしない予定。

・今後よく出るつくよみちゃんは黒朱乃宮邸にいる個体。演劇の場合は彼女に出演を頼んでいる。つくよみちゃんは作劇上都合の良い存在なこともあり複数体いる。

・「宝船」がどこまで演劇だったのか明かさないため、葵が今も船に乗っている可能性が残り続ける。これから葵の精神的成長を感じさせる動画も出るが、でもこれ本人じゃないかもみたいなノイズが入ることになる。

・動画内でつくよみちゃんのことをゆかり、ずん子は主人と呼び、茜、葵は船長と呼んだ。一時の宿として見ていると主人、どこかへ辿り着く船として見ていると船長になる。演劇パートでは茜は心の奥底で逃避願望を持っていたため船長と呼んでいる。葵も船長と呼んでいることから元の世界に帰るより別のどこかへ行くのを望んでいることを暗示している。


15分ぐらいで今度は短かったですねで本来の動画パートは終わる予定だった。残り5分でエクストラパートをやってオチをつけるつもりだったが、20分10分でほとんど30分コースになってしまった。

実はこれでもまだ端折っている。この後にもう一個オチのようなものがあった。

別の動画でおまけとして出すのもちょっと際どい内容なのでメモがてらここに残しておく。



生徒会があるずん子さんを残し、ゆかり達5人は帰路につく。

下校途中に駄菓子屋でアイスを買う。ゆかりは当たりを引き、船でもらった幸運の効果かもしれないと笑う。

風でマキが持っていたアイスの袋が飛ばされる。バカめとせせら笑ったあかりの袋も飛ばされ、二人は慌てて走り出す。

バカしかいないと呆れる茜。葵は田んぼに転げ落ちそうになった二人を心配しながら追いかける。

ゆかりは何かを考え込んでいるように立ち尽くしている。茜が問いかける。

「どうした?」

「…私はちょっと嘘をつきました。」

「嘘?」

「夢の話です。船から降りてすぐ目が覚めたわけじゃないんです。断片的にしか思い出せませんがもう少し続きがありました。」

話半分で聞いてほしいんですがと前置きしてゆかりは語り出す。

「私は空の上から船を眺めていました。船はどんどん速度を増していき、海も荒れていって乗客は降りるに降りられなくなっていました。」

「創作やなかったんやな。」

「船が進んでいる間は時間も進み始めると誰かが教えてくれました。思い出せませんが状況的にたぶん船の主人でしょう。」

「そこも創作やないのか。やったらお前が考えたとこほとんど無いやんか。」

「ずん子さんにはバレていたかもしれませんね。船員がその間の人生を代行してくれるっていうのも、自分で考えた気でいて実は教えてもらったことかもしれません。」

夢は自分の深層心理から作られるため自分で考えたようなものだとゆかりは言い訳する。

「けどホンマにどっか別の場所での出来事やったんなら創作やなくてただの体験記やで。」

「確かめる方法はありませんよ、恐らくずん子さんにすら。だからあれ以上詮索しなかったんでしょう。」

「それで、話したいことは何や?」

長い付き合いには言い淀んでいることがバレバレだったようだ。

「私とたぶん船の主人は空から別の光景も見ました。全然脈絡が無かったので違う夢だったのかもしれませんが…」

「はよ言えや。」

「ちょうどこんな場所です。稲刈りが終わった後の田んぼのようなところで、人の形をした黒い靄のようなものが何体も手を振っていました。熊牧場の熊がこう餌をねだるように。」

「不気味やな。」

「ゴミを食べてました。」

唐突に放たれた言葉に茜は硬直する。直前の文脈とのつながりを理解できなかったのだろう。

「子供たちがゴミを投げ入れるんですよ。するとその黒い靄たちが拾い上げて食べるんです。それが面白いようで子供たちは何度もゴミを投げ入れ、その度に黒い靄はそれを拾って…」

最後にはあんな風に放してあげるんです。船の主人の言葉をゆかりは伝える。

「あの船で与えられることに慣れ切ってしまった人の末路なんじゃないかと思うんです。貰ったものの区別もつかずにただ貪るだけ。きっと船に乗っている間に人生が終わってしまった人はあんなになっちゃうんだろうなって。」

船に残った乗客の最後がそのようなものだったのなら、ゆかりが語った話よりもずっと後味が悪い。そっちを採用しなかった理由が茜にはわかっていた。

「何かを尊ぶことは何かを蔑むことと表裏一体よな。礼節も守れない連中にはふさわしい末路やと思ったか?」

ずん子の推測が正しければゆかりが記憶を保っているのは「楽しい思い出を持ち帰りたい」と願ったからだ。ゆかりにとってその光景は「楽しい思い出」だった。

「恥じねばいけませんね。」

「別に恥じなくてもええが、お前がそういう人間やってことは覚えてないとあかんな。」

自分の性格がいいともゆかりの性格がいいとも思っていないため、ことさらに責めることは無い。ただこういう部分は他の人には見せられないだけだ。

「お前は好かれとったんやろうな。せやからついでに知りようがないことまで教えてもらえた。」

「そうなのかもしれませんね。ありがたいことです。」

「好きになることも嫌いになることと表裏一体よ。お前がお気に入りやったってことはお前以外は気に入らんかった可能性も出てくる。今でも船の連中がただ願いを叶えようとしているだけやったと思ってるか?」

ゆかりは振り返る。全部罠だったんじゃないかとは誰の感想だったか。自分はそうはならなかっただけで、初めから人を堕落させ破滅させる意図が無かったかは確証が持てない。

「それでもきっと最初は人を楽しませたかったんだと思いますよ。」

船での暮らしと彼女たちのもてなしを思い出し、ゆかりはそう呟いた。



以上。


2025年11月1日土曜日

彼岸言葉

意味不明な動画の解説。

たまに変なことをやらずにはいられない。


帰ってきたよ。


訳:主人公に干渉できるようになったという意味。主人公にとっては彼女がこの世に帰ってきたように思えることも踏まえている。


中秋の今日は新月だったね。

桃園結義の約束を違えることがあったのかな。

ねぇ、君はどう思う?


訳:中秋は満月となるはずが真逆の新月だった。とても裏切られた気分だという意味。

桃園決議の約束は三国志の「生まれた時は違えど死ぬ時は同じ」というもの。それを違えるようなひどい裏切りだと責めつつも、お前は先に死んだじゃんというツッコミどころも出している。


幽明境を異にするの幽明って有名なのかと勘違いしてて。

私もしかして有名人!住んでる世界が変わっちゃった!

なんて失敗、あなたにもあるよね。ね?


訳:言葉の受け取り方を間違えて舞い上がってしまうような失敗があることを、幽霊トークも交えながら伝えている。

主人公もそういう失敗をしたことがあるだろうし今まさにそういう失敗をしていることを訴えかけている。


水色は水の色じゃないよ。

だって水は透明でしょ。もしくは赤か緑。

浅葱色だよ。やっぱりね。

空もおんなじ浅葱色、もしくは赤か緑。


訳:髪や瞳が水色になっていることへの主人公の疑問に対して、水色という単語に対するこだわりを見せている。

質問への答えとして噛み合っておらず、思いついた言葉をそのまま喋ってしまっている。

水の赤と緑は赤潮とアオコ、空の赤と緑はオーロラ。一瞬ホラー味を感じさせるかと思ったがどうか。


草むらに隠れてるとでも思った?

私は日の当たるところにいるよ。写るかもしれないね。


訳:これまでどこにいたのかという主人公の疑問に対して、死者が草葉の陰から見守っているという言い回しから草むらに隠れてるとでも思ったかと軽口を叩いている。

普段は日当たりの良いところで過ごしていて、もしかしたら写真を撮ったら心霊写真として写り込むかもしれないと言っている。


それよりさぁ君。

比翼連理の欠けたるに浮いた落ちばを差し込もうとはひどいんじゃないかい?


訳:比翼連理は比翼の鳥と連理の枝という仲睦まじい男女を表す言葉。主人公と彼女のことでありそれが欠ける、つまり彼女が亡くなったところに別の女を作ろうとしているのを責めている。

落ちばは落ち羽と落ち葉のダブルミーニング。比翼の鳥には羽であり連理の枝には葉。

浮いたという表現は宙に浮いたや水たまりに浮いたという意味のほかに浮ついたという意味を兼ね、その女が軽い人物だと非難している。


昔から言うだろう?

忠臣は二君に仕えず、貞女は二夫にまみえずって。

それともあれかね?

畳は新しい方がいいって言うのかな。


訳:誠実な人間は主君や夫が死んでも新しい相手は作らないものだということわざ。女房と畳は新しい方がいいという言い回しからの皮肉。

自分に対して操を立てるように言っている。少々露骨な表現。


ほんとに?

冷えた石の上にも温もりを感じてくれてる?


訳:石の上にも三年いれば暖まるという言葉から、彼女がいなくなってまだ三年も経っておらず冷たい石のような生活に感じるだろうが、かつての温もりを思い起こしてくれているかという問い。

冷えた石には墓石という意味合いもある。


ほんとかなぁ、よいの口に夢を見ていたような気がするけど。

正直でよろしい。


訳:よいの口は宵の口と酔いの口のダブルミーニング。夜の浅い時間帯にあった飲み会で、酔った同僚の女性から口説かれたことを指している。

心が揺らいでしまっていたことを認める主人公を正直でよろしいと許している。


けどいいもんね、今はまだ私のものだから。

天地開闢の以前を思い出すね。


訳:主人公がまだ自分のものであると主張している。主人公の反応からまだ彼女への未練が強く残っていることを察して。

天と地が分かれる前は世界は一つだった。つまり彼女が存命中で二人一緒だった頃のこと。


陰陽の重なりは昼夜を知らぬものだった。

干天に降る慈雨のありがたみはどうだい。


訳:天地開闢によって天と地、陰と陽、昼と夜に分けられた。同様に存命中を懐かしむ言葉。

干天の慈雨という言葉から彼女が亡くなり女日照りの主人公に対して、久々の自分の体の感触はどうかと尋ねている。

そういった部分を踏まえると、陰陽は男女の意味もあるため昼夜を問わずに男女の交わりがあったことを暗喩するちょっとエッチなセリフ。


何の感触もしないって?なんだとこの野郎!

なんだとこの野郎。


訳:初めは胸が小さすぎて当たってる感触が無いという生前によくしていたやり取りかと思ったが、幽霊であるため言葉通りの意味であることを思い出す。

怒りとも悲しみとも何とも言えない悪態。


ごめんね。

夢を見ていたのは私だったよ。

ボーっとしていたんだ。いつもボーっとしている。

私がボーっとしている間、私がどうなってるか私にもわからないんだ。


訳:彼女の意識がはっきりしてくる。2時から3時にかけてのこの時間以外は意識だけでなく存在自体が朦朧としていることを言っている。

まだ生きている主人公に対して執着心を持つ自分を諫めている。


3年は引きずってね。後生だから。

そしたら空いたグラスにワインを注いでもいいから。

でも安酒はダメだからね。

よく見て、確かめてから買うこと。

それじゃあね。


訳:石の上にも三年いれば暖まるという言葉から三年。

女房と畳は新しい方がよいの否定として女とワインは古い方がいいという言葉から、女性関係の変化をワインになぞらえている。


もうちょっと


注:主人公の言葉。彼女の消失を拒む。


君は全く忠節の徒だな。

長恨の歌声に耳を傾けるだけでなく残光の瞬きに身命を焦がすか。

雷鳴に追われて比良坂を駆け上がることになるやもしれんに。


訳:忠臣は二君に仕えず、貞女は二夫にまみえずのように、一人の相手に従い続けることを忠節としている。操を立てるという守節も兼ねて忠義や忠誠ではなく忠節。

長恨の歌声は比翼連理を歌った長恨歌から。残光の瞬きは命という輝きが残したわずかな光が瞬いているだけの彼女の存在を表す。また死者に固執することで生者の身体に悪影響を及ぼすことを言っている。

黄泉比良坂にて死後のイザナミの姿を見たイザナギが逃げ帰ったことを挙げ、死人である自分に嫌悪と恐怖を抱くかもしれないと忠告もしている。

だが照れ隠しで急にたくさん喋っているだけでもある。


今度はしたかな。

あなたの温もりだから。


訳:相手の生命力を奪って一時的な実体を得ている。もしくは相手の意識に直接干渉して唇が触れているように思わせていることを言っている。

いずれにしても憑りついているようなもの。


ね、神経衰弱の逆を行ってみない?

地に根を下ろすよりも天上を望もうよ。


訳:神経衰弱ではペアとなるカードを探す。長恨歌の玄宗皇帝や黄泉比良坂のイザナギの話を踏まえ、ここでは片割れである伴侶を探し求めることを指している。

彼らは相手を死後の世界から現世に連れ戻そうとしていたため、その逆とは自分が現世から死後の世界に行くことで一緒になることになる。

比翼連理は天にありては一対の鳥となり、地にありては一対の樹となる。天があの世で地がこの世のため、この世よりもあの世に行こうという意味になる。


そんな簡単に頷いちゃダメだよ。

これは酔生の夢なんだから。


訳:簡単に誘いに乗った主人公を窘めている。

酔っ払っている時の夢であり、耳を貸さないようにという忠告。酔生夢死まであと一字であり、死の一歩手前であることも兼ねている。


それじゃあ

また明日。


訳:主人公を憑り殺す気は無いが、決別の言葉も言えていない。

情愛と執心を捨て去れず、彼女は明日もこの時間に会いに来る。



こんな感じのを夢で見て、何とか雰囲気を再現できないかと奮闘してみた。

夢で言われた言葉をそのまま使ったところと雰囲気に合わせて作ったところがある。

「このテープ持ってませんか?」で立てたあの世の人は独特な言葉遣いや言い回しをするみたいな仮説に従っている。

10分くらいはやれるかと思ったが全然で3分が限界だった。

これはユーレイちゃんというキャラクターとは特に関係ない単発ネタだが、ユーレイちゃんの話法自体はこれに近しいものになるので頑張りたい。次に出るのはいつかわからんけど。

どこに需要あるんだこれ。


宝船

永き世の 遠の眠りの みな目ざめ 波乗り船の 音のよきかな 解釈 進みゆく船は心地良く波音を立てるので、過ぎ去る刻の数えを忘れてしまい、ふっと「朝はいつ訪れるのだろう」と想うほど夜の長さを感じた。 起 ある夜、目覚めると私は船の上にいた。 穏やかな海に浮かんだ豪奢な船だった。 そ...