パーティーは4人まで。
パーティーを組むとパーティーを対象としたバフ、回復を受けられるようになる。また、パーティーメンバーに対してはフレンドリーファイアが無効になる。
通常では同じレアリティのアイテムの交換でなければプレイヤー間でアイテムを移動できないが、パーティー内では自由にアイテムを移動できる。
他のパーティーメンバーがどこにいるか知ることもでき、パーティーを組むことで攻略を優位に進めることができる。ただし、一度組んだパーティーは自由に解散はできず、定員に到達すれば増やすことも交代することもできないのは注意が必要。
しかし、『ドラゴネスクの怒槌』を受けるとパーティーが分断されることが大きな裏目となる。めたん、アリアルのプレイヤーキラー組はこれを警戒して協力関係にはあるがパーティーは組んでいない。
高額ではあるがパーティーを解散させられる『怒槌』、プレイヤーをキルできる『毒牙』が行商人から購入できるため、初めからプレイヤー間での戦いは推奨されている。
きりたんと塔エリアの村で合流したことで、ゆかり達4人のパーティーもプレイヤーキラー組の存在を知る。
その後、きりたんを守りながら5人で移動して海底エリア前の港町に到着する。
先に着いていた葵、ミリアルと共に海底エリアのボスを討伐することで、めたんの『腕甲』、アリアルの『風切羽』に匹敵する装備を獲得することを目指す。
一方、めたん、アリアルは遠巻きに彼女たちを監視。少人数での攻略が難しい海底エリアは任せ、ボスを倒したところを横取りする算段だった。
しかし海底エリアのボス『クアシダゴン』はギミック戦であり、港町の住人の協力によって海上で討伐され、そのまま一行は港町に帰投。めたんとアリアルは襲撃の機会を失う。
市街地でプレイヤーを襲撃し、住民に目撃されるとプレイヤーキラーらは指名手配される。指名手配された場合アイテムの購入や宿での宿泊ができなくなるため、まだその危険は冒さないだろうと一行は踏んでいた。
『クアシダゴンの外套』は『プロトゴレムの金貨』とは違い、戦闘面で強力なアイテムだった。葵とミリアルのパーティーに所有権があったが、ミリアルが装備する。
このゲームは感覚がリアルすぎることで、特殊なアイテムを装備しても容易には使いこなせないのがわかっていた。姉であるアリアルが自在に空を飛び回っていたことで妹のミリアルも適性が高いのではという判断だった。
実際ミリアルは『外套』の触手を器用に動かした。レベルが高く戦闘経験が豊富なミリアル、葵が戦力の要となる。
きりたんは葵とミリアルのパーティーに入るよう誘われるも辞退する。万一の事態に備えてということだった。
この時点でずん子、うさぎ、イタコ、ウナが死亡。
『プロトゴレム』がいた砂漠エリア最深部、『クアシダゴン』がいた海底エリア最深部に『毒牙』が置いてあったことで、他エリアでも同様にボス周辺に『毒牙』があることが推測される。
『ライオノイド』と『パラグリフィン』討伐時に得た2個がずん子、うさぎに使われ、ウナに使われたのは購入したものと思われる。報酬金の相場から考えてプレイヤーキラー組が持っているのはせいぜい後1、2個との見立てだった。
購入したものが1個、イタコがキルされた際に『デミゴルゴン』からドロップしたものを回収して1個で、めたんとアリアルの残り所持数は1個ずつだったためその見立ては当たっていた。
ゆかりがこのまま港町で行商人が来るのを待ち、『毒牙』を買い占めてしまおうという作戦を立てる。
『プロトゴレム』の討伐報酬に加え、『金貨』によって倍加された『クアシダゴン』の討伐報酬があるため葵とミリアルの所持金は潤沢にある。
『毒牙』の生成スロットは12。既に使用されたものが3個、プレイヤーキラー組が持っているのが2個、葵とミリアルが持っているのが2個。残り5個をこちらで確保できればもう向こうは在庫を増やせない。
固まって行動し、誰かやられてもドロップした『毒牙』の回収を最優先にすれば人数差で勝てる。
どれだけ戦闘で強くても『毒牙』が無ければトドメは刺せないことに注目した勝算の高い作戦に思われた。
向こうは『金貨』の存在を知らないためこちらの所持金を見誤ってくれる。
ゆかりの言葉に背中を押され、一行は港町への滞在を決める。
この隙に残る雪山エリアの攻略に乗り出されることが懸念事項だったが、ボスからドロップしたアイテムの装備は1人1個までのため、既に『腕甲』『風切羽』で埋まっている彼女たちにとってはそれほど有益でない。
クリアに必要なアイテムがその3つで、揃った瞬間クリアになる可能性はあったがそこは賭けだった。
作戦は上手くいくかと思われたが、行商人が港町に訪れる前に葵、ミリアルが夜襲を受ける。
ゆかり達が騒ぎを聞いて駆けつけると、ミリアルがアリアルを拘束しているところだった。
アリアルの『風切羽』は開けた場所では無類の性能を発揮するが、屋内ではその機動性を十分に活かせない。
ミリアルはその特性を理解せず突っ込んできた不用心をあげつらいながらも、視線はもう一人のめたんから外さない。めたんもまた『外套』の拘束力と傍らに控えた葵の援護を警戒して動かなかった。
ミリアルはめたんに助けを求めるも、めたんは不敵に笑うだけだった。めたんが助けに動かないことを認識し、ミリアルは『毒牙』を使用してアリアルをキルする。
その瞬間、めたんは獣の速さでミリアルへと走った。その動きを読んでいた葵は自身とミリアルを守る防護スペルを発動する。
しかしめたんの狙いは攻撃ではなかった。アリアルが死亡したことでアリアルの所持アイテムはその場にドロップする。めたんの手と『外套』の触手が交差し、両者はアリアルが持っていたアイテムを手にする。
ミリアルはこれまでの作戦もあり『毒牙』を回収していた。めたんは目当ての『風切羽』を回収して満足げに微笑む。即座に自身の『腕甲』と交換で『風切羽』を装備する。
たった今アリアルが『風切羽』は屋内では使いにくいことを証明したにもかかわらず、めたんの選択に葵とミリアルは戸惑う。
めたんは飛ばなかった。『腕甲』の攻撃力強化から『風切羽』の速度強化に切り替えるだけの目的。おまけの効果であっても四国めたんという人間自体の性能を加味すると十分だった。
『外套』の複数の触手による攻撃をめたんは双剣で防ぐ。既にミリアルは『外套』の性能を十分に引き出し、レベル差があるゆかり達の目では捉えることができない領域に達していた。
しかしめたんはその全てに対応していた。レベルが上がれば動体視力も反射神経も上がるが、ゲームの世界でできるようになっても現実の世界でできない動きは普通できない。事実葵は同レベル帯の両者の攻防に割って入ることができなかった。
たとえレベルによって身体能力が変わるとしても、元から強い奴が強い。このゲームの明確な欠点であり、めたんが優先してずん子とうさぎを排除した理由だった。
めたんはミリアルに肉薄し、触手を掻い潜ると組みついた。アリアルがしたのとは逆に、部屋の中から窓枠に向かって飛行能力を使う。
空中に連れ去らわれる。ミリアルの頭には猛禽類に捕まれた鼠のイメージが浮かび、反射的に『外套』の触手を使って踏みとどまろうとする。
何とか窓枠から体を乗り出す形で止まったものの、めたんの狙い通りだった。
部屋の中からは窓枠に絡みついた触手で外が見えず、ミリアル本体は無防備な状態で外にはみ出していた。めたんは外壁に張り付きながら『毒牙』を使用した。
『外套』の触手が消失したことで屋内に残された者たちはミリアルがキルされたことを理解する。
葵が窓枠へと走る。『外套』を奪われればいよいよ勝ち目が無いことを察してだった。
そう来ると読んでいためたんはミリアルからドロップした『毒牙』を1つ拾いすぐに使用した。
葵は『外套』を拾うことはできずに息絶えた。
ゆかりは自分の認識が甘かったことを痛感していた。
キルされたプレイヤーからドロップしたアイテムを拾うのは早い者勝ち。キルした本人が最も距離が近い以上最も有利だった。
それを抜きにしてもプレイヤーキラーの方が戦いが圧倒的に上手すぎた。
めたんはミリアルの『外套』と葵からドロップした『毒牙』を拾わなかった。ミリアルが持っていた『毒牙』は2つ、まだ1つ残っているはずだ。
全員で行けば『外套』と『毒牙』どちらかは回収できるはずだった。しかしその後の勝ち目がないことは皆わかっていた。
めたんは窓枠から逆さにぶら下がりながらじっとこちらを見つめていた。
しばしの静寂が流れ、きりたんが口を開く。
めたんは『毒牙』を持っていない。ミリアルからドロップした瞬間に1個を取ってすぐに使った。もう1個を取る時間はさすがに無かったはずだ。
『外套』の近くに落ちていないのは窓の外に落ちたから。
その推測は確かにそれらしいものだったが、根拠はなかった。めたんの表情も動かない。
ああやって睨みを利かせているのはブラフ。
本当は突っ込んで来られたら『毒牙』を拾わないといけず、残りの2つを持っていかれる。
それは嫌だから何とか流れを変えようとしている。
きりたんの言葉にゆかりはハッとする。
ボスアイテムは葵が持っていた『金貨』もだ。クリアに必要なアイテムがどれかわからない以上、戦闘に使えなくても無視するわけにはいかない。
めたんが一番嫌なのは持っていかれた後てんでばらばらに逃げられ、見つからなくなること。
きりたんは確実に4人を逃がせると宣言する。
4人で突っ込み、めたんが『毒牙』を拾っているうちに『外套』と『金貨』を拾う。
その後は自分に任せてくれと言い、全財産をはたいて買っていたアイテムを取り出す。
『ドラゴネスクの怒槌』。これまで話題に挙がりながらも一度も使われなかった店売りのボスアイテムの1つ。
きりたんの意図を察したゆかり、茜、あかり、マキはめたんが待ち受ける窓辺へと突っ込む。
めたんもまた俊敏に動き、窓枠から飛び降りると『外套』を拾った。
『毒牙』を拾って1人キルするよりもボスアイテムを1つ確保した方が良いという判断だった。
ゆかりが『金貨』を、あかりが『毒牙』を回収すると同時にきりたんが『怒槌』を使用する。
何が起こるかわからず、対象ではないめたんまでも身構える。一瞬の硬直状態の後、屋内にも関わらず雷が落ちた。
ゆかり、茜、あかり、マキの4人は光の塊となり四方へと飛ばされていく。至近距離で受けた閃光と轟音によってめたんときりたんは放心していた。
気を取り直すとめたんは1本取られたことを褒める。
あなたは『外套』を拾うと思ったが、『外套』はクリアに必要なアイテムじゃない。
きりたんの言葉にめたんは不思議そうな顔をする。
『クアシダゴン』の攻略には港町で住人の協力を集める組と、海底から『クアシダゴン』を追い立てる組が必要だった。
プレイヤーキラー戦法を禁止していない以上、最終的に1人になったプレイヤーが攻略できないボスの討伐報酬をクリア条件にするわけがない。
めたんはその観点は無かったようで、きりたんの慧眼に大いに感心する。
手を組まないかというめたんの誘いにきりたんは苦笑する。
あの場でアリアルを見殺しにしなくても、いずれは背中から刺していたはずだと。
アリアルもその辺りはお互い様だったと言いつつも、めたんはその疑いを否定しなかった。
勝者は一人しかいらない。そう思うめたんの性格をきりたんは知っていた。
何よりまだ一勝負残っているのだ。
めたんが窓の外に落ちた『毒牙』を回収するまでに逃げて姿を隠す。それができなくても住人の前でキルされてめたんを指名手配させる。
めたんは微笑んだまま近づき、『毒牙』できりたんを刺した。
きりたんは自分の推測が間違っていたことへの驚愕と、であればなぜ使わなかったのかという疑念に顔を歪める。
あなたを先に排除したかったから。きりたんの頭に浮かんだ問いに答えるようにめたんは囁いた。
『毒牙』を見せて牽制しながら立ち回れば、『外套』も『金貨』も奪えるかもしれなかった。
ただそんな不確実な立ち回りより、ポテンシャルに溢れたきりたんを確実に排除する方が優先だった。
逃げられても関係ない。どのみち自分以外は全員始末するつもりなのだ。
ゆかりは砂漠エリアに飛ばされていた。
他の3人は別々のところに飛ばされていると想定し、ゆかりは次の手を考える。
『金貨』を奪われないように逃げ回るのはジリ貧だった。めたんの戦いぶりを目の当たりにした後では、かといって戦いを挑むのも無謀に思える。
ゆかりは悩んだ末、当初のプランである『毒牙』の独占を狙うことを決める。
塔でのレベリングの経験から『金貨』の報酬倍加があれば『毒牙』を2、3個買える目算はついていた。
時間さえあれば。
めたんは恐らくきりたんに『毒牙』を使っただろうから、現状『毒牙』を所持しているのはあかりだけだった。
いくら強いとはいえラッキーパンチで即死する危険をめたんは冒さないだろう。他プレイヤーを探すよりもまず、『毒牙』の確保に動くはず。
残るボスは塔、沼地、そして雪山の3体。ボスがいるエリア最深部には他エリア同様『毒牙』が置いてあることが見込まれる。
十中八九雪山だと思われた。塔の『ドラゴネスク』は伝聞を聞く限り最強格で、沼地の『デミゴルゴン』は本体からも『毒牙』が手に入るが、それ故に本体の攻撃でも『毒牙』を使われた時と同じくキルされる。
店売りで固有名称がついたアイテムが手に入る特殊なボスであり、もしこれらがボスを倒した時にドロップするアイテムと同じならクリアとは関係ないチャレンジ要素ということになる。
そうした諸々を加味すると雪山のボスエリアから『毒牙』を回収、そのままボスを倒して討伐報酬でボスアイテムを獲得しつつ『毒牙』を行商人から購入が最適解に思えた。
一切連絡の手段は無いが、ゆかりは各々が同じ判断を下して動いてくれることを期待することにした。
塔に行って金策に走る方と、雪山に行ってめたんの妨害をする方に別れる。現状ではめたんは『毒牙』を持っていないのでできなくはないはずだ。
めたんが雪山エリアで『毒牙』を使い切り、反撃できないところを『毒牙』を持った複数人で仕留める。
都合の良すぎる展開だが他に勝ち筋は思いつかなかった。
その頃、荒地エリアのあかり、森林エリアの茜も同じ結論に達していた。
現在地との距離からあかりは塔エリアに、茜は雪山エリアに向かうことを決める。
マキは雪山エリアに飛ばされており、最初と同じように村に辿り着けずにさまよっていた。
めたんは自分の動きがどこまで読まれているかわからなかったが、他に良い手も思いつかず出たとこ勝負で雪山へと向かった。
塔エリアにやって来たあかりの姿を見てゆかりは安堵した。
あかりが雪山エリアに行っていたら『毒牙』でキルされた後に持っていた『毒牙』を奪われ、優位がまた1つ減る可能性ができていた。
この2人は金策組に必須だった。問題は他の者が妨害組に回っているかだったが、悩んでも仕方ないため塔に登り始めた。
あかりは最上階まで行き、『ドラゴネスク』を倒してしまうプランは無いのかと尋ねる。
現在の我々の実力的に厳しいと答えながらも、ゆかりは思考を巡らす。
倒せないまでも近くにあるはずの『毒牙』だけ回収したい気持ちはあった。『デミゴルゴン』とは違ってキルされる心配もない。
ただし、『デミゴルゴン』と『毒牙』の関係性から考えて、『ドラゴネスク』も『怒槌』と同じ効果の攻撃を使えるはずだった。
つまりパーティーで行けばまた飛ばされる可能性が高い。
パーティーは組まずにこっそり最上階に侵入して『毒牙』を回収する。
パーティーを組んでいざという時は再び『怒槌』を喰らって逃走する。
塔の最上階の使い道は様々思いついたが、ゆかりとあかりは一旦保留とすることを決める。
結局のところ最上階の構造も『ドラゴネスク』の特性もどうなっているかわからないため、この土壇場で不要なリスクは取れなかった。
もしめたんが塔にやって来た場合は塔の最上階に向かう。
その不確かな逃げ道を支えに二人はレベリングに努めた。
他の状況が不明なのは不安だったが、意外にも何も起こることはなく目標の額を集めることができた。
行商人が塔エリアにやって来れば『毒牙』を買い占めることができる。
港で待っている時に行商人が来る直前だったことを考えると、今は砂漠エリア辺りでもうじき塔エリアに来る想定だった。
聞き慣れないシステム音が響き、ゆかりとあかりの前にホログラムで九州そらが現れる。
状況がわからない二人だったが、そらは申し訳なさそうに事情を説明する。
曰く、雪山エリアに調整が入るとのことだった。
めたんと茜が雪山エリアの村に到着し、ボスの討伐と妨害で争うところだった。
しかし雪山エリア最深部の道筋があまりにもわかりにくく、それどころではなかった。
いつまでも村に辿り着けないマキを助けるために、そらは茜にマキの位置情報を提供。茜は救助に向かうもマキが動き回ったことで二次遭難。
その隙にボスがいるという打ち捨てられた町の発見にめたんが挑むが、一日中吹雪が止まない道のりで目的地にたどり着くことはできなかった。
村にある「この先まっすぐ」という看板からただまっすぐ歩けばいいだけなんですけどねとそらが愚痴る。
アンドロイドである自分と同じ感覚で作って失敗したようだ。変わらない雪山の景色と視界を奪う吹雪は容易に人の方向感覚を狂わせる。
人並外れた才覚を持つめたんですら同じ道を行ったり来たりしているのを見て、これはさすがに進行不可能だと悟ったのだった。
吹雪の弱体化と頻度の低下、道中の立て看板の追加、各プレイヤーに方位磁石の配布を行うことを告げる。
そらとしてもゲーム中にテコ入れを行うのは苦渋の選択なのだろう。苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
一方でゆかりとあかりはほくそ笑んでいた。情報が手に入るだけでもありがたいのに、その情報は自分たちが有利な状況に居るのを告げていた。
それから間もなく行商人はやって来た。『毒牙』を購入するが3個しか買えなかった。
あかりが持っている1個と合わせて合計4個。目算通りではあるがやはり生成スロットは埋められなかった。
後1個は雪山エリア最深部で生成される。どっちが取るかわからないが、めたんだろうなという予感はあった。
それでも有利な状況には変わりなかった。
あかりはこのまま雪山エリアに向かって茜とマキと合流することを提案する。
めたんは『毒牙』を手に入れても茜とマキに使うことはない。必ず温存して『毒牙』を持っているだろう自分かゆかりに使う。
既に独占されている可能性にめたんが気づいていないとは思えなかった。
現状だと二択、茜とマキと合流できれば四択にできる。
4人全員で『毒牙』を持っても1人ずつ倒されるだけ。4人のうち1人だけが『毒牙』を持てば、めたんがそれ以外の人に『毒牙』を使った瞬間勝ちが決まる。
改めて『毒牙』を分け合い、反撃できない相手に3対1ならさすがに刺せる。
しかしその作戦にも穴はあった。
めたんは誰が持っているか確信が持てるまで『毒牙』を使わない選択ができる。
使わないならそのままこっちの『毒牙』で倒せるという択を迫らなければいけない。
すると持っているフリで牽制するよりあわよくば倒せてしまった方がやはり良い。
『毒牙』の分配をどうするか。それは難しい問題だった。
ゆかりとあかりは最適解を探る。
所詮は運次第ではあるのだが、その運を最大に高める方法を考えていた。
ゆかりは『毒牙』の移動方法に着目する。
『怒槌』を受けた後、ゆかりとあかりはパーティーを再結成していない。茜とマキでパーティーを再結成しているかもしれないが、たぶん『怒槌』を警戒してソロのままだろう。
きりたんが使った時は自分たちに有利に働いたが、本来はパーティーを分断して各個撃破するためのアイテムであり、警戒せざるを得ない。
めたんもそう認識しているはずだ。
実際『毒牙』に所持金を割いていただろうめたんが『怒槌』を所持している可能性は低い。
しかしだからと言って無視できないのはお互いにわかっていることだ。
つまりめたんは4人に襲いかかられてもパーティーではないと思うはずだ。
ここで重要なのが『毒牙』の移動方法だ。
あの時『毒牙』を拾ったあかりが1つ、『金貨』を拾ったゆかりが『毒牙』を3つ持っていると考えるのが順当な結論だ。
そこから『毒牙』がどう動いたか。
パーティー内では無償で移動できるアイテムも、パーティー外であれば同じレアリティのアイテムの交換になる。
『毒牙』の所在は全てわかっているが、『怒槌』はきりたんが使った1つしかわかっていない。
めたんの視点だと『毒牙』の移動は『怒槌』との交換で行われると推測できる。
きりたんが1つ持っていたことからも、ゆかり、あかり、茜、マキが分断される前に『怒槌』を所持していた可能性は十分あり得る。
口を開こうとしたあかりをゆかりは制す。
実際には誰も『怒槌』を購入してはいない。しかしだからと言って無視できないのはこれも同じことだ。
重要なのは『怒槌』というアイテムがどう考えてもパーティー内で複数個抱えておくようなものではないことだ。
つまりゆかり、あかりから茜、マキへの移動は行われても1回のはずになる。
この結論にめたんが達していれば、茜かマキが『毒牙』を見せた時点でもう片方は狙われなくなる。
ゆかりが息を継いだのを確認して、あかりは改めて口を開く。
茜、マキは『怒槌』を持っていないため、実際に『毒牙』を移動させるためにはパーティーを再結成する必要がある。
めたんが『怒槌』を持っている可能性は切る。もしくは裏をかいてこのまま移動させずに仕掛けるの二択ではないかと。
ゆかりは『怒槌』をケアしつつ、めたんの裏をかける方法を告げる。
それは非常にややこしいが、もっともらしいものだった。
行商人が塔エリアから雪山エリアに移動するのに合わせて、ゆかりとあかりは移動してきた。
茜とマキ、めたんの姿は見えなかったことでボスエリアに行っていると思われた。
そらの話を聞いて若干不安になりがらもゆかり達は村を出た。確かに最初に訪れた時よりは吹雪も弱まっており、立て看板もあって方向はわかりやすかった。
一方、雪山エリア最深部ではボスである『バーバリアン』、めたん、茜とマキの三つ巴の戦いが佳境を迎えていた。
ボスエリアの『毒牙』はめたんに取られており、茜とマキの妨害も空しくめたんはボスを圧倒していた。火属性の『腕甲』がある時点で氷属性の『バーバリアン』には圧倒的に有利だったのだ。
茜はこれ以上は無駄な足搔きだと悟り撤退を決める。ゆかりとあかりと合流し、四択の賭けに臨んだ方が良いという判断だった。
合流は思っていたよりずっと早くに果たされ、雪山のボスエリア、打ち捨てられた町が最終決戦のフィールドとなった。
『バーバリアン』を倒しためたんは『バーバリアンの首飾り』を獲得する。
『毒牙』の即死すら一度は耐えられるという効果を知り、自身の勝利を確信する。
これは向こうも知らない切り札になるはずだった。
ボスが根城にしていた教会から出てきためたんを4人は待ち受ける。
誰に『毒牙』を使わせるかという戦いになる。奇しくも演劇部である彼女たちの本懐とも言える展開だった。
めたんも既に『毒牙』は買い占められており、『毒牙』を持っていないプレイヤーに使ったら詰みだということは理解していた。
誰が持っているのか、誰が持っていないのかを見極める必要があった。
あかりが拘束魔法を使って牽制する。レベルも上がっており、喰らえば『毒牙』の餌食となるのは避けられなかった。
しかし『外套』より予備動作が大きく速度も速くない攻撃が当たるはずもなく、軽々と避けられる。
元より戦いにおいては素人の自分たちが勝てる相手だとは思っていなかった。
4人はじりじりと距離を詰め、決行の時を待った。
不意に茜が走り出した。即座にゆかりが拘束魔法をめたんに放つ。
茜が『毒牙』を取り出すのを見て、めたんも『毒牙』を取り出した。その背後からマキが『毒牙』を持って襲いかかっていた。
マキがめたんの意識外に行っていれば決まっていただろう不意打ち。しかしめたんはわかっていたように体をよじって避けると、マキを茜に向かって押した。
マキが握りしめていた『毒牙』は茜に刺さっていた。刺された茜はよろけながら後ずさると倒れた。
マキは自分がやったことが信じられないように呆然としていた。その背後から今度はめたんが『毒牙』を構える。
「マキさん!!」
あかりの叫びにハッとしたマキだったが、時すでに遅かった。
ゆかりの作戦はこうだった。
ゆかりと茜、あかりとマキでパーティーを組む。
『毒牙』はゆかりから茜へ3個、あかりからマキに1個ですべて移動する。
茜が『毒牙』を見せた場合、パーティーではないという前提であればマキが『毒牙』を持っている可能性を排除してマキの『毒牙』が決まりやすくなる。
また、万一めたんに『怒槌』を使われたとしても、残るのは『毒牙』を持っている人と持っていない人のペア。二択のままになる。
この二択を外した場合めたんは『毒牙』を持っていない状態で『毒牙』持ちと戦うことになるので、めたんは『毒牙』を使えない。
これが最も無難な最適解。
そのことにめたんが気づいているのが前提となる。
茜が『毒牙』を見せた時点でめたんはマキの奇襲を想定する。
ここでどちらから対処するかの選択になる。
茜をキルした場合ドロップする『毒牙』は3個、即座に拾ってマキに使用しなければならないため、残りをゆかりかあかりに拾われて使われるリスクが高い。
対してマキをキルした場合ドロップする『毒牙』は1個であり、対処が求められるのは茜だけ。
しかしそれはこちら目線の話。
あかりには二度の塔でのレベリングで稼いだ所持金があり、自力での『毒牙』購入も可能である。
それに『毒牙』と同レアリティで交換可能なアイテムは『金貨』もであり、めたん目線ではゆかりとあかりが『毒牙』をどう入手し、茜とマキにどう分配されているか判断はつかない。
フィフティフィフティの条件ならどうするか。
めたんなら最もリターンが高い第三の選択肢を取る。
パーティーが分かれていることを逆手に取った同士討ちによるキル。
致命傷を与えられないだけで他プレイヤーに触れることも動かすこともできる。
奇襲を仕掛けたマキの軌道を逸らして茜にぶつけるくらいのことはめたんなら容易のはずだ。
マキにキルされた茜から『毒牙』が1個しかドロップしなければマキが3個持っていたことになる。
めたんなら『毒牙』を拾うよりも『毒牙』を持っているプレイヤーをキルすることを優先するはずだ。
ドロップした『毒牙』を即座に使ってアイテムを拾おうとした他プレイヤーをキルできることは、葵のやられ方でわかっていた。
その結果こうなる。
マキから『毒牙』はドロップしなかった。最初から1個しか持っていなかったのである。
めたんは驚きの表情を浮かべたが、自分がハメられたことに気づいたようだった。
ゆかりは購入した3個のうち2個を売却した。『毒牙』の生成スロットはまだ埋まっていない。
買い占めていない状態で総力戦を挑むという非常にリスクの高い作戦だった。
茜からドロップした『毒牙』は既にゆかりによって拾われていた。
『毒牙』を持っていない状態で『毒牙』を持っている相手と戦う。めたんにとっては初めての経験だった。
めたんは相対した最後の2人を警戒しながらゆっくりと歩いた。
雪山の村まで走れば『バーバリアン』の討伐報酬金を得ることができる。その金で『毒牙』を購入できれば巻き返せるはずだった。
しかしそうできない理由もあった。
「もう詰んでるかしら。」
めたんは二人に問いかけた。
ゆかりは意図がわからなかったが、『怒槌』をケアしていなかった場合はゆかりかあかりが既に『毒牙』を2個所持していてもう勝ち目が無いことと判断した。
めたんがそう思ってくれているなら都合が良かった。ゆかりは大人しくやられてくれるよう促す。
めたんは最後まで勝ちを諦めないことを告げた。
ゆかり達は勝算の高い賭けに勝った。だからこそ自分も勝算の高い賭けに出ると。
めたんの目は真っすぐにゆかりを見ていた。ゆかりはその目に不思議な慈しみを感じて気が緩んだ。
めたんが口を開こうとした時、あかりの拘束魔法が決まった。完全に不意をついていた。
「ゆかりさん!今のうちに!」
あかりが叫ぶ。
ここで逃がしてめたんに『毒牙』を買わせるわけにはいかない。当初の作戦通りだった。
しかしゆかりの脳裏には違和感がよぎっていた。このまま倒してしまっていいのだろうか。
「ゆかりさん早くっ!」
あかりの声が緊迫感を増していた。そうこれが最後のチャンスだ。
ゆかりは『毒牙』をめたんの純白の衣装に突き立てた。
一瞬めたんの体が柔らかな輝きに包まれ、再びその姿が現れる。
『バーバリアンの首飾り』の効果。ゆかりは装備が変わっているのにも気づいていなかった。
その効果を知らなかったゆかりとあかりは驚いたが、めたんは冷めた表情をしていた。
負けなくても勝てない。そのことはもうわかっていた。
めたんは読み違えたと言い、悔しそうにその場にひっくり返る。
ゆかりはまだ得心が行っていないようだった。めたんが早々に諦めた理由がよくわからなかったのだ。
一度『毒牙』との交換であかりに『金貨』を渡し、塔で得たアイテムを倍値で売却させて所持金を増やしている。ゆかりかあかりどちらかが行商人に先に接触して『毒牙』2個を買うことで初めて詰み盤面になるつもりだった。
その前に倒してしまえるならそれでも良かったのだが…
あかりが種明かしのように『毒牙』を見せる。ゆかりが売却した後、こっそり既に買い戻していたのだ。
めたんが『怒槌』を持っていないことを知っていた。
あかりの言葉にゆかりはポカンとする。
「私とあなたの分よ。」
めたんのその言葉で初めて実感が湧いた。
あかりは自分に黙って準備をしていたのだ。このゲームに勝つための。
あかりの初期位置は荒地エリアだった。
そこでめたんとアリアルに会い、共に『ライオノイド』を討伐した。
レベルも低く装備も整っていない序盤に2人でボスを倒すのは難しい。
めたんとアリアルの無双ぶりを見ていたからこそ思い至らなかったことだった。
『腕甲』があればめたんとアリアルの2人でも『パラグリフィン』は討伐できそうに思われた。
そのためあかりは別行動を取り、他プレイヤーの行動を監視、誘導することを決めた。
塔で4人とレベリングしていたのは足止めの意味合いもあった。エリア内の人数が多過ぎればプレイヤーを狙いにくくなるから。
港町で葵とミリアルによる『毒牙』の買い占めが失敗したのはあかりが密告したからだ。
夜中に町から脱け出しめたんとアリアルと落ち合って、このままだと詰まされることと、葵とミリアルがどこの宿に泊まっているかを伝えた。
だからギリギリのタイミングで夜襲を起こせたのだ。
この最終決戦にしてもゆかりとあかりは『金貨』を持って逃げ回る選択肢だってあった。
最悪『デミゴルゴン』の近くで『金貨』を持ったままキルされ、めたんが『デミゴルゴン』にやられることを期待する戦法もあった。
しかしそれでは駄目だった。あかりが勝てないから。
あかりが勝つためにはめたんはキルされつつ、残ったプレイヤーもあかりがキルできる展開にする必要があった。
そういう意味でめたんはゆかり達と読み合いながらも、あかりとも読み合っていたのだ。
いずれ自分を排除しようとは思っているだろうが、プレイヤーを減らしたいという思惑では一致していた。
だからこそめたんは港町できりたんのキルを優先し、雪山で決戦に乗った。
噛み合いが良かったとあかりは言う。
雪山での進行不可能というトラブル、ゆかりが立てた作戦があったからこその勝利だった。
ゆかりは驚きが落ち着くと感心が込み上げてきた。
自分の後をついて回っていたあかりが、自分を上回る策謀を巡らせていた。
どこか親心を感じると同時に、めたんが向けた不思議な慈しみの目の意味もわかった気がした。
「借りは返すわ。」
めたんは近づいて来るあかりにそう捨て台詞を吐いた。
ゆかりも何と言おうか迷って、ただ「お見事」と呟いた。
はにかんだ顔で笑ったあかりは、かざした『毒牙』を振り下ろした。
最後のプレイヤーとなったあかりが『腕甲』『風切羽』『金貨』『外套』『首飾り』を手にしたことでゲームクリアとなった。
予想外な勝者であったことを讃えながら、そらはあかりを連れて現実世界へ帰還する。
キルされた者たちは観客に回っていたようで、それぞれのゲーム体験を振り返っていた。
東北ずん子は良いとこ無しで退場したことをからかわれていた。雪山エリアほどではないが森林エリアも遭難スポットであったため、そらは調整を求められた。
中国うさぎも早期退場したことで申し訳なさそうにしていた。『風切羽』での奇襲は予備知識が無かったら絶対回避できないようなものだったので周りは同情していた。
東北イタコは唯一プレイヤーではなくモンスターにキルされたことでずん子同様揶揄の対象になっていた。見た目が怖すぎて冷静な判断ができなかったことを恥じるも、あんなのをマップのど真ん中のエリアに配置する制作者を非難していた。
音街ウナも良いとこ無しの上、『風切羽』で一方的に狩られたことで同情的だった。これに関してはアリアルの非情さへのブーイングも大きかった。
アリアルは『風切羽』で空中から一方的に襲いかかる戦法を嬉々として取っていた上に、狙ったのも小さな子ばかりということで非常にヘイトが高かった。ミリアルにキルされた時は喝采が上がったと言う。
ミリアルは真正面からめたんに押し負けたことを悔しがっていた。条件的には五分であり、たとえ空中に連れ去らわれたとしてもまだ勝ち目はあったので無理に踏みとどまるべきではなかった。
琴葉葵もまた、自分がもっとサポートできていればと悔やんでいた。ミリアルと葵のペアでめたんを仕留められていればその後はもっと別の展開になったはずだった。
東北きりたんは東北三姉妹で唯一意地を見せたことで評価が高かった。敵を倒すための『毒牙』に皆が注目する中で、味方を逃がすために『怒槌』を用意しておく判断はさすがのものだった。
琴葉茜は渋い顔をしていた。マキに茜をキルさせるという作戦はゆかりから聞かされておらず、そこで既に騙された気分だった。仲間のための犠牲ならそれでもまだ良かったが、更にあかりも騙していたので踏んだり蹴ったりな気分だった。
弦巻マキも同様に渋い顔をしていた。2回も雪山で遭難した上、作戦について聞かされていなかったので茜をキルしてしまった罪悪感を味わった。
結月ゆかりはそんな茜とマキを宥めていた。自然な演技のためと言うが、何も聞かされてない以上ただの素の反応だった。一応味方サイドではあったが、人格的にはプレイヤーキラー側の人間という評価だった。
四国めたんは最後の最後でひっくり返されたことでムスッとしていた。戦略的判断とは言え真っ先に親友であるずん子をキルしたことで人格を疑われていた。小悪党なアリアルとは違い、実力と野心を兼ね備えた真っ当な悪役だった。
紲星あかりはほとんど全員を騙していたことでドン引きされていた。いったいどんな気持ちで塔でのレベリングや『クアシダゴン』の討伐に臨んでいたのか問われると、純粋に楽しんでいたと答えた。それはそれとして最後には裏切るという切り替えの良さが勝因だった。
めたんがそう言えばクリアに必要なアイテム3つは結局何だったのかをそらに尋ねる。
『ライオノイドの腕甲』『パラグリフィンの風切羽』『バーバリアンの首飾り』だった。
「え、私勝ってたじゃない。」
めたんが驚きの声を漏らす。他の者も呆気に取られる。
あのタイミングでめたんの勝利を宣言してもみんな興ざめするだけだった。だから特に何も言わずに続行させた。
そらは申し訳なさそうに言った。
一人での攻略が難しいのは『クアシダゴン』だけでなく『プロトゴレム』もだった。
砂漠エリアの迷宮は海底遺跡の複雑さと塔のモンスターの多さを兼ね備えた場所であり、『プロトゴレム』まで辿り着くこと自体が一つの試練だった。
ただボスを倒すだけの『ライオノイド』『パラグリフィン』『バーバリアン』のアイテムがクリア条件なのは、全容を把握すると当然に思えた。
試合に勝って勝負に負けたようなもの。
あの場で勝利を宣言されても他プレイヤーを全滅させるまで納得しなかっただろうことはめたんもわかっていた。
しかしそっちの勝ち方をすっかり忘れていたのは失態だった。
めたんは複雑そうに呻く。
複雑そうに呻いたのはあかりもだった。
完全に出し抜いて勝ったつもりだったのに、その勝利に泥がついてしまった。
そらは色々と調整が必要そうですねと能天気にまとめた。
情報の不足が有利不利を招いた局面は多かった。次があればもっと別の戦い方があるだろう。
「次はあなたを最初に殺すからね。」
「こっちの台詞です。」
めたんとあかりが笑い合う。
結局のところ戦いに適した精神性による優位は覆らないように思われた。
今度は『ドラゴネスク』と『デミゴルゴン』も討伐してほしいけれど、この2人が居る限りは無理だろうなとそらは思った。