2022年12月27日火曜日

補講

ー放送開始ー

「お昼の放送の時間です。今日は…え、ちょっと先生何やってるんですか!」

(物音)

「はい、マイク借りるよ。突然ごめん、今日はみんなに話したいことがあって来たんだ。」

「知っている人もいるかもしれないけど、先生はこの学校からお別れすることになった。だからその前にみんなに別れの言葉を言いたいんだ。」

「先生のクラス、2年3組のみんな、聞こえているかな。みんなは先生が初めて担任したクラスの生徒たちだ。みんなと過ごした日々の思い出は今も胸に焼き付いてるよ。」

「他のクラスの皆にはちょっと退屈かもしれないけど、この時間を使ってみんなとの思い出を振り返らせてほしい。先生の人生の大きな転換点だったからね。」

「初めて教室に入って挨拶する時のドキドキした気持ちは鮮明に覚えてる。扉の前で大きく息を吸って、元気よくおはようって言いながら一歩を踏み出した。みんなはまばらにだったけどおはようって返してくれたね。」

「教壇に立って自己紹介しながらクラスのみんなの顔を見渡した。みんなは緊張した様子で期待と不安の入り混じった表情だったね。私も顔は笑ってたけど実はみんなと同じ気持ちだった。」

「教師としての務めを果たせるか、みんなと上手くやっていけるか。私はそんな不安を心の隅に押しやって、先生とみんなの学校生活が充実したものになるように努めようと意気込んでたんだよ。」

「初めはぎこちなかったクラスの雰囲気も徐々に和らいで、みんなの間に笑顔が溢れるようになった。お昼休みや放課後には先生のところにもみんなが話しかけに来るようになったね。先生とみんなの距離が縮まってるのを実感した。」

「始まりは些細なことだったんじゃないかな。忘れ物をしてきた生徒に、先生は強く怒らなかった。笑ってすました。そこまで目くじら立てるようなことじゃないと思ったからね。でもそのせいでみんなは先生のことをああ、この人は大丈夫な人なんだって思っちゃったんだろうね。」

「みんなは先生の授業中ずっとおしゃべりしてるようになった。先生の宿題をやってこなくなった。先生が注意してもニヤニヤ笑うだけで先生の言うことを何も聞いてくれなくなった。」

「ある日、教室の扉を開けると黒板消しが降ってきた。古典的なものだね。今時やる人がいるのかと思う。先生の頭は真っ白になったよ。内も外も。みんなは大きな声で笑って先生は小さく笑いを浮かべながら白い粉を払った。」

「先生は大声で怒鳴る教師が嫌いでね。だってあんなのみっともないじゃないか。教師も生徒も理性のある人間だ。守るべき規範があるなら説いて聞かせればいい。大きな声で恫喝するのは獣相手にやることだって思ってた。」

「先生の考えが間違ってたよ。先生の言葉は何一つみんなには聞き入れられなかった。黒板消しはいつしか水の入ったバケツになったし、授業中のおしゃべりは先生に対するからかいの言葉になった。先生の宿題をやってこない代わりにみんなは先生の悪口を書いた紙を提出してくれた。」

「先生は頭を抱えたよ。どうやったらみんなにそういったことを止めさせられるだろうかってね。自分のためじゃないよ。みんなのためだ。成績も下がるし内申点だって下がる。みんなの将来のためにならないんだよあんなことは。」

「だから先生は頭を下げた。学年主任の先生に、教頭先生に、校長先生に。私が言って聞かせますから、必ず更生させますから、なにとぞ穏便にってね。先生はみんなが態度を改めてくれるって信じてた。根は悪い子たちじゃないって信じてたから。」

「でもみんなは…みんなは本当に…。あんなことをするんだね。先生は人の善性ってのを妄信してたみたいだよ。みんなで口裏を合わせて先生のこと犯罪者に仕立て上げて。ただ自分たちの一時の楽しみのために。」

「先生はね…小さい頃から先生になりたかったんだ。子供に真剣に向き合って、時に優しく、時に厳しく道を指し示すような、そういう存在になりたかった。修学旅行や文化祭も生徒と一緒にはしゃぎたいし、いつか大人になった生徒たちと昔を懐かしみながらお酒を飲みたいなって思ってた。受験に失敗して大学には一浪して、教員免許を取ってからも配属先が決まるまで2年待って、やっとの思いで先生になったんだ。」

「…俺がバカだった。」

(沈黙)

「なあ、みんなはこれから…」

「一人の人間を死に追いやったっていう事実を背負って生きてくれ。」

(金属音、血しぶき、倒れる音。)

(女生徒のすすり泣く声と教師の叫び声。)

ー放送終了ー


2022年12月26日月曜日

全部落ちとるやないかボケ

あ~全滅ですわ~。

マジで進路どうすんだよコレ。もうさすがに今年の募集ねぇぞ。

今回のは手応えあったんだけどな。わざわざ雪の中山形まで行ったのに。

ファ~。

ちゃんと親と話さないとだな。

どうしよっかなホント。

親とはお別れしてフリーターになるか。

親に頭下げてあと1年やらせてもらうか。

どっちにせよこれまでのこととか俺自身のこととかいい加減はっきりさせないとか。

あ~嫌だな~。

失敗したな。なんでこんなになっちゃったんだろ。

自殺するから関係ないみたいなスタンスでいたツケか。

せめてもうちょっと逃げ道を用意しておけば。

公務員試験の勉強しておいたり、形だけでもサークルに入っておいたり。

判断ミスだな。

院試が解けないのが想定外だった。自分の実力を人並みだと思ってはいけないとあれほど

いやよそう。今さら詮無いことだ。

作戦を立てよう。これからは自分の判断で動かないといけないんだ。

フリーターとして生きてくのは特に準備も必要ない、というか落ちて行った先だから準備もクソもないのでいったん保留。

一応は就職先を探す方向性で行くか。

その場合ネックとなるのは金と時間。

バイトで生活費を稼ぎながら就職活動ってのは現実的ではないか。その場合親からお金が貰えるかどうか。

貰えるかどうかで言えば貰えるんだよな。留年でも浪人でも専門学校に進学でもいいとは言ってる。

どういうつもりで言ってるんだろうな。

本気で俺という人間自体には問題がないと信じているのか。あるいは俺自身の問題に触れない代わりに金は出すということなのか。

わからない。わからないのは面倒だ。

親との関係をどうすればいいのか、どうしたいのかが自分でもわからない。

後は時間の問題。既に24卒の募集は始まってるんだ。

切り替えるんなら早くしないといけない。

今年出遅れ過ぎたせいで来年の分まで出遅れるのは洒落にならない。

公務員試験を受けるという手もあるか。確か8月…だったか。調べとかないと。

卒論も書かないといけないのにてんやわんやだ。

バイト、辞めるか。逆に増やすか。

考えないといけないことが多過ぎてパンクしそうだわ。

とりあえず30から帰省。

今度こそちゃんと話さないと。話させてくれるかなぁ。

あ~死にてぇな~。

めんどくさくいから死ぬのはさすがにナシか。


2022年12月23日金曜日

思いついたネタの覚書

何個か思いついたのでメモっとく。

次の小ネタ集用。4個か5個くらい。

今更だけどこのブログを見てると動画のネタバレを喰らうぞ。


1.世間の声

逃げるな卑怯者!逃げるなぁ!

私たちはいつだってお前より過酷な環境で頑張ってるんだ!

不幸な人間がだ!

生まれだってお前より恵まれない!暮らしだってお前より楽じゃない!

逃げるな馬鹿野郎!馬鹿野郎!

卑怯者!

私たちの方がずっと辛いんだ!苦しいんだ!

お前は不幸じゃない!

誰も死ななかった!逃げださなかった!生き抜いた!

お前はクズだ!

逃げるな卑怯者ぉ!


【解説】

はい。なんか聞き覚えありますね(すっとぼけ)。

マンガ読んでる時ふと思いついたのを思い出した。

夕暮れ時の屋上。フェンスに手をかけた少女にその言葉は投げかけられる。

彼女は顔を歪ませながらフェンスを乗り越え、そのまま飛び降りる。

逃げるな卑怯者ぉ!その言葉を背に受けながら…

って感じ。

世界は私を許さない。だから私も世界を許さない。


2.故人への想い

イタコさん「それでは口寄せについて説明しますね。」

「お父様の霊を私の身体に下ろしますので、その後はご家族でどうぞお話しください。口寄せ中は私の意識は無いため、話の内容はわかりませんのでご安心を。」

「って、もう何度も説明しているのに今更ですよね(笑)。」

釣られて笑う娘たち。毎年の恒例行事なのだ。

「今年もよろしくお願いします。」「父がどうしているのかいつも気がかりで。」

「お二人は本当にお父様想いですね。」

イタコさんは居住まいを正し、目を閉じる。

口寄せに移ったのだ。

「…ああ。」

彼女の目が開き、瞳に戸惑いが映る。

視界の中心に娘たちを認めると、口から嗚咽のような吐息が漏れた。

「すまなかった。本当にすまなかった。どうかもう許してくれ…」

娘たちは先程とは打って変わった意地の悪い笑みを浮かべながら彼女を…いや父親を見下ろす。

「お父さん、元気にしてた?」「あの山奥の居心地はどう?」

「…お願いだ。これまでのことは全部俺が悪かった。だから「だから何?」

「ちゃんと供養してくれって?冗談でしょ?」「どんな神経してたら私たちにそんなことが言えるのかな?」

ニヤニヤと笑う二人の表情には侮蔑と憎悪、そして愉悦が見て取れた。

「謝っても謝っても殴られたよね?」「殴られた殴られた。鼻血が出て歯が折れるほど殴られた。」

「髪を掴んで引き摺られて壁に投げつけられたよね?」「お腹を蹴り飛ばされてお前らは売女の娘だって言われたなぁ。」

二人の言葉をただ目を伏せて聞いている。悔恨の念に、娘たちへの罪悪感に苛まれたとしてももう遅い。

もう死んでしまっているから。

「誰からも弔われない魂はどこにも行けないんだってね。ずっとこの世に留まり続ける。」「ねぇ、これからもずっと暗く冷たいお墓の中で、いつまでも1人で過ごしてね。」


【解説】

亡き父への想い。生きている間はついに伝えることはできなかった。

嫌がらせのためだけに毎年イタコさんに口寄せしてもらってる。

イタコさん「父親想いのいい娘さん達だなぁ(くちポカーン)」って感じ。

しかし霊魂の話をすると色々と頭がこんがらがってくる。

この話での設定はイタコさんは降霊中の記憶がない。死者は弔ってもらえないとあの世には行けない。かといって自由に動き回れるわけでもない。

まぁ違和感のあるような設定ではないか。

口寄せってどういうもんなんだろ。

そも仏教の観点においては霊魂というのは死後輪廻の輪を巡り、生前の行いによって六道のいずれかに転生する。幽霊はおろか、先祖の霊という概念すらない。

父祖の霊を弔うというのは儒教的な考えで、それが仏教に組み込まれたのは法事を取り行うことによる安定的な収入が目当てだったという話を聞いたことがある。

葬式だけでなく、お盆やら何周忌やら定期的な式典の場を設けるため、墓石や線香類、あの謎の菓子もどきなどの商品を取り扱うための詭弁なんじゃなかろうか。

でも幽霊の話自体は昔からあるよな。確か仏教に儒教的な考えが取り込まれたっていうのが江戸末期、幽霊談やら幽霊画やらは平安時代からあったような気がする。

歴史の話は自信無いから止めよう。専門家じゃないとわからんし専門家でも必ずしもわからん。

三魂七魄の話は個人的に納得した記憶があるな。今ちょっと調べたらこれは道教らしいけど。

魂魄この世に留まりて悪行を成す。だったかな?

一般にイメージされる魂というのは実は3種1セットの代物で、死ぬと天魂人魂地魂の3つに分離する。天魂は天に、人魂は人の世に、地魂は大地に帰る。

魄は肉体。というか身体を司る気の塊みたいなもん。

これを幽霊やら何やらに当てはめると、天って言うのがいわゆるあの世。天国とか彼岸とか言われてるので、年1で帰ってきたり呼ばれたら降りてきたりする。

人魂はこの世に留まり、墓に居たり背後に居たりする。地魂は地獄とか輪廻転生とかかな。

うーん?天国とか地獄とかの概念がわからんな。よく考えたらこれも仏教的な考えに反してね?でも地獄絵みたいなのはあるよな?

天国はキリスト教か。極楽浄土、解脱したら行くんだっけ?地獄にはなんで行くんだ?悪いことしたら畜生道とか餓鬼道に落ちるんじゃなかったっけ?

魄しか残らなかったのがキョンシーらしい。魂だけだと人魂(ヒトダマ)みたいになり、幽霊っていうビジュアルのものは一魂3~6魄くらいかな。

納得できるようなできないような。宗教的観点、民俗的観点って分けて考えるとわかるんだけど、まとめると矛盾が生じてる気がする。

イタコさんはどの魂を降ろしてるんだ?イタコさんって仏教的な尼さんとかじゃなくて民間信仰のシャーマンだよな。宗教的にはまた独立したものなのか。

北海道のアイヌや沖縄のユタも魂云々では一家言あったよな。日本の概念ってなんか時々ガバガバ過ぎてわけわからんくなるな。

大陸から渡ってきた考え方と日本独自の考え方が組み合わさってまた別の考え方が生まれ、そこに西欧からの考え方も参戦してきてもうしっちゃかめっちゃかだ。

ダメだこれもうわからん。何の話してたのかもわからんくなってきた。

誰か解明してくれ(他力本願)。


3.不毛な応酬

ガラガラガラー(玄関を開ける音)。

「すいませーん。」

バチィーン(平手打ちの音)。

「謝るくらいなら最初からするんじゃねぇ(怒)‼」

「え…?ああ、すいません…あっ!」

「謝るくらいなら最初から(以下略

後日。

ガラガラガラー(玄関を開ける音)。

「ごめんくださーい。」

「はぁい何でしょう。」

「ごめんくださーい。」

「…何ですか?」

バキッ(グーで殴る音)。

「ごめんをくださいっつってんだろ!謝罪を要求してんだよこっちは(怒)!」

「上等だこの野郎!ぶっ殺してやる!」

ドカッバキッグシャッ(殴り合う音)。


【解説】

なんだこれ。

ふと思いついた奴ですが、意味わからん過ぎる。

シュールな笑いが生まれるか、困惑によるシラケた空気が生まれるか。

場面転換代わりに合間にスッと突っ込んでおきます。

こういうのたまに頭から離れなくなるけど扱いに困る。


4.横行する不正

部室にて言い争う少女たち。

集めた部費が盗まれ、探索の末一人の少女の鞄から発見される。

彼女は犯行を自白。金に困っているわけではないけれど小さい頃から盗み癖があるのだと言う。

涙ながらに謝罪を述べる彼女を前に、皆は彼女を許そうとする。一人を除いて。

その一人は盗難行為があったのは事実なのだから先生に報告すべきだと進言する。

大事にしたくない皆と筋を通したい彼女。

次第に盗人の少女対それ以外の図式から、警察気取りの少女対それ以外の図式へと対立構造は変化していく。

あくまで道理を貫くべきと主張する彼女に対し、他の皆は苛立ちを募らせていく。

前から態度が気に食わなかった。偉そう。優等生的な感じが鼻につく。

口々に彼女に悪口を浴びせ、彼女たちは連れ立って部室を後にする。

何も悪いことはしていないはずの彼女。

良いことをしているはずの彼女。

そんな彼女は一人取り残され、いつまでも佇み続けるのでした。


【解説】

ちょっとは空気読もうよ。

かなり初期の頃に考えた奴。昔書いたのはこういうの多いよね。

私もこういうことやっちゃうタイプの人間なので、なぜ孤立するのかってのを自覚しちゃうと辛いっすね。

不正と言い切ってしまえばそれまでなんですけど、やっぱり人と人との付き合いってそういうもんですし。

許しちゃいけないもんもありますが、その基準を決めるのは自分ではなく自分が所属している集団だってのは弁えないとですね。

それが気に入らないなら集団から抜ければいいだけですしね。

大した量もない割に登場キャラが多く、出番を回しやすいのがお得。


5.命に値段をつけて

誘拐された少女。

犯人の男は彼女の家に電話をかける。

身代金の交渉をするためだ。

電話に出た母親は最初こそ取り乱した様子だったが、すぐに交渉に応じる。

犯人は身代金として1000万を提示する。

深く考えて出した数字ではない。

旦那の年収がそれくらいだと調べがついていたからだ。

母親はこう答えた。

「高すぎる」と。

犯人は虚を突かれた思いだった。こういう場合、親は提示された額を何とか工面しようとするものではないのか。

まさか一蹴されるとは考えていなかった。

男は問う。

高すぎるということはないのではないか。

母親もパートで働きに出ているのだから、世帯年収は1000万以上はあるだろう。子どもの年齢を考えれば貯蓄も十分にあるのではないか。

母親の答えはこうだ。

確かに1000万を支払う能力はある。だがその1000万は余剰金ではない。

男にはよくわからない。

つまりその金は子供を育てるためのお金であり、その金を渡してしまったら子供を返してもらっても育てられないということらしい。

なるほど。では幾らなら渡してもいいのか。

再度男は問う。

ウチに渡していいお金なんかない。

母親の返答は至極当然なものだった。だがそれでは男も引き下がれない。

その金は今すぐ必要なものではないだろう。渡してしまっても後から都合をつければいいだけではないか。

母親はため息をつく。

今後数年の収入を加味した上での育成費用だと。

サラリーマンやパートの収入など頑張ったところで大きくは変動しない。

後から巻き返すことは困難だと。

男は困ってしまう。

この家は本当にお金がないのかもしれない。

金持ちだと思ったから狙ったのだ。生活が破綻するのなら止めておく。

待てよ。男は思い留まった。

年収が1000万円で子供が一人で生活がギリギリなんてことあるか。

だったら他の家庭はいったいどうなるというのか。

贅沢をしているからお金が足りないなどとのたまうのだ。

男は騙されたような気分になってそのことを問いただした。

その育成費用とやらには塾や習い事の費用も含まれているのではないか。

食費や交際費にだって見直せる部分があるのではないか。

まさか私立の学校に通わせる気じゃないだろうな。

不信は絶えない。

母親はそのすべての問いに対して、悪びれもせずに肯定した。

男は呆れる思いだった。

そんな贅沢をしておいて金が無いなどとよく言えたものだ。

勉強は学校の先生に聞くなり図書館で自習すればいい。

祝い事の日はファミレス、旅行は数年に1回。

学校は公立でいいし別に高卒でいい。

男は諭すように、小馬鹿にするように語った。

母親は冷たい声で言い放った。

「足りない」と。

それでも生活していくことはできるだろう。

でもそれで私たちにどんな見返りがある。

わざわざ子供を産んで、育てるメリットがどこにあるというのだ。

男にとってそれは初めて触れる考え方だった。

母親は語る。

私は娘に期待している。

具体的に言うと投じたリソース以上のリターンを生み出すことを求めている。

今の私たちの階級より上の階級へと進んでくれることを。

上?

男にとって彼女の家は上流階級だ。上を望む必要がどこにあるというのか。

ウチなんてまだまだよ。母親は吐き捨てる。

階級とはつまり、社会的地位や収入のことであった。

基本的に子の階級が親の階級を上回ることはない。

順当にいけば同じに、漫然と過ごせば少し下に。

上に行くためには無理をしなければならない。それは幼少期からずっと。

当たり前のように贅沢ができる階級に行くためには、子供の頃から当たり前のように贅沢をしておかなければならない。

同じ経験をしてこなかったら同じ階級には成れないだろう。

母親は熱弁する。

男には難しいことはわからない。

でもこれまでの人生でそういう暮らしをしている人と喋ったことはないなと思った。

それだけ階級的な隔たりがあるということなのかもしれない。

でもそれはそれだ。

男だって一生物の危険を冒しているのだ。

それだけ気を回しているのなら当然事故や病気になった際の貯えもあるはずだ。

それを俺に回せ。

娘が帰らなければ計画はパーだ。交渉は男に有利である。

母親もそのことはわかっているのだろう。

「1000万は出せません…」弱々しく呟く。

消費者金融に行くなり奨学金を借りるなり金を工面する方法はあるだろう。

それにこう言っては何だが俺が捕まったら払った金は全部返ってくる。

男は甘く囁く。もう一押しだ。

「そんな大金払うくらいなら返してくれなくて結構です!」

「じゃあ殺して埋めるかぁ?」

激昂した母親に冷たく告げる。もちろんブラフだ。

「…500万なら。」

「おいおいいきなり半額かよ。」

「…600万。」

「もう一声。」

「650。」

「…いいだろう。」

少し低いが妥協点だろう。あまりこの少女に負担を強いるのも心苦しい。

「お前も大変だな!」

男は傍らの少女に明るく声をかける。

彼女は口を真一文字に結んで、じっと何かに耐えているようだった。


後日。無事に親元に帰ってきた少女。

母親は泣きながら彼女を抱きしめる。

「…ごめんね。お金。」

「いいのよ。お母さんはあなたが無事なだけで。」

微笑む母につられ娘も微笑む。

その笑みはどこか悲しげなものだった。


【解説】

長いんだよ(怒)!

メモ的なもんだから別にいいんだけど形式をどうするかが割と謎。

小説的にするかプロット的にするか。これはちょっと半端だったね。

まぁいいや。

現実離れした風刺的な物にするつもりだったけど、文字に起こしてみるとやり取りを娘に聞かれていることを知らずに口が滑ったように捉えられなくもない。

まぁにしてもって気はするけど。

あなたが元気に暮らしてるだけでいいからとか言って、ホントに元気に暮らしてるだけでいいと思ってる親はそういない。

実際は「だけ」の中にたくさん要望が詰まってる。

そのことに無自覚な人も多いのが何ともね。生きづれぇわ。

エンディングの入り方どんな感じにするか考えないとだね。

いつもついつい使い回しちゃうから。



12月24日。今日クリスマスか。

休日がクリスマスになるから恋人がいる人だとはしゃいだりするのかね。

今日明日バイト入ってるし、明日は研究室の水やりもあるし。

休みたがる人が多かったのかなぁ。

イベント事だからと言って特に予定もないのは私みたいな人間の強みですよね。

いつかは私も予定がある側に…なるわけないか。

「かわいそうな子ずんだもん」出してからまだ何にも手をつけてない。

忙しいってのもありますが、ぶっちゃけデュエプレしてました。

リュウセイホール4枚生成して私もNエクスマスターズに参戦ですよ。

メチャクチャやられる側からメチャクチャやる側に回ると楽しい。

次は小ネタ集作るか、久々に振り返り動画作るか。

まだ当分はダラダラやってます。

Youtube伸ばすのは諦めました。とりあえず今のところは。

お前は私生活どうにかしろよって話ですし。

そんなこんなでもう2時だし寝ます。

長文駄文失礼しました。


2022年12月2日金曜日

歯が汚い

育ちの悪さはどこに現れると思う?

歯だよ。

てことでちょっとした駄弁です。

最近Fさんのシリーズ物で歯の話が出てきて気になったので書いときます。

「臭かったY君」だったかでも似たようなこと言ってたかな?

歯列矯正やホワイトニングの有無によって、家庭の経済状況や親の教育的関心の程度が知れるといった話ですね。

まぁ確かに遠い記憶の中、小中学校辺りで歯がやたら汚い人がいた気もします。

言われてみると「歯」という物は中々奥深いものがありますね。

最初から綺麗な人、汚い人いますが、そこからどう変わるかですよね。

見た目が及ぼす印象の重要さを理解している親、あるいは単に見栄えを意識する親ならばそこに対して何らかの介入を行う。

汚い歯が手つかずであるならば、その人自身も親から手つかずであったということが窺い知れるわけです。

私の歯は汚いです。

全くの手つかずというわけではありません。

私は小学生の頃は歯列矯正を行っており、かつては綺麗なもんでした。

だけど生え変わってきたきた私の永久歯は全体的に黄ばんでおり、ところどころに白や茶色の変色が見られるという中々の逸品でしてね。

歯並びこそ整えられたものの歯を見せて笑えば汚れがついていると指摘されるような状態です。

なぜ歯列矯正は行われホワイトニングは行われなかったのか。

時期的なものだったのか経済的なものだったのかは知りません。

私は特に気にすることは無く、親もそのような話をすることはありませんでした。

私が笑うことはおろか口を開くことすら無くなったからかもしれませんね。

母は私のために何かしたという実績が欲しかった。

歯並びだけ綺麗にしても歯自体が汚いままでは印象という面では何も利点がない。

彼女はそこまで思い至らなかった。

私の歯は生まれた時から汚かった。

母の介入など無意味になるほど汚かった。

私にとって私の汚い歯はどうにもならなかった物の象徴なのかもしれません。

母は狂っているのだろうか。

最近の私の悩みの種です。

私はまだ就職活動を続けています。まだいけそうなので。

院試の2次募集は捨てました。

母は泣きました。

どうしても理解できない。母という人間が。

彼女はいったい私をどうしたいのだろう。

両親が私の状態を把握しているのか、把握していたのかというのは未だに確証が持てない。

父は目を背けてるだけ、母は何も覚えていない。それがこれまでの認識だった。

わからない。わからなくなってきた。

高校生の頃だったろうか。

「小さい頃はよく笑う子だったのに、なんで笑わなくなっちゃったんだろうね?」

私に面と向かってそう言ってきた時、母はもうとっくに狂ってしまっているのではないかと思った。

その反動で逆に父親の方はまだ話が通じると思い込んでしまった。いやそう思いたかったのかもしれない。

父も一度話をしに戻って来いと言っていた。

父も狂っているのだろうか。

この状況で帰省して何の利がある。就活もいよいよラストチャンス、大学生活もラストスパートだ。

ここを乗り切れるかが世間体を守れるかどうかの瀬戸際だろうが。

ずっと世間体を守るために頑張って来たじゃないか。何一つ心を通わすことは無いが心は一つだったはずだ。

もしかしたらあの人たちは本気で自分たちのことを良き理解者、支援者だと思っているんじゃないか。

だとしたらどうかしてると思う。

曖昧なまま離れて行けば曖昧なまま手放すもんだと思ってた。

9月に帰った時は何も言わなかった。兄も居たしそんな空気じゃなかったから。

何も言わなければ何も察することはできないか?

私だってバカじゃない。

子供二人育てるだけで大変なんだ。自閉症のガキの相手なんてしてられないのはわかる。

教育費用も文化資本も潤沢にあった。だからこそ自力で言語能力も適合させられた。

私はバカじゃない。

叩かれ罵られ、無視され悪態を吐かれるような家庭でなければ私が塞ぎ込むこともなかったなんてことは言わない。

適切なサポートを受けられていれば孤立することもなく、今とは別の人生があったかもしれないなんて言わない。

言いたくないんだ。言わせないでくれ。

曖昧なままにしておけば年に1、2回愛想笑いするくらい我慢してやるから。

お願いだから少しくらいは私の苦しみを酌んでくれ。



筆始め

いつも帰省中は色々ブログを書き進めてましたが今年は何にも書いてません。なので筆始めです。 昔のカードを引っ張り出して遊んでました。あと普通にダラダラしてた。 そのまま休み気分を引きずってモチベが上がりませんでしたが一応動画を一本作れました。日常系小ネタ集ていう5分くらいの軽いギャ...