しばらく忙しくて5分未満の動画くらいしか作れなそう。
てことでそれ用のネタを何個かまとめておきます。
小ネタ集にするか短編単発にするかは未定。
①ただの友達じゃない
「ごめん、待った?」
彼女が息を切らせながら駆け寄ってくる。
私は首を振り、彼女に微笑みかける。
「ううん、僕も今来たところ。」
「いつも待たせちゃってごめんね。」
「いいよ。僕が呼んだんだから。」
彼女が息を整える様子を見つめながら、呟く。
「その服、似合ってるね。」
「ありがと。今日のために新しく買ったの。」
彼女がいたずらっぽく微笑む。
彼女と並んで街を歩く。
最近寒さが厳しくなってきたこと。駅前の書店が無くなってしまうこと。
他愛ない話が弾む。
こんな風に話せる相手は彼女だけだ。
そっと彼女の右手に私の左手を伸ばす。
触れてもいいのだろうか。わからない。
「お、デートか?」
不意に声をかけられ手を引っ込める。
私は恐る恐る声の主へと顔を向ける。
ニヤニヤと笑う顔。見覚えがある。
確か大学のゼミで一緒の…
「お前も隅に置けないな!」
快活に笑う男、名前は思い出せないが私も笑みを返す。
「ただの友達だよ。」
「ホントにか~?」
「ホントだって。」
少し焦りながら彼女の方に目をやる。
困ったような笑みを浮かべているが嫌そうな感じは見えない。
私はホッと一息ついてそいつを追い払った。
「はいはい邪魔者は消えますよ。」
男は首をすくめて去っていく。
知り合いに会うのは初めてだった。
今後はもっと遠くの場所に行くようにしよう。
そう心に決めた。
映画館。隣の席に座ってスクリーンを眺める。
古典的なデートプラン。
長い時間を喋らずに過ごせる利点にどうしても頼ってしまう。
チラリと彼女を覗き見る。
彼女の目は真剣にスクリーンを見つめている。
私は浮ついた自身の心持ちを恥じ、視線を正面に戻した。
その時、私の左手にそっと彼女の右手が重ねられた。
温かい感触に驚いて彼女を見る。
彼女は変わらずスクリーンをまっすぐ見つめている。
その目がどこか熱っぽく潤んでいるように感じたのは私の願望だろうか。
映画館を出ると辺りはもう薄暗くなっていた。
冷たい風が火照った体にちょうどいい。
楽しげに映画の感想を語っていた彼女が足と口を止める。
「そろそろ時間だね。」
名残惜しそうなその笑顔に胸の奥がざわめく。
「次はいつ会えるかな。」
「…2週間後くらいなら。」
「私、待ってるからね。」
彼女はぺこりとお辞儀すると、駅に向かって歩き出した。
私は彼女を追いたい気持ちを押し込め、寒空の下で立ち尽くしていた。
風が冷たい。
アパートに着いた時にはすっかり夜だった。
ベッドに飛び込み、天井を睨む。
彼女ともっと深い関係になりたい。友達なんかよりももっと。
どうすれば彼女との仲を深められるのだろうか。
…仲を深めたいと思ってもいいのだろうか。
スマートフォンの電源をつけ、画面に映る彼女の笑顔を見つめる。
予約画面に移るが、支払い残高が足りない。
彼女はタダの友達ではないのだ。
【解説】
無料と書いてタダと読む。了。
レンタル友達サービスのお話でしたね。ご利用は計画的に。
レンタル彼女なんて代物が実際にあるらしいですね。現実の方が生々しいな。
とりあえず形にはできましたがまだまだ想像が膨らむ余地がありますね。
最初は軽い気持ちで友達をレンタル。だけどやって来たのは女の子。緊張というか疑いというかそんな感情を募らせながらも共に過ごすうちに、いつしか友情を通り越して恋情が。
女の方はどうでしょう。男をたらし込んで金を搾り取る悪女か。仕事だってことを忘れて本気になっちゃう純情ガールか。
その辺りをはっきりさせるのは野暮ってもんですね。
デートの描写が思いつかねぇし小っ恥ずかしいですわ。
②瓶詰の楽園
真っ暗い路地での出来事だった。
深夜までの残業にはすっかり慣れたが、終電を逃したのは初めてだった。
もはや疲れたとも休みたいとも思わない。
ただ機械的に家へと歩く。
「…もし。」
誰かに呼び止められた気がして足を止める。
「もし、そこのお方。」
声の主は皺くちゃの老人だった。
薄汚れてみすぼらしい。ホームレスだろうか。
「ああやっと誰かに気づいてもらえた。年のせいかあんまり大きな声が出ないもんで。」
声量の問題ではないだろう。こういう時多くの人間は無視することを選ぶ。
「一つお願いがあるんだが聞いてはもらえんか。」
老人が縋るような目つきでこちらを見上げる。わずかな逡巡の末、頷く。
老い先短い人間の頼みを無下にするほど腐ってはいない。
「ありがとう。ありがとう。」
大げさに頭を下げて喜ぶ老人を見つめる。何かを探せばいいのか、どこかに連れて行けばいいのか。
老人の頼みは意外なものだった。
「お願いって言うのはな、これを貰って欲しいんだ。」
差し出された手の上には一つの瓶が乗せられていた。
ジャムを入れるような小さな瓶。暗くて中身は見えない。
「儂の最高傑作だ。これを閉じ込めるのにどれほどかかったか。」
得体の知れないその瓶に私は気圧される。中身はいったい何だろう。
老人はにっこりとこちらを見つめている。
私は恐る恐るそれを手に取り、眺める。
まだよく見えない。
「どうぞご覧になってください。」
老人が街灯を指さす。
私はそちらに歩み寄り、明かりに向かってそれを掲げた。
少しくすんだガラス越し、瓶の中をじっと見つめる。
青々とした草木が広がり、色鮮やかな鳥や蝶が舞い踊っている。
美しいと感じた。
ミニチュアだろうか。だけどこれはあまりに精巧で、生き生きとし過ぎている。
「これはどうやって…」
振り返った先にもう老人はいなかった。
それから私はその瓶を眺めるのに病みつきになった。
どうやって作ったのか、中はどうなっているのか。興味は尽きなかった。
毎日夜遅くまで仕事に出るのが億劫になった。一日中瓶を眺めていたかった。
いつしか私の頭の中をある考えが支配するようになった。
瓶の中に行きたい。
私はその固く閉ざされた蓋を開けた。
気づけば私は草原に立っていた。
青々とした草木が広がり、色鮮やかな鳥や蝶が舞い踊っている。
見上げると澄み渡るような青空が広がっていた。
私は楽園に辿り着いたのだ。
…おかしい。
最近草や木に元気がない。動かなくなってしまった鳥や蝶もいる。
空には厚い雲が広がり、空気も息苦しい。
いや…息苦しいというよりもこれは…
臭う。
閉め切った部屋の中、肉が腐った臭いが立ち込める。
腐乱した指が瓶から離れ、ベットリと黒い跡を残す。
開け放たれた瓶の口へと澱んだ空気が流れ込んでいく。
瓶詰の楽園は緩やかに朽ちていった。
【解説】
私にしちゃ珍しい傾向の話ですね。こういうのなんて言うんだっけ。幻想文学?
瓶詰めの食品って一回開けたら急激に悪くなっちゃうよねってことから考えました。
蓋を開けたことで魂は瓶の中に。外の身体は抜け殻だから蓋を閉められない。
体は腐敗を始め、澱んだ空気は開け放たれた瓶の中へ…て奴。
老人は誰なのかとか、瓶は何なのかとか、なんで男は瓶の中に行けたのかとか。論理的な説明は一切なし。
ぶっちゃけこういうタイプの話は好みじゃない。でも思いついたからには書いとく。
老人も瓶も素材がねぇから動画にしにくい。
以上2つ。いつもはこの形式だと3つやるけど結構長めだからまぁいいでしょう。
まだ形にしてないネタが何個かあるのでしばらくブログに色々書いてます。
追加のボイスロイドも買うか考え中ですね。水奈瀬コウ、京町セイカ、月読アイの3人。
コウ先生は役柄的に使い勝手が良さそう。男だからあんまり出したくないけど。
この前上げた「補講」って言う短編に使いたい。題名「旅立ちの日に」に変えようかと思ってるんだけどどう?
セイカさんも唯一無二。SF系の話に使いやすそう。未来から来たセールスマンの役とかできるかな。
アイちゃん先輩はまだ話が思いつかない。ここまで幼いと使いづらいよね。でもかれい先生の立ち絵があるというアドバンテージがデカい。
3人とも旧式だから合わせても3万行かないのはお財布に優しいですよね。いや別に優しくは無いか一月分の食費くらいだし。
これまでの活動でYoutubeから17万、ニコニコから1700円手に入れてる。ボイロで儲けた金はボイロに使うぞ。
そんなことよりてめぇは就職活動しろよって気もしますが、今は耳を塞いでおきます。いややってはいるよ、やってはいるんだよ一応。
そんなこんなで今日はおしまいさっさと寝ます。
長文駄文失礼しました。
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