2026年5月8日金曜日

幻の生徒会選挙編エピローグ

あまり時間を意識していなかったのでこれぐらいに調整。およそ一月の出来事。


第一週

月:学校新聞第一報(ゴシップ記事)

火:ゆかりが反ずん子派の集会を開く

水~金:千冬の依頼を受け、モカが集会に潜入

第二週

月:ギャラ子の存在をモカとかのんが認知

火:かのんがゆかり、ギャラ子と会合

水:かのんが六花、ずん子に取材

木:学校新聞第二報(各候補者紹介)

金:かのんが六花を集会に連れて来る

第三週

月~金:反ずん子派が六花派に傾く。金曜にかのんがずん子を取材

第四週

月:学校新聞第三報(集会への意見表明)、ゆかり、ギャラ子らが脱退

火~金:集会が過激化し、金曜にモカが脱退

土:集会で暴動が起こり負傷者が出る

第五週

月:候補者演説および投票日


ずん子と六花の対決ではあるが群像劇でもある。

なんとか下書きは書けたが手直しが必要なところは多い。

・花梨、りりせの引退組。関わっては来ないが描写は合間合間に挟みたい。

・あかり、フィーちゃんの副将組。実際作ってみれば会話が増えるだろうが、現状では出番が少ない。

・マキは選挙終了後、これまでのいざこざを全部よくわかっていなかったことが判明する。こういう層もいることを六花にとっての気づきとして残したいが、タイミングが掴めない。


本題のエピローグ。




「なぜ呼ばれたかわかっていますね。」

「いや、全く見当もつきません。」

結月ゆかりは心底不思議そうに答える。

担任教師であり、演劇部顧問でもある桜乃そらは溜め息をつく。わかっていないはずがないのに必ずそう言うと思っていた。


「六花さんの集会、始めたのはあなた達だったことはわかっています。」

ゆかりが音頭を取っていたのだからゆかりが首謀者なことは知れている。敢えて「達」とつけたのはギャラ子のことも把握しているからだ。

「あんなことになるとは思いませんでした。私が抜けた後ですが、ご迷惑をかけたようで申し訳ありません。」

「短い付き合いではありません。もう少し腹を割って話しませんか。あなたの責任は追及できないことは理解しています。」

ゆかりから事情を聞くのはあくまで経緯を確認するためだ。問題が起こった時には既に離脱していた元幹部陣は咎められない。


「あなた達はやめようと言ったが聞く耳を持たなかった。矛先が自分達に向いたら危険だったから縁を切った。そうでしょう?」

「仰る通りです。」

実態はもう少し違うのだろうが、地震の前に逃げ出す鼠のようなものだったのは想像がつく。


「元々はなぜあんな集会を始めたんですか?」

「選挙への関心を高めるためです。」

ゆかりの答えにそらは驚く。東北ずん子にちょっかいをかけるためではなかったのか。

「無関心な層にあくまでエンタメとして売り込むことで候補者たちに目を向けるきっかけをつくろうとしました。ずん子さんのことも六花さんのこともよく知らないまま、なんとなくで投票先を決められてしまうと思って。」

曇りの無い目でゆかりは話す。嘘かもしれないが、ゆかりはどこか理想主義なところがある。本気で生徒たちに選挙に真剣に取り組ませたかったのかもしれない。


「3年のギャラ子先輩、1年のあかりの協力もあってそれなりの人数を集めることができました。大半の構成員はずん子さんが気に入らないってだけの人たちでしたが。」

「それで選挙への関心を喚起できると?」

「はい。おふざけではあっても自動的にずん子さんとその対立候補の六花さんの一挙手一投足に目を向けることになります。集会を面白がっている人たちも集会に眉をひそめている人たちも。」

「…確かに一理あります。それではあなたはずん子さんを敵視しているわけでも六花さんを応援しているわけでもなかったんですね。」

ゆかりは人に理解されないことを全く厭わないタイプだ。あの頃ゆかりの奇行に同調する者はほとんどいなかったが、それでも多くの生徒たちが目を向けていた。


「ずん子さんが気に入らないって気持ちも六花さんに健闘してほしいって気持ちもありました。ただしそういう感情だけで動いていたわけではありません。どちらかに肩入れするつもりはありませんでした。」

「けれど実際には六花さんと合流したのでしょう。」

「六花さんが入ってきたからです。私は彼女を止めも助けもしませんでした。仮にずん子さんが入ってきたとしてもそうだったでしょう。あくまで関心を向けさせたかっただけで、どちらを支持するかは当然生徒たちの自由です。」

「あなたはその時から集会が過激化する可能性を見越していたんじゃないですか?」

聞かずともわかっている。ゆかりは知った上で放置した。そういう奴だ。


「もちろんです。集団を維持する上でもっとも警戒すべきは内部崩壊ですので。だからこそ私たちは集会に参加するメンバーが増え過ぎないように調整していました。適度に白けさせたり、呆れさせたりしてコントロールしていたんです。」

「どうして六花さんにそのことを伝えなかったんですか?」

伝えたけれど聞いていなかった、忘れてしまったのならいい。それも仕方ないだろう。

「逆にどうして伝えないといけないんですか?」

ゆかりは悪びれもせずそう言った。




六花が合流後、急速に人数が増えすぎている。50人規模から100人規模へ。

六花が入っただけでそこまで増えるはずがない。となれば元々それだけの人が集まる力があったのを、ゆかり達が抑えていたのだ。

彼女たちがストッパーとしての役目を放棄したのは、集会が過激化するきっかけとなった学校新聞が出るもっと前だ。

「あなたが一声かけているだけで結果は変わったかもしれません。」

「そうかもしれませんね。」

「…六花さんはクラスメートでしょう。」

選挙への関心を高めるために集会をつくったのは責められることではない。だが破綻に向かっていることを認識した上で、警告すらしなかったのはあまりに無責任だ。

六花への悪意を疑われても仕方がないほどに。


「ですがその前に有権者と候補者です。私は生徒たちに東北ずん子と小春六花という二人の人物に目を向けるよう促しましたが、私自身も彼女たちを見ていたんです。リーダーとしてどちらがふさわしいかを。」

ゆかりは一切動じることなく釈明する。

「私とギャラ子先輩が六花さんの下で役割を果たしていれば、今回のような結果にはならなかったでしょう。ですがそれは不公平ではありませんか。私たちの力で六花さんを勝たせたとて、私たちは生徒会長となった六花さんを支えるわけでもないのに。」

ゆかりの言うことはもっともだ。候補者を応援するのはいいが、本人にできないことまで代わりにやってしまったら傀儡政権になってしまう。

前会長の花梨が身を引いたのだってそのためだ。六花とて花梨にはそうするように促しておいてゆかりやギャラ子にそうしてほしかったとは言わないだろう。

「六花さんは自分で気づくべきだった。今回対処できなかったということは、もっと重大な場面で集団を率いる時も同様に対処できなかったという証明です。だからこそ振り回された被害者だと同情されつつも投票されることはなかったんです。」

だがしかし…


「そんなことはできないでしょう。リーダーになる人だって万能ではありません。周りの人たちが支えないといけないんです。一人に責任を求めるのは生贄を選んでいるようなものです。」

そらは言いながら自分でもわかっていた。これは大人の事情だ。

同じ働きしかできず同じ責任しか負わないならそれはもうリーダーでも何でもない。あなたにそこまで求めないから私にもそこまで求めないでくれという取り決めに過ぎない。

「…私だってそう思いますよ。できるわけないって。」

そんな内心はゆかりも承知の上のようで、反発することは無い。


「けれど私は知っています。できると言う者を。東北ずん子です。彼女ができると言っている以上、対立候補である小春六花にも相応の覚悟を持ってもらわないといけません。」

ずん子が書いた「人は蟻のようなものだ」という文章を思い出す。ゆかりはずん子がああいう主義思想であることを知っていたのだろう。

「六花さんも同じことを思っていたでしょう?完全に取り返しがつかなくなってからようやく思い出したようですが。」

「本気で人を導きたいのならそれしかないとは私だって思います。ですがその上で言います。そんなことはできないと。できなくて仕方がないと。」

「私に言われた言葉ならその通りだと賛同するでしょう。けれどできないことをやると言っている者にできなくて仕方がないなんて言葉は侮辱でしかない。」

ゆかりはピシャリと言い放つ。

ゆかりは芯のある生徒だ。他人に言われて何かが変わるような人間ではないし、今はそういう場面でもない。


「お話を聞かせていただきありがとうございました。六花さんの話とも矛盾ありません。やはり全て六花さんの責任なのでしょう。」

「…六花さんは停学ですか?」

「お説教と反省文の提出で済ませました。六花さんは一応は止めようとした立場ですから。」

「お力添えをいただけたようで。」

「私だけの力ではありません。我々教師だって六花さんたちが真剣だったことはわかっています。熱くなること自体はけして悪いことではありませんから。」


二人は教室の扉を開け、外に出る。

「ゆかりさんはこれから部活へ?」

「ええ、ずいぶんサボってしまいましたので。」

「そうですか。茜さんも責任を感じてしまっているようなので元気づけておいてください。」

「わかりました。」

歩き出そうとしたゆかりの足が止まる。振り向いたゆかりはそらに問いかけた。

「これで終わりだと思いますか?」

「…え、なんですか急に。」

「だって生徒会長がずん子さん、副会長が六花さんになるんでしょう。いずれまた一波乱起こることになるんじゃ。」

「不安になるようなこと言わないでください…」

そらは苦虫を噛み潰したような顔をする。なんとか丸く収まったが受け持っているクラスから校長室送りになる生徒を出したのは違いない。


生徒会新体制はまだ始まったばかり。

これから1年間、ゆかり達の通う高校は激動の時代を迎える。



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