2026年5月29日金曜日

時々出るモブ

別に視聴者が覚える必要は無いが、一応私は覚えておいた方がいいかもしれない。

今この場で適当に名前を決めておいた。


・カンザキ

COEIROINK:青葉

公立高校3年生。

これまで所属する部活から付き合う友人、毎日の自由時間の使い方まで決められていたにも関わらず、進路を決める土壇場で放り出された人。

自分では先のことを決められずに途方に暮れていたところを結月ゆかりに絡め取られる。過干渉な母親と無関心な父親という典型的なパターンを共有するため、彼女への信頼は厚い。

登場:「フィーちゃんがやってきたぞ」「生徒会選挙編」


・サイトウ

COEIROINK:朱花

公立高校3年生。

部活動引退後、自分の居場所を失ったような不安感に駆られる。大学受験への学力面での心配や、部活仲間と離れることで孤独になっていく恐れを抱いていた。

そんな心の隙をゆかりに絡め取られる。ゆかりに共感したり心酔したりしているわけではないが、新たな居場所には安心感を覚えている。

登場:「フィーちゃんがやってきたぞ」「生徒会選挙編」


・タカハシ

COEIROINK:松嘩りすく(アナウンス)

公立高校2年生。

私立高校の教師として登場した本家松嘩りすくは話声・高め。こちらはアナウンスで少しぼそぼそと話す。

部活にも委員会にも入っておらず、勉強も運動も得意ではなく、友達も恋人もいないパッとしない人物。ゆかりが孤立してそうな人を集めていた時にその中の一人として入る。

その他大勢を集めた集団の中でも更にその他大勢だったため内心は燻っていた。生徒会選挙編ではゆかりの元を離れ六花派につき貧乏くじを引いた。

登場:「フィーちゃんがやってきたぞ」「生徒会選挙編」


・ナカムラ

COEIROINK:花撫シア(おだやか)

公立高校2年生。

茶道部所属。対人関係への不安と自信の無さからゆかりに絡め取られる。

男子や大人、大勢の人を前にしても物怖じせず堂々と話せるゆかりに憧れている。話の内容にはあまりついていけないことが多い。

生徒会選挙編ではゆかりに従ってカンザキ、サイトウらと共に集会を抜けたことで被害を免れる。タカハシとは対比となる結果。

登場:「フィーちゃんがやってきたぞ」「生徒会選挙編」


・イトウ

COEIROINK:白痴ー(煽声)

私立高校1年生。素材POMPACK様の着せ替え立ち絵素材。

伊織、花丸のせいでどうにかなっちゃいそうな人。

登場:「ジェンダーリスクマネージメント」


・キタガワ

COEIROINK:船音ユナ

私立高校1年生。素材POMPACK様の着せ替え立ち絵素材。

伊織、花丸のせいでどうにかなっちゃいそうな人。

登場:「ジェンダーリスクマネージメント」


・アツシ

VOICEPEAK:男の子

小学5年生。NUMU広報部様の子供E。

活発だが粗雑な男子。去年きりたんと同じクラスだった。

「青春と七不思議」で「首無しさん」と出会った子供でもある。

登場:「31人目の子供の霊」


・カエデ

VOICEPEAK:女の子

小学5年生。NUMU広報部様の子供A。

活発だが思い込みの激しい女子。去年しゅおと同じクラスだった。

登場:「31人目の子供の霊」


・サクラ

VOICEVOX:春歌ナナ

小学5年生。NUMU広報部様の子供B。

こだわりの強い女子。声は変えるかもしれない。

登場:「31人目の子供の霊」


・タイチ
VOICEVOX:白上虎太郎

小学5年生。NUMU広報部様の子供C。

ちょっと斜に構えた男子。声は変えるかもしれない。

登場:「31人目の子供の霊」


・ナオト

小学5年生。NUMU広報部様の子供D。

気の弱そうな男子。声はまだ決めてない。

登場:「31人目の子供の霊」



2026年5月8日金曜日

幻の生徒会選挙編エピローグ

あまり時間を意識していなかったのでこれぐらいに調整。およそ一月の出来事。


第一週

月:学校新聞第一報(ゴシップ記事)

火:ゆかりが反ずん子派の集会を開く

水~金:千冬の依頼を受け、モカが集会に潜入

第二週

月:ギャラ子の存在をモカとかのんが認知

火:かのんがゆかり、ギャラ子と会合

水:かのんが六花、ずん子に取材

木:学校新聞第二報(各候補者紹介)

金:かのんが六花を集会に連れて来る

第三週

月~金:反ずん子派が六花派に傾く。金曜にかのんがずん子を取材

第四週

月:学校新聞第三報(集会への意見表明)、ゆかり、ギャラ子らが脱退

火~金:集会が過激化し、金曜にモカが脱退

土:集会で暴動が起こり負傷者が出る

第五週

月:候補者演説および投票日


ずん子と六花の対決ではあるが群像劇でもある。

なんとか下書きは書けたが手直しが必要なところは多い。

・花梨、りりせの引退組。関わっては来ないが描写は合間合間に挟みたい。

・あかり、フィーちゃんの副将組。実際作ってみれば会話が増えるだろうが、現状では出番が少ない。

・マキは選挙終了後、これまでのいざこざを全部よくわかっていなかったことが判明する。こういう層もいることを六花にとっての気づきとして残したいが、タイミングが掴めない。


本題のエピローグ。




「なぜ呼ばれたかわかっていますね。」

「いや、全く見当もつきません。」

結月ゆかりは心底不思議そうに答える。

担任教師であり、演劇部顧問でもある桜乃そらは溜め息をつく。わかっていないはずがないのに必ずそう言うと思っていた。


「六花さんの集会、始めたのはあなた達だったことはわかっています。」

ゆかりが音頭を取っていたのだからゆかりが首謀者なことは知れている。敢えて「達」とつけたのはギャラ子のことも把握しているからだ。

「あんなことになるとは思いませんでした。私が抜けた後ですが、ご迷惑をかけたようで申し訳ありません。」

「短い付き合いではありません。もう少し腹を割って話しませんか。あなたの責任は追及できないことは理解しています。」

ゆかりから事情を聞くのはあくまで経緯を確認するためだ。問題が起こった時には既に離脱していた元幹部陣は咎められない。


「あなた達はやめようと言ったが聞く耳を持たなかった。矛先が自分達に向いたら危険だったから縁を切った。そうでしょう?」

「仰る通りです。」

実態はもう少し違うのだろうが、地震の前に逃げ出す鼠のようなものだったのは想像がつく。


「元々はなぜあんな集会を始めたんですか?」

「選挙への関心を高めるためです。」

ゆかりの答えにそらは驚く。東北ずん子にちょっかいをかけるためではなかったのか。

「無関心な層にあくまでエンタメとして売り込むことで候補者たちに目を向けるきっかけをつくろうとしました。ずん子さんのことも六花さんのこともよく知らないまま、なんとなくで投票先を決められてしまうと思って。」

曇りの無い目でゆかりは話す。嘘かもしれないが、ゆかりはどこか理想主義なところがある。本気で生徒たちに選挙に真剣に取り組ませたかったのかもしれない。


「3年のギャラ子先輩、1年のあかりの協力もあってそれなりの人数を集めることができました。大半の構成員はずん子さんが気に入らないってだけの人たちでしたが。」

「それで選挙への関心を喚起できると?」

「はい。おふざけではあっても自動的にずん子さんとその対立候補の六花さんの一挙手一投足に目を向けることになります。集会を面白がっている人たちも集会に眉をひそめている人たちも。」

「…確かに一理あります。それではあなたはずん子さんを敵視しているわけでも六花さんを応援しているわけでもなかったんですね。」

ゆかりは人に理解されないことを全く厭わないタイプだ。あの頃ゆかりの奇行に同調する者はほとんどいなかったが、それでも多くの生徒たちが目を向けていた。


「ずん子さんが気に入らないって気持ちも六花さんに健闘してほしいって気持ちもありました。ただしそういう感情だけで動いていたわけではありません。どちらかに肩入れするつもりはありませんでした。」

「けれど実際には六花さんと合流したのでしょう。」

「六花さんが入ってきたからです。私は彼女を止めも助けもしませんでした。仮にずん子さんが入ってきたとしてもそうだったでしょう。あくまで関心を向けさせたかっただけで、どちらを支持するかは当然生徒たちの自由です。」

「あなたはその時から集会が過激化する可能性を見越していたんじゃないですか?」

聞かずともわかっている。ゆかりは知った上で放置した。そういう奴だ。


「もちろんです。集団を維持する上でもっとも警戒すべきは内部崩壊ですので。だからこそ私たちは集会に参加するメンバーが増え過ぎないように調整していました。適度に白けさせたり、呆れさせたりしてコントロールしていたんです。」

「どうして六花さんにそのことを伝えなかったんですか?」

伝えたけれど聞いていなかった、忘れてしまったのならいい。それも仕方ないだろう。

「逆にどうして伝えないといけないんですか?」

ゆかりは悪びれもせずそう言った。




六花が合流後、急速に人数が増えすぎている。50人規模から100人規模へ。

六花が入っただけでそこまで増えるはずがない。となれば元々それだけの人が集まる力があったのを、ゆかり達が抑えていたのだ。

彼女たちがストッパーとしての役目を放棄したのは、集会が過激化するきっかけとなった学校新聞が出るもっと前だ。

「あなたが一声かけているだけで結果は変わったかもしれません。」

「そうかもしれませんね。」

「…六花さんはクラスメートでしょう。」

選挙への関心を高めるために集会をつくったのは責められることではない。だが破綻に向かっていることを認識した上で、警告すらしなかったのはあまりに無責任だ。

六花への悪意を疑われても仕方がないほどに。


「ですがその前に有権者と候補者です。私は生徒たちに東北ずん子と小春六花という二人の人物に目を向けるよう促しましたが、私自身も彼女たちを見ていたんです。リーダーとしてどちらがふさわしいかを。」

ゆかりは一切動じることなく釈明する。

「私とギャラ子先輩が六花さんの下で役割を果たしていれば、今回のような結果にはならなかったでしょう。ですがそれは不公平ではありませんか。私たちの力で六花さんを勝たせたとて、私たちは生徒会長となった六花さんを支えるわけでもないのに。」

ゆかりの言うことはもっともだ。候補者を応援するのはいいが、本人にできないことまで代わりにやってしまったら傀儡政権になってしまう。

前会長の花梨が身を引いたのだってそのためだ。六花とて花梨にはそうするように促しておいてゆかりやギャラ子にそうしてほしかったとは言わないだろう。

「六花さんは自分で気づくべきだった。今回対処できなかったということは、もっと重大な場面で集団を率いる時も同様に対処できなかったという証明です。だからこそ振り回された被害者だと同情されつつも投票されることはなかったんです。」

だがしかし…


「そんなことはできないでしょう。リーダーになる人だって万能ではありません。周りの人たちが支えないといけないんです。一人に責任を求めるのは生贄を選んでいるようなものです。」

そらは言いながら自分でもわかっていた。これは大人の事情だ。

同じ働きしかできず同じ責任しか負わないならそれはもうリーダーでも何でもない。あなたにそこまで求めないから私にもそこまで求めないでくれという取り決めに過ぎない。

「…私だってそう思いますよ。できるわけないって。」

そんな内心はゆかりも承知の上のようで、反発することは無い。


「けれど私は知っています。できると言う者を。東北ずん子です。彼女ができると言っている以上、対立候補である小春六花にも相応の覚悟を持ってもらわないといけません。」

ずん子が書いた「人は蟻のようなものだ」という文章を思い出す。ゆかりはずん子がああいう主義思想であることを知っていたのだろう。

「六花さんも同じことを思っていたでしょう?完全に取り返しがつかなくなってからようやく思い出したようですが。」

「本気で人を導きたいのならそれしかないとは私だって思います。ですがその上で言います。そんなことはできないと。できなくて仕方がないと。」

「私に言われた言葉ならその通りだと賛同するでしょう。けれどできないことをやると言っている者にできなくて仕方がないなんて言葉は侮辱でしかない。」

ゆかりはピシャリと言い放つ。

ゆかりは芯のある生徒だ。他人に言われて何かが変わるような人間ではないし、今はそういう場面でもない。


「お話を聞かせていただきありがとうございました。六花さんの話とも矛盾ありません。やはり全て六花さんの責任なのでしょう。」

「…六花さんは停学ですか?」

「お説教と反省文の提出で済ませました。六花さんは一応は止めようとした立場ですから。」

「お力添えをいただけたようで。」

「私だけの力ではありません。我々教師だって六花さんたちが真剣だったことはわかっています。熱くなること自体はけして悪いことではありませんから。」


二人は教室の扉を開け、外に出る。

「ゆかりさんはこれから部活へ?」

「ええ、ずいぶんサボってしまいましたので。」

「そうですか。茜さんも責任を感じてしまっているようなので元気づけておいてください。」

「わかりました。」

歩き出そうとしたゆかりの足が止まる。振り向いたゆかりはそらに問いかけた。

「これで終わりだと思いますか?」

「…え、なんですか急に。」

「だって生徒会長がずん子さん、副会長が六花さんになるんでしょう。いずれまた一波乱起こることになるんじゃ。」

「不安になるようなこと言わないでください…」

そらは苦虫を噛み潰したような顔をする。なんとか丸く収まったが受け持っているクラスから校長室送りになる生徒を出したのは違いない。


生徒会新体制はまだ始まったばかり。

これから1年間、ゆかり達の通う高校は激動の時代を迎える。



2026年5月7日木曜日

幻の生徒会選挙編8

「2年1組、小春六花さん。」

アナウンスに呼ばれ、六花は顔を上げた。

ここは体育館で、今は投票前の最後の演説の時間だ。そのことを思い出した。


壇上に立ち、並んだ全校生徒を見下ろす。

顔を上げられない生徒たちも多い。きっと集会の参加者だろう。

頭に包帯を巻いている彼は土曜日に救急車で運ばれていった人だ。誰よりもいっそう俯いている。

休日に集会を開き、他の生徒に対してデモをするのしないので争って怪我人を出した。小春六花とその支持者に対する印象はもう取り返しのつかないところまで落ちていた。

集会の参加者であったことを必死に隠そうとしている者たちも大勢いるだろう。もう投票を呼びかけるような段階にはない。


いったい何が言えるというのだろうか。

六花は惚けた顔のままただ立っていた。

とても話せるような状態ではない。そう判断した先生たちが六花を壇上から降ろすために歩き出した時、六花の口が開いた。

「私は四人家族でした。」


「父と、母と、兄が一人。裕福でも貧乏でもない、ごく普通の家庭だったと思います。」

六花が何の話をし始めたのかわからず、誰もが呆気に取られていた。下を向いていた生徒たちも思わず顔を上げた。

「中学に上がった頃、家族の仲が悪くなりました。高校生になった兄の態度が荒々しくなっていったんです。いわゆる反抗期というものです。父はそんな兄を煙たがり、母に何とかするようにと押しつけました。母は父に対しても兄に対しても強く出ることができず、ただ悲しそうにしていました。」

普段の朗らかで能天気な姿とも、集会での怒りに流された姿とも違う。初めて見せる無機質な姿だった。

「よくあることです。」

冷たくそう言った。


「中学での新しいクラスはあまり居心地が良くありませんでした。女王様気質な子がいて、その子の機嫌に合わせて他の生徒たちで嫌がらせをしたりされたりを繰り返してたんです。先生は私たちのそんな様子を知りながらも何もすることはありませんでした。面倒だと思っていたんでしょう。」

誰も六花の話についていけていなかったが、その異様な雰囲気に押されて聞き入っていた。

「これもよくあることです。」

再び冷たく言った。


「私は思ってたんです。兄は両親のことをもっと気遣えばいいのにって。父はきちんと兄を叱ればいいのにって。母は言いたいことがあるなら言えばいいのにって。あの子はいちいち誰が嫌いとか言わなければいいのにって。みんなはあの子の言うことなんて聞かなければいいのにって。先生は問題が起こったら注意して指導すればいいのにって。誰かがちゃんとしてくれればいいのにって。」

目を伏せ淡々と六花は言葉を並べる。

「そんな時にふと気づいたんです。誰かなんていないんだって。」

本当に今気づいたかのように六花が顔を上げる。

「自分しかいないんだって。」


「全部自分がするしかないんです。私がそうした方がいいって思うんだから私がそうするんです。笑顔で、涙で、怒りで、声で言葉で行動で態度で人を動かして在るべき形に戻すんです。それ以外に方法なんて無いんですよ。」

六花の声が力強く、それでいて悲痛に響く。

「兄と笑顔で話して不満や不安に寄り添いました。兄に非がある時は私が叱って喧嘩しました。父に涙で訴え兄と母ときちんと向き合うように促しました。母からどう思ってるかを聞き出して兄と父との仲を取り持ちました。」

「あの子の言葉を茶化してみんなが真剣に受け取らないようにしました。腹を立てられたら怒り返してぶつかりました。みんなと話を通してお互いに嫌がらせをさせないようにしました。他の先生も巻き込んで問題が起こっても先生が無視できないようにしました。」


「時間はかかりましたがいつしか、家もクラスも和やかな空気が流れるようになりました。家族はお互いの気持ちをさらけ出せるようになり、兄の大学合格が決まった時はみんなでお祝いしました。高飛車だった彼女は高飛車なままクラスに受け入れられ、私とは今も連絡を取り合う友人です。間に私が挟まって適切な対応ができれば、適切な関係にできる。それが私がリーダーを、生徒会長を目指したきっかけです。」

六花は少し懐かしそうに笑い、すぐに笑みを消して言葉を続けた。


「相手の心を読んで周囲の関係性を理解して自分が望む方向に誘導するんです。個を見て全体を見て個が全体に与える影響と全体が個に与える影響を見て変化を予測するんです。人を導くっていうのはそういうことなんですよ。」

聴衆はそこまで聞いてようやく、六花が何のことを言いたいのかわかった。

「きっとその最終的な到達点は、指先で蟻を弄ぶ人だったのかもしれません。」

六花は自嘲するように締めくくった。




ずん子は六花と初めて会った頃にした話を思い出す。

六花が今話したようなことをあの頃にも聞いた。全部自分がするしかない。同じ結論に達していた相手だったから勝負を挑んだのだ。

「最初からそう言ってれば良かったのに。」

ずん子の呟きは誰にも聞こえなかった。


「その初心を全く活かすことができませんでした。リーダーを志すのなら人よりもっと多くのものを見て、多くのことを考えていなければならなかったのに。自分の感情だけでいっぱいっぱいになり、周りが見えていませんでした。」

六花が毅然とした顔と声で話す。

「ついて来てくれた人たちを危険に晒しました。怪我をさせました。先生方と救急隊の方々にご迷惑をおかけしました。私を推薦してくれた花梨先輩の顔に泥を塗りました。対立候補のずん子さんに何度も酷い言葉を投げかけました。他の多くの生徒の皆さんに不安な思いや不快な思いをさせました。」


「全て私の責任です。申し訳ありませんでした。」

そう言って六花は深々と頭を下げた。

全てが六花のせいであるとは誰も思っていない。当事者である集会の参加者も、無責任に煽った者も、火の粉が飛ばないようにと距離を置いていた者もいる。それでも六花は全部自分がどうにかするべきだったと言うのだろう。

もう一度チャンスをくださいと続けていれば、投票する者も多かったであろう潔い謝罪だった。

しかし六花は何も言わず、そのまま壇上を降りた。

拍手は起こらず、静寂のまま彼女は見送られた。




「2年2組、東北ずん子さん。」

再びアナウンスが流れ、今度はずん子が壇上に登る。

勘のいい生徒たちは六花の自滅がずん子の策略なのではないかと気づいていた。直接的には何一つ手を下さず、行動誘導だけでそれを為したことを知る者はほとんどいなかったが。

六花の敗北が確実である以上、ずん子の演説は勝利宣言になる。生徒たちは固唾をのんで見守っていた。


「私が生徒会会長に立候補したのは、この学校をより規律と規範を重んじた学校にするためです。近年、自由や個性が強調される一方で基本的な生活態度や礼節が軽視されつつあると感じています。」

ずん子が話し始める。

声や話し方こそ聞く者を惹きつける流麗なものだったが、これは学校新聞に載った彼女の最初の公約そのままだ。


こいつマジか…!

聴衆は唖然としていた。

生徒だけじゃなく先生たちも見ている中で蟻がどうこうなんて言えるわけがない。無難な公約を掲げるのは当たり前のことだ。

だがそれでも六花があの内容に理解を示したにも関わらず、当のずん子が梯子を下ろすのはどうなのだろうか。まるで相手にならなかった、私が誠意を向ける必要もないという意思表示ではないか。

反感で動いた人間の末路を知っているからこそ誰も言葉にも行動にも出さない。しかし、ずん子への畏怖はあったが、畏敬は残らなかった。


「自由は規律の上に成り立つものです。今こそ原点に立ち返り、互いに節度を守ることで落ち着いた学びの場を築いていきます。」

ずん子はただ公約を引き伸ばしただけの当たり障りのない演説を終えた。

最後に一言だけ、冗談めかした公約を付け加えて。

「とりあえずまずは、生徒会選挙における集会について規則を設けます。」




最後の候補者演説を聞いた生徒たちはそれぞれの教室に帰った後、配られた投票用紙に投票したい候補者の氏名を記載する。

投票用紙は担任教師に集められ、選挙管理委員会へと渡されて集計作業が行われる。結果が発表されるのは翌日だ。

例年であれば候補者たちは当選発表を期待と不安が入り混じった感情で心待ちにするものだが、今回に限ってはそうではない。

勝敗がほぼ決まっている以前に、六花は土曜日に起こった出来事について放課後には聴取を受けるのだ。当選発表を待たずして何らかの処分が下る可能性もある。


「六花。」

「花梨先輩。」

審判の時を待っている六花に、花梨が声をかける。最後に話したのは自分の力で選挙に挑むのを決めた時なので、実に1か月ぶりの会話になる。

「何一つ褒めるところの無い、最低最悪の負け方だったわ。」

「いやあ面目ない。」

容赦のない花梨の言葉に六花はつい笑う。

自分でもそう思う。ほんのちょっとでも賢明な判断ができていれば、こんなことにはならなかった。


「ずん子に踊らされたわね。」

「私が勝手に踊ったんです。ずん子さんはリーダーの資質を問われる状況を用意しただけで、私がリーダーの資質が無いことを露呈したんですよ。」

「恨んではないのね。」

「恨めるはずもありません。正攻法でも叩き潰せる私程度の相手に、力量しだいで逆転できるチャンスをくれていたんですから。」

本心だった。六花がほんのちょっとでもずん子の予想を上回れば、ずん子はあのまま惨敗していた。それほど綱渡りの作戦だったはずだ。


「私はちょっと違うと思うわ。ずん子は本気であなたに勝ちに行ったのよ。」

花梨が遠くを見つめながら語り出す。

「選挙で一番大きい層はね、選挙なんてどうでもいいって人たちなの。どうでもいいからテキトーに決める。あなた達がどれだけ必死になろうとね。」

花梨が冷めた目でこぼす。生徒会会長だった時は見せなかった態度だった。

「私の場合、どうでもいい人たちの決め手になったのは生徒会役員っていう肩書きとこの美貌だったわ。」

「自分で言いますか。」

「そういうものなの。私に投票してくれた人たちもほとんど私の公約を覚えてないわ。あなたもそうでしょ。」

図星だった。当たり障りのない内容だった気もするが、記憶にないくらい決め手ではない情報だったのだろう。


「ずん子が一番避けたかったのは、そういう不確かな要因で勝敗が分かれることだった。候補者が少ないほど同じクラスとか同じ部活とかのわかりやすい決め手が減ってく。今回の一騎打ちでは大半の生徒があなたのこともずん子のことも知らず、最後は運の勝負になる可能性があったわ。」

「…だから火をつけた。」

「普通の選挙活動じゃ生徒に火がつかないことを知っていた。好きや嫌いといった感情が吹き荒れる泥沼の戦場にすることで、とにかく関心を持つ生徒を増やしたのよ。人の心を利用した戦い方は一見不確実なようで、最も確かな勝ち筋だった。」

「人に心なんて無いみたいですけどね。」

「そうね、あの子ほど見通せるならもう単なる習性なのでしょうね。ただそれは誰よりも人の心と真摯に向き合った結果なんだと思うわ。」

六花は思い出す。中学の頃、人の心の動きを理屈で捉えていた時は周囲の人間関係を改善することができた。

そして今は、観察と思考を怠ったツケを払わされようとしている。


「敵わないや。」

六花は呟く。

もう時間だ。行かなければならない。

「何一つ褒めるところが無いって言ったけど、最後の謝罪だけは良かったわ。次があるなら頑張りなさい。」

「なんて言い草だ。」

どこまでも辛辣な花梨に苦笑する。六花の心が折れていないことを知っているからこそ言えることなのだろう。


「戻ってきますよ。すぐにね。」

六花はそう言い残して校長室に向かった。




翌日、学校新聞が張られていた場所には簡素な当選発表の用紙が張られていた。

生徒会会長は東北ずん子。

ずん子はちらりとそれを見ると、さも当然というように立ち去った。

激動の生徒会選挙の幕引きとしては、呆気ないものだった。



2026年5月6日水曜日

幻の生徒会選挙編7

「なあ葵、ずん子を捕まえられへんか?」

姉妹の部屋で茜が葵に問いかける。ずん子と話す機会を窺っていたが、ものの見事に逃げられてしまっていた。葵は机に向かいながら答えた。

「お説教でもするの?」

「そんなつもりはないが、あれはヤバいやろ。」

「私たちはずん子さんがああいう人だって知ってたんじゃない?」

「まあ、そうやが…」

茜は中立の立場を捨てることに葛藤しているのか苦しそうに顔を歪める。


「クラスでだって扱い変わったんやないか?」

「ずん子さんがあまりにも普段通りだから、あの新聞のことは夢だったんじゃないかと思ってるよ。」

「そんなわけないやろ。」

「腹を立ててる人や集会に行くようになった人もそりゃ居るだろうけどさ。面と向かってずん子さんに物申せるわけないじゃん。うん皆のこと蟻だと思ってるよなんて言われても言い返せないよ。」

葵はケラケラと笑う。葵はずん子に複雑な思いを向けていたはずだが、あの新聞の内容には怒っていないのだろうか。


向けられる視線からその考えを察してか、葵が意図を説明する。

「ずん子さんがあんなことを書いたら怒らせるってわからないわけないじゃん。今の状況はずん子さんが自分で招いたことだよ。つまりこれで作戦通りってこと。」

「こんな作戦あるんか。」

「私たちが考えるような作戦じゃあないんだろうね。ゆかりさんは何て言ってた?」

「ゆかりはこの件からは完全に手を引くそうや。」

新聞が出た日、ずん子に憤って集会に参加する人が増える中、ゆかりは集会にはもう関わらないと宣言した。教室でも六花に話しかけられたら追い払っている。


「なんやかんや言ってあいつはずん子のこと好きやからな。からかいやなくてバッシングが吹き荒れるとわかってるとこには行きたくないんやろ。」

「なるほど。」

葵は顎に手を当て何かを考えこむ。

「…馬鹿だね。」

「まあ自分で始めといて盛り上がったら冷めるってのは馬鹿らしいわな。」

「ゆかりさんじゃないよ。」


葵はスッと目を細める。その表情には先ほどは見せなかった怒りが微かに滲んでいた。

「賢い人たちの争いに混ざったら馬鹿を見るに決まってるじゃん。ほんと馬鹿。」




集会の参加者は更に増え、200人を優に超えていた。

ゆかり達幹部が抜けた穴には新聞部がそのまま入っていた。もう学校新聞は出ないので中立を演じる必要もない。新聞部もまた、集会の参加者と一緒くたに虫けら呼ばわりされているため合流に違和感を持つ者はいなかった。

ゆかりから六花へ、あかりからフィーちゃんへ、ギャラ子からかのんへと代替わりしただけで組織構造自体は変わらない。しかし、集会の雰囲気は明らかに変わっていった。

まとめる人たちの問題か、集まる人たちの問題か、あるいは単純に人数が多すぎるのか。

モカはかつてゆかりとギャラ子たちがそうしていたように、隅の方から集会を見守るようになっていた。


「今日も大勢の生徒たちが集まってくれました。しかし未だ全校生徒の三分の一程度。投票日はもう目前だと言うのに私たちは過半数を押さえることができていません。これでは選挙において東北ずん子が勝ってしまうかもしれません。」

六花の言葉に怒りと嘆きの籠ったどよめきが広がる。ずん子への悪しざまな野次も多い。

「もしこのまま東北ずん子が勝つことがあれば、それは人が自らの思考や意思で何かを選択することなく、ただ大きいものに身を任せてしまっていることの証明になってしまいます!自分たちを遥かに見下している者であっても、餌をくれるならそれでいいと!」

六花の演説は急速に激しさと鋭さを増していっていた。モカはその成長に危うさを感じずにはいられなかった。


過半数は取れているのだ。あの新聞のせいで9割以上が小春六花に投票するつもりだったはずだ。

だけど今集会の参加者たちは、自分たちだけが六花の支持者だと思い込んでいる。代表である六花もまたそうなのだろう。

だから必死に人を呼び込もうとしている。集会に参加していない者たちはずん子に投票するのではないかと恐れている。

六花派はそれぞれのクラスと部活で集会への参加を呼びかけていた。それは情熱ではなく同調圧力であり、参加しない者たちはずん子派と見なして暴言を浴びせるようになっていた。

ずん子が語ったような「心を持たない蟻」だと。


これは悪手だ。

六花たちはただ生徒たちのずん子への反感をそのままに投票日を迎えれば良かったのだ。そうすれば確実に勝っていた。

しかし六花もかのんも支持者たちも熱くなり過ぎている。ずん子への反感を他の生徒に向ければ、他の生徒からずん子への反感ごと自分たちへの反感を受け取ることになる。

かつての学生運動で起こった政治組織が、一般の学生からの支持を失っていったように。


「私から提案があります。このままでは過半数を超えられないまま土日を迎え、来週の投票日を迎えてしまいます。そこで今週末は休日返上で集会を行いましょう。たとえ土日であっても部活動のために学校に来ている生徒は大勢います。彼らのところを回って改めて投票を呼び掛けるんです。」

かのんの提案にモカは眉をひそめる。この第三体育館だって運動部に使われるはずのものだ。連日集会によって占拠されていることで不満も出たが、集団の力で黙らせてきた。

しかしそれは人数の少ない弱小部だったからだ。ここから出て他の体育館やグラウンドを占拠すればさすがに不満を抑えきれない。何より200人以上の規模で動き回るのは常識的に考えて危ない。


「この生徒会選挙は学校の一大事です。全ての生徒に危機感と当事者意識を持ってもらう必要があります。そのために私たちはまだ終わるわけにはいかないと思っていました。ぜひやりましょう!」

六花も賛成してしまった。その呼びかけに集会の参加者たちも呼応する。

この場には誰もストッパー役が存在しない。




モカは気づく。

ゆかりとギャラ子を使って集会の参加者をずん子派にひっくり返すのかと思っていた。しかし二人は抜けた。このタイミングで抜けさせることが策だったのだ。

これまで扇動者であったあの二人は同時に制御装置でもあった。火加減を調整して大火事になることを防いでいたのだ。あくまで「おふざけ」というスタンスを保つことで。

もう怒りに身を任せた生徒たちは止められない。それを統率しなければならない六花もまた怒りに囚われてしまっている。この集団はもう制御不能だ。


こうなることを狙っていたのか。小春六花の自滅を。

いったいいつから…?

これが東北ずん子が思い描いていた盤面だとするなら、決定打となったあの一手だけが彼女の打った手ではないはずだ。

モカは自分の頭に浮かんだ想像に身震いする。


ゆかりとギャラ子は六花派に傾いた頃から集会にあまり来なくなっていた。それは彼女たちが実際はずん子派だったからか?膨れ上がっていく集団が制御できなくなるのを予知していたからではないか?

危機察知に長けた彼女たちが決壊を喰い止めようとはせずに立ち去るとわかっていた。残った者たちでは統制が取れないことも。

暴走のリスクを認識していた二人が合流に踏み切ったのはずん子が反応を示さなかったからだ。ずん子は敢えて何もしないことで彼女たちを動かした。


かのんもそうだ。彼女もまたずん子が何もしないから話題欲しさに六花を集会に連れて来てしまった。

かのんについてはずん子を本気で打ち負かしたいという敵対心もあった。それは元々あったものだろうか。ずん子への取材の中で植え付けられたものなのではないか。

六花の合流を後押しするように、集会の参加者を増やすように誘導した。反感で人を動かせることは今の六花と生徒たちを見れば明らかだ。


六花が生徒の人気を求めて自由と個性を掲げると読んでいた。だから自分に反感を持った生徒がそちらに流れるように真逆の規律と規範を掲げた。

ゆかりとギャラ子が連れて来た生徒たちが自由と個性に惹かれることも。大勢の人に求められることで六花が集会に入れ込んでいくことも読んでいたのだ。

結果だけ見れば六花の自滅だが、そこに至るまでの道筋は全てずん子が整えたものだ。


全て…始まりから全て…?

ゆかりの動き出しは早過ぎやしないか。新聞が出た翌日にはもう集会を開いていた。

ゆかりはもっと前から知っていたんじゃないか。ずん子と形だけの対抗馬の六花の一騎打ちになることを。だってゆかりはずん子と友達だから。

ずん子からそのことを聞いたゆかりは、生徒会のゴシップ記事とは関係なしに彼女を負けさせようと画策していたのだ。


かのんが記事を書けたのは生徒会と弓道部の内情をよく知っていたからだ。

副会長と千冬がずん子を推す中、頑なに花梨が六花を推していたことを。ずん子が優勝候補の花梨を2年連続で下し、確執があってもおかしくない関係であることを。

それを話したのは誰か。生徒会でもあり弓道部でもありクラスメートでもあるずん子自身ではないか。

きっとあくまでさりげなく、世間話の一つとして。


蟻の群れ…

モカはその言葉の真意を理解した。

誰もが自分の思考と意思で動いているつもりで、実際は東北ずん子の指先に導かれていたのだ。そしてそのことを認識すらできなかった。

私たちに心は無い。




「モカさん。」

呼びかけられた声に振り向くと、千冬が立っていた。

「あなたを連れ出すように言われました。」

誰になんて聞くまでもない。ずん子だ。


連れ立って歩き出す。この場所に千冬が居るのはまずいのではと足早になる。

「千冬ちゃんは大丈夫?嫌がらせを受けたりとか…」

「大丈夫です。もし私がずん子さんと一緒に挨拶回りでもしていたらそうなっていたのかもしれませんが。私は何もしていませんし何もさせて貰えていませんので、誰も私がずん子さんの仲間だとは思っていません。」

当然それもずん子の策の内だろう。やはり最初からこの勝ち方をするつもりだったのだ。


「ゆかりさん達は逃げましたか?」

「もうとっくにね。」

「まあそうですよね。」

千冬は淡々としている。

「ここの人たちはこれからどうなるんだろう。」

「私にはわかりませんが、まず良い結果にはならないでしょうね。」

過激化が進めば離脱者は増え、残留者は更に過激化していく。そうしてこの集団の外にいる者たちは、この集団の中にいる者たちへの忌避感を強めていく。

これ以上この集会に人が増えることは無い。たとえ240人が一致団結しようと、それ以外の480人がそっぽを向けば選挙には勝てないのだ。

ヤバい連中を調子づかせないために、消去法的にずん子が選ばれる。この選挙の結末は決まった。


「ずん子さんはどうするつもりなの?たとえ生徒会長になれてもこの人数を残しておくのは危ないでしょ。」

「これまで何も教えてくれなかったのに私に教えてくれてると思いますか?」

初めて千冬が不機嫌を見せた。純粋にずん子の力になろうと思っていた千冬にとってはこの勝ち方が快いはずもない。モカは自分の気遣いの無さを恥じた。

「ただまあ、この人数を残しておくのが危ないなら残さないんじゃないですか。どうするのかはわかりませんけど。」

千冬の言い分はもっともだ。ここまで読み切っていたずん子なら、この先も考えていないわけがない。

蟻の群れの最後を見届けたい気持ちもあったが、その時まで内部に留まっているわけにはいかないだろう。




「とまあ、そういう感じだったよ。」 

「なんてこった…」

モカは茜に集会が過激化しこのままだと自滅することと、それがずん子の策略なのではないかという推測を語っていた。

「で、私は実は千冬ちゃんから依頼を受けて集会について探ってたの。」

「完全に私の取り越し苦労でしたが…」

千冬は苦い顔で呻いた。


集会から抜け、文芸部の部室で千冬とお茶をしていると茜が訪ねてきた。

ついにずん子を捕まえたところ、ここに来るようにと言われたのだ。千冬がモカを連れて離脱した頃だと読んでいたのだろう。

「いったい何なんやあいつは。」

「策士という一言では言い表せられないね。やっぱり超人なんじゃないかな。」

千冬には悪いがモカは正直なところ感心していた。これほどまでに人をコントロールできる者がいるとは想像もしていなかった。


「…私はあの人について行っていいのかと考えが変わりました。」

千冬が小さく呟く。

「文字通り人を人とも思わない勝ち方です。掌で転がされている六花さんを選ぶことはできませんが、掌で転がしているずん子さんも本当は選びたくない。」

千冬の立場であれば当然だろう。ずん子は尊敬しており、六花も憎からぬ生徒会の仲間だった。選挙後に残る禍根と言う意味では最悪だ。


「本当のところはずん子さんに聞くしかないけどさ、私たちに残るモヤモヤも含めてずん子さんが欲しかった成果なんじゃないかな。」

「…どういうことや?」

「ひどい結末だけど、こんなに生徒たちが生徒会選挙に関心を向けたことなんて無かったでしょ。それで終わってもまだ考えてる。でもずん子さんはなぁって。」

「ではどうするか。」

千冬が割って入る。新聞にあった六花の主張に書かれていたものだ。「ではどうするか」を問いかけられる人でありたいと。

「これをきっかけに千冬ちゃんがずん子さんとも六花さんとも違うリーダー像を築いてくれるなら、次に繋がってることになる。私たちだって次は踊らされないかもしれない。ずん子さんのあの主張も単なる挑発じゃなくて、お前らもっと考えろよってメッセージだったのかもね。」

「現実世界を教材にするのはやり過ぎやろ。」

「かもね。でもあくまで学校で起こることだから致命傷にはならない。縮図の中での失敗だから。」

もっとも社会的な傷にはならなくとも心に負った傷は致命傷になるかもしれない。そういう意味ではずん子はやはり人の心がわかっていない。

「いや、人に心なんて無いんだったか。」

モカはそう独り言ちた。




その翌日、土曜日の学校でそれは起こった。

第三体育館に集まった240人の生徒を前に、六花は集会の中止を宣言したのだ。

六花の心変わりの理由は前日に友人の茜から説得を受けたためだった。茜には大人数での行軍によって事故や事件が起こる危険性を見過ごせなかった。

しかしブレーキを引いていい時ではなかった。やめさせたいのならアクセルを緩めながら速度を落とさなければいけなかったのだ。

行き場を失ったエネルギーは内ゲバという形で発散された。六花への信頼で動く者とずん子への敵意で動く者の口論は、些細なきっかけで暴力になった。

軽傷者多数の果てに重傷者一名を出して生徒たちは止まった。救急車のサイレンが聞こえる頃には大半の生徒たちが逃げ出していた。

教師と救急隊が駆けつける中、六花はうなだれていた。

モカたちが想定していたより、はるかに酷い結末だった。



2026年5月5日火曜日

幻の生徒会選挙編6

唯世かのんは人のいない教室で東北ずん子と向き合っていた。

彼女への取材はこれで3回目になる。六花との対決が決まった時、公約を聞きに行った時、そして今回だ。

例年通りであれば各候補者の選挙活動の様子を取り上げることになる。と言ってもどこも変わり映えがしないので、各候補者の主張をまた繰り返すことが多い。

ただ、今回に関しては事情が違う。小春六花陣営は今や100人規模の集会を行うほどの一大勢力だ。新聞部にとってこんな美味しいネタは無い。

問題なのは…


「本当に何かありませんか…?」

「うーん、どうだろう。」

ずん子はのらりくらりと追及をかわし、取材はいつまでも埒が明かなかった。

それもそのはず、ずん子は本当に何もしていないのだ。選挙演説どころか挨拶運動すらしていない。そんなことは監視していたかのんが一番わかっている。

このままだと東北ずん子について書けることが無い。まさかこれを狙っていたのだろうか。

六花のことは書いてずん子のことは書かなければ明らかに公平性に欠く。多少の無茶は通してきたが、さすがにそこまで露骨な贔屓をすれば信頼を失うだろう。

引退した先輩や顧問の先生に文句を言われるくらいならどうって事ないが、この土壇場で有権者である生徒たちに不信を抱かれるのは避けたい。


「いったいなんで何もしなかったんですか?」

「家庭の事情で時間が取れなくてね。来週からやるよ。」

「来週はもう投票日の1週間前ですが…」

かのんにはまるで理解ができなかった。もはや本当に家庭の事情でできなかったのではないかと思うほどに。

ため息をついて苦肉の策を告げる。

「仕方ないので再び選挙の公約について取り上げます。前回の内容と被ってしまいますが、そこは上手いこと工夫します。」

「六花ちゃんの選挙活動は書かないの?」

「書きます。不公平なんて言わないでくださいね。実際の取り組みに差があるんですから。」


「だったらそっちをメインに据えた方がいいんじゃない?」

「へ?」

ずん子からの思いがけない提案に戸惑う。

「六花ちゃんの後援会ではあるけど、あくまで選挙への関心が高まった生徒たちの集まりでしょう。そこに改めて私たち二人の主張を持ち込むって形にしましょうよ。六花ちゃんだって集会を開いてみて考えが深まってるかもしれないし。」

「それは良いと思いますが…良いんですか…?」

元は反ずん子派、今は六花派の集会だ。ずん子が支持される可能性は全くと言っていいほど無い。覆せるとでも思ってるんだろうか。

「私はさ、こう見えて喜んでるんだよ。だって所詮は高校の生徒会長を決める選挙じゃん。みんな真剣になんてなんないよ。新聞を出したって演説をしたって誰も大した関心を向けちゃいない。」

「…それはそうですが。」

「だけど今回は違う。集会にまで足を運ぶ生徒が100人いるなら、選挙に考えを巡らせてる生徒は300人いる。集会が行われてるって話を耳にして、なんだなんだって思ってる生徒を入れたら600人は関心を向けてる。後の120人を巻き込めれば全校生徒が私たちの主張を受け取ることになる。」

「この時を待ってたんですか…!?」

かのん達新聞部の目的もゆかり達反ずん子派の目的も、生徒を煽って戦いの火を大きくすること。ずん子の目的も同じだったから静観していたのだ。

このタイミングで放たれたずん子の言葉は学校新聞に載り、集会で取り上げられ、集会に関心を向けている他の生徒にも伝播する。誰もずん子の味方をしようなど思っていなかったが、結果としてずん子のお膳立てをすることになったのだ。


かのんはずん子の企みの回りくどさに動揺したが、すぐに平静を取り戻した。

ずん子はこの一手で盤面をひっくり返すつもりなのだ。学校新聞に載せられる自身の主張、規律や規範なんて仮初のものではない本当の公約で。

そんなことができるはずがないと思う。だがもしそんなことができるならどんなものなのか知りたいとも思うのがジャーナリストの性だ。

「お願いします。」

そう言ったかのんを前に、ずん子が語り出した。

「それじゃあ行くね。人は…」




「以上だよ。」

ずん子が語り終わっても、かのんはすぐには口を開くことができなかった。

唇がわなわなと震え、握りしめた手からは血が滲むようだった。頭に上った血が再び全身を巡り体を熱くしていた。

これほどの侮辱を受けたのは生まれて初めてで、あまりの怒りに頭の中が真っ白になっていた。

「…今の言葉、一言一句違えずに書きますからね。」

「うん、お願い。」

かろうじて絞り出した捨て台詞にもずん子は変わらぬ調子で答えた。

荒々しく足を踏み鳴らすこともできず、よたよたとその場を後にする。教室を出て、廊下を歩き、新聞部の部室が見えてきたところでようやく思考が戻ってきた。

東北ずん子は終わりだ…!

こんなものを書いて誰も支持するわけがない。確実に負ける。それどころかその後の学校生活すら危うい。

これが起死回生の一手のつもりだったのなら人の心がまるで無いのだろう。結局私たちは虚像を見ていただけで、あの女のことを何も知らなかったのだ。

考えていた結末とは全く違ったが、これで詰みだ。かのんは勝利を確信し、ペンを取った。




『二人の候補者 生徒会選挙にかける思い』

第三体育館には連日100人以上が集まっていた。生徒会選挙における集会としては異例のものだった。

小春さんの呼びかけに応え、今回の生徒会選挙でどちらの候補者を選ぶのかだけでなく、これからの学校をどうしていきたいかについて議論が交わされていたのだ。

生徒会長なんて誰がなっても同じ。どうせ何も変わらない。自分たちには関係ない。

悲しいことだがこれまで生徒会選挙を前にした生徒たちの多くはそのように考えていただろう。

しかし今、潮目が変わろうとしている。

生徒一人一人が学校のことを真剣に考え、本当に自分が会長になってほしい候補者を選ぶ。

今回がそういう選挙になる最初の一回目なのではないかと、取材を続けていた新聞部一同は感じている。

文字通り全校生徒が続く二人の候補者の主張を受け止め、真に選ぶべき投票先を決めてくれることを願う。


「第一候補 小春六花」

正直なところ、私はこの生徒会選挙に乗り気ではなかった。前会長の花梨さんの強い推薦が無ければ立候補しなかっただろう。

私もまたどこかで生徒会長なんて誰がなっても同じだと思っていたのだ。

しかし選挙活動を続ける中で自分を支持してくれる人たちに出会い、候補者としての自覚が芽生え始めてきた。

現在多くの国では民主主義が取られている。選挙で代表を選び、代表が国政を執り行う。生徒会選挙もその縮図だろう。

生徒会長は生徒の代表者であり、代弁者だ。生徒の意見を写す鏡でなければならない。しかしそのためには、まず生徒が自分の意見を持つ必要がある。

学校生活を送る中で壁にぶつかることがある。自分がいけないのだと悩むことがある。こんな壁があるのがいけないのだと憤ることがある。

しかし多くの生徒はそこで終わってしまう。壁を乗り越えられるか、避けられるか、壊せるかまでは考えが至らない。

私はそんな時に「ではどうするか」を問いかけられる人でありたい。

私が掲げた自由と個性という公約に対して、安易な逃げ道を提示するだけなのではという懸念を持つ人も多いだろう。

壁にも単なる障害に過ぎないものもあれば、私たちを守るためのものもある。実際は壁なんて無く、本人に問題があるだけのこともあるだろう。

しかしそれらは生徒たちがどのような壁を感じていてどうしたいかを聞かなければ判断できないことのはずだ。だからこそ私は生徒の集まりに身を投じてきた。

私は決して人気取りのために生徒の要望を鵜呑みにすることは無いと約束する。一人一人ときちんと話し合った上で進むべき道を模索する。自由と個性を守るのは何よりもまず当人の自立心なのだから。

生徒の上に立つのではなく、生徒と共にあれるような生徒会長に私はなりたい。


「第二候補 東北ずん子」

人は蟻のようなものだ。

小さい頃、蟻をよく見ていた。目の前に勢いよく指を下ろすと逃げていく。ゆっくりと指を下ろすと登ってくる。

蟻の視点では何か大きなものがあるとしかわからないのだ。その判断基準は脅威か脅威でないかしかない。それによって行動が決まる。

蟻に心は無い。ただ神経の反射で動いているだけだ。餌を探すために動き回るという単調な生の中で、選択とは言えないほどの小さな分岐がある。私が下ろす指もその一つだ。

分岐を繰り返すとたまたま上手く餌を見つけられることがある。餌を見つけられた個体は同じ道を何度も通り、他の個体もその後ろに続く。そこには何の思考も意思も無い。

人も同じだ。人が心だと思っているものは単なる習性に過ぎない。蟻よりかは複雑な頭で、蟻よりかは発達した社会において餌となるものを探している。

私はこれまで小春六花と、集会の参加者と、新聞部の部員を見てきた。

彼女たちのしていることは全て餌を見つけた誰かの後追いであり、行動は全て真似事であり、言葉は全て受け売りだ。彼女たちは本当は何も考えていないし何も感じていない。

蟻の群れだ。

蟻の群れがどこか別の場所に辿り着くことは無い。自分たちがどこにいるのかも周りに何があるのかも見えていないから。ずっと同じ道筋を行ったり来たりするだけ。

蟻を導けるのは蟻よりずっと大きい生き物だ。こっちに餌は無いと指で行く道を塞ぎ、こっちに餌があると指に乗せて運ぶ。蟻はそのことを認識すらできない。

人においても同じことが言える。目線の高さと手の平の大きさ。人の上に立つ者は人であることを超えようとしなければならない。

それができるのは私だけだと思っている。




「な…!」

宮舞モカは貼られた学校新聞を前に絶句していた。いつもはガヤガヤと野次馬気分で言葉を交わしている生徒たちも今回は黙っている。

小春六花は思ったより良いこと言ってるななんて感想は一瞬で吹き飛んだ。東北ずん子が本当にこんなことを言ったのだろうか。

印象操作のための捏造なのではないかと疑うが、本人が否定すればすぐにバレるようなことをかのんはしないだろう。何よりこんな文才があるとも思えない。


間違いなくこの一手は激震を起こす。真正面から知性を持たない虫けらであると言い放たれた小春六花陣営はもちろん、他の生徒たちだって頭に来ているだろう。

自分以外全てというあまりにも広い対象に喧嘩を売っている。東北ずん子がとびきり優秀な人間であることを知っている者は尚のこと癪にさわっているだろう。

ずん子が何か策を打っているという認識を持っていたモカでさえカチンと来た。この新聞の内容が知れ渡れば校内のほぼ全ての生徒が六花派に回るはずだ。

これのいったいどこが作戦なのか。モカはずん子のことがまるでわからず、不信を超えて恐怖を覚えた。


ずん子はその日もいつもと変わらずに授業を受け、放課後は弓道部の練習に向かった。




集会の場所である第三体育館には150人近くが集まっていた。

いつもよりずっと人数が多く、その顔は皆一様に強張っている。当初の悪ふざけのような空気はもう無い。

声をかけ合って集まっただろうにほとんど誰も言葉を交わさない。待っているのだ。代表である小春六花の言葉を。

人の入りが収まったのを見て、六花は壇上に登った。彼女の顔も同じように強張っている。


「皆さん。」

六花が口を開くと視線が一斉に集まった。

「本日はお集まりいただきありがとうございます。皆さんがここに来た理由、今考えていることはわかっています。」

重い表情。いつもだったら冗談の一つでも飛ばしているところだが今日はそんな言葉は出てこない。


「彼女と初めて話したのは高校1年の3学期です。花梨先輩のその更に先輩が引退した時、生徒会に新たなメンバーを迎え入れることになりました。もう誰の推薦だったのかは覚えていません。それほどまでに彼女は抜きん出ていました。」

六花は訥々と思い出を語る。

「彼女への第一印象は思ったより気さくな人でした。気後れしていた私に笑いかけ、弓道部での花梨先輩のことや共通の友人のことで盛り上がりました。私が勝手に壁を感じていただけだったんだと、その時はそう思いました。」

言葉を切り、そっと目を伏せる。あの時は本当にそう思ってた。


「一緒に生徒会で過ごす中で、時々小さな違和感を持つことがありました。穏やかな表情と声音に、落ち着いた言葉と振る舞いに、時折見せる年相応な一面に。どこか作為的なものがあるのではないかと感じました。こちらをじっと見つめる目に冷たいものがあるような気がしました。」

ちょっとずつ六花の声が熱を帯びていく。

「私はそんな自分を恥じました。彼女への嫉妬心や反発心からありもしないものを見ているのだと。こんなに優れた人物なのだから何か裏があるに違いないと邪推しているのだと。」

顔を上げ集まった生徒たちの目を見る。

「しかし邪推でも何でもなかったことは皆さんご存じの通りです。」


「彼女は確かに強いのでしょう!誰の助けも必要としないのでしょう!彼女は確かに賢いのでしょう!誰の教えも必要としないのでしょう!だけれどもそれが何だと言うのか!」

六花が声を張り上げる。微かに震えながらも、力強い。

「己一人で完結している者が人を導こうなんて傲慢でしかない!私たちが彼女の思い通りになることなんて無い!私たちが彼女を受け入れることなんて無い!」

拳を振り上げる。

「我々には心があることを証明しましょう!」

六花の言葉に拍手と歓声が上がる。六花への賛同だけではない。ずん子への反抗と敵対が込められていた。

ゴシップ記事から始まった小さな火はついに大炎へと成長していた。




「ゆかり。」

「ギャラ子さん。」

喧騒の中、ギャラ子がゆかりに近づく。二人とも体育館の隅の方で集会を見守っていた。

「もう終わりだ。」

「ええ、終わりです。」

ギャラ子の言葉にゆかりは頷く。ここに来てこれはもう取り返しがつかない。そんなことは二人とも言うまでもなくわかっていた。

その日、かつて反ずん子派の中核を担っていた数名がひっそりと集会から消えた。彼女たちはそれから決して生徒会選挙について関わることも、口にすることもなかった。



2026年5月4日月曜日

幻の生徒会選挙編5

私が生徒会会長に立候補したのは、この学校をより規律と規範を重んじた学校にするためです。近年、自由や個性が強調される一方で基本的な生活態度や礼節が軽視されつつあると感じています。そこで、挨拶や時間厳守、服装の乱れの是正といった基本事項を改めて徹底し、安心して学べる秩序ある環境を整えます。また、校則の運用を曖昧にせず公平かつ一貫した指導を行う体制を強化します。さらに、清掃活動や学校行事への真摯な参加を重視し、責任感と協調性を育てます。自由は規律の上に成り立つものです。今こそ原点に立ち返り、互いに節度を守ることで落ち着いた学びの場を築いていきます。


「ゆかり、これなんだが…」

「まるで意味がわかりませんね。」

ギャラ子とゆかりは顔を見合わせる。学校新聞の内容は写真に撮られて幹部陣に共有されている。それを二人は朝から何度も見返していた。

「何かおかしなことを書いてますか。私には至極真っ当なものに見えますが。」

モカは疑問を呈する。千冬からの密偵であることは隠したまま、しれっと幹部の話し合いにも参加できるくらいの立ち位置についていた。


「真っ当だからおかしいんですよ。」

「アタシ縦読みかと思ったもん。」

「新聞を作ったのは新聞部ですしそれは無いでしょう。私も暗号かと思いましたけど。」

答える気の無いゆかりとギャラ子に代わってあかりが二人の疑念を説明する。

「規律と規範なんて掲げて生徒の支持を得られるはずがありません。六花さんが掲げている自由と個性の真逆で、明らかにウケが悪いものです。ずん子さんほどの人がこんな悪手を打ってくるのが信じられないんですよ。」

「それはわかるけど、打算的に考えすぎじゃないかな。」

「というと?」

「詰まるところこれが、東北ずん子の理念なのでしょう。」


ギャラ子とゆかりはポカンとした顔を浮かべた後、同時に吹き出した。

「ギャハハ、聞いたかよオイ。」

「フフフなるほど確かにそうなのかもしれませんね。」

モカはそんな二人を憮然として見つめる。ゆかり単体ではそこまでではなかったが、この二人のセットはかなりウザい。常に他人を馬鹿にしているのが透けていた。

「そりゃあなた達からしたらゲーム感覚なんでしょうが、ずん子さんが生徒会長として誠実に臨んでいる可能性だって十分あるでしょう。」

「いや、笑ってすまなかった。だがその可能性は幾つかの観点から否定できる。」


ギャラ子が珍しく口数多く反論を並べる。

「まず、この文章自体のこと。自由や個性より規律や規範をという主張はいい。だがその後は何をするかを列挙するだけで論理展開に厚みが無い。小春六花だって他校で成功しているから自校でも取り入れるべきという論理を使ってる。自由や個性を尊重したことでどんな問題が起こってるか、規律や規範を尊重したらどんな成果が得られるかに具体性が無いと説得力が無い。」

不良と思っていたギャラ子から「論理」の言葉を出されてモカは思わず黙る。「また」「さらに」で繋いでいたことに違和感を覚えてはいたが、そう説明されると確かに薄っぺらい文章に思える。

「次に、東北ずん子の行動のこと。仮にあの女が一切打算なく自分の理念を伝えるつもりだったとしたら、今日まで選挙活動を行っていないことに説明がつかない。だってそうだろ?誠実に臨んでいるんだったら真っ当に自分の口でそれを伝えて回ってるはずだ。」

これまたその通りでモカはもう何も言えない。思っていたよりもずっとギャラ子は考えを巡らせていたようだった。

「そして最後に、東北ずん子は規則なんてクソ喰らえって人間なことだ。」


もう完全に言い負かされたつもりだったモカは、そこでまた口を開いた。ギャラ子の言葉に驚いた結果の無意識だった。

「え?ずん子さんが?」

ギャラ子も驚いたように眉を上げる。

「知らないのか?」

「ずん子さんは基本的に猫をかぶってますからね。本心を知る者なんてほとんどいませんよ。」

「クラスメートだから多少は知ってると思ってたわ。」

「…正直わたしも規則遵守の人だと思ってました。」

ギャラ子とゆかりのやり取りにあかりも割って入る。ゆかりと同じ演劇部でモカよりはずん子と親しいはずだが、あかりでもまだ知らないことだったようだ。

「ルールを破ってるところなんて見たことありませんが。」

「よく考えたらずん子さんの考えなんて私くらいしか知りませんよね。」

「アタシもいるだろ。」

「ギャラ子先輩が知ってるのはずん子さんの本性みたいなものでして、理念とか理想とかの思想的なものじゃあ無いでしょう。」

「なんでそんなことをゆかりさんが知ってるの?」

モカの問いにゆかりは大仰な溜めをつくったが、別にもったいぶるほどのことではないと気が変わったのか淡々と告げた。

「まぁ普通に聞いたからです。」


「普通に聞いた…」

「はい。あなたの目指すところはどこにあるのかと。」

「ええ…いや…そうか…」

秘密主義のずん子がゆかりにだけ本心を明かしたのかと思ったが、言われてみれば単純な話だ。

いったいどこの誰がどんな場面で一介の女子高生に自分の理念について尋ねるだろうか。ずん子は普通に聞かれたら答えたが、普通に聞いたのは結月ゆかりだけだったのだ。

「一時期一緒に暮らしてたこともありましたのでその時に。」

「え、同棲してたんですか!?」

「…同棲ってか同居。」

喰いついたあかりをいなしながら、ゆかりが続ける。

「モカさんはなぜ法ができたのかご存じですか?」

「ほ、法…?」

話の飛び方がエキセントリックすぎてモカは戸惑う。たぶん規則のことなのだろうが学校の校則程度のところからそこまで広げられるとは思わなかった。

「犯罪があるから…?」

「私は法があるから犯罪があるという考えなのですが、モカさんは逆なんですね。」

「御託はいいからさっさと本題に行け。」

ゆかりの問答に付き合う気は無いようでギャラ子が先を促す。


「では改めて、法ができたのは人が不完全だからです。不完全だから他者を害し、間違いを犯す。そして取り締まる側もそうです。不完全だから罪の定義も罰の程度も曖昧です。そうした状況を正すため、明確な基準を設けて世を治めようとつくり出されたのが法です。」

ゆかりが語り出すと場の空気が彼女のものに変わる。この弁論能力があるからこそゆかりはアジテーターとして集団を統べられていた。

「それ以前の世では徳による政治が目指されていました。人格的に優れた統治者の元、人民一人一人が他者を尊重し、秩序を守ることで世を治めようとしていたのです。しかし勿論そんなことはできませんでした。富める者は私欲に走り、貧しい者には余裕が無い。結局のところ人では無理だったから、人の代わりに法に世を治めてもらおうとしたのです。法とは人の可能性を諦めた妥協の産物です。」

「だから東北ずん子は法が嫌いなのか。」

「彼女がある意味で無法を望んでいるのはそうでしょう。所詮は妥協の産物である法もまたやはり不完全で、人の世には未だ不正がはびこっている。ただ彼女はそこまで理想主義者ではありません。徳による政治の敗因は全ての人に高い知性と善性を求めたことです。統治者を置くのであれば、優れているのは統治者だけでも良かったはずなのに。」

ゆかりが指を立てる。モカは話の着地点に何となく予想がついて嫌な感覚になる。

「完璧な人間になればいいのです。高い知性と善性を持ち決して間違わない。そんな者が統治者に、いや支配者になればそれ以外の者は不完全なままでいられる。」

「…そんなこと無理だよ。」

「無理でしょうか。」

「だって誰もそんなことできなかったから、法をつくったんでしょ。」

「誰もできなかったなんて言っていませんよ。長い歴史の中でちらほらとは居たでしょう。あくまで比率と影響力によって成し得なかっただけです。」

「じゃあそんな人たちを大勢つくろうってこと?」

「それも一つの手でしょうが、たとえ完璧な人間が東北ずん子だけだったとしても。」

ゆかりは今度こそ大仰な溜めをつくって話を締めくくった。

「彼女がこの世の全てを支配すればいい。」




あまりのスケールにゆかり以外の者たちは固まっていた。

東北ずん子がいくら優秀な人間だからと言って、荒唐無稽な世迷言に違いない。だが、ゆかりの演説に飲まれてしまったのか、誰も笑い飛ばすことができなかった。

「…まともじゃない。」

あかりが低い声で言った。

「ええ、ずん子さんはまともじゃないんですよ。だから少なくとも規律と規範を重んじてより良い学校をつくろうなんてのは絶対本心じゃないと言えます。」

あっけらかんとゆかりが答える。演説モードじゃなくなったことで空気が緩んでいった。

「あの女そこまでイカれてたのか。さすがにビビるぜ。」

「面と向かって聞かされた時はビビるというより痺れましたよ。こんな人間が存在するのかって。」

「そうか。羨ましいな。」

「ギャラ子先輩はずん子さんと何があったんですか?」

ギャラ子にモカが尋ねる。何をもってずん子のことを「規則なんてクソ喰らえって人間」だと断じたのか、ギャラ子はずん子のどんな本性を知っていたのか。

「今の話の後じゃあ大したことじゃないから言わない。こいつほど話すのが上手くもないしな。」


「ただ、なんていうか。」

ギャラ子は遠くを見つめながら語った。ゆかりのように圧倒される語り口調ではないが、ぽつぽつと本音を漏らすような心に迫る言葉だった。

「突っ張ってても粋がってても勝てないもんってあるじゃん。生活を支えてる親とか、社会的立場のある教師とか、パトカー乗ってやって来る警官とか。たまに限度を超えて逆らっちゃう奴も居るけどさ、そういう奴は消えてく。だからアタシらは不良と言いつつ、枠の中の存在なんだって思う。」

でもあいつは違う。ギャラ子は伸ばした手を握りながら呟く。

「あいつはだからしょうがないみたいなのができないんだ。気に入らないものは気に入らないし間違ってるものは間違ってるって言いたい。その結果立場が悪くなってもなんて逃げ腰じゃない。勝ちに行く。馬鹿みたいに強くて頭が良くて、デカい家の財力とか権力とか使ってくるあいつ自体が理不尽の塊みたいなもんだけど、理不尽を潰しに行ってる姿はなんつーか良かった。」

ギャラ子がスッと目を細める。モカはうすうす勘づいていたがその言葉で確信を持った。

反ずん子派の頭目であるが、ギャラ子はむしろずん子のことが好きなのだ。たぶんゆかりも。

好きの反対は無関心。異様な情熱を持って反ずん子の集会を開く彼女たちの根底にはずん子への憧憬がある。

だからずん子は危機感を持ってはいなかった。あるいは彼女たちこそが逆転のための手札…

モカは千冬にどこまで話すか迷っていた。ずん子が何かを企んでいるなら、千冬に余計な行動を起こさせることは却って邪魔になるかもしれない。


結局モカは千冬にその考えを話すことは無かった。

様子見の判断ではなく、かのんと六花が合流してきたことで一気に情勢が変わってそれどころではなくなったためだ。

モカはつかず離れずの距離感のまま集会の変遷を見届けることになる。




「知ってる?六花ちゃんのこと。」

「なんや?」

「なんかすごいことなってるんだって。」

「それじゃわからん。」

学校の課題をやりながら葵が茜に話しかける。姉妹共用の部屋で互いの勉強机に向かったまま視線は向けずに。

「ゆかりさんが変な集会開いてるじゃん、東北ずん子を負けさせようって。」

「…まだやってるんやな。」

部長であるゆかりがそちらにうつつを抜かしているため、演劇部の活動は休みになっていた。

茜にとってはあまり好ましいことでは無いのだが、ゆかりにとってはこうした時たまの奇行が創作のインスピレーション元になっているため強く言えずにいた。


「六花ちゃんが入って本格的に後援会になったらしくて、今じゃあもう100人くらい居るんだって。」

「そりゃあすごい。」

茜は反射的にそう答えたが、すぐに表情が曇る。

「大丈夫なんか、それ。」

「何が?」

「そんな大人数で集会開くようになったらなんかヤバいやろ。」

「選挙中の応援活動は自由だよ。とは言え生徒会選挙でこんなに盛り上がるのは我が校始まって以来だろうね。」

「ゆかりめそこまで煽ったか。」

「ゆかりさんじゃないよ、かのんさん。新聞部の部長さんだよ。」

中立を決め込むというスタンスで、ゆかりやあかりに話を聞いてはいなかった。だから茜は集会の内情を知らない。


「私とずん子さんと同じクラス。教室ではさすがに大っぴらに勧誘してはいないけど、たぶんこっそり声をかけて回ってるんじゃないかな。」

「対立煽りやと思ってたが、六花サイドについてたのか?」

「そうなんじゃないかな。」

茜は急に嫌な予感がしていた。ゆかりがまた変なことをやってるくらいの認識だったが、思ったより複雑な状況になっているようだった。

「中立でいるんじゃないの?」

そんな内心を見透かしたように葵は笑った。




「てのを聞いてな。」

「あー…」

次の日の朝、茜はゆかりに事の次第を聞いていた。

「大丈夫なんか?」

「まぁ大丈夫ですね今のところは。」

ゆかりはボケーっとした表情で答える。経験則だがこう答える時はあまり大丈夫ではない。

「どうなんや唯世かのんって。」

「結構デキる人ですよ。六花さんを連れて来たのもあの人ですし、それから人数を増やすために奔走してくれて。」

「人格的な方や。」

「人の人格をとやかく言える立場じゃありませんよ。」

ハッハッハとゆかりははぐらかす。これは別のことを考えているが敢えて黙っている時の態度だった。


「六花さんに聞いた方がいいかもしれません。」

ゆかりが指さす方を見ると六花が教室が入って来るところだった。

「おはよう!」

「よう。」

「茜が私たちの活動に興味があるようで。」

挨拶もそこそこにゆかりが話を切り出す。

「茜ちゃんも来る?」

「勘弁しろ。興味ってか心配や。」

「あーやっぱり生徒会選挙くらいで集会開くとかヤバいもんね。」

六花はまともな感覚をしているようで茜は安堵する。


「なんでそんなことになってるんや。」

「元々集会開いてたのはゆかりさんだからそっちに聞いてほしいけど。」

「なんでそんなことしたんや。」

「面白いかと思って。」

ゆかりは悪びれもしない。

「ずん子さんが放っておいてたし、私も放っておくつもりだったんだけど、とりあえず1回会ってみることにして。」

「唯世かのんって奴に言われてか。」

「うん、よく知ってるね。それで実際話してみたら、みんなヤバい人たちってわけじゃなくて一緒にやってくことになったんだ。と言っても大したことはしてないんだけどね。」

「お前を勝たせてずん子を負けさせるためか。」

「そういう人たちも多いけど、私はそれだけじゃ終わらせないようにしたいと思ってるよ。」

「ほう?」

「もし勝って生徒会長になったら、この学校を良くするために色々頑張っていきたからね。そのために今から仲間を増やしておいて損はないでしょ?」

「なるほど、単なる票集めじゃなくて生徒会長としてやってく上での地盤固めってわけか。」

「花梨先輩にとっての弓道部みたいなホームが私には無いからね。これからも校則の緩和とか撤廃とかで全校投票することもあるだろうし、ちゃんと支持者をつくっておきたいんだ。」

「良い心がけやな。さてはゆかりお前、せっかく育てた集まりが乗っ取られそうになってるから面白くないんか。」

「今はもう主役は六花さんですからねぇ。」

ゆかりが不服そうに天を仰ぐ。茜は呆れたようにゆかりの背を叩いた。




「とまぁゆかりと六花はそんな感じやった。」

「それで私にもか。」

「こういうのは3人くらいに聞くと正確な情報を得られるみたいやからな。」

文芸部の部室で茜とモカは向かい合っていた。本当の依頼人は千冬だが、表向きは茜とマキに頼まれたことになっている。茜に聞かれたら答えないわけにはいかない。

「六花もしっかりしてたし、大丈夫そうやとは思うけどどうや?」

「…わからない。」

不安が解消されつつあった茜とは対照的に、モカは重くるしく答えた。


「なんでや?やっぱり唯世かのんか?」

「かのんさんに引っかかるのはわかるよ。最初に爆弾を仕掛けてきたし、今も中立であるべき立場なのに六花さんの味方をしている。」

「ゆかりよりタチが悪い愉快犯か。」

「それは違うよ。かのんさんはたぶんずん子さんに反感を持ってる人。どちらかと言えばゆかりさんに煽られるようなタイプかな。」

「てことは純粋にずん子を倒しに行ってるわけか。」

「大番狂わせって言う新聞としての旨味と自分の個人的な感情の解消を同時にできるからね。人を集めて来てはいるけどこれ以上場をかき乱すことは無いと思う。」

モカは一息ついて頭の中を整理する。自分でも何に引っかかってるのかまだよくわかっていなかった。


「元々集会を開いてたのはゆかりさんと、先輩のギャラ子って人だよ。この2人が協力して仕切ってた。」

「また知らない名前だな。」

「ギャラ子さんのことは私もほとんど知らないけど、少なくとも悪い人ではないよ。ゆかりさんとは違うタイプだけど、ゆかりさんに近い行動を取ってる。」

「ゆかりに近い行動?」

「好きな人にちょっかいかけちゃうみたいな。」

「ああ、なるほど。」

ゆかりがずん子に突っかかるのは格上だと認めているからだ。そういう真意は茜も承知の上だった。

「だけどこの2人はあまり来なくなってきてる。」

「六花が集会の中心になったからか。」

「反ずん子を掲げながらも実態としては彼女たちの推しはずん子さんだった。六花さんは積極的に集会の参加者に声をかけて回ってて、六花派になる人たちも多い。それが面白くないってのはあると思う。」

「ウチとしてはゆかりが抜けてくれた方がいいがな。」

「近いうちにそうなるんじゃないかって気はしてる。」


「そして六花さんは確かにしっかりしてるね。なんとなく東北ずん子が気に入らないくらいの考えで集まっていた人たちに、意見を持たせてる。」

「自由と個性が公約だったな。」

「ずん子さんは規律と規範が公約だった。ギャラ子さんが連れて来た不良っぽい人たちは規律に反感を持ってる。先生や風紀委員には逆らってても、ずん子さんが出てきて黙らされたのが集会に来てる理由だったりする。」

「逆恨みやな。」

「そうだね。ゆかりさんが連れて来た人たちは何かと上手く行ってないことが多い。ずん子さんみたいな学業も部活動も両立させて何一つ恥じることのない立派な生徒であれみたいな規範を受けつけない。当のずん子さんが規範を重んじろなんて言ってきたら尚更。」

「完全にハマったな。それなら六花がちょっと話したらなびいたやろ。」

「易きに流れるようで私は好きじゃないけどね。」

モカからすると前の悪ふざけのような集会も好きではなかったが、今の馴れ合いのような集会も好きではない。

通り一辺倒のずん子の堅苦しい公約の方がずっと良かった。あれがずん子の本心ではないとしても、少なくとも自分は六花派ではないのだと思う。


「ほんでモカは何に悩んでるんや?」

「うーん上手く言えないけど、盤面がわかんなくなっちゃったんだよね。」

「盤面か。今は六花が優勢なんやないか。」

「新聞部でアンケート調査を進めてるみたいだけど、そう聞いたよ。なんせ未だにずん子さん何もしてないみたいだからね。」

「…嘘やろ。もう1週間前やで。」

「いったいどういうつもりなんだろうね。」

千冬は一周回って何も気にならなくなったようで、後は野となれ山となれの境地だった。地力だけで戦うのか終盤で一気に巻き返すのかわからないが、ずん子を頑張って信じているのだろう。

モカからは何かずん子の策がありそうだとは助言していた。ずん子派になり得る反ずん子派の筆頭二人、六花の公約の真逆になっている本心ではない公約、反ずん子派の集会を元に形になっていく六花の支持基盤。作為めいたものは感じていた。

選挙1週間前、二人の候補者の選挙活動の様子を伝える最後の学校新聞が張り出される。



2026年5月3日日曜日

幻の生徒会選挙編4

「次はどうしますか?」

「うーん…」

小春六花とフィーちゃんは中庭で考え込んでいた。

やれることはやっている。各部活への根回しと地道な選挙活動。感触は決して悪くない。

「…本当にこれでいいのかな。」

「過去の生徒会選挙の時のことを調べていますが、皆さんこんなものでしたよ。」

フィーちゃんに聞かずとも六花も去年の生徒会選挙の様子を知っている。たかが高校の生徒会選挙だ。大したことをするはずもない。

ただ単に六花が気負い過ぎているだけだ。勝利にかける意気込みと対戦相手であるずん子への競争心を持て余している。

それもわかっている。


「まあ六花さんの気持ちもわかります。」

アンドロイドらしからぬ人間じみた表情でフィーちゃんが口を開く。

「拍子抜けって感じですよね。あんな新聞書かれて、千冬さんも持ってかれて、いざ逆境からのスタートって始まったのに。」

「私たちはできることをやるしかないんだろうけどね。」

結局地道な活動が実を結ぶ。一発逆転の手立てなどそうそうあるはずもない。仮にあったとしても自分はそういうことができる人間ではないと六花は知っていた。

ずん子が一発逆転を狙っていたとしても万全な状態で迎え撃つぐらいしか対策は無いのだ。六花には事前にその手を潰せるような武器が無い。


「今よろしいですか?」

誰かが近づいてきてるのは気づいていたが、それが誰なのか確認して六花は眉をひそめた。

新聞部新部長の唯世かのんだ。

花梨とずん子の対立のゴシップを書かれてから1週間、何をしてるかはわからなかったがあれで終わるつもりではないだろうと思っていた。

「そんな顔をしないでください。そろそろ各候補者の公約を取り上げようとしているだけです。」

邪な考えを抱いているとわかっていても露骨に敵対するわけにはいかない。かのんはこの学校の新聞部の代表であり、生徒会選挙に一票を投じる一生徒なのだ。

威嚇しているフィーちゃんを制し、六花は話を促す。


「ちょっと遅かったんじゃない?」

「すみません、不慣れなもので少しバタバタしてしまって。」

「確かに慣れないことをしてるもんね。お疲れ様。」

「ありがとうございます。」

軽い皮肉を軽く受け流し、かのんは本題を切り出す。

「さて、改めて各候補者、六花さんとずん子さんの詳しい主張をお聞きしたいと思います。生徒がどちらに投票するかを決めるための大切な判断材料ですのでよく考えてお答えください。」

「今もうここで言えばいい?」

「できるのならそれで構いません。よろしいですか?」

さすがにもう考えてある。六花は暗記していた内容を読み上げる。


「私が生徒会会長に立候補したのは、この学校をより生徒の自由と個性を尊重した学校にするためです。近年は慣習的な校則の緩和や撤廃が進んでおり、これまでの枠にとらわれない教育の在り方が認められるようになっています。近隣の私立高校では生徒の自主性を尊重した校風がとられ、風紀が乱れる、学業が疎かになるという批判に反して多くの社会的活躍、高い進学実績を残しています。これは健全な成長を促すための校則の多くが、かえって生徒の成長を阻害する結果となっている証左だと考えます。私が生徒会長になった暁には、服装や髪形の自由化に加え、マイナースポーツ、サブカルチャーにおける実績の表彰や部活動の設立基準の緩和を目指します。変化する時代の流れと人々の生き方に適応し、この学校が更なる飛躍を遂げるためにも、どうか私に皆さんの一票をお願いします。」

「AIに出力させました?」

「失礼な、AIと一緒に考えたんだよ。」

一息で読み切った六花にかのんは呆れ顔を浮かべる。人工知能搭載のフィーちゃんと一緒にああでもないこうでもないと練り上げたものだ。フィーちゃんも得意気にしている。

ペンを走らせていたかのんだったが、写し終えたようでじっとメモ帳を見つめている。


「…悪くないですね。最近のトレンドへの乗っかり、他の高校での成功事例、服装や髪形の自由化というマジョリティに訴求するものとマイナースポーツ、サブカルチャー推しのマイノリティに訴求するもの。生徒ウケを狙ったのでしょうがよく練られています。」

「あくまで私自身が実現したいことだよ。」

「そういうことにしておきましょう。」

正直かのんの言う通り生徒ウケを狙ったものだった。ずん子に勝つためでもあるが、六花自身現状の学校に不満が無く、改善の意欲が乏しいためでもある。

「教職陣の服装検査、髪型検査による時間的負担や生徒とのいざこざによる精神的負担も減らせる。また、少子化と私立高校に志望者を吸われていることで定員割れを起こしかけている学校の今後にも影響する。みたいなのも考えてた。」

「いいでしょう。その辺りも念頭に置いておきます。」


「考えておいてくれたおかげですぐに終わってしまいましたね。もう少し雑談でもしましょうか。おっと私なんかと話したくないなんて言わないでくださいね。」

「…まぁいいよ。」

「なんであんな記事書いたんですか?」

雑談に移った途端、フィーちゃんが遠慮なしに疑問を投げかける。

「私はただジャーナリズムの精神に則って忌憚のない記事を書いただけです。」

悪びれもせずかのんはそう答えた。


「逆にお二人はなぜあの記事を根も葉もないゴシップだと?」

「とりあえず立候補の順番は間違いだよ。ずん子さんが先で私が後。」

「あらそうでしたか。事実誤認があったようです。申し訳ありません。」

「花梨先輩については…」

花梨についてはほとんど事実だ。ただ一つ事実でない六花を推していた真意については否定できるだけの根拠は無い。

「花梨前会長は負けた腹いせに後輩の邪魔をするような人じゃありませんよ。」

そうした葛藤とは無縁なのかフィーちゃんはきっぱりと否定の言葉を出した。

「おや、では彼女はなぜ六花さんを?」

「六花さんの方がいいと思ったからでしょう。」

意地悪く尋ねたかのんにフィーちゃんは不思議そうに答える。その答えにかのんだけでなく六花もぽかんとした表情を見せる。


「え…ずん子さんより六花さんが…?」

「何かおかしなことですか?フィーもずん子さんより六花さんが良いと思ったから今こっちについてます。」

「ちょ、ちょっと待ってフィーちゃん…!本気で言ってるの…?」

これまで地道な選挙活動を続け多くの支持を取りつけた。しかしそれらはずん子のことを知らなかったからだ。

六花のことも知らない。どっちもよく知らないしどっちになってもいいからわざわざ足を運んできた六花でいいかとなっているだけだ。

二人のことをよく知っていたら、ずん子への反感以外で六花を選ぶはずがない。六花自身もそういう認識でいた。

「それほど長い付き合いではありませんが、六花さんはアンドロイドの私を一人の生徒として迎えてくれています。部活動巡りや挨拶運動でも、たくさんの生徒たち一人一人のことをよく見ていました。六花さんは同じ背丈で相手と向き合ってくれる人です。私は六花さんに生徒会長になってほしいと思いました。」

六花は思わず目頭が熱くなる。正直なところフィーちゃんは成り行きで自分に付き合ってくれているだけだと思っていた。ちゃんと支持されているとは全く思っていなかった。


口元に指を当て何かを考えこんでいたかのんが口を開く。

「…勝てるかもしれない。」

六花とフィーちゃんを見つめながら言葉を続ける。

「白状すると私はこの生徒会選挙が激戦になるのを期待していました。形だけの対抗馬である六花さんを互角の対戦相手に引き上げ、戦いを荒らして東北ずん子の動揺を引き出したかった。しかし事ここに至っては、もはや勝てるかもしれません。」

「それは私が…」

「ずん子さんにです。」

フィーちゃんとかのんの言葉によって、六花の中にも勝てるのではないかという確信めいたものが浮かんできていた。雲をつかむようだったこれまでの活動に、実感が生まれ始めたのだ。

「とりあえず今はずん子さんの公約も聞きに行かなければなりません。すぐにお二人の主張をまとめて次の新聞を出します。続きはその後で話しましょう。」

「…もしかしてだけど、協力してくれるの?」

かのんは人差し指を唇の前に立てて答えた。

「新聞はあくまで公平です。ただし私個人については別です。」




新聞部の仕事は異常に早く、翌日には新しい学校新聞が張り出された。

六花とずん子の紙面の大きさは同じだったが、そこに生徒会のオブザーバーとしてフィーちゃんの意見も載せられていた。フィーちゃんは六花の支持者なので、実質的には六花にだけ応援メッセージがついたようなものになる。

しかし、アンドロイドのフィーちゃんがどちらかに肩入れしているとは誰も思わなかった。フィーちゃんは中立な立場で二人を見比べ、小春六花を選んだのだ。

夏色花梨の後継者ではなく、東北ずん子の対抗馬でもなく、小春六花という一個人にスポットが向けられる。そのきっかけとなった。


「六花さん。」

「かのんちゃん。」

放課後の中庭には再び六花、フィーちゃん、かのんが集まっていた。昨日の話の続きになる。

「結月ゆかりが反東北ずん子の集会を開いているのはご存じですか?」

「まぁ、噂には。」

「そちらと合流しましょう。」

かのんはメモ帳を開く。


「学校新聞の前に投票箱を置いておき、事前調査を行いました。先ほど集計したところ6対4で六花さんが優勢です。」

優勢という言葉にフィーちゃんが喜色を浮かべる。六花も口元がほころびそうになったが気を引き締める。

「どこまで信頼できるものなの?」

「100票程度入っていました。数自体は十分ですが、全校生徒が720人であることを考えると不安ですね。当然ですが学校新聞をわざわざ見に行く、関心の強い層の票になります。新聞の内容にも影響されているでしょう。」

「無関心な人たちの票は見えないか。」

「見えるようにする方法があります。火を広げることです。」

「…合流か。」

六花は渋い表情を見せる。頭によぎるのは見知ったあの顔。


「ゆかりさんとは旧知なのでは?」

「旧知だからこそだよ。下手に関わったらこっちが火傷することになる。」

「しかし彼女は危ういことをしているようで実際は一度も問題を起こしたことは無い。それに今回はもう一人まとめ役が居ます。ギャラ子先輩というのですがご存じですか?」

「その人は知らない。」

「ガラの悪い生徒たちを仕切っている者です。二人体制であの集団は非常に安定しています。」

「うむむ…」

「こう言ってはなんですが、乗っ取ってしまえばいいんです。反ずん子派はそのまま六花派になる下地があります。今あなたには風が吹いています。地盤を手に入れ、一気に勢力を拡大する絶好の機会です。」

「…フィーちゃんはどう思う?」

悩みに悩んだ六花はフィーちゃんに意見を求めた。自分を支持してくれてるのがわかってから信頼が増していた。


「合流する、乗っ取るみたいな話は置いといて、会ってみるといいと思います。六花さんに投票してくれそうな人たちなのは間違いないですし、そうでなくてもこの学校の生徒たちですので。」

「…そうだね。勝ち負けばっかり気にしてたけど、生徒会長になるための選挙だもん。ヤバそうな生徒達ならむしろ声をかけに行かないと!」

「それでこそ六花さんです!」

「話はまとまったようですので、あの人たちにも通しておきます。後はアンケートなども行って正確な支持率も調べてみましょう。」

立ち去ろうとしたかのんに六花が手を差し伸べる。

「一応今は味方同士だからさ。」

「…なるほど。」

かのんも手を差し出し握手を交わす。

「人に見られたら癒着だと思われますので。」

一瞬で手を離し、背を向ける。そのまま部室へと歩き続けた。

友情とか、親愛とか、そういうのを感じてしまった気がした。




新聞部の部室で、かのんは一人たたずむ。

昨日は新聞作成、今日は集計作業と酷使してしまったので部員はもう帰らせた。

集められた投票用紙を並べる。余裕を感じて合流を渋られても困るので六花達には嘘をついた。

9対1で六花が優勢。

当然と言えば当然。ずん子は未だに票集めに動いていないのだ。

おまけに昨日聞き出した公約はとてもじゃないが生徒の支持を集められるようなものでは…

このまま行けば間違いなく六花が勝ちずん子は負ける。

…このまま終わってくれるな。

全力で勝ちに行くが簡単に勝ちたくはない。

かのんの心境は複雑だった。



2026年5月2日土曜日

戸惑いのエチュード

茜に渡されたメモ

・バーの常連客。

・最近誰かに尾けられているのが悩み。

・留守中に自宅の物の置き場が変わっている気がする。タオルが一枚減ってるような増えてるようなというレベルで確証はない。


あかりに渡されたメモ

・二人とは高校時代の友人10年ぶりに再会する。

・葵はまじめ、茜はやんちゃな性格だった。

・茜は当時モテていた何度も告白していた男子も居たが、卒業まで誰とも付き合うことは無かった。

☆チャレンジ

修学旅行の宿泊場所の近くにある思い出深い海の写真を持っている。海水浴場のような場所ではなく、浜辺には木や石が転がっていて沖にはテトラポッドが並んでいる。

実際に写真を見せているように演技を行う。


葵に渡されたメモ

・10年前、修学旅行中に友人のマキが亡くなった。

・3日目の朝から行方がわからず、昼頃に海岸に打ち上げられているのが見つかる。海岸には衣服が畳まれておりマキは水着姿だった。夜中にホテルを脱け出して一人で海を泳いでいた最中の事故と判断される。

・葵、茜、あかりは修学旅行中行動を共にしており前夜も同室だったが、10時に消灯後、誰もマキを見ていないと主張している。

・ホテルに向かうバスで海が見えた時に、夜中に皆で脱け出して泳ぎに来ないかという会話があった。

☆チャレンジ

実業家として成功した茜が最近出した自伝を持っている。

実際に本を見せているように演技を行う。

〇目的

マキの死の真相について明らかにする。

〇秘密(会話の流れによって開示してよい)

茜を疑っており最近身辺を調べている。茜の行きつけのバーにあかりを呼び出し、話し合いの場を設けた。

茜は自伝の中で高校の修学旅行の思い出に

『浜辺には木や石が転がっていて足を取られながら歩いた。』

『ようやく海まで着くとどこまでも遮るものが無い真っ青な水平線が広がっていた。』

と書いている

バスで通りがかりにちらっと見えただけであり修学旅行中に遊泳禁止の海に行く予定は無い。

葵の知る限り茜は修学旅行中に海を訪れておらず、実はマキと一緒に海に行っていたことの告白なのではと考えている。



5分くらいで終わるかと思いきやちゃんと作り込んでしまったせいで20分になってしまった動画。手軽に作るためにエチュードにしたのに本末転倒である。

事件の状況は貴志祐介の「皐月闇」から着想を得ている。削ってしまったが実は茜とマキが付き合っていたという要素も入れるつもりだった。

二人きりで脱け出したのもそのためで、事件の動機は痴情の縺れ。高校卒業まで誰とも付き合うことは無かったのはマキのこともあるが同性愛者だからでもある。

「色褪せぬ恋」を抱いていたストーカーの男が決して茜に近づこうとしなかったのはその嗜好を認めていたから。

おまけのおまけとしてここに書き残しておく。

ついでに盛り込み切れなかった部分も。

・葵はカクテル言葉などに詳しい。ギムレットは「遠い人を想う」でマキへの哀悼の意を示すために頼んだ。「色褪せぬ恋」のジンライムはギムレットと材料が同じで何か意味深になったがただの偶然。カクテル言葉とは関係ないが花梨先輩には初心者的な意味合いでチェリーのにした。

・葵が口にした「マキはスイミングスクールに通ってたこともあって泳ぐのが上手い」という情報。これは弦巻マキ本人のプロフィールであり渡されたメモには無い。同じ演劇部員として全員知っていることであり、脚本にも流用されているだろうという目論見で話した。あまり本筋とは関係ない。

・葵が持っている本、あかりが見せている写真は実際には存在せず、ある振りで演技をしているだけ。バーの描写や登場人物の見た目と同様、あくまで動画上の演出。これは注釈を入れた方がいいかとも思ったがまあ察するだろと何もしなかった。

・沖に並んでるアレは離岸堤と呼ぶらしい。私も知らなかったので離岸堤と言われてもピンと来ないだろうとテトラポッドにした。厳密にはテトラポッドは構成物の一つだし数え方も一個なのか一基なのかとかわからないところがあるが、本筋とは関係ないので良しとする。



AIに相談してた時のプロトタイプ


1

とある演劇部の部員を登場人物とした動画で使います。

他3人の部員は部長からそれぞれ自身の役柄と固有の情報を与えられて演技練習を始めます。

部長がバーのマスターを演じ、部員Aがその客としてお酒を飲んでいると、部員Bが新たな客として入ってきます。

BはAに「久し振り」と声をかけますがAは戸惑います。Bに渡された情報ではAは子供の頃の友人なのですが、Aに渡された情報にはBのことは一切書かれていなかったからです。

更に部員Cも入ってきます。Cの渡された情報ではCがAとBをそれぞれ別の理由で呼び出したことがわかるのですが、彼らと会話を進める中でやはりCが持っている情報にも他の人の情報と矛盾があるようでした。

詳細は省くのですが部員たちはそういう矛盾があることも含めての演技練習なのだと推測して演じ切ります。

部長ならこういうことをしてくるだろうとメタ的な視点をもって対応したことを得意気に語りますが、部長からは諫められます。

本当に役に入り込んでいるなら、自分と相手の情報が食い違っていることに純粋に戸惑い狼狽えたはず。メタ的な視点をもって「演技」してしまった時点で演者としてはまだまだであると。

部員たちは手の内を読んだつもりで一杯食わされたことに気づき、悔しい思いをするのだった。みたいな感じの話で使われる多人数ゲームです。


2

男の元に高校時代の古い友人が訪ねてくる。

男は再会を喜び、歓迎する。二人で酒を酌み交わしながら思い出話に花を咲かせる。

その中で話題はかつて起こったある事故のことになった。修学旅行中に女生徒が一人亡くなったのだ。

3日目の朝から姿が見えなくなり、昼頃になって浜辺に打ち上げられているのが見つかった。 夜中にこっそり脱け出して海で泳いでいる最中に溺れたと思われていた。

悲しい事故だったと当時を思い返す男に、友人はずっと思っていた疑いを打ち明ける。あの夜、お前も部屋を脱け出さなかったかと。友人は男と同室で、男が部屋を出て行くのを見ていたのだ。

一人で夜の海に泳ぎに行くのは不自然で、誰かが一緒にいたのではないかという噂は当時からあった。

恋人とのロマンチックな秘密の一時だったのではないか。実は彼女には付き合ってる相手がいてそれはお前だったんじゃないか。

友人は男を問い詰める。

言いがかりだと否定する男に友人はもう一つの根拠を示す。実業家として成功した男は、先日自伝を出していた。その中で高校の修学旅行で訪れた海をこう振り返っていたのだ。

「どこまでも遮るものが無い真っ青な水平線が広がっていた。」

しかし実際は修学旅行の日程ではその海は訪れておらず、バスでの移動中にちらっと見えただけだった。泊まっていたホテルからは歩いて行ける距離だが、到着したのは夕方で海を見に行く時間は無かった。

いったいいつ見に行ったのか。

「高校を卒業して数年後に近くに行くことがあったんだ。彼女の冥福を祈るつもりで見に行った。その時の記憶と混ざってしまったんだろう。」

男はそう弁明した。

あのホテルにも泊まったのかという友人の問いに、男は日中にふらっと立ち寄っただけだと答える。

友人は悲しそうな顔で呟いた。

「俺も行ったんだよ…海を見てきた…」

 彼は一枚の写真を差し出す。

強い日差しの下、眼前に広がる海には巨大なコンクリートブロックが浮かんでいた。岸を波から守る、離岸堤だ。

男は思い出す。握っていた両手を放すと彼女の体は波にさらわれていった。

目の前にはどこまでも遮るものが無い真っ暗な闇が広がっていた。



備忘 立ち絵デカすぎ問題

psdファイルがデカすぎてaviutlでは不具合が発生することがよくある。

最大画像サイズの不足や純粋な処理落ちは既知だが、新しい別の問題があったので備忘のため記録。


問題が起こったのは例年容量の増大が深刻なぴぴ様の立ち絵。

ドラッグアンドドロップした時点では問題ないが、psdtoolkitからレイヤー変更を反映しようとすると黒背景白文字で「already rendered」と出てしまう。

普段はよく見ていないがファイルをダブルクリックするとこのようなスクリプトが記載されている。


〇冥鳴ひまり(成功)

o={ -- オプション設定

lipsync = 0    ,-- 口パク準備のレイヤー番号

mpslider = 0    ,-- 多目的スライダーのレイヤー番号

scene = 0    ,-- シーン番号

tag = 1607319451    ,-- 識別用タグ


-- 口パク準備のデフォルト設定

ls_locut = 100    ,-- ローカット

ls_hicut = 1000    ,-- ハイカット

ls_threshold = 20    ,-- しきい値

ls_sensitivity = 1    ,-- 感度


-- 以下は書き換えないでください

ptkf="C:\\Users\\Documents\\立ち絵\\ぴぴ\\めいめいひまり1.05.psd",ptkl="L.1 V.71ULhg2VWrY6iNhwAAmECAbwAwD9GAAEAgDvD9tthtm2222w28AAGGPAABYC2wK7_78Eu_Zt3dttsgAUUtt-Be753dtt3dtvvAL7_b3e9wJ3_Hve970C7v73ewK7_7oC7vj3u97ve_73ewK7_r3vAnfv31rbdu7bbbdu7tt27bbfe7YG3QK79W3d2397S23bu22_A3f5bbt2221-2wV3_Xbu2wJ3-G2739tu39ttBLv3bdu2229tu7dtAt3z27bbd3bb337fdu7dtwN393bbt2221tt3bgPu8-3bbb-7bd7-27d2224D7vjbd3bbbW7u7QK78m3d-223d2272_bdu7bbA3f2dtu3bbbfbbu3bQLd89u223d227nfbdu7bbcDd_xtu3bbAm3tt3btu7-7dttu7tt3-_9tu3dttgPu9vbbt2229tt3btsCu9i3bbbu7bf_EQIAI28A2uta1FfWq1rWgVOzq0769daBUVrWnbvbAMAA"}PSD,subobj=require("PSDToolKit").PSDState.init(obj,o)?>


〇春日部つむぎ(失敗)

o={ -- オプション設定

lipsync = 0    ,-- 口パク準備のレイヤー番号

mpslider = 0    ,-- 多目的スライダーのレイヤー番号

scene = 0    ,-- シーン番号

tag = 2025058663    ,-- 識別用タグ


-- 口パク準備のデフォルト設定

ls_locut = 100    ,-- ローカット

ls_hicut = 1000    ,-- ハイカット

ls_threshold = 20    ,-- しきい値

ls_sensitivity = 1    ,-- 感度


-- 以下は書き換えないでください

ptkf="C:\\Users\\Documents\\立ち絵\\ぴぴ\\春日部のつむぎ1.02.psd",ptkl="L.1 V.9JYOhgcbDgAEgIgG4AIA_wQFAOw_bbSBttttttttttgAAwxwAIFtuwZ39Xbbu7bba3gc4cttBrv0d223d22_5_23bu22A932227dttt7bd27twJ3827bbd3bb3ne27d2228Cd_h227dtttv_tgbdArv1bd3bb3sbbdu7bbcCd_h227dtttdttwV3Au7_2wK7-G3e_9t27tttA933tu3bbbe23du2Au797dttArvybe-v93f7ve973ve973sC3fHve27u7d_d73ve973ve70C7v7vewLd-f33_bdu7bYD7vjtt27bbb227gTd9Nu223d22739t27ttgPd-ttu7tttrQLd77f3bbu3bbbu7bd5323bu223Anf2dtu3bbbe23du2wK78rdttu7tt3vfm92-dfPnAp0CrwOfgD8-fPXr1-dfnrz_r587fXdu3r1t6229evXr129evT_T_XXr163ddfu_d79a15rzznnmvPPPPPPNa15rzW1zmvWrW66t1a3XXXXVuta1rXXXV2tXb_frWvNeea1rWvPPPPPNa1515ra5zXrVrddW6tbrrrrq3Wta1rrrq2tXb3Ag5IALbwDADAG27bZfNtgz9oTs63vvBLsGy2z


最後の「"}PSD,subobj=require("PSDToolKit").PSDState.init(obj,o)?>」が記載されていないのがわかる。

このptklという文字列はpsdファイルのレイヤー数や構造の複雑さによって決まってるらしく、これが長すぎたことで不具合を起こしたようだった。

対処法としては服装差分ごとにファイルを分けることにした。ぴぴ様の立ち絵は全体的にデカすぎるので、この機に他のも分割してもいいかもしれない。



めたん's Files

いつだか書いてた超常現象調査員めたんちゃんの続き。 一つ一つがそれなりの時間と労力で作れそうなのでボチボチやり始めたい。順番的にはたぶんこっちから。 ④夏の匂い 舞台はとある田舎町。過去視点。 中学生の少女、晴美は帰り道何度も背後を振り返る。 振り返っても何もいない。それでも歩き...