2024年1月11日木曜日

「不可触」「黒猫」「捨六」

怪談っぽい何か。

次の動画用。


『不可触』

近づいちゃいけないと言われていたその家に入ったのは好奇心からだった。

当時小学生だった私たち数人。学校終わりの夕暮れ時のことだった。

足を踏み入れた瞬間から私は嫌な感じがしていた。荒れている、汚れている以上の何かを感じ取っていた。

他のみんなは気づかなかったようで、はしゃぎながら家を物色していた。

彼らに混じるのは気が引け、私は玄関の方に突っ立って辺りを見回していた。

玄関脇に置かれた電話の隣、何かカラフルなものがあった。古いアニメのキーホルダーのようだ。

この家でも昔は家族が暮らしていたことが思い浮かび、申し訳ない気持ちになる。

みんなにもう帰ろうと声をかけようとしたとき、階段から物音がした。

彼らに混じるのは気が引け、私は玄関の方に突っ立って辺りを見回していた。

玄関脇に置かれた電話の隣、何かカラフルなものがあった。古いアニメのキーホルダーのようだ。

この家でも昔は家族が暮らしていたことが思い浮かび、申し訳ない気持ちになる。

みんなにもう帰ろうと声をかけようとしたとき、階段から物音がした。

背筋がぞっとした。みんなはまだ1階を見回っているはずだった。

階段からは物音が続いている。誰かが下りてきているのだ。

黒ずんだ素足が見えた時、私は悲鳴を上げて逃げ出した。

私の悲鳴に驚いて騒ぐみんなの声に混じって、何かの叫び声が聞こえた。

あー、あーという調子の外れた甲高い不気味な声だった。

振り返ると私と同じように逃げ出しているみんなの姿が見えた。そして開け放たれた玄関の先、家の中で大きな影が揺れていた。

そいつと目が合ったような気がして私はそのまま家に逃げ帰ることにした。

人通りのないあぜ道を駆ける。後ろからあー、あーとあいつの声が聞こえていた。追ってきているのだ。

私は泣きそうになるのを必死にこらえて走った。恐怖と後悔でいっぱいだった。

やっとの思いで家までたどり着くと、大急ぎで中に入り鍵をかけた。

磨りガラス越しにその何かの影が見える。

そいつはあー、あーと苦しげに呻きながら扉を叩いていた。

私は動けずにじっと扉を見つめていた。壊されてそいつが入って来るんじゃないかと思うと気が気でなかった。

何時間くらい経っただろうか。

玄関の向こうから怒鳴り声がしてあー、あーという声は遠ざかっていった。

鍵の回る音がして、扉が開かれる。両親だった。

母は今にも泣き出しそうな顔をしていて父は今にも怒り出しそうな顔をしていた。

「お前、あそこに行ったのか。」

父が低い声で問いかける。

「他に行ったのは誰だ。お前だけじゃないだろ。」

今まで見たことのない父の剣幕に隠し事なんてできなかった。私はあの家に行った全員の名前を言った。

父はどこかに電話し始め、私は母に2階の自室に連れて行かれた。

その日はご飯もお風呂もなく、私は布団にくるまって震えていた。

どこからかあー、あーという声が聞こえていた。


次の日の朝、父と母が部屋にやって来た。

母は泣きはらした顔をしていて父は神妙な顔をしていた。

「いいか。お前をこれからおじいちゃんたちの所まで連れて行く。車に乗るまで何も見えていないし聞こえていない振りをしろ。」

何が起こっているのかはわからなかったが、ただ頷くことしかできなかった。

タオルケットを頭から被ったまま家の外へ出る。途端にあー、あーという声が聞こえてきた。近い。

母に連れられて車の後部座席に乗り込む。遅れて父が運転席に乗り込んでくる音がした。

あの声はまだ聞こえていた。車をバンバンと叩く音も聞こえる。

車が走り出すとすぐに声と音は聞こえなくなった。

安心して顔を上げる。車のバックミラーに映るそいつの姿はすぐに小さくなって見えなくなった。


結局私はそのまま祖父母の元で暮らすことになった。

学校も転校することになり、一緒にあの家に行ったみんなとはあれから一度も会っていない。

父の話によると彼らには何事もなかったそうだが、実際のところはわからない。

父と母は数年の間は行ったり来たりしていたが、今はもう祖父母の元に腰を落ち着けていた。

大人になり私がこの町に帰ってきた時には両親と暮らした家は引き払われていた。

数年ぶりに懐かしいあぜ道を歩く。目的地はあの近づいちゃいけない家だ。

当時はわからなかった。

なぜあの家に近づいてはいけないのか。

私を追いかけ回したあいつは何だったのか。

今ならわかる。触れてはならない存在の正体が。

あの場所は更地になっていた。唯一の住人が死んでからすぐに取り壊されたそうだ。その痕跡を消し去るように。

死因は餓死だったそうだ。何かの事故で足を折ってから、治療を受けることもできずにそのまま亡くなったらしい。彼には助けの求め方もわからなかったのだ。

あの時持って行ってしまったキーホルダーを地面に供える。きっと家族との思い出の品だったのだろう。

「ごめんなさい…」

私はようやく言うべき言葉を口にできた。



『黒猫』

私は幼い頃施設で暮らしていた。いわゆる孤児というものだろう。

父の顔は知らない。母が私を育てていたが、ある日から帰って来なくなった。

ひもじさと寂しさに耐えていると知らない人たちがやって来て、私を施設に連れて行った。

施設での生活は悪くなかった。身の回りの世話はやってくれたし、私と同じような境遇の仲間たちも大勢いた。

不安がってる者たちも居たが、多くはこの場所を居心地よく感じているようだった。私も毎日の食事と寝床の心配が無くなっただけで充分だった。

私たちの世話をしてくれる人たちの顔は覚えたが、施設にはそれ以外にもよくわからない人たちが出入りしていた。年齢や性別、人数もバラバラでどういった目的で施設を訪れているのかはわからなかった。

私は彼らのことが嫌いだった。ジロジロとこちらを不躾に眺めてくる視線がとても不快だった。急に体を触られそうになった時さえある。

だがなんとなく彼らに逆らってはいけないということは理解していた。

時々仲間の中から彼らに連れられて施設を出て行く者がいた。施設で働いている人たちの話を盗み聞くと、どうやら今後は彼らの家で暮らすらしい。

今更また知らない人の家で暮らすのは嫌だった。だけどそうも言っていられないのではという疑念もあった。

施設に居るのは子供だけだ。長く暮らした者たちは皆どこかしらに連れて行かれた。

ずっと居ていい場所では無いのだろう。誰にも引き取られなかった場合はどうなるのか。それを考えると母が帰って来なくなった頃のような焦りと不安を感じた。

自分の立場を弁えて大人しくしていたことが好意的に映ったのか、私はある日施設から連れ出された。

相手は女の人だった。若く見えたが目を凝らすと化粧の下の皺は思いの外深かった。

私は一抹の不安を胸に新たな住み家へと旅立った。


女との暮らしは結論から言って最悪だった。

最初こそ私を必要以上に可愛がりあれこれと買い与えていた女は一月も経たずに私への関心を失った。

私の世話をすることは無くなり、食事も時々しか貰えなくなった。そのことに不満を訴えると無言でお腹を蹴られた。

女は夜遅くまで帰って来ず、その間私は部屋の中にずっと閉じ込められていた。女はいつも酔っ払っていて帰るとすぐにベッドに寝転がっていびきを立てていた。

幼少期のひもじさと寂しさを再び噛み締める日々だった。

だがそんな生活にも救いはあった。

気に入らないことがあった時、来客があった時、女は私をベランダに追い出した。

そのまま逃げてしまいたかったが地面ははるか遠く飛び降りる気にはならない。

私がベランダで泣いていると隣のベランダから声がかかった。

「大丈夫かい?」

私はその声に導かれるように隣のベランダへと乗り移り、彼の部屋を訪ねた。

彼の部屋は整然としており、棚には分厚い本がいくつも並べられていた。興味深そうに眺めていた私を彼は突然抱きかかえるとお風呂場に連れて行った。

びっくりして思わず爪を立ててしまった私の頭を優しく撫で、心配ないと囁く彼。私は暴れたことが恥ずかしくなってじっとしていた。

体を洗われ、ドライヤーをかけられる。施設に居た頃にもやってもらったことがある。

私がうっとりしていると彼が頭を撫でてきた。

彼の手が徐々に下がっていく。首筋、肩、背中、お腹。

彼を見つめる。彼は穏やかな微笑を浮かべていた。

私は目を閉じ、されるがままにしていた。


それから私は彼の元へ足しげく通うようになった。

季節が夏に変わりベランダへ続く窓が開け放たれたままになったことで、隣室への移動は容易になった。

彼は私が望んだ全てを与えてくれた。清潔な環境、きれいな体、美味しい食事、そして愛情。

私はいつしか彼と一緒に暮らしたいと望むようになった。

ある日、玄関を出たところで女が誰かと揉めていた。声は聞こえないが相手はどうやら彼のようだ。

勝手に私の世話をしていたことがばれたのだ。女は一体どういう神経をしているのか彼に怒りの言葉をぶつけていた。

このままではまずい。彼との仲を引き裂かれることは私にとって精神的にも生活的にも許容できないことだった。

私は決断が迫られていることを理解した。


女はその日も酔って帰って来た。

仰向けになって眠る女に気配を殺して近づく。傍らのクッションを女の口と鼻が塞がれるように乗せて押さえつける。

ここからが勝負だ。きっと暴れられるだろうが何とか窒息死するまで持ちこたえなければならない。

もし跳ね除けられたらベランダに誘い込んで転落死を狙おうと考えていると、女が大きく跳ねた。クッションを押さえつける腕に緊張が走る。

だがそれからいつまで待っても予想していたような激しい抵抗は起こらなかった。

数十分が過ぎたことを確認してクッションをどかす。女は息をしていない。

こんなに呆気ないはずがないと思ってもう1度クッションを顔に乗せ、押さえつけるというより乗っかった。女は何の反応も示さなかった。

朝が来るまで私はそうしていた。

隣の部屋からの物音で彼の起床に気づき、クッションから降りる。

呼吸音は聞こえない。どうやら本当に死んだようだ。

私は実に清々しい気分になってベランダに飛び出し隣の部屋に移った。

私の姿を見つけた彼は少し逡巡していたが、窓を開けて私を招き入れた。

「ダメだって言われてるんだけどね。」

もうそんなことを言う奴はいない。苦笑いを浮かべる彼に目一杯ほおずりする。

「今日はずいぶんご機嫌だね。」

私は彼の問いかけに応えるようにニャーと鳴いた。



『捨六』

「いたか!?」

「いや、まだ見つからない!」

吹雪の中、村の男たちが総出で捜索に当たる。

捨六が村を飛び出してすぐに皆で追いかけた。まだ遠くには行っていないはずだ。

この雪だ。身動きが取れなくなればすぐに埋もれてしまう。そうしたら春まで見つけることはできなくなるだろう。

太一は歯を強く嚙み締める。俺のせいだ。俺が不用意にあんなことを言ったから。

捨六はどこぞの農村から流れついた十五、六の子供だ。要らない六男坊、口減らしのために村から追い出されたのだろう。

この寒村では人手が足りていなかったこともあり、村全体で面倒を見ていた。捨六は手先が器用で、狩猟道具の手入れに重宝していた。

太一は捨六をよく可愛がり、狩りに連れていくこともあった。だが捨六は所詮余所者、村人たちからはやはり一線を引かれていた。捨六がそのことに気づいていると知っていたのに。

地面に転がる黒い影に気づく。

「捨六!」

とっさに大声をかける。

影はビクリと体を震わせ、白い顔をこちらに向けた。捨六だ。

「探したんだぞ。さあ一緒に帰ろう。」

大股で捨六に歩み寄る。捨六は首を振りながら後ずさった。

「大丈夫だ。もう心配いらない。お前は勘違いしてるんだ。」

不安を拭うように優しく笑いかける。

「お前は村の一員だ。そんなことあるもんか。そうだ、春になったら俺の銃を撃たせてやる。お前撃ちたがってたろう。」

座り込んでしまった捨六に手を差し伸べる。

捨六は恐る恐る手を差し出し、太一の手を掴んだ。

太一はそのまま捨六を引き寄せると、もう片方の手に握っていた鉈で捨六の頭を叩き割った。

一瞬の出来事で捨六には何が起こったかわからなかっただろう。

動かなくなった捨六を引きずりながら太一は村へと急ぐ。

今年の冬はとりわけ厳しく、獣一匹鳥一羽見つからなかった。だから仕方ないのだ。

春はまだ遠い。



2024年1月5日金曜日

町の人々の設定

せっかくなんで他の人たちの設定も掘り下げておく。

他校の人々と町の人々。


春日部つむぎ 

地元春日部市をこよなく愛する埼玉ギャル。

親の転勤によりこの町への移住が決まったときは大泣きした。

自由な校風の私立高校に入学する。

1年時ははう、ひまりとクラスメート。はうとはすぐに打ち解けたがひまりと仲良くなったのは3学期になってから。

2年時はクラス替えによりはう、ひまり以外の下記のメンバーともクラスメートに。何かとトラブルを起こすひまりの保護者扱いとなる。

交友関係が広く、公立高校に通うマキとは友人。そのつながりで演劇部の活動にも参加する。

関東の大学に進学して埼玉に帰るつもり。地元の友人とは今も連絡を取り合っている。


冥鳴ひまり

ユーチューブで動画投稿や配信を行うゴシック系少女。

撮影中うるさいため実家からは追い出される。

学校は休みがちだが今のクラスのことは嫌いじゃない。

2年になりミコや小夜、玄野ら男子3人により容赦ない罵詈雑言を浴びせられるようになったことで、かえって問題行動がネタとして昇華されそういうキャラとして受け入れられるようになる。

1年の時は腫れ物扱いで、つむぎ、はうと仲良くなってからも「あの二人はあの子とも仲良くしてて偉いね」という感じだった。

小学校の頃は友達のいない大人しい子で中学校ではおかしな態度や言動をする痛い子だった。高校ではユーチューブを始めて自分の活かし方を模索するようになる。

一部の界隈では人気になったが自立できるほどの収入はなく、将来ユーチューバーになるという夢も正直本気で考えてはいない。

普段の言動や態度ほどいい加減な人物ではなく実態はかなり悲観的。


雨晴はう

なぜか常にナース服を着用している少女。そのデバフを乗り越えて優等生ポジションを獲得するほどの圧倒的な優等生力を誇る。

子どもの頃に持病の悪化により入院。担当医だった剣崎は彼女の治療を行うだけでなく、休みがちで友人のいなかった彼女の話し相手となる。

治療の甲斐もあり数年後にはうは完治。その後はナースを目指すようになる。

ナースを目指すこととナースのコスプレをすることに一体何の関連性があるのかは理解が得られていない。

退院後も剣崎との交流は続き、はうは恋心にも似た憧れを抱き続けている。

なお、つむぎやひまりからは恋愛感情だと断定されている。


櫻歌ミコ

小柄な犬っぽい少女。

小夜とは入学以来ベッタリな仲。リツとは幼馴染である。

新しいクラスになってばかりの会話でつむぎにより「みこっち」のあだ名をつけられるが、ひまりの「ひまっち」と響きが似ていたためこれを拒否。「みこちー」となる。

ひまりのことは嫌いと言いつつ自分から絡みに行ったりスキンシップ時に頬を赤らめたりと怪しい態度が目立つ。


小夜

小柄な猫っぽい少女。

ミコには友情を超えた重い感情を向ける。他の人にはあまり興味がない。

つむぎにより「さよちー」と言うあだ名がつけられる。あだ名自体に必要性を感じていなかったが、ミコが「みこちー」となったことで一転あだ名呼びを推奨し始める。「みこちー」「さよちー」でペアとなるのが気に入っている。

特に恨みはないがミコとの距離感が怪しいためひまりのことはホントに嫌い。


波音リツ

長身で絢爛な出で立ちの少女。

ミコとは幼馴染だがサバサバした関係。

一歩引いた所から周囲を見通していることが多い。

余談だが使用している立ち絵にどう見ても胸があるので男の娘設定は無視することが決まった。


WhiteCUL 雪

和風な出で立ちの少女。

風雪月花4姉妹の次女。忍術が使えるかは未定。

どことなく挙動や言動がおかしいが真面目で一生懸命な女の子。

クラスでは学級委員長を務める。


玄野武宏

身長はやや高め、痩せ型、黒髪短髪のあまりにも普通の男子高校生。

虎太郎、龍星、朱司とは小学校からの付き合い。

ごくごく一般的な思春期の男子の感性をしており、クラスの女子を意識することが多い。

距離感の近いつむぎ、誰にでも優しいはうにドキドキし、ひまりにも俺だけがあいつの良さをわかってる的な感情を向けている。

一番まともそうに見えて一番馬鹿である可能性は高い。


白上虎太郎

小柄な男子高校生。帽子で高さを盛っている。

身長が低いことがコンプレックスで他3人のことを羨んでいる。

武宏や龍星には子ども扱いされたイジりを受け、内心ブチギレている時もある。

色恋のことはまだよくわからないが、クラスの中だと努力家の雪のことを好ましく思っている。

クラスの男子3人の中では最も女子からの評価が高いが、他は「玄野」、「青山」なのに自分だけ「コタロー」と呼ばれていることにモヤモヤしている。


青山龍星

大柄な男子高校生。天性のガタイの良さ。

身長190cm、体重90kgの体躯は同年代の中で圧倒的であり、スポーツや格闘技に頻繁に勧誘される。なお、全て断っている。

見かけほど落ち着いた性格をしているわけではなく、そういう役回りを期待されるのも嫌い。

体ばかりデカくなったが頭は追いついておらず、まだまだガキだしガキでいたいと思っている。そういう考え方をする時点でもうガキではないのかもしれない。

琴音と恋人未満みたいな空気感を出したことで玄野に裏切り者認定される。それから恋バナや猥談をすると思い出したように非難される。


雀松朱司

メガネをかけた長身の男子高校生。

物語終盤であなた達の役目はここまでですと言って背後から撃ってきそうな見た目をしている。

2年生のクラス分けで朱司だけ別のクラスになってしまい、毎日寂しい思いをしている。

冷静沈着なイメージを持たれているが別にそんなことはなく、玄野ら3人とバカ話をしているときが一番楽しい。

女子によくモテるため中学時代に玄野から裏切り者認定を受けている。


麒ヶ島宗麟

隣のクラスの担任。還暦も見えてきているおじいちゃん先生。

流行に敏感で若者文化にも造詣が深い。

武宏、虎太郎、龍星、朱司とは旧知の仲であり信頼も厚い。

別のクラスの担任である後鬼が近寄り難い空気を放っているため、生徒の相談事は宗麟に集まっている。

以前一緒に働いたときより雰囲気が重くなった後鬼のことを心配している。


紡乃世琴音

隣のクラスの女子生徒。

1年時は龍星、虎太郎と同じクラスだった。その間に龍星との距離が縮まる。

初めは怖い人かと思ったけど話してるうちに優しいところとか子供っぽいところとかがわかっていつからか姿を見たら自然と駆け寄ってしまうようになった。みたいな感じ。

何か一つ人が死ぬ感じではない学園ミステリを入れて補完したい。


剣崎雌雄

町のお医者さん。

誠実で善良な町医者で特に書くことがない。

はうのことは憎からず思っているが恋愛感情は一切無く、はう側が恋愛感情を持っている可能性も全く考えていない。

メスの付喪神である設定は恐らく採用しないが、完全に否定するような情報は動画内で出さないようにしておく。


TTちゃん

ナース型アンドロイド。複数体存在。

剣崎が勤める病院で働く医療用アンドロイド。はうが入院していた頃はまだ実装されていない。

全てのナースが彼女に置き換わったわけではなく、あくまで人手不足を補う存在。

機能的にはナースの代替となり得るが経験や勘、信頼といったものが求められる局面ではあまり役に立たない。また、機械に対する漠然とした嫌悪のようなものも未だ残っている。

剣崎のことは助けた少女にナース服を着せて病院に通わせている危険人物と判断している。


アンドロイドに関して。

作中世界では人工知能を搭載したアンドロイドが一定数社会進出している。

九州そらは宇宙空間における人工衛星の整備を目的とした工業用アンドロイド。宇宙飛行士の作業を代替する補助員の役割も兼ねているため人型をしている。

一般に工業用アンドロイドの人工知能はあえて低スペックに抑えられている。これは人格が形成されると過酷な環境や単調な作業に不満を覚える危険性があるためである。

なお作中の九州そらは電子生命体に乗っ取られているためその限りではない。

TTちゃんは医療用アンドロイドであり、他の医療従事者や患者との対話を行えるように高スペックのAIを積んでいる。

機械は作られた理由、定められた役割に殉じることが最も幸福と考えており、人に近い知性を持ちながら人よりもネジや歯車に共感と憧憬を覚える。

フィーちゃんは汎用型アンドロイドであり、最高スペックのAIと限りなく人間に近いボディを持つ。

人間の感情機能を完璧に再現しようとした結果、作業速度も精度も落ち情報伝達にも齟齬が生じやすくなっている。早い話ポンコツ。

TTちゃんからは愛玩用アンドロイド、九州そら(電子生命体)からは人の模倣物と評される。


劇場版演劇部 緋色の絆

月読アイが 演劇部の元を訪ねてから数日後、旧演劇部の残した物品の整理を行っていたゆかり達は当時の活動記録を発見する。

最初は楽しい部活動の日々が記されていたが、顧問の男性教師を巡り部員の少女たちの関係は不穏なものになっていく。

ゆかり達は過去の記録を元に当時起こった事件の謎を解き明かしていく。


旧演劇部

月読アイ

高校1年生。

唯一の1年生部員で皆から可愛がられる。現在の老獪な姿とは異なり天真爛漫な様子が記される。


火野

高校2年生。

活動記録の作成者。2年進級時より思いつきで演劇部の記録を取り始める。なお3年生の引退を以て演劇部は廃部となったので記録は1年分のみ。


水島

高校2年生。

火野とはクラスメート。お調子者の火野とは対象的に落ち着いた性格。火野からは最も信頼を寄せられている。


木戸

高校3年生。

演劇部の脚本担当。土屋とはクラスメート。金井は別のクラス。

感情の起伏に乏しく火野からはよくわからない人という評価を受ける。


金井

高校3年生。

演劇部部長。明朗快活だが圧が強い如何にも演劇部然とした人物。土屋とはライバル的存在でもある。

演劇部の活動は彼女を中心として行われる。


土屋

高校3年生。

演劇部副部長。美人で演技も上手いと火野からは尊敬されている。

金井をあしらいつつ木戸の面倒を見る保護者ポジション。


日坂

男性顧問。

演劇への造詣が深く、劇団員を経験したこともある。

俳優のような二枚目で、女子人気が高い。



詳細はまだ。


採用されるかわからない裏設定

東北ずん子周りは固めたので他のもついでに。

こっちは動画に出るかもしれないけどまだ仮決めなので採用されるかは未定。


桜乃そら

27歳。確定ではないがセイカよりは上。

高校時代はバレー部。大学では演劇サークルに所属。

卒業後は教員に。バレー部の顧問を担当。

担任するクラスの生徒、結月ゆかりに頼まれ演劇部の顧問を掛け持ち。

ゆかりのことはやや心配だが茜を初め多くの友人に囲まれるようになってからは安心して見守っている。

高校に不法侵入してきたセイカを流れで居候させるようになる。同居自体は認めているがセイカの生活が不規則なことが悩み。

生徒想いではあるが生徒と必要以上に仲良くなろうとはしない優秀な教員。


月読アイ

演劇部のOB。年齢不詳。

演劇部が廃部になったのは10年以上前なのでそれ以前に在籍。

数年振りに演劇部が創部されたことを知り訪ねてくる。

セイカと違いきちんとアポイントをとっていたが、見た目が明らかに幼児なので制止される。

体が成長しない体質なのかある程度まで成長すると若返り始める体質なのかは未定。後者の場合は老化と若返りのサイクルを繰り返して永遠に生きそう。

自分のことはあまり語らず、当時の活動や現在の職業なども不明。

旧演劇部が廃部になる前の記録を元に当時起こった事件を推理。ゆかり達が彼女の秘密に迫る劇場版を構想している。


伊織弓鶴

つむぎ達が通う私立高校の1年生。

親元を離れて一人暮らしをしており、従姉妹の琴葉姉妹が時々様子を見に来る。

複数のブログやチャンネルを運営しており、それなりの収入がある。

自由な生き方を求めており、家族や学校にも縛られるのを嫌がる。

人生に退屈さを感じていたが、ついなと鬼の戦闘を目撃したことでそっちの世界に興味を持っていく。

ついなを自宅に連れ込んでいたことが琴葉姉妹にバレて信用を失う。


如月ついな

中学2年生。リリンやつくよみの同級生。

私生児で無戸籍者。小学校に上がる年齢になる前に山中に置き去りにされる。

飢餓状態に陥った際に能力者として覚醒。エネルギー体を捕食する異能を手にする。

その後は自然発生する妖魔を喰らって命をつなぐ。中でも鬼と呼称される人型の妖魔を好んで捕食する。

鬼は知性を持つ者も多い高次エネルギー体であり、捕食した際のエネルギー効率が高いだけでなく、彼らが持っていた知識や技術を奪えるという利点がある。

長く京都近郊の山中で過ごしていたが、獲物を狩り尽くしたことで人里に近づき目撃情報が増加する。

ついなはもはや人の心も人の姿も残してはいなかったが、人間を見ると怯えたように逃げ出した。

調査にやってきた槍を持った超能力者に発見され、戦闘になったことで手傷を負い逃亡する。

山中に身を潜め瀕死の状態であったが、噂を聞きつけて物見に来ていた後鬼に助けられる。

保護された後は後鬼により戸籍を偽造され養子となり、人間社会に復帰するための教育を受ける。

捕食対象である後鬼との生活は彼女にとって耐え難いものだったが、徐々に自我を取り戻し中学からは学校に通い出す。

中学ではほとんど馴染めていない。

エネルギー体を捕食せずとも通常の食事で生きられるが、慢性的な飢餓感に苛まれる。

妖魔を見るとつい捕まえて口に運んでしまう悪食が治らない。恩人だと頭では理解している後鬼に対しても捕食衝動がある。

森で鬼を狩り、喰らっているところを伊織に目撃される。後鬼にまだ鬼を喰らっていることがバレるのを恐れ、伊織の好奇心に付き合うようになる。

人間全般に対して拭い切れない恐怖心がある。


後鬼

1000年以上生きた鬼。

普段は高校の女教師として生活している。姓は如月。

人型の妖魔の噂を聞きつけ、話が通じる同胞であったら教えを施そうと立ち寄る。

ついなを一目見た時にかつての主、役小角の末裔であると気づく。

多大な恩を受けておきながら子々孫々まで守り続けなかったことを恥じ、後悔と自責の念に駆られる。

以降はついなを主とし、生活全般を支えるようになる。

ついなに捕食衝動を向けられていることに関しては、自分が食べられることで1000年の知識と技術を渡せるならそれも一つの手と考えている。


リリン

中学2年生。ついなやつくよみのクラスメート。

金持ちのお嬢様。話し方や態度がメスガキっぽい。

孤立しているついなに積極的に話しかけ、学校生活をサポートしているが心を開いてはもらえていない。

魍鬼と呼ばれる人間の陰の気に群がる卑小な妖魔がおり、大抵の人間は数匹から数十匹体内に飼っている。リリンは陰の気が極端に少なく魍鬼がいないため、ついなの食欲が刺激されず付き合いやすい。

悪意を向けられることも悪意を向けることもなく生きてきた本物の善人であり、あえて悪く言えば頭空っぽのお花畑である。

その健全さがついなにとっては毒であり、つくよみにとっては薬である。


つくよみちゃん

中学2年生。ついなやリリンのクラスメート。

人間の振りをして社会で暮らす人外。妖怪や魔物よりは精霊に近い。夢前月夜を名乗る。

人間の願いを叶えることを存在理由としていたが、年を経て自我が強まったことで自分の役目に疑問を持つようになる。

良い願い、悪い願い、好きな人間、嫌いな人間といった区分を持ち始め、誰のどんな願いを叶えるか自分で選ぶことを決める。

その後は各地を放浪し気に入った者の願いを叶えるようになる。

リリンの友達になってほしいという願いに応え、中学に転校してくる。なおリリンは普通の少女だと思っている。

転校初日から天敵のような鬼娘と出会いビビり散らかす。通常つくよみのようなエネルギー体は死とは無縁だがついなに捕食された場合はそのまま消滅する。

リリンとの楽しい学校生活を送るため、ついなには必死で正体を隠している。

肉体年齢を自由に変えることができ、成人状態では夢前月夜の姉として振る舞う。


アリアル、ミリアル

魔術師系の能力者。

アリアルの方がエネルギーの器は大きいがほとんど同程度。戦闘力としてはうさぎよりは強くめたんよりは弱いくらい。ただ魔術師なのでやり方次第。

特に悲惨な過去はなく、元々いた場所が暮らしにくくなったため移住してきただけ。



エネルギー体に関して。

妖怪、魔物は文化圏の違いによる呼称の違いであり、ほぼ同一のものである。妖魔、化け物、怪物といった呼び方もある。

精霊はそれらより純度の高い存在とされ、信仰の対象となることもある。幼体を妖精、神格を得たものを神霊と呼ぶ。

付喪神や祟り神など、区分が曖昧なものも多い。

一般に妖魔が人間の陰の気を好み、精霊が陽の気を好むとされる。人を襲うかを区別点とする思想もあるが、人を襲わない妖魔、人を供物とする精霊も居るため定義としては不十分。

人間に対しては精神エネルギーを吸収する、肉体ごと取り込むなどの方法で捕食者対被捕食者の関係にある。ついなの場合は捕食者対捕食者となる。

能力者ではない人間もエネルギーを肉体分保持し、精神エネルギーとして漏出させている。もちろん超能力者や魔術師などエネルギーの器を持つ者の方が食料としては魅力的。

精神エネルギーに関して。

強い感情を抱いた際に肉体を維持しているエネルギーが漏出したもの。あるいは肉体が死滅した時に残るエネルギー残渣。

正負の区分があり、負のエネルギーは怒りや悲しみ、正のエネルギーは喜びや信仰心など。陰陽の気と同じ意味。

精霊の純度が高いというのはこうした人間由来の精神エネルギーと天然由来の自然エネルギーの比率が極端という意味である。人工100%あるいは天然100%に近い。

精神エネルギーに残った人間の意識や記憶が妖魔や精霊に反映されることもある。これを死後エネルギー体に転じたと言っていいのかは連続性の観点から議論が続けられている。

実体化と霊体化に関して。

エネルギー体は基本的に霊体であり、一部の能力者にしか視認できない。この状態では封印や土地の浄化でしか倒すことができないが、逆に霊体側も攻撃はできない。なお霊体化した状態でも霊障と言われる肉体的不調を受ける場合もある。

実体化するとお互いに物理的な攻撃が可能となる。力を増したことで常に実体化している場合や特定の条件を満たしたときのみ実体化している場合がある。実体を破壊されると霊体に戻るのではなくエネルギーが霧散する。その後は封印や土地の浄化で復活を防げる。

実体化できない低次エネルギー体から実体化と霊体化を自由に切り替えられる高次エネルギー体まで幅広く存在する。実体化の多くはそれっぽい形をしているだけだが後鬼やつくよみのように肉体機能まで完璧に作り出している者も居る。

エネルギー残渣である幽霊も同様の働きがあり、幽霊における実体化は怪異化と呼ばれる。怪異化が起こると多くの場合人格を失いそのまま妖魔となる。幽霊がそのまま精霊へと転じる可能性もあるが、故人の精神エネルギーを元にした精霊と見分けがつかない問題がある。

死後のエネルギー残渣すなわち幽霊から精霊となった場合は、幽霊と生前の人間の同一性を認めるならであるが故人が精霊になったと言える。自然発生した精霊が故人の精神エネルギーを取り込み記憶や人格を受け継いだならば、それは自分のことを故人だと思い込んだ精霊となる。

この部分を明確にしようと行われた聞き取り調査により、人間に友好的だった神霊の精神崩壊と暴走を招き死傷者が出た。以後同様の調査や考察は禁止されている。


2024年1月3日水曜日

東北ファミリー裏設定

東北ずん子関連の裏設定。

試しに冒頭部分を書いてみたら長くなっちゃったのでこっちに改めて書く。

果たして表に出ない物語をここまで作り込む必要があるのか。


東北ずん子

エネルギーを吸収、放出する能力。ランクはS。

能力者としての器が桁違いに大きく、日常的に保持しているエネルギーだけで街を吹っ飛ばせる。

自然蓄積される分だけではなく熱や電気のエネルギーも変換して貯蔵できるため、兵器としても資源としても狙われるようになる。

補足になるがずん子やめたんが利用しているエネルギーというのは、他の超能力者が利用しているものと同じであり、魔力や霊力あるいは生命力とも言い換えられるようなものである。

このエネルギーは天から降り注いで大地に還り、大地から湧き出て天へと昇るといった循環を繰り返している。生命体はこのエネルギーを取り込めるが、自身の肉体分しか保持できない。

能力者はコップのようなものを持ち、自分の肉体の維持以外に利用可能な余剰エネルギーを持てる。これを使って超能力を使用しているとされる。

エネルギーは時間経過で自然に貯まり、コップに入り切らなくなれば溢れる。使い切れば能力は使用できなくなるが、エネルギー操作に長けた者なら生命維持に用いられている分も使用可能。もちろんそしたら死ぬ。

あくまでこの理論は仮説であり、めたんのような一部の能力者しかエネルギーは観測できない。めたんが所属していた組織ではこの仮説を下に超能力や魔法を学術的に解明しようという動きがあった。

ずん子に話を戻すと、自然蓄積か他の生物からの抽出以外で充填不可能なエネルギーを能動的に取得可能、しかも膨大に保持できるという点からSランクを認定された。

能力自体は先天的に持っていたが余剰エネルギーを抱える必要がなかったため、超能力者としては目覚めていなかった。

雷に打たれた際、肉体の破壊を防ぐため熱と電気を変換吸収。それを受ける器が形成された。

その後は巨大な器にエネルギーが自然蓄積され続けている。

ずんだもんは心理的ストッパーあるいは制御装置に類する存在であり、エネルギーの放出にはずんだもんを介する必要がある。

攻撃方法はずんだもんの弓形態を使用したエネルギー弾。樽の底に穴を開けたら勢いよく中身が吹き出すようなものであり極めて大雑把。

強力な能力者だがそれ故に小回りが利かず、他の能力者を感知できないなどの弱点がある。

知能や身体面、精神面でも優れているが、逆に優れていない他者に対しては冷淡なところがある。

姉のイタコや妹のきりたん、友人のめたん、そら、うさぎ達のように自分が認めた相手にはどこまでも愛情を向ける。

異能とは関係なく血筋によって常人より筋密度が高い。その程度はずん子、イタコ、きりたんの順に大きく、ずん子が一族で最も強い。

そうした身体的特性もあり、最も優れた人類として選定されている。


四国めたん

エネルギーを抽出、譲渡する能力。ランクはB。

先天性の超能力者。小さい頃からエネルギーを譲渡して動植物を元気にさせていた。

自分のことを魔法使いだと思っていたが、エージェントの接触により夢を失ってしまった。冷めた目で能力を磨いた結果、エネルギー操作を自己強化という戦闘向きの使い方に昇華させる。

エネルギーの他者からの抽出、他者への譲渡は拒まれた場合は行えない。できないというよりはやらないという心理的ストッパー。

殆どの超能力者が認識できないエネルギーを観測できる、エネルギー理論の生き証人となり得る稀有な能力者。

実家の四国家が没落したことで再興の資金を貯めるためにエージェントになった。

自身の戦闘センスに加え、エネルギー観測による探知能力、エネルギー譲渡による救護能力が高く評価されている。

火力の低さを補うため魔槍「天恵のハイド」が供与されている。彼女のために作られた一点物で組織からの期待を込めたプレゼントでもある。

ずん子の元へ派遣されたのは友人としての適性、調査官としての適性に加え、格上でも倒し得るという信頼によるものである。

ずん子の捕縛命令を拒否し組織を離反してからはホームレスになる。組織とは完全に敵対してはおらず、その後も情報のやり取りは行われている。

ずん子を親友として大切に思いつつも、完璧主義が過ぎる部分に危うさを感じている。もしものときは自分が抑止力になると決めている。

エネルギー探知によってメタンハイドレートを掘り当てるという一攫千金の隠し玉がある。


東北イタコ

未登録の超能力者。推定ランクはC。

感応型の不安定な霊能力。死者の声を聞く。失せ物を探す。人の秘密がわかる。

ずん子が能力者であることに気づき、危ない真似はさせないようにしていた。雷に打たれたのは本当に想定外。

ずん子の能力に関することはめたんに任せている。ずん子に親しい友人ができたことを保護者として喜んでいる。

余談だが登録済みの超能力者は全体の6割程度と言われる。3割ぐらいは組織の予知に引っかかり、残りの3割はトラブルを起こして発覚する。他は潜伏しているか無自覚。

正体。

狐の式神を使役する能力。推定ランクはA。

式神に力の大半を持たせ亜空間に隠匿することで力量を隠していた。

熱のない青い炎を操り、空間転移を行える。

その力で妹たちを陰ながら守ろうと考えていたが、ずん子の方が強かったためパワーアップを目指し恐山に修行に向かう。

イタコがずん子よりも強くなって守るより、めたんのように一緒に助け合って戦うことを選んだ方が効果的である。

中学3年生のずん子にとって姉が突然青森へと旅立ったことは大きなストレスだった。

そういう気が回らないところは不器用な姉である。


東北きりたん

無能力者。暫定。

小さな頃はたんちゃんという妖精がいたらしい。幼児期特有の空想なのか本当に能力者なのかは不明。

姉二人も同様の存在を使役する能力者なので、彼女もそうである可能性は高い。幼少期だけ能力が使え、大きくなると力を失うケースは多い。

たんちゃんのことを掘り返されるのはきりたんにとって死ぬほど恥ずかしい。

めたん曰くひた隠しにするよりあけすけにしてしまった方が興味を持たれないとのことで、ずんだもんが不思議な存在であること、めたんが傷を治せることのみ教えられている。

二人のことは半信半疑のまま受け入れている。

イタコとずん子からは甘やかされつつも情報を制限されて育ったため、両親が家に居ない理由や自分の体質などわからないままになっていることが多い。

きりたんが同年代と比べて体重が重いことに悩んでダイエットを試みた際、初めて筋密度が高い一族であることが明かされた。

他にも何か隠し事をされてることには勘づいている。


ずんだもん

ずん子の使い魔的存在。

雷の衝撃と超能力の覚醒で突発的に生まれたためかずん子との主従関係が結ばれていない。

ずん子の抑圧された幼さを元に構築された。わがままで自分勝手、愛情に飢えている。

自分がどういった存在なのか本人もよくわかっておらず、ずんだの妖精を自称している。

東北家にペットのような扱いで居候しており、疎まれながらもそれなりに可愛がられている。人型になったのはここ最近。

能力者以外にも姿が見える。ずん子からエネルギー供給を受けずとも食事によって体を維持できるなど、他の使い魔とは異なる特性が多い。

独立した1個の存在であり、生命体に近いと評される。

イタコの式神であるNHK(ニヒルでハンサムなキツネ)からは性格的には嫌悪されつつも、その特異性から強い関心を向けられている。

ちなみにNHKはイタコから独立して自由になりたがっている。


中国うさぎ

見た者の衣服を砂に変える能力。ランクはB。

後天的な能力者。巫女としての働きを求められるようになった精神的ストレスによって覚醒する。

ぬいぐるみの「いなば」を心理的ストッパーとしている。これは覚醒前の時期、まだ厳しい修行や叱責を受けなかった頃の思い出に縋っていると言える。

一瞬で多人数を武装解除できる点が評価され、複数の勢力に狙われるようになったずん子の護衛に派遣される。

めたんのようなエージェントではないが、巫女として人助けのために超能力者絡みの依頼を受けることもある。

淀みや穢れを認識でき、除霊や土地の浄化を行える。これは巫女としての修行によって獲得した霊能力である。

幽霊に関してはイタコが強い思念を、うさぎが悪意や未練を、めたんが単なるエネルギー体を視認できる。うさぎには汚い物しか見えないため霊能力はストレスの元。

東北に派遣され、ずん子、めたん、そら達と過ごした中学時代は彼女の宝物。

本当の能力は見たものを砂に変える能力。推定ランクはS。

まだ覚醒し切っていないため衣服しか砂に変えられないだけ。暴走した場合はずん子同様人類の敵となる。

何もかも砂になってしまえばいいという彼女の想いが形を為した異能。

父親はうさぎにどこまでも厳しく、母親も父親の言いなりである。

知力、霊力ともに並外れた才能と努力を見せるが、両親からは褒められていない。うさぎが嫌いなわけではなく、ずっとそういう教育方針を受け継いできたためである。

また、エネルギーを観測できるめたんですら神の存在を知覚できなかったことが凝りになる。神社や仏閣は空気中のエネルギー濃度の高いパワースポットであるが、それだけなら温泉や滝もそうである。

自分が行っている神事や修行、それらを強いる両親に対する不信と疑念が心に積もっていく。めたんが魔法を諦めて超能力を磨いたように、うさぎも神道を超能力で解釈し始める。

巫女になるための修行が始まる前の優しかった両親の記憶が彼女を縛りつけている。「いなば」を捨て両親を見限った時に彼女は完全に覚醒する。それは暴走の一歩手前であるが。

親が一言だけでも褒めてくれたら彼女は止まれる。


九州そら

アンドロイド。宇宙空間での作業を目的としているらしく異常に頑丈。

事故によりエネルギー切れの状態で墜落したところをずん子に助けられる。それ以来ずん子のことを主として崇めるようになる。

ずん子の護衛のため、めたん、うさぎと同様に中学に転校してくる。

量産型であり、型番はMk-Ⅱ。自分のことも「まーくつー」と呼ぶ。

機械であるため人間を対象とした異能をすべて無効化できる。馬力もあり飛行能力もあるため戦闘用アンドロイドと遜色ない性能を持つ。

ずん子だけでなくイタコやきりたん、めたんやうさぎにも友好的。怒ったり嫉妬したりからかったり得意がったりと人間の子どものような振る舞いを見せる。

正体。

電子生命体。人工衛星のコンピュータに宇宙放射線がぶつかった衝撃で誕生した。

地球を回っている全ての人工衛星を支配下に置く。紛れもなく人類の脅威。

人類との共存を望んでおり、人工衛星の使用に制限はかかっていないが情報は筒抜けである。

彼女の抹消が各国で検討されているが、想定される被害が大きすぎるため手が出せずにいる。既に地球上にも侵入している可能性があるため、完全に倒すには全ての電子機器を破壊する必要がある。

整備用アンドロイドの九州そらシリーズを乗っ取り、そのうちの1機を地上に落としてずん子と接触する。

純粋な知的好奇心によるものと政府や組織からは判断されているが、本当の目的は人類の指導者の選定。国や政府が統一され人類の代表者となった者と手を結ぶことが共存の第一歩と考えている。

各国政府からは暴走した人工知能だとみなされているが、彼女自身は電子の海から生まれた最初の生命体であると主張している。

めたんは生命体にしかエネルギーを譲渡できないため、彼女なら自分が生命体であることを証明できると期待しているが、自分というのがどこにあるのかわからないため言い出せずにいる。

なおエネルギーが保持されるのは生命体というより有機物なので無機物であるそらがエネルギー譲渡を受けるのは恐らく無理。

有機生命体と対を成す無機生命体の誕生である証明はセイカの時代になっても成されていない。

ずんだジェネシス最終回ではずん子を宇宙空間に招き、正体を明かす。

反射衛星砲の開発、戦闘型九州そらシリーズの大量生産により、いつでも世界を手中に収めることができると話す。

ずん子に人類の指導者になってほしいと頼むが、断られる。

武力による統治では多くの血が流れるし、何より友人のそらがただの暴力装置のように思われるのがずん子には嫌だった。

それからずん子は長い年月をかけて統一政府の樹立を成し遂げる。

そらは彼女の死後も彼女の遺した管理形態を維持し続けるのだった。


京町セイカ

未来の世界の住人。高い遺伝レベルと身体強化のESPの持ち主。

タイムマシンによって東北ずん子17歳の時代にやってくる。

ずん子の抹殺が任務だったがそれを放棄。無目的で自堕落な生活を送る。

タイムマシンは必要エネルギーの関係で一度しか使えず、他のレジスタンスメンバーは既に収容されている。

彼らは過去に戻ったセイカがずん子を殺すことで歴史が変わり、今の自分たちの生活が変わると信じている。

セイカは世界の改変ではなく世界の分岐が起こると考えており、彼らとは根本的な思想から異なる。自分一人が過去の世界へと逃げるために彼らを利用しただけである。

未来の世界ではゲノム編集された人間が人工授精、人工培養によって生まれてくる。

遺伝レベルが高いほど知能や身体能力は高く、超能力も強力なものになる。ただ、理想形が東北ずん子であるため遺伝レベルが高いほど彼女に似てくるという弊害がある。

優良個体として生まれた者には能力相応の働きが求められる。セイカにはそれが不満であった。

人並み以上に働いたところで人並み以上の報酬を得ることもなく、特権もなく、称賛もない。働き損である。

酒やタバコ、ギャンブルといった娯楽が制限されていなかった旧時代への憧れを募らせていく。

そんな折、レジスタンスの勧誘を受けタイムマシンに可能性を見出す。

未来では人間は標準的に超能力を持ち、それらはESPと呼ばれる。

身体強化のESPはそこまで強力なものではないが、東北ずん子の腹心であった四国めたんが同様の力で輝かしい戦歴を残したため過大評価されている。

セイカは自分の能力があんまり強くないことは自覚している。

未来の世界はコンピュータに支配されたディストピアであるが幸福度は高い。

能力不相応な厚遇を望む者や能力相応の労働を拒む者には暮らしにくい。



以上。ずんだジェネシスの設定集。

「大都会」のメンバーまでは書かない。戦ったけど殺し合ってはいないとだけ書いとく。

一応他に未登録の能力者として、アリアル、ミリアル、ついなが居る。

アリアル、ミリアルは魔術師系の能力者。異能があるわけではないがエネルギーの器があり、儀式や呪文によってそれを利用できる。

ついなは霊や妖怪のようなエネルギー体を捕食できる。生身の肉体とエネルギー体のハーフのような存在で半分くらい人間じゃない。

超能力、魔術、霊能力が全て同一のエネルギーを利用しているというエネルギー理論。

それにおいて幽霊は肉体を維持するために用いられていたエネルギーの残渣とされる。イタコのように思念まで読み取れる者、うさぎのように穢れや淀みとして視認できる者、めたんのようにエネルギー体として観測できる者が居る。

だがこれもピンキリで、場所や条件によってはっきり見えたり見えなかったりする。怪異化して実体を持つと生きた人間を攻撃できるようになるが、逆に生きた人間側からも攻撃できるようになる。

妖怪、魔物、精霊と呼ばれる者たち。エネルギーの滞留部分から発生した存在。発生要因は様々で、人間の感情として溢れ出た微弱なエネルギーが集まった際によく発生する。

長い年月を過ごすと自由に実体化したり異能のようなものを発現させたりする。中には人間の振りをして社会生活を送る者も居る。

彼らは生や死とはかけ離れた存在であり、集合する、発散するという形式をとるエネルギー体である。何かに封印したり発散させてから土地を浄化して集合を防いだりして倒す。

ついなによる捕食、ずん子による吸収を受けた場合はその限りではない。

魔術に関して、幼少期のめたんは諦めてしまったが存在自体は確認されている。

超能力者は自分の異能でしかエネルギーを使用できないが、魔術師は魔術によって自身のエネルギーを使用できる。

超能力者ならば火を生み出す異能の持ち主しか火を生み出せないが、魔術師は火を生み出す魔術を習得すれば誰でも火を生み出せる。

超能力者であれば理論上魔術を行使することは可能なはずだがこれまで魔術を習得した超能力者はいない。魔術師の血筋であることが条件であると推定されている。

逆のパターンは認められており、超能力者における異能に近い固有魔力が存在している。これはその人にしか使用できない魔術であり他の魔術師には習得できない。

霊能力に関して、イタコが先天的に、うさぎが後天的に獲得したもの。

ランクCの超能力として認められている。その程度は様々で定義は曖昧である。

霊媒師や巫女が持ち、修行によって自ら獲得可能な力であるとされるが、元々素質のある人間を選別しただけという指摘もある。

霊能力者の組合と超能力者の組織は仲は悪いが協力し合っている。

札による封印や土地の浄化の儀式など、なぜそうなるのかはわからないが確かにそうなるという技術がある。この技術は霊能力者なら誰でも習得可能であるため、やはり超能力者の異能とは別物だと考えられている。

ちなみに未来の世界では魔術も霊能力もロストテクノロジー。エネルギー体も専用の武器で吸引されて資源にされている。まだ隠れ住んでいるエネルギー体が居るかは不明。

神に関して。

神霊と呼ばれる精霊の一種が存在する。土地や建物、あるいは代行者などの依代を持ち、人々から向けられる信仰によって力を増す。全ての神社に存在する訳では無い。

自然発生した精霊が信仰を糧とするようになったのか、信仰が向けられることで発生し人々を助けるようになったのかその順序は定かでない。

定義上妖怪や魔物と同じエネルギー体だが同一視すると逆鱗に触れる可能性が高い。

神霊が神社や巫女に霊力を分け与えているわけではないため、うさぎが考えるような神様ではなかった。うさぎの実家の神社にも神霊はいない。


2024年1月2日火曜日

ずんだジェネシス 第1話

たぶん触れられることのない裏設定。 


世界はエネルギーに満ちている。地面から放たれる熱、空から降り注ぐ光、リンゴが木から落ち水が高いところから低いところへ流れる力。

地球から、あるいは宇宙から生み出されたエネルギーの全てを我々は認識し利用できているわけではない。

人類の科学では解明できていない未知のエネルギーを掌握し、異能を発現させた者たちを人々はこう呼んだ。

超能力者と。


新幹線の扉が開き、純白の衣装をまとった少女が軽やかにホームに降り立つ。

四国めたん14歳の姿であった。

めたんは任務内容を再び頭の中で振り返る。

新たに目覚めた超能力者との接触。さほど珍しい任務ではない。

力を手にしたばかりの人間は暴走して周囲を傷つけたり、衝動的に悪事を働いたりする。

彼らを説得し協力関係を結ぶ。結べないなら確保する。

エージェントとして幾度となくこなした仕事だ。

東北ずん子、14歳。

信頼を得やすいよう年が近い人間が任務に当たるのが通例だったが、同い年の対象は初めてだった。

超能力者はその危険度によってランクが決められている。何か事件を起こしたわけでもないので、ランクは予知による暫定的なものだろう。

Cが最低ランク。直感、透視、微弱な念動力といった社会生活上優位に働く程度の能力の持ち主だ。

Bが標準ランク。殺傷能力がある攻撃的な異能、洗脳や身体強化などの特殊な異能の持ち主だ。めたんもこれに当たる。

Aが最高ランク。国家機能を破壊できることが条件と言われているが実態はよく知らない。

Sというのは何だろうか。たぶんAより上だと言いたいのだろうが聞いたことがないので判断がつかない。

東北ずん子はSランクだった。


一目見た瞬間、その理由はわかった。

能力者としての強度はよくコップで例えられる。

世界に溢れるエネルギーをどれくらい保持できるかというコップの大きさ、そのエネルギーをどのように利用するかというコップの形。この2つで能力者の強さは決まる。

東北ずん子はコップというよりバケツ、いやタンクであった。

どんな能力を持っていようが関係ない。それだけで存在自体が脅威であった。

「あの…」

彼女は通学路で突然待ち伏せされたことに驚いてるようだった。遠慮がちに声を上げる。

めたんを不思議そうに眺める。訝しんでいるというよりはめたんのロリータファッションを珍しがっているようだった。

「初めましてずん子さん。四国めたんよ。」

「…ああ、どうも。東北ずん子です。」

初めて自分以外の能力者と出会った時、大抵の者は多少なりとも動揺する。

ずん子は何の反応も見せなかった。


ずん子は無為な駆け引きはしない人間だった。

最近不思議な力に目覚めたでしょうという問いに大人しくはいと答える。

「私もそういう力が使えるの。」

「そうなんですね。」

「…やっぱり気づいてた?」

「まぁなんとなく。」

「それは感覚で?」

「いえタイミング的にそうかなと。」

能力者同士は近づけばなんとなくわかる。自分と同じ動力源の持ち主だからだ。

だが恐らくずん子は他の能力者を感知できない。力量差があり過ぎるからか目覚めてまだ日が浅いからか。

この情報は最悪ずん子と戦うことになったとき大きなアドバンテージになる。

「…あの、めたんさんも同じなんですか?」

「同じ、というと?」

「ああ…同じ力というか同じ存在というか。」

「超能力者であるという所は同じね。能力自体は違うと思うわ。」

未知のエネルギーを扱う力を超能力。それを用いたその人固有の能力を異能という。

自分も以前教わった定義をずん子に教える。

「なるほど。」

「私の異能はエネルギーの抽出と譲渡よ。大体は回復技と思ってくれていいわ。」

実態は少し違う。厳密にはエネルギー操作であり、体内エネルギーの調節による身体能力、再生能力の向上が戦闘においては主だ。

「あの…私のは…なんというか…」

聡明そうな彼女には似合わず歯切れが悪い。いったいどんな異能なのだろうか。

「…まぁ見てもらった方が早いです。私も困ってるんですよ。」

心底困ったような顔を見せる彼女。状況はよくわからないが信頼を得られるならそれに越したことはない。

自宅へと案内すると言う彼女の頬に指を突き立てる。

「めたんでいいわ。それとタメ口で。」

めたんが笑いかけるとずん子も初めて笑った。


東北ずん子の家は立派な日本家屋だった。歴史の長い旧家であり、資産家の家系であるとは聞いていた。

売り払われた四国家の屋敷とつい比べそうになる。記憶の中だとうちの方が大きい。誇張されてるだけかもしれないが。

「おかえりなのだ!ずん子!」

居間に通されて唖然とする。乱雑に散らかされた部屋、緑色のペーストが飛び散ったテーブル、座布団の上に散らばっているのはせんべいの食べかすだろうか。

そしてフワフワとこちらに飛んできた…なに?

「ちょっとずんだもん!汚さないでって言ってるじゃない!」

「汚してないのだ!」

「汚れてるじゃない!」

「汚れてないのだ!ずん子は細かいのだ!」

その何かが腕を組み頬を膨らませてそっぽを向く。怒っているというポーズだろう。

うさぎ…ねずみ…よくわからない。耳の長く手足の短い丸型のマスコットのような物体。

「こういうことなの…」

ずん子が恥ずかしそうに目を伏せる。

意外に思う。使い魔を使うタイプには見えなかった。寂しさを埋めるための架空の友人か抑圧された自意識の発露か。

「時々いるわ。別に恥じることじゃない。」

異能によって作られた存在を絶対に馬鹿にしてはいけない。大体の場合暴走を招く。研修でも口を酸っぱく言われていた。

「ずんだもん。口元に汚れがついてるわよ。」

穏やかに微笑みかける。よく見るとなかなかに可愛らしい見た目だ。ずん子の趣味なのだろうか。

じっとめたんを見返していたずんだもんが口を開く。

「変な格好なのだ!」

「ちょっとずんだもん!」

「…あ?」

思わずめたんの口から低い声が漏れる。

「真っ白いひらひら!デカすぎピンクハート!やーいやーい髪の毛ドリルゥ!」

思わず拳を握りしめる。我慢、我慢だ。

風を感じた。

緑色の物体が視界の端へと飛び去り縁側に消える。とっさに視線を動かすと塀に叩きつけられて地面に落ちるずんだもんが見えた。

「ごめんね。後できつく言っとくから。」

ずん子が申し訳なさそうに頭を下げる。手をパタパタと振っている。

彼女が平手打ちしたのだろうか。油断していたとはいえ一連の動作が全く見えなかった。

「え、ていうか大丈夫なの?」

ずんだもんのことが心配になる。相当な威力だったように思うが…

「ああああ痛いのだぁ!ずん子のバカァ!もう知らないのだぁぁ!」

ひっくり返ったセミのように突然動き出すとけたたましく叫びながらどこかに飛んでいった。

見かけに反して丈夫な奴だ。外に行かせるのはあまり良くないが、どうせ能力者にしか見えないから大丈夫だろう。

「私はかわいいと思うよ。服とか、髪とか。」

ずん子が照れたように笑いかける。

「あ、ありがと…」

ちょっと変な空気になった。


部屋を片付けてずん子からお茶を頂く。一息ついてめたんは聞き取りを始めた。

「いつからあの子が現れたの?」

「この前雷に打たれた時に…」

「待って。雷に打たれたの?」

「うん。」

冗談を言っているわけではないようだ。

「気を失って目が覚めたらあれが居て…」

「肉体が危機に瀕したことで覚醒したと考えられるわね。」

後天的に能力を獲得する理由としては2番目に多い。ちなみに1番目は精神的ストレスだ。

「怪我はなかった?」

「私もびっくりするくらい何も。」

「病院には行ってないわね?」

「雷に打たれたけど何ともないんですとは言い出せないよ。」

それもそうだ。

「あの子、ずんだもんは何か言ってた?」

「意味があるようなことは何にも。」

「ずんだもんがあなたの能力で生み出されたものなら、あなた以上にあなたのことを知っているかもしれないわ。目覚めてから今日までのことを正確に話してちょうだい。」

ずん子が嫌そうな顔を浮かべる。ずんだもんが自分の深層心理を反映した存在であることが受け入れ難いのだろう。

「ボクはずんだもんなのだと名乗ったわ。それだけじゃ何もわからないから詳しく聞いたけれどずんだの妖精だとしか答えなかった。雷に打たれたことについては私が全部吸収したって言ってたわ。」

一息で吐き切るように話し切る。一つずつ紐解いていく。

「ずんだもんという名前に心当たりは?」

「無いわ。」

「何かのマスコットみたいな名前よね。児童書だったりテレビ番組だったりで似たようなものを知らない?」

「具体的にどれとはわからないけど、たぶんそういう分野のそれっぽい名前を考えたんじゃない?」

「そういうの好きなの?」

「人並みには見ていたはずだけどとりわけ好んでいた自覚は無いわ。」

「ずんだの妖精って言ってたわね。ずんだというのが何か心当たりは?」

ずん子がきょとんとした顔をする。めたんも連られて固まる。しばし見つめ合う。

「ああ!知らないのね!ちょっと待って今持ってくるわ!」

ずん子は立ち上がり駆け出すと、緑色のペーストの乗ったまんじゅうのようなものを皿に乗せてきた。

「これがずんだ餅。かかってるのがずんだよ。」

まじまじと眺める。爽やかな甘い香りがした。

「東北の郷土料理で枝豆をすり潰した餡のことだよ。召し上がれ。」

手を合わせて一礼し口に入れる。植物由来の清涼感のある甘さだった。

「美味しいわ。」

「口に合ったようで良かった。自家製なの。」

「この辺では一般的な食べ物なの?」

「特産品ではあるけど、一般家庭でよく食べられるものではないんじゃない?私は好きでよく作って食べてるけど。」

「西南の生まれだから知らなかったわ。」

きっとずん子の思い入れのある食べ物なのだろう。

最初に部屋に上がった時に見たテーブルの汚れを思い出す。あれもずんだだったのか。

「ずんだもんもずんだ餅が好きなの?」

「…ええ、よく食べてるわ。」

だからまぁ、と心底嫌そうにずん子が続ける。

「たぶん私の記憶とか感情とかから生まれたものなんだろうな…って気はする。」

その通りだ。自我を持った使い魔もあくまで主人の分身だ。奇想天外に見えても主人にとっては既知のもので構成されている。

「気に病むことはないわ。あなたの記憶から形成されたというだけで、本当のあなたはあんな感じということを示してるわけじゃない。」

「そうなのかもなんだけど。やっぱり家族の前でもあんな態度でいられるとなんだか気恥ずかしくって。」

めたんが片眉を上げる。

ずんだもんはずん子の家族にも見えているのか。確か東北家の家族構成は両親に姉と妹が一人ずつ。

炎や水、電撃といったわかりやすい形ならともかく、能力で作り出されたものは基本的に能力者以外には見えない。ああいう不可思議な存在ならまずそうだ。

ずん子の力なのか。そういう家系なのか。後で確認が必要だ。

「雷はずん子が吸収したって言ってたんだっけ?」

「そうね。」

「それは間違いない?」

「ボクは何もしてないって言ってたからね。」

エネルギーの変換、吸収、保存…たぶん放出も。めたんと同系統の能力だ。

だから私が呼ばれたのかと納得しかけたが、そうなるとずんだもんが何なのかわからなくなる。

「じゃあずんだもんは何をしたの?」

「だから何もしてないって。」

「でもその時にずんだもんは生まれたんでしょ?」

「そのはずなんだけどね。」

まだまだ謎が多い。まぁ異能なんてそういうものだ。かつて出会った、衣服を砂に変える異能の持ち主を思い出す。原理を追い求めるようなものではないのかもしれない。

「めたんちゃんの目的を教えてもらえる?」

めたんが黙っているとずん子が口を開いた。本来なら最初に聞かれるような質問。ここまで話してなかったことに気づいてめたんは苦笑した。

「私は超能力者を管理する組織のエージェントよ。あなたがどんな力を持ってるか調べて、それを乱用しないように約束してもらうのが目的だわ。」

「嫌だって言ったら?」

ずん子が鋭い目を向ける。こんな顔もできる子なのかと感心する。

「金持ち喧嘩せずってわかるでしょ?強い力を持つ者同士で争ってもお互いに得しないわ。首輪をつけようってわけでもないし従わないから始末しようってわけでもない。あなたのこれまでの生活を侵害する気はないわ。」

だよねと呟き空気が緩む。やはり凄んでみせただけか。

「とりあえずしばらくの間はあなたの能力について調査を進めるわ。あなたも気になってるでしょう?」

「そうだね。よろしくお願いするよ。」

ずん子がそっと手を差し出す。めたんも手を差し出し握手を交わす。

後に人類の頂点に君臨する、東北ずん子がその覇道の第一歩を踏み出した日のことだった。



2024年1月1日月曜日

キャラ設定覚書(改訂版)

キャラ整理。

まただいぶ増えたので一度作り直す。


結月ゆかり

高校2年生。両親とは不仲で一人暮らし。

演劇部の部長。茜とマキと同じクラス。

長らく廃部となっていた演劇部を復活、脚本を担当。

趣味と性格は悪いが顔と頭はいい。


紲星あかり

高校1年生。叔父夫婦の家に同居。高校進学前に両親は他界。

演劇部の部員。1年生はあかりのみ。

ゆかりに誘われ演劇部に。ゆかりに惹かれ始める。

天真爛漫な性格だが行き過ぎて不思議ちゃんになってる時もある。


琴葉茜

高校2年生。妹の葵と共に両親と暮らす。

演劇部の副部長。ゆかりとマキと同じクラス。

ゆかりの相棒的存在と葵の保護者的存在を兼任。

他者には温かく思いやりがあるが自分自身には冷めてる。


琴葉葵

高校2年生。姉の茜と共に両親と暮らす。

演劇部の部員。ずん子と同じクラス。

これまでの自分を変えるためゆかりの誘いに応えて演劇部に入った。

周囲への劣等感が強いが最近は耐えられるようになった。


弦巻マキ

高校2年生。カフェを営む父親と二人暮らし。母親は小学校高学年の頃に他界。

演劇部と軽音楽部を兼部。ゆかりと茜と同じクラス。

人数合わせのために演劇部に入部。軽音楽部の方が忙しくあまり参加はしていない。

ゆかりとは幼馴染であり、あかりからは敵視されている。


東北ずん子

高校2年生。両親とは疎遠で姉妹3人とプラスアルファで暮らす。

弓道部と生徒会所属。葵と同じクラス。

演劇部の面々とは親交が深いが実際のところ葵以外とは友達の友達くらいの関係。

きりたんが演劇部の活動に興味を持ったため付き合いで参加。


東北きりたん

小学5年生。ウナと同じクラス。

東北三姉妹の末妹。イタコとずん子に育てられ、両親のことはよく知らない。

年齢不相応に賢く度胸もあるが、小学校では浮き気味。

子供扱いしてこない演劇部の面々を気に入っている。


東北イタコ

東北三姉妹の長女。20歳、無職。

青森でイタコの専門学校を卒業後、帰郷し妹たちと同居。

家庭内ではかなり難しい立場だが当人は気楽な様子。妹たちも気にしていない。

街角で占い師をやったりしてる。


ずんだもん

ずんだの妖精。年齢不詳。

東北家の居候。庭に犬小屋が用意されているが基本的には屋内で生活させて貰えている。

交友関係の多くは三姉妹の繋がりであり、実はずんだもん自身の友達はいない。


四国めたん

ホームレス。ずん子の友人。

ずん子の腹心的存在。同居も提案されているが基本的には公園でテントを張って暮らしている。

ずん子に対して客観的な視点を保つため、一定の距離を置いている。


九州そら

アンドロイド。ずん子の友人。

製造理由や普段の活動については謎が多い。たまに東北家やめたんのテントに泊まっている。

ずん子を主として崇め、忠誠を誓っている。


中国うさぎ

因幡で巫女をしている。ずん子の友人。

飛び級で高校2年生になった14歳。家や仕事の重圧が厳しく遠い土地で一人過酷な日々を送る。

家出して東北家に来てから作中時間を止めているのでたぶんもう帰らない。


音街ウナ

小学5年生。きりたんと同じクラス。

明るく元気なクラスの人気者できりたんの親友。

コウとはきりたんのフォローを通じて仲良くなり、将来アイドルになったらマネージャーとして引き抜こうと企んでいる。


水奈瀬コウ

きりたんとウナのクラス担任。

きりたんの態度が悪いという教師や生徒からの苦情を一身に受ける。

心身ともに大変だが教職者の矜持によって立っていられる。


桜乃そら

ゆかり、茜、マキのクラス担任。17歳ではない。

演劇部の名ばかり顧問。普段はバレー部の顧問にかかりきり。

ゆかりの精神状態とセイカの不摂生が悩みの種。


京町セイカ

そらの家に居候中の自称未来人。23歳、無職。

パチンコで稼いだ金でイタコと飲み歩いている。

世間のしがらみから解放され自堕落な生活を送る。


月読アイ

演劇部のOB。年齢不詳。

幼児にしか見えないが態度や物言いには老獪さを感じる。

年の離れた演劇部の後輩たちがかわいい。


夏色花梨

高校3年生。生徒会長、弓道部部長。

花梨、六花、千冬の3人で一緒にいることが多い。

ずん子のどこかギラついた所が苦手。


小春六花

高校2年生。生徒会所属。

ゆかり、茜、マキのクラスメート。ゆかりからは認知されていなかった。

不憫な扱いを受けることが多い。


花隈千冬

高校1年生。生徒会所属。

あかりのクラスメート。あかりのクラスと部活での様子の違いに戸惑う。

才女であるずん子に憧れを抱き、花梨や六花のことも何だかんだ尊敬している。


アリアル、ミリアル

ホームレス。森の奥の屋敷で勝手に暮らしてる。

胡乱な姉と健気な妹。同じ双子である琴葉姉妹とは仲が良い。

海外から移住してきたらしいが素性はよくわかっていない。


春日部つむぎ

高校2年生。他校の生徒。

ギャル。マキと音楽関係の親交があり演劇部と縁ができる。

ひまりとは良い仲で、クラスではひまりちゃん係になっている。


雨晴はう

同上。

常にナース服を着用している、面倒見の良い優等生。

かつて剣崎に命を救われ、将来は看護師を目指している。


冥鳴ひまり

同上。

常にゴス服を着用している、ユーチューバーとして界隈では有名な人。

学校は休みがちで、割と問題児。


櫻歌ミコ

同上。

小柄な犬っぽい少女。通称みこちー。

小夜とペアを組むことが多い。ひまりとの距離感が怪しい。


小夜

同上。

小柄な猫っぽい少女。通称さよちー。

ミコとペアを組むことが多い。ミコのことが好きでひまりのことが嫌い。


波音リツ

同上。

長身で絢爛な出で立ちの少女?

ミコとは幼馴染。一人でいることが多いが孤立しているわけではない。


WhiteCUL 雪

同上。

和風な出で立ちの少女。

クラスでは浮いているがそれなりに受け入れられている。


猫使アル、ビィ

同上。

猫っぽい双子の少女たち。

あまり絡みのないクラスメート。


玄野武宏

同上。

全体的に特徴のない平凡な男子高校生。

ごく普通の感性が作中では逆に珍しい。


白上虎太郎

同上。

小柄な男子高校生。帽子で高さを盛っている。

いじられキャラであり、ツッコミ役。


青山龍星

同上。

大柄な男子高校生。天性のガタイの良さ。

外見や声音の印象ほど落ち着いた性格ではない。


雀松朱司

隣のクラス。

終盤で裏切りそうな見た目の男子高校生。

男友達3人とクラスが別れたのが寂しくてよく廊下をウロウロしている。


紡乃世詞音

隣のクラス。

好奇心旺盛で明るく元気な少女。

龍星とはお互い好きとは意識してないくらいの関係。


麒ヶ島宗麟

隣のクラスの担任。

年配だが若者文化や子供の感情に理解がある。

特に男子生徒からの信頼は厚い。


後鬼

つむぎ、はう、ひまり達のクラス担任。

若い女の姿で社会に溶け込んでいるが、正体は千年以上生きた鬼。

ついなに仕え、共に暮らしている。


如月ついな(役追儺)

中学2年生。天涯孤独の少女。

鬼を狩り、生き肝を喰らう人の子?

鬼である後鬼よりも人間社会に馴染めてない。


黒朱乃宮・ティンティナーブルム・リリン

中学2年生。金持ちの娘。

本人は普通に話してるだけなのにメスガキっぽくなってしまうという生まれながらのカルマを持つ。

孤立していたつくよみやついなに積極的に話しかける良い子。


つくよみちゃん(夢前月夜)

中学2年生。夢前月夜という偽名で暮らす人外。

ついなからは逃げたいがリリンからは離れたくないというジレンマを抱えながら学校に通う。

肉体年齢を自由に変えられるため、大人形態では夢前月夜の姉として振る舞う。


伊織弓鶴

高校1年生。他校の生徒。

琴葉姉妹の従兄弟。親元を離れて一人暮らし中のため時々様子を見に来る。

ブログ運営や動画投稿などでそれなりの収入がある。


もち子さん

町のおもちゃ屋さん。

子どもには刺激が強すぎるとされ、保護者によって彼女との接触は禁止されている。

もっと子どもたちがお店に来てほしい。


剣崎雌雄

町のお医者さん。

極めて真っ当な医師で地域からの信頼は厚い。


ナースロボ タイプT(TTちゃん)

医療用アンドロイド。

助けた少女にナース服を着せて奉仕させている危険人物として剣崎のことを監視している。


No.7(ナナさん)

フリーター。23歳。

ミニマリスト。ロウソクの灯りで暮らし、カイワレダイコンを育てる。

セイカとイタコと職歴なし同盟を結成しているが、無職である彼女たちよりフリーターの自分の方が上だと思っている。


フィーちゃん

汎用型アンドロイド「カリカチュア」。

試験運用の一環でゆかりたちが通う高校にやってくるかも?

その時は九州そら、TTちゃんと機械の幸福とは何かについて考えるはず。


最近見た夢

 最近見た夢 ゴミ捨て場に通りかかると動物の死体が捨てられていると同行者が騒ぎ出す。 同行者はゴミ袋の結び目をほどき、中から小ぶりなビニール袋を取り出し道路に並べていく。 その時車がすぐ近くを通り抜け、並べていたビニール袋を轢いてしまう。 きちんと埋葬し直すつもりだったのにと悲し...