2026年10月10日土曜日

波乱の高校生活

5年以内にと言いつつ絶対間に合わない気はしている。ダメならもう5年延長。


・生徒会選挙編

東北ずん子と小春六花の一騎打ちとなる生徒会選挙。

生徒会のゴシップ記事で悪感情を煽る唯世かのん、反ずん子派の集会を開き出す結月ゆかりによって戦いの火は全校生徒へと広がっていく。

後の全ての波乱の原因となる一戦。


・部長会編

新生徒会長となった東北ずん子の元、それぞれ新体制となった各部の代表が集まる。

副会長である小春六花、新聞部部長である唯世かのん、集会に参加していた男子バスケ部の部長が冷ややかな目で見られる。

生徒会選挙編以降校内の雰囲気が格段に悪くなっているのは誰もが感じていた。演劇部部長である結月ゆかり、文芸部部長である宮舞モカ、吹奏楽部部長、野球部部長、サッカー部部長、科学部部長の梵そよぎの6人は今後の混乱に備えて同盟を組む。


・部長会編(若穂みのりの乱)

園芸部部長である若穂みのりによって園芸用地の拡大を求める決議が行われる。

部長会において過半数の賛同を得られれば認められる正当な手続きだったが、これまで実際に決議が行われることは無かった。生徒会選挙のいざこざを通して特定の目的のために集団を率いるという行為のハードルが下がった結果だった。

屋外での運動部以外にとっては関係ないためさっそく同盟には亀裂が入る。自陣の地盤固め、敵陣の地盤崩しといった政争に新部長たちも否応なく巻き込まれていく。


・修学旅行編

かつて六花派だった生徒たちは未だ難しい立場だった。

排斥するには数が多すぎるため表面上は受け入れられているが、悪評も偏見も残っており修学旅行の班決めのような場面では大半が余っていた。

結月ゆかり、琴葉茜、弦巻マキはその代表である小春六花を同じ班に誘う。元々友人だったこともあるが嫌な空気を払拭していきたい狙いもあった。


・代理戦争編(種火の章)

この学校限定のSNS「Didact」の噂が広まる。

「教えたがり」を意味するこのアプリでは、東北ずん子がいかにして小春六花の自滅を誘ったかの推測がまことしやかに囁かれていた。学校で居場所を無くしていた元六花派は「Didact」にのめり込み、再び反ずん子を掲げて集結しつつあった。

その推測は宮舞モカが立てたものと同じであり、内情に精通していないと知り得ない情報も含まれていた。部長会で組んだ同盟に裏切り者がいることが疑われる。


・代理戦争編(貰火の章)

東北ずん子に向かうかと思われた敵対心はなぜか同盟組の野球部、サッカー部、吹奏楽部に向かっていた。

部内の団結心によって六花派に流れるのを免れ、今は同盟を組んで自分たちの立場を守ろうとしているのがずるいという理屈だった。

手の届かない強大な敵ではなく、自分たちより良い立ち位置にいるように見える同格の相手に手を上げるというSNS力学の妙である。

同盟組の仲間であれど、部長のワンマンであるのが知られている演劇部、文芸部、科学部は槍玉に上げられずに済んでいた。助けに行くか、見捨てるか、宮舞モカは頭を悩ます。


・代理戦争編(業火の章)

「Didact」のユーザー数は急激に増加していき、SNS上で誹謗中傷するだけでなくリアルに飛び出していく者も出てきていた。

誰かが問題を起こせば連帯責任となり大会の出場などにも影響がある野球部、サッカー部、吹奏楽部とは異なり、元六花派は既に孤立しており失うものが無かった。自爆テロ気味の嫌がらせでも相手に落ち度をつくらせればSNS上での叩きどころをつくれる。元六花派の中ではそうした行為を行った者を英雄視する風潮もあった。

東北ずん子が提唱した蟻の群れの教訓の意味も解説されているにも関わらず、後先考えずに短期的な不満の解消を繰り返す元六花派はそのまま「蟻」と呼ばれるようになっていった。

同時に「蟻」の駆除を掲げる「自警団」が発足していくのも自然な流れだった。誰が「蟻」なのかを探ることがより対立を深めることになるとしても。


・代理戦争編(鎮火の章)

「蟻」は人間社会の害であり徹底的に排除すべきと主張する「自警団」は東北ずん子の代弁者を名乗り、どうせ自分たちは虫けらなんだと開き直る「蟻」は小春六花の代弁者を名乗った。

東北ずん子はまたしても我関せず、小春六花はフィーちゃんやバスケ部部長を始めとしたごく少数の支持者とともに再起を目指していた。当事者不在かつ当初の主義思想と反した形での代理戦争だった。

野球部、サッカー部、吹奏楽部は当然「自警団」の筆頭であったが、今自分たちが生徒会選挙において六花派が自滅した時と同じ轍を踏もうとしていることに気づいている者は少なかった。

事態を鎮静化させる方法がわからず途方に暮れる宮舞モカに、演劇部部長の結月ゆかりと「Didact」の運営者である科学部部長の梵そよぎがある提案をする。


・クランバトル編(転化の章)

「Didact」の大幅なアップデートが行われ、他ユーザーとのバトルとクランの結成が可能になる。

いつでもどこでも誰にでも喧嘩をふっかけることができ、勝敗は24時間以内の他ユーザーからの投票で決まる。実質的にどっちが好きでどっちが嫌いかを決める戦いであり、負けた方はスコアを減らされ24時間の書き込み禁止と投票禁止のペナルティを受ける。

バトルの性質上チーミングしている者が圧倒的に有利であり、運営からもクランの結成によるチームづくりが推奨されていた。特別枠として「自警団」「蟻」のクランは既に用意されていた。

「自警団」側も「蟻」側ももう相手を精神的に叩きのめしたくてしょうがなくなっていたが、これ以上はお互いの生活に支障をきたすことはわかっていた。毎日のように行われていた「Didact」上での罵り合いをそのままバトルに転化することに抵抗は無かった。

ネットから始まった火種が現実社会で燃え上がり、再びネットに戻されたことでようやく学校は表面上の平和を取り戻した。


・クランバトル編(軟化の章)

ついに3年生が卒業し、東北ずん子を筆頭とした新体制は最高学年になる。

「蟻」は「自警団」がそれなりにヘイトを稼いだことで「自警団」に嫌がらせをしているだけにも関わらず一定の支持を受けるようになっていった。

それによる周囲の態度の軟化から「蟻」側の態度も軟化し、対立構造はマイルドになっていった。ただこの変化は3年生が抜けたことも大きいとされ、受験期にも関わらず「Didact」上で過激な活動を続けていた生徒が大勢いたという何とも言えない事実を明らかにしていた。

進級を目前として生徒会選挙の大敗から半年かけて支持者を取り戻した小春六花がクランをつくるという噂が流れた。混沌とした状況を整理するチャンスだと見た宮舞モカは部長会を開き、派閥化によって「Didact」上での秩序を保つことを提案する。

「仁」を重んじる「春仁会」に生徒会、バスケットボール部、バレーボール部、ハンドボール部、剣道部、弓道部、柔道部。

「礼」を重んじる「夏礼会」に野球部、サッカー部、吹奏楽部、ソフトボール部、テニス部、陸上部、水泳部。

「義」を重んじる「秋義会」に園芸部、料理部、茶道部、美術部、写真部、新聞部、バドミントン部、卓球部、空手道部、ダンス部。

「知」を重んじる「冬知会」に文芸部、演劇部、科学部、軽音部、天文部。

「蟻」という危険分子は残しながらも、新入生が入ってきたらもう変な争いは起こさないようにと四勢力は協定を結ぶのだった。


・クランバトル編(硬化の章)

先輩からの口伝、「Didact」上での投稿によって新入生に対してもこれまでの経緯は伝わっていった。

新入生にはあまり実感が湧かず、在校生もかなり疲弊していたことで「Didact」でのバトルは急速に減っていった。代わりに新入生歓迎イベントの告知や体育館の使用予定の調整など真っ当な使われ方をし始めていた。

不良生徒を仕切っていたギャラ子がいなくなったことで若干素行が悪い生徒も現れたが、「自警団」から名を改めた「夏礼会」の生徒が睨みを利かせるようになっていた。

小春六花率いる「春仁会」も当初の理念に基づき生徒同士の助け合いを目指しており、紆余曲折を経て校内は安定した状態になっていた。

しかしこれは言い換えれば硬直状態であり、「Didact」のユーザー数も頭打ち。運営者である梵そよぎにとっては面白くなかった。

しかし不思議なことに「Didact」のユーザー数は増え続けていった。卒業生のアカウントが残ってるのを差し引いても、学校の生徒数より明らかに多くなっていた。


・クランバトル編(俗化の章)

本格的に他校への「Didact」の輸出が始まり、新たな機能であるグランクランが追加される。

グランクランは通っている学校ごとに必ず所属させられるクランの上位種だった。名目上は他校の内部のやり取りを覗けなくするためのものだったが、将来的にグランクラン間での対立が起こることが期待されていた。

「Didact」は特に私立高校で多く広まっていった。かつては実名晒し、誹謗中傷、脅迫、殺害予告が溢れていたバトル機能が、知的なディベートバトルの場として使われているという話は県立高校の生徒たちの耳を疑わせた。

梵そよぎは私立高校生徒の偏差値が高そうなやり取りに隙の無さを感じつつも、県立高校ではあまり重視されていなかったスコアに強い関心が向けられていることに気づく。

個人スコアとその合計値となるクランのスコア。 それが新たな争いの火種となるのではと考える。


・クランバトル編(鋭化の章)

スコアに関する仕様を大幅にアップデートし、「Didact」はハイスコアを目指す対戦型SNSとして生まれ変わった。

クランにおけるユーザー順位、グランクランにおけるクラン順位、そして全体におけるグランクラン順位が公開される。投票期間はバトル開始から1週間、敗北時のペナルティである書き込み禁止と投票禁止も1週間に延長。勝敗は単純な多数決ではなく投票ユーザーのスコアに応じた得点によって決まり、これが多いほど勝者のスコア増加、敗者のスコア減少も大きくなる。

スコアは新規ユーザーは一律1000ポイントとし、既存ユーザーにも一律1000ポイントが付与された。今後は新規ユーザーの増加によってしかポイントの総量は増えず、限られたポイントを奪い合ってハイスコアを目指すこととなる。

県立高校の生徒はなぜ急にルールが複雑化したかわからなかったが、私立高校の生徒はゲーム性が高まったことで加熱していった。グランクラン内での苛烈なポイントの奪い合いから、他のグランクランから奪って来る方向へと目が向くのに時間はかからなかった。

近隣の4校がグランクランとして登録されているが、スコアは1位が県立高校、2位が私立高校だった。母校を1位に押し上げるとともに、自分のクランのスコアを上げられる一石二鳥だった。

こうして束の間の平穏は終わり、再び争いの時代が訪れることとなる。


・クランバトル編(激化の章)

県立高校の生徒たちはポイントを奪われることに執着がなく、「Didact」でバトルを仕掛けられても何もしない者が多かった。四大クランの幹部陣ですらリスクを認識していないのが大半だった。

宮舞モカは力説する。そもそも「Didact」を四大クランで支配したのは「蟻」による嫌がらせ行為を潰すためであり、スコアが下がって支配力が弱まればまた「蟻」が出てきた時に対処できない。「蟻」から所属メンバーを守れなければそのメンバーも「蟻」化し、その悪意はクランに向けられ負の連鎖が始まる。

モカの主張はある程度受け入れられながらも、誰も外部勢力との戦いに際してどうすればいいかわからなかった。グランクランとして団結しつつ、攻撃を仕掛けてきているグランクランと協定を結ぶ必要があるのはわかっていたが誰がどうやってやるのか。

東北ずん子は話し合いの場に来てすらいなかった。


・クランバトル編(鈍化の章)

小春六花と私立高校の最大クランのトップになった双葉湊音の間で協定が結ばれたことで停戦を迎える。私立高校でも競争に敗れたことで「蟻」化の兆しがあるユーザーは現れており、互いに危機感を抱いた結果だった。

仲が深まった部分も溝が深まった部分もあれど、各クランの幹部たちは一様にやり切った感覚を抱いていた。

生徒会選挙からもうすぐ1年、引退の時が近づいていた。




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