2026年9月7日月曜日

ゲームの世界に入り込む演劇部

多人数動画のプロット案の一つ。

九州そらがハンターハンターのグリードアイランドのように、仮想空間を使ってゲームの世界に入り込めるタイプのゲームソフトを開発する。公式小説からのネタ。

テストプレイとして東北ずん子らの他、演劇部の面々にも声がかかる。九州そらがゲームマスター、ずんだもんがゲーム内のNPCを担当。プレイヤーは13人。

特定のアイテム3つを獲得することがクリア条件となる。


①結月ゆかり

初期位置は雪山エリア。

雪山エリアの村で茜と合流。以降は行動を共にする。

塔エリアであかり、マキと合流しレベリングを行う。


②紲星あかり

初期位置は荒地エリア。

荒地エリアでレベリング後、塔エリアでゆかり、茜、マキと合流。以降は行動を共にする。

最初のレベル差はくつがえらず、パーティーでは主力を担う。


③琴葉茜

初期位置は雪山エリア。

雪山エリアの村でゆかりと合流。以降は行動を共にする。

塔エリアであかり、マキと合流しレベリングを行う。


④琴葉葵

初期位置は砂漠エリア。

砂漠エリアの村でミリアルと合流、周辺でレベリング中にうさぎと合流する。

砂漠エリアのボス『プロトゴレム』を討伐し、『プロトゴレムの金貨』を獲得。

荒地エリアを移動中、『パラグリフィンの風切羽』を装備したアリアルの襲撃を受ける。

以降はプレイヤーキラー組への対策に奔走する。


⑤弦巻マキ

初期位置は雪山エリア。

雪山エリアの村になかなか到達できずに長期間さまよう。

塔エリアでゆかり、茜、あかりと合流。以降は行動を共にする。

塔エリアであかりにキャリーされながらレベリングを行う。


⑥東北ずん子

初期位置は森林エリア。

森林エリアの村になかなか到達できずに長期間さまよう。

現実世界での肉体性能とゲーム世界での肉体性能の落差に苦戦。他のプレイヤーと合流することも装備を整えることもできなかった。

『ライオノイドの腕甲』を装備しためたんとアリアルの襲撃を受けて死亡。


⑦四国めたん

初期位置は荒地エリア。

そのまま荒地エリアでレベリングし、アリアルと合流。

荒地エリアのボス『ライオノイド』を討伐し、『ライオノイドの腕甲』を獲得。

以降はアリアルと共にプレイヤーキラーになる。


⑧中国うさぎ

初期位置は塔エリア。

塔を登ることはせず砂漠エリアに移動し葵、ミリアルと合流する。

葵、ミリアルと共に砂漠エリアのボス『プロトゴレム』を討伐する。

荒地エリアを移動中、『パラグリフィンの風切羽』を装備したアリアルの襲撃を受けて死亡。


⑨アリアル

初期位置は森林エリア。

森林エリアから荒地エリアに移動しながらレベリング。めたんと共に『ライオノイド』を討伐する。

森林エリアのボス『パラグリフィン』を討伐するために来た道を引き返す最中、ずん子を発見してキルする。

『パラグリフィン』討伐後は『パラグリフィンの風切羽』を装備して他プレイヤーを襲撃する。


⑩ミリアル

初期位置は砂漠エリア。

葵、うさぎと共に砂漠エリアのボス『プロトゴレム』を討伐する。

荒地エリアを移動中、『パラグリフィンの風切羽』を装備したアリアルの襲撃を受ける。

以降はプレイヤーキラー組への対策に奔走する。


⑪東北イタコ

初期位置は砂漠エリア。

沼地エリアを突っ切って森林エリアへ移動。きりたん、ウナと合流する。

ずん子がキルされた痕跡の発見、葵、ミリアルからうさぎがキルされたことの報告があったことでプレイヤーキラー組の存在を認知。

彼女たちへの対策の一環として沼地エリアのボス『デミゴルゴン』を偵察中、戦闘に発展してしまい『デミゴルゴンの毒牙』を受けて死亡。


⑫東北きりたん

初期位置は森林エリア。

めたん、アリアルと遭遇することはなくプレイヤーキルは免れたが、他プレイヤーとの合流に苦戦する。

イタコ、ウナと合流後は森林エリアのボス『パラグリフィン』の討伐に乗り出すが、めたん、アリアルに先を越されていた。

『デミゴルゴン』にイタコがキルされた後は塔エリアを目指して逃走。道中でアリアルの襲撃を受ける。


⑬音街ウナ

初期位置は荒地エリア。

森林エリアへ移動してさまよった後、きりたん、イタコと合流する。

移動に時間をかけレベリングを十分に行えず、『パラグリフィン』討伐の空振りもあって装備を整えることもできなかった。

『デミゴルゴン』にイタコがキルされた後は塔エリアを目指して逃走。道中でアリアルの襲撃を受けて死亡。




〇ライオノイド

荒地エリアのボス。火属性。

武具を身に着けたライオンの獣人。火属性が付与された攻撃を行う。

高い機動力と持久力を有し、開けた荒地での戦闘で並ぶ者はいない。

しかし武人のような気質があり、背を向けて逃げる相手は追わない。


・ドロップアイテム

『ライオノイドの腕甲』

生成スロット:1。

ライオノイドが身に着けていた腕甲。

装備者のすべての攻撃に火属性の付与と威力の増加を与える。


・ストーリー

人と闘うたび、人を喰らうたび、その獅子は人の性質を獲得していった。

人喰いの怪物からいつしか、荒地の覇者へと呼び名は変わっていた。

これまで数多の戦士が獅子へと挑み、その血肉になった。

人の性質が獅子の性質を凌駕し、真の戦士になる日も近いのかもしれない。




〇クアシダゴン

海底エリアのボス。水属性。

海生生物の姿を真似る不定形の巨大な怪物。

日の光が当たる場所に引きずり出すことで大幅に弱体化する。

逆に素の状態で討伐することは困難。


・ドロップアイテム

『クアシダゴンの外套』

生成スロット:1。

クアシダゴンの素材を使った服。

あらゆる衝撃を吸収し、変形して攻撃、拘束を行える。

本体と同様に日の光が当たる場所では大幅に弱体化する。


・ストーリー

海で命を落とす者が相次ぎ、人々の恐れは暗い海の底へと向かった。

得体の知れないものへの恐れは、ある生き物を得体の知れないものへと変えた。

元が鮫であったか蛸であったか、もしくは別の何かであったか。

もはやその生き物自身も覚えていないが、与えられた性質に従い今日も船を襲う。




〇パラグリフィン

森林エリアのボス。風属性。

鷲の上半身と獅子の下半身を持った獣。天空を舞い、旋風で敵を引き裂く。

極めて気性が荒く、目についた全ての生き物を動かなくなるまで攻撃する。


・ドロップアイテム

『パラグリフィンの風切羽』

生成スロット:1。

パラグリフィンの頭の羽。

装備者は飛行と高速移動が可能になる。


・ストーリー

その鷲と獅子の戦いは熾烈を極めた。

頂点捕食者同士の縄張り争い、本能がけして退くことを許さなかった。

あまりの闘気に空間は歪み、気づけば二者の体は融合していた。

どれだけ敵を屠っても心が休まることは無い。最も倒したい相手は既に自分自身だから。




〇プロトゴレム

砂漠エリアのボス。土属性。

土くれと岩でできたゴーレム。動きは鈍重だが破壊力は随一。

遺跡内のトラップを利用することで優位に戦いを進められる。


・ドロップアイテム

『プロトゴレムの金貨』

生成スロット:1。

プロトゴレム内部のミイラが握りしめていた金貨。

すべてのクエストの報酬金額とアイテムの換金額が増加する。

ドロップアイテムのレアリティと個数が増加する。


・ストーリー

ゴーレムを動かすには強い魔力と優れた魔法技術が必要だ。

しかし兄弟はペテンを思いつく。中と外から二人で操ればずっと楽ができる。

弟がゴーレムの中に潜み、兄は外でさも一級の魔導士のように振る舞う。

幾つか大きな仕事の依頼を受けたら、金を持ち逃げするつもりだった。

一時の辛抱だった。今だけ精一杯やるつもりだった。

大口の契約を結び、喜びを分かち合おうと兄は弟を覆う岩を外した。

弟は死んでいた。

その日から不思議と兄は他のどんなゴーレムも自在に操れるようになった。

財を築いた兄は死の間際、迷宮の奥深くに最初のゴーレムを向かわせた。

宝を守るためだったのか、それ自体が宝だったからなのかは定かでない。




〇バーバリアン

雪山エリアのボス。氷属性。

白い毛並みの大猿。素早い動きと鋭い爪で獲物を仕留める。

吸い込んだ空気を瞬間的に冷やして氷属性のブレスを放つほか、氷の球を投擲することで遠距離から戦うこともできる。


・ドロップアイテム

『バーバリアンの首飾り』

生成スロット:1。

バーバリアンが最期に流した涙で凍りついた、花嫁の首飾り。

一度だけHPが0になった時、復活できる。この効果は『デミゴルゴンの毒牙』に対しても有効。


・ストーリー

出会った時はまだ子猿だった。

群れからはぐれて弱っていたところを幼い娘は助け、共に育った。

大きくなった猿は山へと帰ったが、時折娘が遠くから手を振ると高く天に吼えた。

娘にとっては終わったことだったのだろう。小さな生き物に向けた、小さな優しさだったのだろう。

娘の結婚式の日、白い大猿が町を襲い新婦以外の全員を殺した。

助けに向かった者もことごとく殺され、町はそのまま見捨てられた。

大猿は娘を傷つけることはなかったが逃がすこともなく、娘もまた大猿を憎むことはなかったが従うこともなかった。

いつしか動かなくなった娘を氷の椅子に座らせ、大猿は傍らに眠る。

殺めてしまった後悔か選ばれなかった悲嘆か、その胸中を窺い知ることはできない。




〇ドラゴネスク

塔エリアのボス。雷属性。

黒い竜。全身が鱗に覆われ、背中から尻尾にかけて棘が生えている。

雷雲を操り、咆哮とともに雷を落とす。

塔の最上部で挑戦者を待っている。事実上のラスボス。


・ドロップアイテム

『ドラゴネスクの怒槌』

生成スロット:6。

体表の棘から作られる笛。パーティーを解散させることができる。

解散させられたパーティーのプレイヤーは一定距離離れたランダムな位置に飛ばされ、所定の時間パーティーを組むことができない。

討伐報酬以外でも各所から入手可能。


・ストーリー

彼は紛れもなく英傑だった。

たった一人で魍魎跋扈す塔を登りつめ、暴君たる竜を打ち倒したのだ。

しかし再び地に降りた彼に向けられたのは忌避と疑惑の目だった。

元より賞賛など望んでいない。しかし人の世にはもはや心躍るものは無かった。

主のいなくなった塔へと戻り、強敵との戦いに思いを馳せる。

あれほどの相手はもういない。ではどうすればいいか。己がなればいいのだ。

その答えに気づいた時、彼の目は黄色く濁り、体からは鱗が生え始めた。

竜化の呪。吼えると応えるように雷が鳴った。




〇デミゴルゴン

沼地エリアのボス。無属性。

無数の蛇がからみついた女の姿をした怪物。

蛇が持つ毒は強力無比で、いかなる人間であろうとその毒がもたらす死からは逃れられない。

目は見えないが身にまとった蛇の囁きに従い近づく者を襲う。


・ドロップアイテム

『デミゴルゴンの毒牙』

生成スロット:12。

からみついた無数の蛇の牙。プレイヤーをキルすることができる。

キルされたプレイヤーは現実世界に戻され、持っていたアイテムはその場に残る。

討伐報酬以外でも各所から入手可能。


・ストーリー

女の性は蛇だ。

不貞を糾弾された妻は決してその事実を認めることは無かった。

手足を削ぎ落とされ、目玉を抉り取られ、毒蛇がうごめく穴倉へと突き落とされても尚、身の潔白を訴え続けた。

その様を見てついに、亭主は己の間違いを認めた。

残虐な仕打ちへの報復を恐れ、逃げ出した亭主を彼女は探し求める。

いつの日か許され、また愛されることを待ち望んで。




【続き】

パーティーは4人まで。

パーティーを組むとパーティーを対象としたバフ、回復を受けられるようになる。また、パーティーメンバーに対してはフレンドリーファイアが無効になる。

通常では同じレアリティのアイテムの交換でなければプレイヤー間でアイテムを移動できないが、パーティー内では自由にアイテムを移動できる。

他のパーティーメンバーがどこにいるか知ることもでき、パーティーを組むことで攻略を優位に進めることができる。

しかし、『ドラゴネスクの怒槌』を受けるとパーティーが分断されることが大きな裏目となる。めたん、アリアルのプレイヤーキラー組はこれを警戒して協力関係にはあるがパーティーは組んでいない。

高額ではあるがパーティーを解散させられる『怒槌』、プレイヤーをキルできる『毒牙』が行商人から購入できるため、初めからプレイヤー間での戦いは推奨されている。


きりたんと塔エリアの村で合流したことで、ゆかり達4人のパーティーもプレイヤーキラー組の存在を知る。

その後、きりたんを守りながら5人で移動して海底エリア前の港町に到着する。

先に着いていた葵、ミリアルと共に海底エリアのボスを討伐することで、めたんの『腕甲』、アリアルの『風切羽』に匹敵する装備を獲得することを目指す。

一方、めたん、アリアルは遠巻きに彼女たちを監視。少人数での攻略が難しい海底エリアは任せ、ボスを倒したところを横取りする算段だった。

しかし海底エリアのボス『クアシダゴン』はギミック戦であり、港町の住人の協力によって海上で討伐され、そのまま一行は港町に帰投。めたんとアリアルは襲撃の機会を失う。

市街地でプレイヤーを襲撃し、住民に目撃されるとプレイヤーキラーらは指名手配される。指名手配された場合アイテムの購入や宿での宿泊ができなくなるため、まだその危険は冒さないだろうと一行は踏んでいた。

『クアシダゴンの外套』は『プロトゴレムの金貨』とは違い、戦闘面で強力なアイテムだった。葵とミリアルのパーティーに所有権があったが、ミリアルが装備する。

このゲームは感覚がリアルすぎることで、特殊なアイテムを装備しても容易には使いこなせないのがわかっていた。姉であるアリアルが自在に空を飛び回っていたことで妹のミリアルも適性が高いのではという判断だった。

実際ミリアルは『外套』の触手を器用に動かした。レベルが高く戦闘経験が豊富なミリアル、葵が戦力の要となる。

きりたんは葵とミリアルのパーティーに入るよう誘われるも辞退する。万一の事態に備えてということだった。


この時点でずん子、うさぎ、イタコ、ウナが死亡。

『プロトゴレム』がいた砂漠エリア最深部、『クアシダゴン』がいた海底エリア最深部に『毒牙』が置いてあったことで、他エリアでも同様にボス周辺に『毒牙』があることが推測される。

『ライオノイド』と『パラグリフィン』討伐時に得た2個がずん子、うさぎに使われ、ウナに使われたのは購入したものと思われる。報酬金の相場から考えてプレイヤーキラー組が持っているのはせいぜい後1、2個との見立てだった。

購入したものが1個、イタコがキルされた際に『デミゴルゴン』からドロップしたものを回収して1個で、めたんとアリアルの残り所持数は1個ずつだったためその見立ては当たっていた。


ゆかりがこのまま港町で行商人が来るのを待ち、『毒牙』を買い占めてしまおうという作戦を立てる。 

『プロトゴレム』の討伐報酬に加え、『金貨』によって倍加された『クアシダゴン』の討伐報酬があるため葵とミリアルの所持金は潤沢にある。

『毒牙』の生成スロットは12。既に使用されたものが3個、プレイヤーキラー組が持っているのが2個、葵とミリアルが持っているのが2個。残り5個をこちらで確保できればもう向こうは在庫を増やせない。

固まって行動し、誰かやられてもドロップした『毒牙』の回収を最優先にすれば人数差で勝てる。

どれだけ戦闘で強くても『毒牙』が無ければトドメは刺せないことに注目した勝算の高い作戦に思われた。


向こうは『金貨』の存在を知らないためこちらの所持金を見誤ってくれる。

ゆかりの言葉に背中を押され、一行は港町への滞在を決める。

この隙に残る雪山エリアの攻略に乗り出されることが懸念事項だったが、ボスからドロップしたアイテムの装備は1個までのため、既に『腕甲』『風切羽』で埋まっている彼女たちにとってはそれほど有益でない。

クリアに必要なアイテムがその3つで、揃った瞬間クリアになる可能性はあったがそこは賭けだった。




作戦は上手くいくかと思われたが、行商人が港町に訪れる前に葵、ミリアルが夜襲を受ける。

ゆかり達が騒ぎを聞いて駆けつけると、ミリアルがアリアルを拘束しているところだった。

アリアルの『風切羽』は開けた場所では無類の性能を発揮するが、屋内ではその機動性を十分に活かせない。

ミリアルはその特性を理解せず突っ込んできた不用心をあげつらいながらも、視線はもう一人のめたんから外さない。めたんもまた『外套』の拘束力と傍らに控えた葵の援護を警戒して動かなかった。


ミリアルはめたんに助けを求めるも、めたんは不敵に笑うだけだった。めたんが助けに動かないことを認識し、ミリアルは『毒牙』を使用してアリアルをキルする。

その瞬間、めたんは獣の速さでミリアルへと走った。その動きを読んでいた葵は自身とミリアルを守る防護スペルを発動する。

しかしめたんの狙いは攻撃ではなかった。アリアルが死亡したことでアリアルの所持アイテムはその場にドロップする。めたんの手と『外套』の触手が交差し、両者はアリアルが持っていたアイテムを手にする。

ミリアルはこれまでの作戦もあり『毒牙』を回収していた。めたんは目当ての『風切羽』を回収して満足げに微笑む。即座に自身の『腕甲』と交換で『風切羽』を装備する。


たった今アリアルが『風切羽』は屋内では使いにくいことを証明したにもかかわらず、めたんの選択に葵とミリアルは戸惑う。

めたんは飛ばなかった。『腕甲』の攻撃力強化から『風切羽』の速度強化に切り替えるだけの目的。おまけの効果であっても四国めたんという人間自体の性能を加味すると十分だった。

『外套』の複数の触手による攻撃をめたんは双剣で防ぐ。既にミリアルは『外套』の性能を十分に引き出し、レベル差があるゆかり達の目では捉えることができない領域に達していた。

しかしめたんはその全てに対応していた。レベルが上がれば動体視力も反射神経も上がるが、ゲームの世界でできるようになっても現実の世界でできない動きは普通できない。事実葵は同レベル帯の両者の攻防に割って入ることができなかった。

たとえレベルによって身体能力が変わるとしても、元から強い奴が強い。このゲームの明確な欠点であり、めたんが優先してずん子とうさぎを排除した理由だった。


めたんはミリアルに肉薄し、触手を掻い潜ると組みついた。アリアルがしたのとは逆に、部屋の中から窓枠に向かって飛行能力を使う。

空中に連れ去らわれる。ミリアルの頭には猛禽類に捕まれた鼠のイメージが浮かび、反射的に『外套』の触手を使って踏みとどまろうとする。

何とか窓枠から体を乗り出す形で止まったものの、めたんの狙い通りだった。

部屋の中からは窓枠に絡みついた触手で外が見えず、ミリアル本体は無防備な状態で外にはみ出していた。めたんは外壁に張り付きながら『毒牙』を使用した。


『外套』の触手が消失したことで屋内に残された者たちはミリアルがキルされたことを理解する。

葵が窓枠へと走る。『外套』を奪われればいよいよ勝ち目が無いことを察してだった。

そう来ると読んでいためたんはミリアルからドロップした『毒牙』を1つ拾いすぐに使用した。

葵は『外套』を拾うことはできずに息絶えた。


ゆかりは自分の認識が甘かったことを痛感していた。

キルされたプレイヤーからドロップしたアイテムを拾うのは早い者勝ち。キルした本人が最も距離が近い以上最も有利だった。

それを抜きにしてもプレイヤーキラーの方が戦いが圧倒的に上手すぎた。

めたんはミリアルの『外套』と葵からドロップした『毒牙』を拾わなかった。ミリアルが持っていた『毒牙』は2つ、まだ1つ残っているはずだ。

全員で行けば『外套』と『毒牙』どちらかは回収できるはずだった。しかしその後の勝ち目がないことは皆わかっていた。

めたんは窓枠から逆さにぶら下がりながらじっとこちらを見つめていた。


しばしの静寂が流れ、きりたんが口を開く。

めたんは『毒牙』を持っていない。ミリアルからドロップした瞬間に1個を取ってすぐに使った。もう1個を取る時間はさすがに無かったはずだ。

『外套』の近くに落ちていないのは窓の外に落ちたから。

その推測は確かにそれらしいものだったが、根拠はなかった。めたんの表情も動かない。


ああやって睨みを利かせているのはブラフ。

本当は突っ込んで来られたら『毒牙』を拾わないといけず、残りの2つを持っていかれる。

それは嫌だから何とか流れを変えようとしている。

きりたんの言葉にゆかりはハッとする。

ボスアイテムは葵が持っていた『金貨』もだ。クリアに必要なアイテムがどれかわからない以上、戦闘に使えなくても無視するわけにはいかない。

めたんが一番嫌なのは持っていかれた後てんでばらばらに逃げられ、見つからなくなること。


きりたんは確実に4人を逃がせると宣言する。

4人で突っ込み、めたんが『毒牙』を拾っているうちに『外套』と『金貨』を拾う。

その後は自分に任せてくれと言い、全財産をはたいて買っていたアイテムを取り出す。

『ドラゴネスクの怒槌』。これまで話題に挙がりながらも一度も使われなかった店売りのボスアイテムの1つ。

きりたんの意図を察したゆかり、茜、あかり、マキはめたんが待ち受ける窓辺へと突っ込む。


めたんもまた俊敏に動き、窓枠から飛び降りると『外套』を拾った。

『毒牙』を拾って1人キルするよりもボスアイテムを1つ確保した方が良いという判断だった。

ゆかりが『金貨』を、あかりが『毒牙』を回収すると同時にきりたんが『怒槌』を使用する。

何が起こるかわからず、対象ではないめたんまでも身構える。一瞬の硬直状態の後、屋内にも関わらず雷が落ちた。

ゆかり、茜、あかり、マキの4人は光の塊となり四方へと飛ばされていく。至近距離で受けた閃光と轟音によってめたんときりたんは放心していた。


気を取り直すとめたんは1本取られたことを褒める。

あなたは『外套』を拾うと思ったが、『外套』はクリアに必要なアイテムじゃない。

きりたんの言葉にめたんは不思議そうな顔をする。

『クアシダゴン』の攻略には港町で住人の協力を集める組と、海底から『クアシダゴン』を追い立てる組が必要だった。

プレイヤーキラー戦法を禁止していない以上、最終的に1人になったプレイヤーが攻略できないボスの討伐報酬をクリア条件にするわけがない。

めたんはその観点は無かったようで、きりたんの慧眼に大いに感心する。


手を組まないかというめたんの誘いにきりたんは苦笑する。

あの場でアリアルを見殺しにしなくても、いずれは背中から切っていたはずだと。

アリアルもその辺りはお互い様だったと言いつつも、めたんはその疑いを否定しなかった。

勝者は一人しかいらない。そう思うめたんの性格をきりたんは知っていた。

何よりまだ一勝負残っているのだ。

めたんが窓の外に落ちた『毒牙』を回収するまでに逃げて姿を隠す。それができなくても住人の前でキルされてめたんを指名手配させる。


めたんは微笑んだまま近づき、『毒牙』できりたんを刺した。

きりたんは自分の推測が間違っていたことへの驚愕と、であればなぜ使わなかったのかという疑念に顔を歪める。

あなたを先に排除したかったから。きりたんの頭に浮かんだ問いに答えるようにめたんは囁いた。

『毒牙』を見せて牽制しながら立ち回れば、『外套』も『金貨』も奪えるかもしれなかった。

ただそんな不確実な立ち回りより、ポテンシャルに溢れたきりたんを確実に排除する方が優先だった。

逃げられても関係ない。どのみち自分以外は全員始末するつもりなのだ。








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